11/4 浜辺での戦闘その2 天狗仮面と少年翁3
ちょ〜う、久々更新!(爆)六ヶ月ぶりって…
ですが、何事もなかったかのようにいっちゃいますよっ
兎に角、上げないと進まないので…(汗)
せめてストックある分だけでも、と
週一か、二週に一回とかだと思いますが
また止まるのは、確実なんですけどね…
あぁ、時間と猶予と予算?が欲しいです、ホントにっ(コレ、わかる人いるんだろうか…)
暫しの間、かもですが
以下よりお楽しみ頂ければ幸いです!
赤の光が溢れんばかりに迸る、月星の光の届かない夜の浜辺。
少女のクスクスとした含み笑みが漏れ聞こえるなか波音が、静かに届き。
周りを取り囲む八体の泥人形達がゆっくりゆっくりと歩を進める。
その者達を見据えながらチャキリ、得物を構える天狗仮面とカルサムの手に力がこもる。
そんな中ザワリと気配が揺れ動き、後方から含みある、Lの声が響いてくる。
「そろそろイイ、かしらね?」
くすり。笑みを含んだその声が、歓喜を含む言葉を並べ。
赤の発光が、僅かに強くなった瞬間。
『っ!?』
背を預け合っていた天狗仮面とカルサムが、素早く左右に散じ。一瞬前まで二人がいたその場所を、夜闇に出来た赤色の線が高速で過ぎ去っていく。
硬質な、その欠片が。
Lの身体から生えた、棘を思わせる頭部の角。
それから造られた、握り拳大程の欠片達が此方に向かいすっ飛んでくる。
「兄貴っ!」
「くっ」
「む……」
それを躱した天狗仮面とカルサムだったが、周りは未だ泥人形達に囲まれた状態。
中心部分から散じた所で、今度は側近くへと自ら近寄る事になってしまった泥人形達の何れかに、その標的とされてしまう。
振り被るのすら苦労しそうな図太く重い腕だというのに、重さなどまるで感じていないかのように軽々と腕が振り上げられ。
元々の質量と重さ、重力に引かれ凄まじいスピードで、その剛腕が各々に向けて降下する。
『っ!』
間一髪の所で避け、飛び退いて距離を取る天狗仮面とカルサムだが、互いに円の端と端とに飛んでしまった為に、脇にいた泥人形に阻まれ二つに分断させられてしまう。
「潰しなさいっ!」
それにしまったと思う間もなく個々に分かれた事に嬉々とした、Lのそんな声が響き。
二手に分かれているとは思えない程の、礫の雨が泥人形に阻まれている二人を襲う。
飛来する礫をなんとか躱し、弾き、叩き落す天狗仮面とカルサム。しかし先程とは違い手狭になった事により、微かに対応が鈍り。
「兄貴っ!」
傘次郎の声が響く中、天狗仮面は唐草模様のマントを捉えられて砂地に引き倒され、足を掬い上げられたカルサムはそのまま、プランと宙吊りにされてしまい。
各々に迫る、四つの腕とLの礫攻撃。
しかし天狗仮面もカルサムもそれが己に炸裂するのを、ただ待っているような者達ではない。
すかさず回避行動へと転じる二人。
引き倒されたとはいえ、マントを掴まれたままではなかった天狗仮面はすぐ様起き上がり、攻撃の合間を縫うようにしてそこから走り出そうとした。
しかしーー
「っ、ぐぅ!?」
いきなりガッツリと、力を削り取られて息を詰め。
がばりと起き上がった状態で僅かに、その動きが止まり。
その機を逃さずに振り下ろされた、泥人形達の極太の腕が、意識持つ欠片が動けない天狗仮面に迫る。
天狗仮面の力を削り取ったのは、獣面達が重力負荷をかけていた際転送陣のその柱となって貰う為、陣より繋がりNの魔道具から生成された、糸とその手を繋がれていた為に繋がりを通じて力を吸い取られ引き起こされた事なのだが、今そんな事を気にしてる場合ではない。
「っ!」
ハッとした時には既に遅く。攻撃も防御も、最早間に合わないーー
「兄貴っ!」
しかし天狗仮面の異変を察して、傘次郎が自らの身を呈するようにして天狗仮面の眼前にその身を滑り込ませ。傘を開く。
「! 次郎ーー」
それに目を見張る天狗仮面だが。
ザアッという砂音を耳にして、驚いたようにその目を瞬く。
「ーーーー…………ありゃあ?」
暫し、衝撃が来るのを堪えるようにして身構え目を閉じていた傘次郎も、ボスボスという音が響いているのにも関わらず一向に衝撃が自らに与えられない事に、そぅっとその目を開き。
「……こいつぁ……まさか砂、でやんすか?」
所々穴あきがあるとはいえ自分達を覆う、小さな砂のドームを見回しながら呟く傘次郎に、
「どうやら、そのようである。後で、礼を言わねばなるまいな」
苦笑混じりに呟いて、小さく開いた穴から天狗仮面は視線を外側へと走らせる。
見やった先。
泥人形達と後方の獣面達四人の、調度その中間地点。
漆黒の外套を身に纏い互いにその手を繋ぎ合う、二人の戦友達がいる。
