11/4 灼き尽くせ
お待たせしましたっ
超〜久々更新ですが(汗)
お読み頂けましたら幸いです〜♪
「なんっなんだよ、ソイツはぁっ!!」
突如あがった声に。
面倒臭そうにちろりと、フィルが視線を走らせると。
視線を向けるその先、金髪女が尚もその紅い唇から絞り出すかのように言の葉を紡ぐ。
「……ありえない……〈そんな〉こと……っ!」
フィルを……いや、その後ろにいる〈シヴァ〉を見やって。
拳を握って力を込めるが、砂に足を取られたとでもいうように、足元がおぼつかずふらりと片足を後退させながら。
ぽつり、ぽつりと女が音を吐く。
「ありえる筈が……、ないじゃないか……。ソイツが…………だ、なんて…………」
海風に金の髪が、目深に被ったフードの裾がなぶられ。
晒された白灰のその目が、動揺するかのように揺れ動く。
金髪女の副産物である力、「垣間見る」その力で、見てしまったのは〈シヴァ〉の〈真実〉。
かのモノが求めている場所、〈至れる鍵〉である〈創詠・継承者〉と、質を同じくするという〈事実〉。
「……ありえない…………ありえないよっ」
うわ言のように呟く女は、赤い紅い光の中、金の髪を振り乱して絶叫する。
「ソイツが〈そう〉だと言うならっ! それなら……っ、それなら、ーー〈永遠〉はっ!!」
「っ!? ーー『保護』っ!」
金髪女のその言葉を、遮るように。
汐の胸に下がる夜輝石と、自分の耳を飾る夜輝石を媒介に。
内と外の隔たりを、突破するかのように奇跡的に術の網目をくぐり抜けた、愛器である長針とを繋げて。
守りである「〈Z〉 アルジズ」保護を、未だ眠りの淵にいる汐に咄嗟に施すフィル。
「!」
外敵を寄せ付けはしない薄膜に、弾かれたように。
金髪女がそこから瞬時に飛び退る。
上がった砂煙がちらちらと舞う中、後方に下がり鋭い視線を向けてくる金髪女に、フィルは飄々とした態度を崩さず、
「ーー何を〈見た〉のか知らねぇが。それ以上言わせてやる気はねーぞ? ーーシヴァ」
ニヤリとその口角を上げ、己の属であるモノの名を招び。
自らの力を膨らませながら言い放った。
「ーー灼き尽くせ」
その言葉が、紡がれた瞬間。
灼けつくような黒炎が、少年と少女以外のそこにあるもの全てを。
勢い良く飲み込んだ。
「ーーむ?」
何かが急速に近付いてくるーー
シャボン玉を作る為の小筒から口を離した瞬間に、その気配を天狗仮面が感じ取ったと共に。
『っ!?』
本能的に悪寒を感じ、防衛体制を取ろうとしたものの。
「ギャーーッ!? なんナンっすかぁ、コレっ!?」
「はわわっ、はわわ〜っ!?」
「うわわっ!? ーーって、あ、れ……?」
同じく何某かの気配を感じ取ったBとアプリが、いきなり身体を覆った黒炎に驚きながら叫び、Bと同じく驚いたものの何かに気付いてYは、そこでそのまま小首を傾げた。
「熱く……ない?」
砂地を駆け走ってきた黒い炎に、確かに灼かれている両の手をぼんやりと見つめながら。
わーわーと駆け回っているBに苦笑し、
「あぁっ、兄貴も燃えてるでやんすよっ!?」
慌てながら告げてくる傘次郎の言葉に、自身の手を焦がす黒炎に目を落としながら。
「おそらく、であるが。先程感じた大きな力ーー。あれは我らの、仲間である者の術なのであろう。我らを傷付けぬ点から見ても、それは明らかなのである」
そうであろう? その意を込めた目を、Cを支えながら静かに座す、少年侍に向ける天狗仮面。
「左様。他者に気取られるなど、まだまだ未熟な術ではあるが、な。フィル(あやつ)にしてみれば上々、といった所だろう」
炎に包まれるCに目を落とし、そこから地を疾りアプリのシャボン玉に捕らえられている他の獣面達も、シャボン玉ごと灼きながら張り巡らされた広大な転送陣の線上を、縫うように広がりいく黒炎を目で追いながらカルサムが呟く。
厳しい事を言っている割にカルサムのその声音は微かに。何処か嬉しそうに弾んで聞こえ。
大きすぎる力を不釣り合いな小さな身体の内に秘める、その負荷は如何程のものであろうかとの危惧が脳裏を過ぎったが、それ以上は聞かず。
浄化を目的とした黒炎のようであるし、このまま何事もなく、終息に向かってくれると良いのだが……と思いながら。
天狗仮面は、虹が彩り踊るうろな町の夜空をそっと。
地上から見上げたのだった。
金髪女は「ナニ」を視たのか…
そろそろ終盤とつにゅーですっ
やっとここまでこれました〜
三衣 千月様のうろな天狗仮面の秘密より
http://nk.syosetu.com/n9558bq/
天狗仮面、傘次郎君
お借りしております
継続お借り中です
おかしな点等ありましたら、お気軽にご連絡くださいませ
さて
フィル君の方にまた戻ると思いますが
最後の諸々、片付けていこうと思いますー




