オープン初日! 第二ラウンド・昼
まだ20日です〜
お昼時
「それじゃ、最終確認ね」
漁師のおっちゃん達がひけた後、昼までの若干余裕がある内に、皆で最終の確認をする。
「まず、お客さんには笑顔で」
「承った注文を繰り返す時ははっきりと」
「わからない事があったら、すぐ誰かに聞くこと。一人で解決しない」
「あと、ウチは前金制だから、メニューと値段、叩き込んでね」
「それと、海と浜を汚さない為に、器は返却制だから。テイクアウト組には必ず、忘れずに伝えてね」
太陽の言葉に、真剣な顔で、皆コクリと頷く。
調理場に集まっているのは、太陽、陸、海、空、渚、宗一郎君、鎮く……いや、怪人カラスマント、隆維君、天音ちゃんの総勢九人。
これから始まる戦いに、若干の緊張はあるものの、気合い十分に皆、良い表情をしている。
それに頷き返し、太陽は更に続ける。
「宗一郎君としず……マント君は、空と一緒に接客ね」
「隆維君と天音ちゃんは、あたしと一緒に串モノ担当。忙しくなってきたら、調理補助に回ってもらうから」
「陸は臨機応変に。今日は小雨降ってるから、渚は時間まで洗い場・清掃に気を配りつつ、指示お願いね」
皆各々に頷くが、最後の言葉に、宗一郎君と天音ちゃんが首を傾げる。
それに、にやりとして海が続ける。
「店内に五ヶ所、テラスに三ヶ所。壁に小型カメラが埋め込んであって、その映像が、渚の持ってるタブレットにいくよーになってんの♪ 渚は司令塔なのさぁ」
「あ、そうだ。だからこれ、渡しとかないとね」
海の説明に驚いている二人の前に、耳にかけるタイプの、スラリとしたインカムが差し出される。
渚の発明品だ。
「今日は晴れの日程じゃないだろうけど、ピーク時はやっぱり、混むからね。指示来たらその指示に従ってね」
そうして、接客組はエプロンの上から小銭入りポーチをさげ、調理組は三角きんを付け、皆耳にインカムを付け終え準備が整った所で。
「それじゃ今日一日、頑張るぞ――!」
『お――――っ!!』
皆で拳を振り上げ、気合いを入れ直した。
そして、昼。
戦いが始まった。
「追加オーダー! 〈夏野菜満載激辛カレー〉と〈カルビ丼〉頂きましたっ」
「こっちもオーダー! 〈キノコと豚肉のあんかけそうめん〉と〈オムライス〉!」
「オーダーです! 〈シャキシャキ根菜のサラダ麺〉、〈明太子スパ〉です!」
ピークを迎えた店内は、小雨にも関わらず結構な混雑ぶりである。
「〈黒ラーメン〉、〈ベーコンキャベツの温玉ナーラ〉、〈海鮮漬け丼〉おっまちぃ! オーダーりょ〜か〜い♪」
海がオーダーの了承をしつつ、出来た料理をカウンターへと出す。近くの人は自分取り。遠くの人には、マント君と宗一郎君が運んでいく。空は壁際テーブル席のお客さんからオーダー中。
『テラス席、新規二名。オーダー要』
「了解!」
『カウンター、一番二番グラス水半以下。お冷や要』「はいっ」
と、マント君と宗一郎君に渚から指示が出たようで、注文の品を配膳すると、マント君はそのまま外へ、宗一郎君は氷満載のポットを持ってカウンター端へ。
渚が常時あまり喋らないのは、司令塔のせいかもしれない。
「オーダー! 〈冷やし中華〉、〈盛り天丼〉頂きましたっ」
空のオーダーが飛ぶ中、海の調理補助をしている陸に太陽が囁く。
「鎮君、暑くないのかしらね? それとも、アレ最近の流行りなの?」
「……。そんなの、わかる訳ないでしょ。大体、そんな事言いたいんじゃないんでしょ」
飾り付けをしながら話す陸に、ごめんごめんと苦笑して太陽は続ける。
「鎮君は毎年の事だからいいとして、宗一郎君の事なんだけど。……彼、慣れてるわよね、なに気に」
「あぁ、その事。何言ってるの。彼、見た瞬間にしてやったり、って思ってたの、気付いてないとでも?」
「あれ? バレてたか」
「そんな事より、ちゃんと任された仕事やってよね、もぅ。忙しいんだから」
「はーいはいっと」
陸にじろりと睨まれて、慌てて退散する太陽。
「さぁて。こっちも本腰いれますか!」
気合いを入れ直し、窓に面した壁際で四苦八苦している天音ちゃんと隆維君の元へと、太陽は舞い戻るのだった。
「フランクフルト〜」
「焼きもろこし〜!」
「あぁえぇと……ちょっと待ってね」
眼下からの子供達の声に、天音ちゃんが慌てる。
「天音。その前に会計だって」
そんな天音ちゃんを、串をひっくり返しながら隆維君がさり気なくフォローする。
調理場の窓際。
鉄板が並べられたそこは、串モノの簡易販売所となっている。
串モノを求めるお客さん達が、壁に添って並んでいる。
ちょっとした出店状態だ。
その筆頭は小さな子供の兄妹。
おつかいらしく、二本ずつ注文している。
三百円ずつな、と言って小さな手から隆維君がお金をもらっている間に、天音ちゃんが最後の仕上げに串をくるりとして、二つずつペーパーに包み、差し出す。
「熱いから気を付けてね」
「「ありがとーお兄ちゃん」」
そんな天音ちゃんに兄妹はにっこりとお礼を言って、手を繋いで去っていった。
うーん、惜しい。
子供ちゃん達には、このピンクのオーラは伝わらなかったか〜。
くすり、苦笑して太陽は二人を見守る。
「牛串くださ〜い。塩胡椒で二つ」
と、次の注文が入る。
それにはいは〜いと言って太陽が会計を済ませ、三つある鉄板の内の一つで、ヘラを手に調理を始める。
「お客さんの相手しながらでいいから、見ててね」
隆維君と天音ちゃんにさり気なく声をかけ、油をひいた鉄板に牛肉を四枚、投入する。するとジュワワ、と良い音が響く。 そのまま焼きながら塩胡椒をふりかけ、四枚同時に手早く返すと、その面にも塩胡椒をふりかける。
ウチの牛串は、焼いてからミルフィーユ状に折り畳み、そこに一本串を刺す。
だから焼きすぎても、焼けなさすぎてもいけない。
焼き時間と、タイミングが命なのである。
「せあっ!」
声を上げ、四枚同時に折り畳み、すかさず串を刺して、二本同時にお客様の元へ。
「牛串塩胡椒二本、おまち!」
それに、おお〜! と声が上がる。
まんざらでもない太陽さんなのであった。
海の家での戦いは、まだまだ続く。
昼時は忙しい〜
とにあ様の
7/20 海開きだ! お手伝いだ! 突撃だ!
の続きみたいになっております
宗一郎君、鎮君、隆維君、天音ちゃんお借りしてます!
おかしな点とうありましたら、ご連絡ください
まだまだ20日が続きます〜




