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7/25 店外 第四ラウンド




 暑い。

 とにかく暑い。

 そんな日には――……



 かき氷戦線が、始まる!



 海水浴客で賑わうここ、うろなの観光地であるビーチには、老若男女、様々な人達が海水浴を楽しんでいる。


 夏といえば、海が最も賑わう季節。

 お客さん達が、こぞって海にやってくる。

 となれば、海の家も必然的に繁盛するワケで。


 店内が申し分なく、盛況なのは結構だが。


 店に入る客の邪魔にならないようにと、海の家の端に設置された機械――(なぎさ)の発明品、かき氷製造機〈氷山くん〉(二つ同時精製可)――の前には、これでもかという程の、長蛇の列が出来ていた。


「………………」


 それを見ただけで、現場放棄して今すぐ海に潜りに行きたい! ――と一瞬思う渚だが、思うだけに留めて黙々と作業を再開する。


 かき氷販売担当は、渚と(うしお)のダブルコンビ。いつもはこの二人だが、今日は芹香ちゃんと鈴音ちゃんも一緒にお手伝いだ。

 接客を懐っこい汐や芹香ちゃん、鈴音ちゃんが担当し、渚は黙々と手にした器に氷山を築いていく。


 お客さんからお金を受け取り、その山にシロップをかけたりするのは汐達の役目なのだが。


「え〜? どれにしよっかなぁ〜」

「迷っちゃうよね〜」


 お客さん達が、すこぶる迷う。


 迷うのは、別にいい。それだけ、魅力的なモノを揃えられている、という事なのだから。


 かき氷には、(あみ)姉のかなりの思い入れがあるのか、海の家の巨大冷凍庫で作る氷はうろな町の西の山の清水を使った口あたりなめらかなモノで、かき氷にかけるシロップは全て自家製。果実、少量の砂糖、変色を避ける為に使う国産のレモン汁以外は入れないという徹底ぶり。


 今年のシロップの種類は、定番のイチゴ、ブルーベリー、マンゴーオレンジ、桃さくらんぼ。


 最近若い女性達に人気の、フルーツかき氷なんてのもある。

 これは二種類あって、普通のフルーツかき氷と、サイダーフルーツかき氷がある。


 フルーツの種類は桃、マンゴー、メロン、巨峰。この内のメロンと巨峰だけが、サイダーフルーツとなっている。


 この炭酸水は国内の某県にある、生活用水が天然の炭酸水だという村からの取り寄せだ。

 その炭酸水に一晩フルーツを漬け込むと、サイダーフルーツが出来上がる。


 此方は、しゅわしゅわする面白フルーツとして子供達に大人気である。


 暑いからと、お客さんがかき氷を買い求めにやってくる。それはいい。暑いのは、かき氷屋にとっては恵みだから。

 しかしどうやら、今回はそれだけが要因ではないようで……


「どれにしますか〜?」


 にっこりして汐が訊ね。


「私がかけてあげるんだから、さっさと選ぶがいいわ!」


 ビシリ! 指を突き立てて芹香ちゃんがそう言い。


「……あ、あの……これかける?」


 ちょっとびくっとしながらも、小首を傾げて訊ねる鈴音ちゃん。


 それに。


「貴女のその笑顔(スマイル)でっ!」

「キタコレ! 役っ子キタァ――!!」

「おめめウルリン、マジかわ〜〜! 萌え〜〜♪」


 と、お客様ども(主に男性陣)が燃え(萌え)。


「いや〜ん、怯えちゃんかっわゆ〜い♪」

「い、妹っ! これこそ私の(心の)妹がっ!?」


 と、お客様ども(主に女性陣)がめろりんする。


「………………」


 それらを見て、もう何度目か。渚はこそりとため息を付く。


(…………削りたてが、美味しいんだけど)


