11/4 まだ、終わってねーみてぇだからな
久々にあげっ!
ざあぁっ、と。
燃え盛る黒炎をまるで、風花のように景色に散らして。
夜の闇間に白塩の花を舞い降らせながら、フィルは砂地に横たわる汐の元へとたどり着き。
そっと、小さな身体を抱き寄せて。
その確かな重みを確認し、ほっと息を吐いた。
それと共に、微かな夜輝石の瞬きをキーに、脳裏に流れ込んできたイメージにハッとして。
「……汐?」
蒼の瞳を瞬いて、抱く少女をぱちくりと見下ろすフィル。
敵の手からなんとか奪取した汐は、敵が施したらしい暗示にかかったままだ。
汐の意識はまだ現実世界にはなく、深い微睡みの淵にいる。
汐が持つ〈視る力〉ーー
それに加え夜輝石の意思の力が合わさって、同じくするモノを持つ自分に汐が視ている〈幻想〉を伝え見せたのだろう。
夢は曖昧で、現実と仮想が狭間で混ざり合う場所。
更に海辺を覆うように張られていた結界や転送用の陣の残滓、天狗仮面や傘次郎の妖力やカルサムの気、リズの堕天使の力にアプリの悪魔の力。所々に散りばめられていた魔導具、引き起こしたルーンやシヴァの力などなど、不可思議が現実に現在も進行形で干渉し続けている事も相まって、同調が起こりやすい状況を意図せず作り出したのだろうと考えるのが自然だ。
何が起こったとしても不思議ではない、その状況下に未だ尚自分達はいるのだから。
「にしたってありゃ一体、どーゆー状況なんだっての」
ぼやいて頭を掻くフィルの耳に。
「なんとか、なんとか。終わったみたい〜? フィルフィルは、フィルフィルは。生きてるのかな〜?」
聞き慣れた独特の口調と、次いでバサリと響いた羽音に。
「アプリ、ルド」
名を呼び声のした方を振り返ると。
虹色の、巨大なシャボン玉を引き連れて。
発動していた力を封印し何時もの状態に戻ったアプリが、天狗仮面(+傘次郎)やカルサム、その他三人の獣面を被る者達を伴い此方に駆けて来た所だった。
小型化した鷲ルドを肩に抱き寄せた汐をお姫様抱っこして立ち上がると、フィルもアプリの元へと赴く。
「ありゃりゃ、ありゃりゃ〜。フィルフィル今回もボロボロだね〜☆」
歩み寄って来たフィルを改めて見やり。
そのズタボロぶりについ、といった感じでアプリが溢し。
「また随分と、無茶をしたようであるな」
「旦那やおだんご娘の口振りからして、毎度の事みたいでやんすがねぇ」
「……修行が足らん」
天狗仮面や傘次郎、カルサムに口々にその様な事を告げられるが、蒼の瞳をついと向けて其々のナリを順繰りに見やり、
「そりゃお互い様だろーがよ」
フィルは飄々と口角の端を上げて、ニヤリと笑い返したのだった。
「それじゃ、それじゃ。後で何言われるか分かんないから〜。フィルフィルの、フィルフィルの。集中治療開始だからね〜?」
気合いを入れ直してもうひと仕事!と、シャボン玉を作り出すラッパを握ったアプリを遮る様に。
「集中治療ってん(そん)なら、汐を先頼む」
早口で告げて押し付けるように、腕の中の汐をアプリに抱きかかえさせるフィル。
「え、え? はわ、はわわ〜っ!?」
フィルを癒す気満々だったアプリは注意を逸らされた上、似たような背格好の汐をいきなり抱きかかえさせられ、突如掛かった重みに慌ててバランスを崩しかける。
「あ、危なっ」
「っ! 危ナイっすよ!」
それを支えたのは獣面の二人、YとB。
もう一人の獣面Cは、他の獣面達が羽織っていたローブを二着程拝借してきて砂地に敷き、そこに汐を横たわせる手助けをする。
それを気配だけで感じながら、フィルは探るようにある一点へと視線を向けて。
「まだ、終わってねーみてぇだからな。どーにも気になってしょーがねぇ事があんだよ」
闇の中、その先を霞み見るようにしながら呟いた。
なんとか皆さん合流〜!です
足りないヒトがいますケド…
ホント長いんで、そろそろ終わらせないとなんですけどね、戦闘回
ぼちぼち頑張りますー
三衣 千月様のうろな天狗仮面の秘密より
http://nk.syosetu.com/n9558bq/
天狗仮面、傘次郎君
朝陽真夜様の悪魔で、天使ですから。inうろな町より
http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/
リズちゃん(お名前)
お借りしてます
おかしな点等ありましたらお気軽に




