11/4 僕は君でもいいんだけど
微BL
苦手な方はプラウザバックでお戻りください
こんなハズじゃなかったんですが〜
「ーーそれらの問題は一先ず、私に預けてくださいませんか?」
髪を揺らし、首を傾げてそう提案したラタリアに。
イルは視線を向けると、にっこりと頷いた。
「勿論。全員の事に関して、ならね」
「では」
「うん。これはね、フィル君と僕との間の事だから。幾らラタリア様でも……、譲れないなぁ♪」
「…………」
やんわり肯定と否定をしてみせるイルに、微笑んだままラタリアは小さく吐息を溢し。
にっこり、笑みを満全にして呟く。
「貴方の事ですから。彼の記憶をいじったのでしょう? 「それなら」、何の問題もないと思いますが?」
「僕に視させたんだから、記憶操作は織り込み済みでしょ? 結果が問題じゃないんだよね。それ以前の、フィル君の行動が問題なんだから☆」
ラタリア様だって分かってるでしょ、と。くすぅり、イルが弧を描く唇で微笑む(わらう)。
「…………(ふふ)」
にっこりと柔らかに微笑む天使と、ニヤリと妖しく嗤う悪魔が見つめ合う。
「…………」
その光景を見やり。手を額に押し当ててはぁーっと、長々重いため息を吐き出したフィルは。
他の仲間三人のじっとりとした視線を浴びながら、半端ヤケクソ気味に口を開いた。
「お前らがどーこー言ってても仕方ねぇだろうがっ。もういいっつーの、面倒くせぇ。俺が了承すりゃいーんだろっ!」
がりがりと頭を掻きながら、これでもかと嫌そうな顔と声で吐き捨てる。
フィルのその言葉を聞き終える前に、イルはニンヤリとその唇を歪ませ、ラタリアはやれやれと言った感じで一つ息を吐いた。
「……フィル。何も自ら窮地に飛び込まなくても」
「そーゆーんじゃねぇし。大体、こんな事してる場合じゃねーだろ」
言いながらフィルが顎をしゃくって促した先には、意識の戻っていない汐がいる。それを傷ましそうに見つめてから目を伏せ、暫くしてから再びその瞳をそっと開くと、ラタリアは静かに呟いた。
「ーーそうですね。今は、言い争っている場合ではありません。汐の意識を呼び戻し、早急に太陽達の元へ返さなければ」
サラリとした砂浜の上を、音もなく進みながらラタリアが尋ねる。
「リカ、レオ。汐の状態はどうですか?」
「呼吸、心拍共に身体的異常は特になさそうですわ。身体が冷えているのが心配ですけれど」
「目覚める気配はないけどね。アプリ姉さんがいないのに、どうやって戻すの?」
アプリが張っていったシャボンの中、汐に寄り添う金瞳の双子が其々に告げる。
一般的な医療知識としてではあるが、目に見える異常はない事にそっと安堵の息を吐き、並んで歩いていたフィルと共にシャボンの膜の縁に立つ。
手を近付けると膜が揺らぎ、招き入れるように口を開く。アプリが許可した者のみが開く事を許されたその入り口が。
「イルに頼む、という方法もありますがーー」
「んなもん却下だ却下っ! ナニ要求されるか分かったモンじゃねーっつの!!」
「フィル君相手に貸しを作るのも面白いけど、今は一つ(貸しが)あるからね。必要ないかなぁ。ーーラタリア様が、って言うなら考えるけど♪」
レオの問いにふむ、と顎に手を添え呟いたラタリアに、真逆の反応言動を返すフィルとイル。
「ーー全く。お師匠様の戯れも困ったものですわね。ラタリア様まで手にかけようとするだなんて」
「フィル兄イジって遊んでるだけじゃない? いちいち反応するから面白いんでしょ」
その傍らでやれやれとため息を溢すリカとレオ。
そんな二人にニンヤリと目を細め。
イルは音もなくレオの側に一足飛びで歩み寄ると、小さな顎を掬って囁いた。
「僕は別に、エリュレオ(きみ)でもいいんだけど?」
「なっ!?」
イルの言葉に声を上げ、銀のツインテールをそぞろに振り乱し殺気を露わにするリカ。しかし今ここに居られる術を教えてくれた師匠に歯向かうなど、主人を守り仕えてきた絶対君主制が身体に染み付いているリカに出来うる筈もなく。
金と薔薇の視線が絡み合う中、理性がある故隣でワナワナと身を震わせながら、堪えようとして堪えきれず。
一人遅れて来た為に、捕らえた敵を牢屋に押し込む作業を言い渡されていたロパジェにその矛先が向けられ。
「出来れば誰か手伝、ギャーーッ!?」
無意識に閃いた手から放たれた糸が、作業に勤しむロパジェを空に吊り下げた。
「ちょ、は!? なっ……、なんでこうなるんだよおおぉーーっ!?」
勿論、宙吊りでびよんびよんやっているロパジェに誰も気付く事なく、事態は進んでいく。
「……僕には、なんのメリットもないと思うんだけど?」
互いの唇が触れそうな時になって漸く、レオが口を開く。
「そうかなぁ? キモチヨクなれるんだから、メリットはあると思うなぁ♪」
くすりと告げるイルに、レオもにこりと笑みを浮かべる。
「僕を傷モノにしたら、姉さんが黙ってないよ? それにーー」
双子の姉が自分にメロメロなのを知っている為そう呟いて、一旦言葉を切ると瞳を細め、静かにその先を紡ぐ。
「僕の全てはフォアリアと姉さんのものだから。二人の事以外で、誰かに頼るなんて事しないよ」
「ふぅん?」
「あ。でも」
「…………!!!」
薔薇色の髪を揺らして小首を傾げるイルの唇に何を思ったのか自ら口付けてから、続ける。
傍らで、イルを亡き者にしようとその手を伸ばしかけているリカがいるのを知りながら。
「これ(キス)くらい挨拶だから別にいいけど。ーー二人に手出ししないでね」
ディープだった割にその余韻を微塵も感じさせずに、綺麗な笑顔でレオが告げる。
「しっかりしてるなぁ、レオ君ってば☆ 先に彼女を堕とすべきだったねぇ」
釘刺されちゃった☆ というものの、何処か楽しげに笑うイル。
ーーぷっつん。
何処かで何か切れた音が、リカの頭の中だけで響いた。
「〜〜〜〜っっ!! お・師・匠・様ああぁ〜〜〜〜っ!!!!!」
ずもももも、地鳴りを起こさせそうな声音で叫んで、ギラリと金瞳を光らせてイルに襲い掛かるリカ。
勢い良く振り下ろされた指先から見えない糸が空を駆けるが、イルは笑いながらそれらを容易く躱し。
「リカはホンット、レオの事になると見境いなくなるよね〜♪ 付け入るには十分過ぎる隙だって、言ってるのに☆」
「ソレと、コレとはっ、別物ですわぁっ! 私のレオを傷付けるモノは、たとえお師匠様でも、許せませんわ!!」
逃がしませんわ! ドタバタとその場から遠ざかっていくリカとイルを見送りながら。
「……何やってんだよ、彼奴ら」
「あはは……」
今度はフィルとラタリアが、やれやれと肩を竦めたのだった。
早く汐を助けろよ、て話ですね
すみません^^;
イルがいるとどうしても、エロかBLにしかならないんで…(苦笑)
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
彼、としてですが賀川さん
お借りしました
お気付きの点等ありましたら、お気軽に




