11/16 空・回想する1
再上げ〜
とにあ様のURONA・あ・らかると クエスト!回とリンク、後話となります
空ちゃんパート的な感じで
「ただいまー」
ホテル〈ブルー・スカイ〉のプライベートフロア。
下の階の方の玄関をくぐる。
上下二フロアあるプライベートフロアは、ホテルとして使っているフロアと違い、ぶち抜きで作られていてもの凄く広く、下の階の方は、広いリビングダイニングキッチンとお風呂場等がある以外は、あかずの部屋が二部屋と各々家族の物置に、数室の空き部屋があり。
そのまま上の階の自分の部屋に直行してもよかったが、少し落ち着いてからいきたかった空は、下の階にそっと足を踏み入れた。
室内の電気を点けながらリビングへといく。
その時ちらりとキッチンの方に視線を走らせると、コンロにお鍋が置かれていて、誰かはいる事を告げていた。
しかし、入室を知らせるベルが鳴っても、誰も階下に降りて来る気配はない。
その事に少しほっとしつつ、ソファに腰を下ろす空。
空調はホテル全体で管理しているものなので、室内は十分に温かかった。
ふぅ、と一つ息を吐く。
まだ、ドキドキがおさまらない。
それに苦笑しながら、空は今日の事とそれまでの事を、思い返していた。
『ちょっと話したいことがあるから時間をとって欲しい』
そんな内容のメールが来たのが、十一月十三日の水曜日の日。
メールのやり取りはしてたけど鎮君から、そんな内容でメールが来るのなんて、珍しくて。
ちょっと不思議に思いつつ、いいよ、と返信をする。
そこからの時間確認メールと共に。
『夏の迷惑をかけたお詫びもかねてご飯奢るね』
なんて追記されてて苦笑してしまう。
気にしなくていいのにな。
そう思いながら、ありがとう。それじゃあ十六日に。とメールを返して画面を閉じる。
すると後ろから、
「なに、空。土曜日デートかぁ〜?」
ニヤニヤと海あみお姉ちゃんが言ってくる。
「えっ!? あっ、海お姉ちゃんっ!? ち、違うよっ?」
デート、の言葉に驚いて、頬を染めつつ否定する。
それでも海お姉ちゃんはふぅ〜ん? と言いながらも、ずっとニヤニヤしてたけど。
……え、こっ、これって、で……、デート、なのかな?
ち、違うよね? 何か、話したい事がある……って、言ってたし……
普通に遊んだりとか、してたのと同じ……だよね?
海お姉ちゃんに言われてちょっとドキドキしたけど、そんな事ないよね、とそれにそっと蓋をして。
でも、遊んだりするのは本当に久し振りで、それにワクワクしながらその日を待って。
「変じゃないかな?」
当日の朝。
早めに起きて、鏡の前で今日のコーディネイトを再三チェック。
ヒラリ、花柄シフォンワンピの裾を揺らす私を見て、海お姉ちゃんが笑って言う。
「ほら、や〜っぱデートじゃん♪」
「だ、だから違うってば〜」
今から会うのに、そんな意識させるような事、言わないでほしい。
それにこれ以上詮索されても困るので、ここはさっさと退散する事にする。
「それじゃ、行ってきま〜す」
言って部屋を出て行こうとする私を、海お姉ちゃんが止める。
「あ〜、空。ちょい待ち」
「?」
その声にクルリと背後を振り返ったと共に、
「イヤリングくらい付けてけよ。空の黒髪に、白金のは映えるから、さ」
そう言って、パチッと耳にイヤリングを付けられる。
備え付けのデザイン鏡でちらりと確認。
柄物を着てたから、アクセサリを付けたらうるさくなっちゃうかな、と思ってたんだけど。
シンブルなそれは控えめに、でも確かに黒髪を引き立てていて。
笑顔で見送る海お姉ちゃんにありがとうとお礼を言って、私はその場を後にした。
待ち合わせ場所は、海浜公園駅近くのベーカリー・シャーロック。
早く来すぎていたので、辺りを少し散歩してからそこに行く事にする。
海お姉ちゃんに言われた事に、どきどきしたままだったのを落ち着かせるには、調度良かったから。
暫く散歩してからシャーロックに行くと、デニムジャケットにジーンズ姿の鎮君がいるのが見えて。待ち合わせ時間には余裕があったけど近付いていって、蓮華さんに会釈してから空いている席に座って、鎮君が食べ終わるのを静かに待って。
おしゃれしてきたのを褒められて照れたり、紅葉狩りに行く事になったのにわくわくしながらも、比較的穏やかに待ってたんだけれど。
「じゃあ、今日のデート、楽しもうね。……空ちゃん」
なんて言われて、ドキリとしてしまう。
デートだって……それに空ちゃん、なんてさらりと言われて。
今まで空ねぇだったのに。
それにちょっと、ずるいなと思ってしまう。
私にしたら、鎮君は鎮君なのに。
……海お姉ちゃんみたいに、呼んでみる?
…………っ
……はうぅ、無理っ!
色々考えている内にパンを食べ終えた鎮君が、返却スペースにトレーを返しにいって。その間に、なんとか落ち着けるように努力する。
折角のお出かけなのに、デート、だって事を意識し過ぎて楽しめない、なんて嫌だったから。
だ、大丈夫、大丈夫。
落ち着いて、私。
いつも通り、いつも通り……
自分にそう暗示をかけていると、行こうか? と手を差し出され。その手を取るのを躊躇っていると、
「それとも、モールで映画でも見る?」
なんて言われてしまって、慌てて首を振る。
「ううん。紅葉、見に行きましょう」
呟いて、差し出されたその手に、自分の手をそっと重ねて。
歩き出しながら後ろをちらりと振り返って、蓮華さんにペコリとお辞儀したらウィンクされて、ほんのり頬を染めちゃったのは、秘密。
電車での移動中に、最近の事とか隆維君の事とかを話して。
やっぱりちょっとドキドキはするけど、鎮君が普段通りでいてくれたからか、落ち着いてきて。
これならちゃんと楽しめそう、と思いながら電車を降りて。
駅前は、紅葉を見に来た人たちでいっぱいで。
はぐれないように差し出されたその手を取って、貸してくれた赤いマフラーを落とさないようにしながら、うろな高原へと歩いていく。
海がこんな面白い(笑)ことを教える訳がないので、ちゃんとデートなんだと知らない空ちゃん(笑)
とにあ様のURONA・あ・らかるとより
https://book1.adouzi.eu.org/n8162bq/
鎮くん、隆維くん
弥塚泉様のばかばっかり!より
https://book1.adouzi.eu.org/n1801br/
ベーカリー・シャーロック、蓮華さん
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