表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
273/373

11/16 町案内、という名のWデート? 雲の上で

汐ちゃんとフィル




「準備、良すぎだよね?」


 鷲ルドの背に乗り、空を覆う雲の上まで突き抜けて。

 ルドが首から下げていた袋から取り出された赤色のポーチを斜めがけに下げ、焦茶の靴を履きながら。ジト目を向けてうしおが言う。

 袋の中には他に二着のコートまで入っていて、流石に用意周到すぎだった。

 しかしそれを特に気にする事なく、告げるフィル。


「そっかぁ? ま、細けー事は気にすんなよ。俺様一人でも構わねぇけど、どーせならってんで準備だけはしてたんだよ。タイミング合わなかったからな〜。おまえ微妙に俺様の事、避けてるもんなぁ?」

「…………」


 二人きりになったからかここぞとばかりに言ってくるフィルに、むぅ〜っとした顔を向けて。


「そんなことないもん」


 呟いてぷぅいっ、とそっぽを向く汐。それに肩を竦めてフィル。


「ど〜こが、だよ。極力〈二人きり〉になんの、避けてるくせによ」

「そんなこと……」

「あるだろが」

「……っ……」


 確かに少しばかり、フィルを避けているのは事実で。でも本当は、その事だけが原因ではないけれど。

 フィルとは顔を合わせずに汐は押し黙り。

 雲の絨毯の上を優雅に飛ぶルドの羽音だけが、耳に響く。

 そんな中一つ、深呼吸して。くるりと身体ごとフィルに向き直って、ひたと。その蒼の瞳に自分の栗色を合わせて。

 監視の目が離れている今じゃないと、聞けない事を訊ねる為、口を開く。


「……だって。まだ……教えてくれないんでしょ?」


 何を、などと言わずと知れている。

 十月の終わりと十一月の初めに起こった、事についてと。

 汐が〈知らない〉事について、だ。

 何時かは、話さなければならない事ではあるが。

 汐のその言葉に、やれやれと息を吐く。


「何時か、だって言ったろ? まだ話さねぇって事は、時期じゃねぇってこった。今の段階じゃ特に……、な。それに〈この事〉は本来なら〈告げない・関わらせないのがルール〉なんだよ。永遠トワ様や所在アリカさんから何も聞かされてねぇのに、俺様がそれをおまえに、言う事は出来ねぇんだよ」

「ならどうしてっ!」


 記憶を消してしまわなかったのーー、という汐の、その言葉に被せるように。


「本意じゃねぇのが、わかってたからな。それに絶対に話せない、って訳でもねーんだよ。汐に関しては、な」

「え……?」


 フィルのその言葉に、きょとんとして。ぱちくりと目を瞬いて、傍に座しているフィルを見やる汐。そんな汐を見返し苦笑して。


「……今はまだ、無理だけどな。このまま言い逃れする気はねーよ。汐は〈こっち側〉の人間だ。太陽ひかりさん達みたく〈外側〉に位置する訳じゃねぇ。だから〈その時〉は、必ず来る」


 そこで一旦言葉を切って、続ける。


「ただ……本来なら先代から、継がれる形式で語られる事の筈なんだよ、この類の話は。永遠様から所在さんへ。所在さんから汐へってな。けど所在さんがいねぇし、おまえがまだ子供だかんな。色々手続きとか、面倒くせぇ事があんだよ」

「……じゃあ……それが終わったら、話してくれるの……?」


 じぃ、と。栗色の瞳がフィルを見つめる。それをそのまま見返して。


「……源海じーさんと太陽さんにも、許可取らねぇといけねぇだろうが、な。話せる時期ときが来たら、話すさ。だけど……」

「だけど……?」


 言い淀むフィルに、首を傾げて汐。それに苦笑を浮かべ。


「……問題は、ラタリアだと思うんだがなぁ、俺様的には」

「ラタリアお兄ちゃん?」


 なんで? という表情をする汐に笑ったまま。


「汐に、一番聞かせたくねぇと思ってんのは、ラタの奴だからだよ。それに〈力〉の事は一応、神殿の管轄なんだぜぇ? 其処の最高権力者ラタリアがGOサイン出さねぇんじゃ、話す話さねぇ以前に無理じゃねぇかよ」

「あ」


 その事には至らなかったのか、間の抜けた声を出しぱちくりと汐は栗色の瞳を瞬く。

 暫ししてから「うーん」と悩み出した汐の頭に手を置いて。


「何時か必ず、話すから。けど今は汐が、考えてても仕方ねぇ事だからさ、取り敢えず脇に置いとけよ。折角、気晴らしに来てんだからさ〜。楽しまねぇと損だろうがよ?」


 くしゃくしゃと頭を撫でながら告げるフィル。

 それにいくばかりか悩んだものの一応納得して、こくりと頷き。


「そうだよね。それに遊ぶ時は全力で! って、あみお姉ちゃんも言ってたし」

「ははっ。ちげぇねーけど、カイらし〜言い分だなぁ。ーーいよっし。んじゃ行くぜぇ〜?」

「うん!」


 笑みを浮かべた二人の声に合わせるかのように、聞き役に徹していたルドがその翼を空に大きく羽ばたかせた。

やっぱりもいっこありました

間に合ったので滑り込み


この辺の話もだんだんとしてかないとなぁ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