オープン初日! 第三ラウンド・夕
昼のピークも終わり、店内が比較的空いてきた事もあって、隆維君天音ちゃん、宗一郎君マント君の順で二人ずつ休憩にいかせる。
一人で食事を取らせたりとかは、しない。必ず二人以上で。これ家訓。
しかし、その時言った一言により、海は自分の首を締める事となった。
「今日初日だけど生憎の雨だし、好きなモン作ってやんよ〜?」
海のその言葉に、遠慮しつつも、
「なにがいいんだろう?」
「えっと……」
うーんと悩む宗一郎君をマント君が、天音ちゃんを隆維君が各々に止め。
「ふはははは! 地に堕ちたな、ベルフェの女よ。その言葉を待っていた!」
「コキ使われるの目に見えてるし、これくらいはないと。こんな機会、滅多にないし」
忙しくて通常に戻っていた言葉を芝居がかったものに復活させ、マントを翻してそう言う怪人カラスマント君こと鎮君と、青の目をきらりとさせた隆維君がそう告げ、全く同じ事を口にした。
『海ねぇ特製賄いスペシャルで!』
どうやら、今日は海に勝機はないらしい。
残したらタダじゃおかねぇからな! と捨て台詞を残して、三時のおやつ時に出すデザートの準備に追われながら、黙々と賄いスペシャルを作る海なのだった。
自分でまいたタネだ。責任持って閉店まで、食材が持つようにはするだろう。
うん。その辺は心配していない。
遅めの昼食を終えて帰ってきた子達が、「宿題一緒にやったら早く終わるよ」とか「晴れた日にかき氷屋さんのお手伝いしよ? シロップかけっこするの、きっと楽しいよ」とかを汐が芹香ちゃんと鈴音ちゃんに言っていたのだと話していた。
やっぱり商売人の娘だねぇ、と思ってにっこりする。
「子供達、迎えに来ました。叔父の三春です」
六時前。夜の戦場と化す少し前のその時間に、宗一郎君達の保護者さんが彼らを迎えにやって来た。
独特の匂いを、纏っている人。絵かきさんかな?
「まぁどうも。大切なお子さん達をお借りしてしまって」
「いえ」
ぺこり頭を下げると、言葉少なに三春さん。
「宗一郎君、天音ちゃん、お迎えの方みえたからあがってー。今日はありがとうね」
「叔父さん」
「鈴音、迎えに行ってくる」
声に気付いて、宗一郎君と天音ちゃんが此方にかけてくる。
そのまま鈴音ちゃんを家の方に迎えに行った天音ちゃんと、ありがとうございました、と言って頭を下げる宗一郎君にまたよろしくねと呟いて、手土産を持たせる。
今日出ていたデザートの内二つ、〈海特製濃厚マンゴープリン〉と〈夏フルーツのせミニタルト〉だ。
「よかったら味見してね。それから、ここに食べに来てくれたら嬉しいな。ご家族さんと一緒にね」
にっこりしてそう言うと、ありがとうございます、また来ますと言って、戻ってきた天音ちゃん鈴音ちゃんと一緒に、山辺さん達家族は帰っていった。
「君達はどうする〜? 明日大会なんでしょ〜?」
ついでに鎮君と隆維君に聞いてみると、近いしもうちょっと、と言ってくれたので遠慮なく甘えておく。
これからの時間、男手あると助かるしね。
そして始まる、夜の戦い。
「〈空豆とベーコンの夏サラダ〉!」
「あいよっ」
「〈カリカリ手羽先〉と〈トマトとツナの卵のっけ〉!」
「ほいよっ」
と、オーダーそばから出していく海。
まぁ、昼程じゃないんだけどね。晩御飯食べて帰ろうか〜という感じのお客さん達が多いから、比較的のんびりめだし。晴れてたら、まだまだ泳ぐぜ〜なんてのが大勢だから、アレだけど。
だけど、そうなると気を付けなきゃいけないのが、酔っ払いの類いが増える事。
「ダメですよ、おじさん。これ以上は」
「かてぇ〜こという、ひっく、なよぅそらちゃ〜ん」
もう出来上がってる。
ハメ外しすぎじゃないの、まったく。
別にいいんだけど、酔った勢いで、可愛い空に〈おさわり〉しよーとするヤツらが増えるのが困り者だわ。
かわすのに長けてるから、空も触らせないとはいえ、ね。 海の家はそんな店じゃないってのに。
一つ息を吐いて、酔っ払いをつまみ出そうと立ち上がったんだけど。
そんな必要、なかった。
「いいぞー、カラスマント!」
やんややんやとお客さんのヤジが飛ぶ中、鎮君――いやカラスマント君が、熱演していた。
「酔った地獄の使者どもよ! 今宵は銀の輿にて帰るがいい!」
ヒラリ、マントを翻してマント君がそう公言する中、ぺいっぺいっと豪腕なおっちゃん達の手によって、態度の悪い酔っ払いどもが店外へと放り出されていく。
「うむ。助力ご苦労」
腰に手を当ておっちゃん達を労う怪人カラスマント君に、盛大に拍手が贈られる。
なんだ。やっぱりアレ、流行りなんじゃない。
感心している中、沢山のカラスマントコールと共に、海の家ARIKAのオープン初日の夜は更けていった――……
鎮君の、一人勝ちという結果で。
オープン初日!やっと終わりました〜ふぅ〜(あと一話あげますが)
海の家ARIKAの一日は、こんな感じとなっております
ご来店時の、参考にどうぞ♪
出ている料理名などは、毎日大体違うものをと思ってますので、海の家にありそうなものを、お好きに色々出して頂けたらと思います
あ、でもゲテモノは作れませんのであしからず
とにあ様のURORA・あ・らかるとより
宗一郎君、鎮君、隆維君、天音ちゃん、引き続きお借りしております
芹香ちゃん、鈴音ちゃん、三春叔父さんも
おかしな点とうありましたら、ご連絡ください
一人勝ちされてしまった……(笑)