その内一人の、身長が三分の一に減っていた。
外套の裾がたわみ砂地に大きく広がり、背丈は似た様なものだった筈だが今は隣に立つ獣面Yの、膝ほどまでの高さしかない。
泥人形達はその一部が砂面に触れているのならば、切断或いは破壊されたその箇所を、砂を吸い上げ修復する事が出来る。
その逆も、また然り。
その身を削り砂中を通じて、自分達を守る防壁を張ってくれた事に感謝しながら、砂の壁が壊れてしまう前に傘次郎を振るい天狗仮面がそこから勢い良く飛び出し。
同じくして宙吊りの状態からはなんとか抜け出したカルサムと、示し合わせたかのようにまたその背を預け合い。
戦いの最中に身を躍らせる両者。
傷付き、血を流し、長期に渡り行われてきた戦闘でじわじわと蓄積され続けた疲労により、重く怠い身体。
それでも歯を食いしばりふらつく足を叱咤して、傘を刀を振るう二人。
飛んでくる礫を弾いて泥人形達に切り込み。
互いの位置を前後左右に入れ替えながら、果敢に攻撃を仕掛ける。
変則的な泥人形達の攻撃を、更に翻弄するように。
窮地にいる為か、その手捌き足捌きはより洗礼されたものとなった故の術。
しかし、見計らったように入れ込まれる礫の雨や泥人形達が時折見せる連携の取れた攻防に、なかなか決定打を打ち込めないでいた。
そもそも後方の獣面達と間近の泥人形達を同時に仕留めねば意味はないのだから、なんとかして道を切り開かねばならない。
思考を巡らせながら得物を振るう天狗仮面とカルサムに、三方向から同時に泥人形達のその腕が振り下ろされ。
『っ!』
三方の攻撃を間一髪の所で避け、飛び退き距離を取る天狗仮面とカルサム。だが。
カッ、コツン
降り立った先は、ざらりとした砂面ではなく、つるりとした硬質な盤面。
夜闇に妖しい赤の光をたゆらせる、円盤の上。
Oが自らの身体に張り付く赤き石より造りだした、円状の舞台。
盤上に上がった者を、死へと誘う血塗られたステージ。
『なっ!?』
後方でLがその口元に笑みを浮かべる中それに驚いている暇もなく、盤面は勢いよく泥人形達の元へ天狗仮面達を押し戻すようにせり上がり。
ほぼ、めちゃくちゃに動いているというのに、まるでそれを読んでいたかのように。
その鉄腕が天狗仮面に、傘次郎に、カルサム目掛け猛スピードで振り下ろされる。
『!』
それを、身を捩り或いは盤面を蹴ってスレスレの所で躱す両者だが。
「くっ!」
「ぬぅ!」
ドゴンという音と共に重力の乗った鉄腕に木っ端微塵に粉砕された円盤の欠片が、容赦なく牙を向き。回避行動を取った二人に豪雨のように降り注ぎ、深く浅く、傷を付けていく。
「逃げてばかりじゃ、勝ち目ないわよぉ?」
『っ!?』
それに加え更なるLの棘の攻撃が、間髪入れずに飛んでくる。
まだ、微かにそのカタチを残す幻影の集団も、泥人形達も、関係ないとでもいうように。
幻影を、泥人形を貫いたそこから、赤き棘が猛威を振るう。
『っぐぅ!』
「兄貴っ! カルサムの旦那!」
避けたと思った矢先。
泥人形達のその身体を突き破って、猛烈な勢いで迫る赤き弾丸が夜闇にキラリと光を弾き。
ザクリと深く抉るような、または身体を貫通し穴を開けるような傷を負わせていく。
それに息を詰め。
バランスを崩し、空を舞う身体。
そこに容赦ない棘礫の攻撃が、泥人形達の鉄拳が、鉄拳と挟み撃ちにするかのように円盤の攻撃が放たれ。
迫る棘と腕。下方から伸びる盤。
それを肌で、風を切る音で感じるが、抉られ貫かれた箇所は熱を帯びアツく、すぐ動かせる状態ではなく。
空を飛ばされる身体に合わせ唐草模様のマントが、着物の袖が袴の裾がバタバタとはためき。
耳を裂くような鋭い風の音を、届けてくる。
棘が、突き立てられる。
豪腕の攻撃に、下方から伸びた盤もろとも、砂地に叩き付けられる。
その刹那。
「させるかぁっ、てんだぃっ!!」
一声が響き、突如として。
そこに竜巻が発生する。
「なっ!?」
それに驚いた声を出すのはL。
先に行った賀川とフィルを追わせないよう、この辺り一帯を囲うようにして張られていた結界も風による防壁も解かれた事から、もうそれすら維持する事が出来なくなったのだと思っていたのだ。
相手を少々軽視してしまう所があるのがLの悪い癖だが、MやNにO、それにYやZは勿論、天狗仮面とカルサムが弱体化した等とは思っていない。
初見の時より疲弊しているだろうとは思っているが、寧ろ余計なモノに力を削がなくて良くなった分、身軽になっただろうと考え。
機を窺い隙を突いて、最後の一撃に勝負を賭けてくる気だと身構え。
ならば此方も、と一考した案を投じる。
