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11/4 俺様に、彼奴(チェーイールー)みたいな趣味は、ねぇんだからなっ

若干のBL要素が含まれます

苦手な方はプラウザバックでお戻りください




 いってえぇーーっ!


 海の中。

 がぼごぼと泡を吐きながら。

 フィルは声にならない叫び(こえ)を発し、堪えきれずに悶絶した。


 着水する時の衝撃でもなく。

 あまりの海水の冷たさでもなく。


 岩肌に擦り上げられた手足の、えぐり込まれるかのような痛みは、早々耐えられるモノではなかった。

 手足に走ったビリッとした痛みは持続したままザラザラとした舌先で、傷口をザリザリと削られているかのような痛烈な感覚が四肢より全身に広がっていく。


「っ!?」


 暫し痛みにもんどりうっていたものの、ハッと何かに気付いて勢い良く浮上すると。


「ぷぁっ! ーールドッ」


 海面から頭を出すやいなや、相棒の名を叫ぶフィル。

 それにすぐ様ククッと鳴声が返り、バサリとした羽ばたき音を耳にしながら。


「くそ、離しちまったっ! 何処だ、かがわぁ!」


 うねる荒波に揉まれ、傷の痛みに体格差の違いもあって、折角掴んだものを手放してしまった。

 断崖からは離れている為、意識のないまま岩肌に打ち付けられているーー、なんて事が無さそうなのはせめてもの救いだが。

 荒い波間をかいくぐり、名を呼び周囲を見渡した所で、意味はないと解っているが。


 あんなすり切れズタボロの状態で、意識が戻る訳もない。

 寧ろ、冬の冷たい海の中に投げ出されて、意識はより深く沈み込み、状況は更に悪くなる一方だろう。


「……くそっ!」


 一刻も早く探しだし、岸に上げなければ。

 そう思えど波は荒く、海中に長く潜っている事も、海面を闇雲に動き回る事も得策ではない。

 闇を織り込んだような漆黒の夜。

 自分フィルのように白髪ならば目印にでもなるだろうが、賀川の髪は生憎、周囲と同じく漆いし黒。

 いくら目はいいのだとはいえ、見分けるのは至難の技だ。

 賀川が意識を取り戻すーーなど、ゼロに等しく。

 目印も無しに焦りのまま、迂闊に動くなどあまりに愚行だ。


 何かないのか。何か。なにか。

 賀川あいつを見つける為の手立てはーー!!


 海面に、海中に。

 隈なく目を走らせながら思考する、フィルのその「耳」に。


『だいじょうぶだよ』


 聞こえたのはーー

 いや。心に直接響とどいたのは。

 小さな優しいうしおの声。


 セキ? フィルがそう思った時には、フィルの耳に付けられた、夜輝石のカフスから、溢れんばかりの光が零れ。

 夜の闇間に、一本の筋を描きだすと。

 瞬間、目映いばかりの光が迸り、フィルの目を灼く。


 夏の日、汐が贈りし、夜輝石の一欠片。

 想いびと雪姫ユキとお揃いの。

 双子の雫石、その片割れに。


 光が集まり、賀川が共に下げていた銀盤が光量を増幅し、夜の闇の中。

 そこに。

 朝の、陽の光が射し込んだ。


 その存在を、知らしめるかのように。


「ハッデだなぁ、おい」


 その様にニヤリと口角を上げて呟き。

 大鷲の姿のまま遠回りして側に来たルドの足に掴まりながら、フィルは賀川がいるだろうそこを目指して泳ぎだした。




「……はぁ、はぁ。……よ、っと」


 ルドの手を借り、引き摺りながらもなんとか賀川を、岸に上げる事が出来たフィル。


「〈K〉 カノ」

 炬の炎


 ルーンの言語を呟いて、びしょ濡れの二人の服を乾かす。

 薄く二人の周りに炎の熱を纏わせたと共に、ジュッと音が立って水気が飛ぶ。

 砂のザラつきや張り付く感じは不快だが、風邪をひくより遥かにマシだ。

 なんとなく服をパタパタと叩きながら、横たえた賀川の側に寄り。


「……おい。おい、賀川っ!」


 頰をべしべしとしながら、呼びかけるが。

 その瞳は固く閉ざされ、グッタリとしたまま反応を示さない。


「賀川っ、起きろっての!」


 襟元を掴んでガクガクしてみるものの、やはり反応は返ってこない。

 先程の陽の光は、フィルが賀川を捕獲した所でなりを潜めた為、その顔色を伺う事は出来ない。

 嫌な予感が這い上がる。

 そっと、砂地に横たえ直した賀川の、左胸に耳を、口元に手を掲げるフィルは。


「おいおい、マジかよ」


 ハッとして身を起こすと、背筋を冷たいモノが滑り落ちていく、その感覚を押し隠すかのように、ははっと渇いた笑みをのせて告げ。


「ルドッ、アプリ呼んで来いっ!!」


 鋭く指示を出し羽音が遠ざかって行くのを耳にしながら、気道を確保、胸板をはだけさせた所で。


 ふいに。

 はたと気付いて動きを止め。


「…………」


 賀川の、「そこ」をこれでもかと凝視して。

 生気なくグッタリとしているその様は、男のクセに妙な艶か色が醸し出され、別の感覚に喉を鳴らすが、そんな自分にギョッとして、尻込み後退りしかけたフィルは。

 寸前でギギギと、音がしそうな形相で踏み留まり、「これは人命救助、人命救助の為仕方なくっ」と、暗示のように唱え。


「……俺様に、彼奴チェーイールーみたいな趣味は、ねぇんだからな……っ!」


 誰にともなく、弁明するかのように呟いて。

 一年に一度孤児院で催される、「アプリちゃんの正しい心臓マッサージと人工呼吸法」を思い出しながら。

 確か、三十対二を五回繰り返すんだったよな……と呟きながら、三十回の心臓マッサージをした後、意を決したようにゴクリと唾を飲み込んでから。

 (たった)二回の、人工呼吸をする為に。


 賀川おとこの、その冷たい唇に。

 自分の、それを。

 フィルはそろりと重ねたのだった。



うちゅーな回!でしたっ///


いやぁ、随分派手になったなぁ。最初の頃に比べると…

まぁいいか


桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より

http://nk.syosetu.com/n2532br/

賀川さん、雪姫ちゃん(お名前)


お借りしております

継続お借り中です

おかしな点等ありましたら、お気軽にご連絡くださいませ


ちまちまですみませんが、続き頑張ってますんでー

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