 などと思いながらも、氷を、シロップを、フルーツを消費して、列を縮めていく四人。


「ふふん、たあいもないわね!」

「ありがとうございました〜」


 と、最後のお客さんの対応を終えたかに見えた、が。


 ざわり、ざわめいた周囲に引かれるように眼前に目を向けると、周囲がざわめくのも頷けるような、美男美女が立っていた。


 金髪ポニーテールに青い瞳。フリフリのドレスのような服装。手には黒いギターケースを持つ、低身長のロリ美少女と、無愛想な表情の黒髪黒目の美少年。此方の美少年は先の少女に比べると高身長で、深緑のラフな服、黒の長ズボンが妙に良く似合う。此方の少年も、その手に白のギターケースを持っていた。


「DQN'sだ!」


 その二人を見て、周囲の人々から声が上がる。


「ドキュンズ?」


 わからない渚と汐、鈴音ちゃんが首を傾げる。と、説明を始める芹香ちゃん。


「女装男子と男装女子がウリのバンドよ!」

「へぇ〜そうなんだぁ」

「すご〜い! セリちゃん物知り〜」


 えっへん! 胸を張る芹香ちゃんを、キラキラした目差しで見つめる鈴音ちゃん。


「こんな小さな子にも知られているなんて光栄だな〜! そこのうろな海浜公園でバンド練習してたんだけど、暑くてさ〜。こうしてかき氷を食べに来たワケなんだよね〜。あ。ボクイチゴで〜」


 にっこり笑って少女、いや少年がそう告げ、


「ほらほら! ぎっちゃんも!」

「…………」


 と、無愛想な少年、いやぎっちゃんと呼ばれた少女に問う。

 その間にイチゴのかき氷が出来上がり、少年がいそいそと受け取って一口頬張り、


「んん〜、やっぱり夏はコレだよね〜」


 幸せそうに頬を綻ばせる。

 その可愛らしい笑顔に、わかっている男性もわかっていない男性も、一様に顔を赤面させてバタバタと倒れるが、構うことはなく。


「………………」


 ぎっちゃんと呼ばれた少女は、残りのシロップやフルーツを確認した後、じっ……と渚を見つめ。


「………………」


 渚もその少女、ぎっちゃんをじっと見つめる。


 そうして暫し、見つめ合った二人は。


 同時にコクりと頷いて。


 通常より若干広めの器を手に取ると、おもむろに氷山を築き出す渚。

 程良い所で踵を返すと、神業的速度で残りのシロップをふりかけ、フルーツを盛り付けていく。


 そうして出来たのは――……


 海姉流に言うのならば、たぶんこれしかないだろう。


『レインボーかき氷スペシャル・フルーツ盛りっ!』


 その名に相応しくそのかき氷には、イチゴ、ブルーベリー、マンゴーオレンジ、桃さくらんぼの四種類のシロップがかけられ、添えにと桃とマンゴーが飾られている。

 それに氷の白が合わさって、まるで七色の虹のようで。


「………………」


 ごくり、固唾を呑んで周囲の人々が見守る中、そのレインボーかき氷が渚の手からぎっちゃん――大神義愛の手へと渡る。


「………………」


 じっと、それを見つめる義愛。


 そんな義愛を、凝視する面々。


 ギターの弦をつま弾く、その手がすぃっと持ち上がり、添えられたスプーンをそっと掴む。


 そのまま、氷の山を一匙掬って、口の中へ。


「…………!」


 その途端、僅かに見開かれる黒の瞳。そして――


「……美味しい」


 呟かれたその言葉と、滅多に見せることはないのであろう、義愛の少女らしい、微かなその微笑に。



 その場にいた客達全員が全員、鼻血を吹きつつ卒倒したとか、しないとか――……



 海の家ARIKA、店外でのかき氷戦線はDQN'sの一人、大神義愛の勝利で幕を閉じたのだった。



店外、なんか凄いことになってるなぁ……(苦笑)


とにあ様のURONA・あ・らかるとより

芹香ちゃん、鈴音ちゃんを


アッキ様のうろな高校駄弁り部より

DQN'sの二人、ソウル君とギアちゃんを


お借りしております


おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ



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