竜巻により全ての攻撃をキャンセルされ、視界の遮られている今は、絶好の好機に他ならないのだから。
「……っルッテちゃん!」
「ちぃっ、ーーオーネッ!」
「……に、……ぃさ……まぁ」
「……(こくり)」
『ーーーーいくよ』
三つの声と一つの囁きが連なり、重なって。
夜を彩り迸る赤が、紅に緋に変じ。
力がうねり、泥人形達が囲う、小規模とはいえ未だ竜巻が発生しているその中心へと、Lの棘片が、Oの円盤が、繋がりを辿りNの力が。
渦の中心目指し駆ける。
それと同時に。
パンっ! と、まるで中から爆発したかのように竜巻が四方八方に弾け飛ぶ。
途端に暴風が吹き荒れ浜に向かい吹く海風も手伝って、その砂塵は砂嵐は、後方にいる獣面達にまで伸ばされごぅと吹き込んでいく。
「っ!」
「きゃあ!?」
「くっ、小賢しいマネを……っ」
いきなり襲いかかってきた暴風に、更に視界が妨げられる。
しかし自然の風とは違い棘片や円盤、流し込んだ力は繰り手の意思により操るモノ。暴風等もろともせず、目標に向かい距離を詰める。
行く手を阻む竜巻がなくなった事により、周りを取り囲む泥人形達が歩を進め、一斉にその腕を振り下ろす。
それと共に、砂面からは赤い盤が天を貫くかの如く上方へと伸び上がる。
飛来する棘雨の礫が迫る。
ーーその中心にいるのは、カルサムただ一人。
目を瞑り神経を尖らせ、風の音を大地の音を聞き。
凸凹に伸び上がる円盤上を飛び跳ね、腕を棘片を避けながら。
ーーーー…………!
一瞬、己に程近い風切り音がピタリと、止んだその時を見計らい。
「!? 馬鹿っ、そんなことしたらーー」
後方から、驚いたような少年の声が届いたと共に。
「円揺ーー砕抄」
一度鞘に戻した刀をしなやかに、そして鋭く抜き放ち。
同時に動きの止まった八体の、泥人形達が持つ魔道具を、切り裂き粉砕したのだった。
時、同じくして。
傘次郎が起こした竜巻により難を逃れた天狗仮面は、そのまま風に乗り闇間を縫うように空を疾駆し。
ふわりと。いや、寄せては返す波の如く、ひたりひたりと暴風に見舞われている獣面達に、空中から忍び寄り。
「にぃさ……、ぅえ……」
全くの偶然か、泥人形達の動きを良くする為の力を注ぐ事しか出来ないでいたMが、気配に気付いて囁く、が。
「なっ!?」
「いつの間に、ここまでーー」
なんとかその囁きを拾い、三人の獣面達が空を振り仰いだ時には、既に遅く。
「天狗流思編術ーー」
静かな、しかし朗とした青年の声が響き。
「波間流駆閃っ!」
この戦場にて編み出された、渾身の剣技が閃めく。
静かに流れる流水のようなそれは風の力を受けて波立ち、各々の合間を縫い時にその障壁を削り、津波の如く力強さで対象に襲いかかる。
それは、瞬く間程の一瞬の刻。
ひゅう、と。
冬の最中だというのに、天狗仮面のまるでその心根のような柔らかく温かな風が、面越しに頬を撫でたかと思った瞬間。
『あああぁぁっ!!』
響くNとLの叫びのなか全て同時に砕かれた、赤の欠片が闇夜にサラサラと空を舞い。
時同じくして砕かれた泥人形達の欠片と、崩れ砂へ土へと還った砂塵と共に。
微かな赤の光を溢しながら、儚く闇に溶け消え。
スタンと、四人の獣面達が立つ円陣の中央に降り立った天狗仮面が、さっと傘を払ったのと同時に。
バタバタと、四人の獣面達が力なくそこに倒れ伏し。
静かな波音が、周囲に響く。
暫し、息を殺し周囲を窺い。何事もなく流れる風に、波の音にふっ、と。同時に息を吐く天狗仮面とカルサムだったが。
「ザザっ!?」
突如上がった叫び声にハッとし、二人がそちらに視線を向ける中。
「……タダで……殺られたりなんか、しないっ、わよ……っ!」
意識を落とす間際。呪詛のように囁いて、Lは。
張り巡らされた陣の、線上に置かれた〈繋がり〉あるその手から、ズルリと力を流し込んだ。
微細なそれは、誰に気付かれる事もなく。
線上をゆるやに滑り出すのだったーー……
なんとか、一つの戦いが終了?ですかね
了承頂いたか定かじゃないので、もしかしたら若干改訂するかも、ですが
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
賀川さん(お名前)
三衣 千月様のうろな天狗仮面の秘密より
http://nk.syosetu.com/n9558bq/
天狗仮面、傘次郎君
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継続お借り中です
おかしな点等ありましたら、お気軽にご連絡くださいませ
さて、後一話挟んで放ったらかしのあの二人の話にいきますかー




