オープン初日! 第一ラウンド
7/20(土)くもり時々小雨
オープン日和! ……ってことはない生憎な天気だけど、海開きした海水浴場はまぁまぁ、賑わっている。
小雨がパラついてるのなんてなんのその。きゃははっと笑い声を上げてはしゃぐ子供達の声が届く。
海水浴場が賑わっていればいる程、売り上げが上がるのだから別段それについてはモンクはない、が。
「……おっちゃんばっかって、どーよ」
店内に群がるおっちゃん達を見て、ため息を溢す海。
カウンター十席、二人がけテーブル席五席、外の三人がけテラス席五席、見れども見れども、一仕事終えたばかりのおっちゃん達で埋め尽くされている。
漁師さん達である。
開店すると同時にお客さんが入ってくれるのはこの上なく嬉しいが、冷やかしが大半な気がしてならない。
いいんだけどね?
仕分け後の店に出せないような規格外品、タダで持ってきてくれたりするんだから。
渚では獲れないようなモン、持ってきてくれるんだから。
それはそれは、有り難いと思ってますよ?
……でもそれ殆ど、結局は漁師さん(アンタ)等の腹に収まるんだけどね〜。
「海! ため息付いてないで手、動かして!」
と、現実逃避していた海に、母太陽の声が飛ぶ。
それに、手を動かしてなかった訳ではない海は、ニヤリとしながらサラリと返す。
「わ〜かってるってぇ♪ はいよっ! 〈夏野菜満載激辛カレー〉と〈黒ラーメン〉お待ちぃ!」
ドンっとカウンターに料理の入った器を置くと、手の海を渡ってどんぶらこ、注文した人の所へと運ばれていく。
この辺は流石、わかってくれてて助かっている。
人の倍、いや三倍くらいはペロリと平らげてしまうのだから、これくらいやってもらわないと、此方が先にイってしまう。
「追加オーダー頂きました! 〈完熟トマトたっぷりのミートスパ〉と〈海ちゃんお手製パリふわハンバーグ〉!」
と、伝票を片手に注文の品を告げてくる空に、訝しげに告げる。
「はぁ? ハンバーグ(それ)、メニューに入ってないヤツじゃん?」
「そ、それが……」
そんな海に、困った表情をして空が言い澱んでいると、空の後方から大声が響く。
「かてぇことゆーなよぉ。俺とおめぇの仲だろぉ〜?」
ガハハと笑いながらそう言ってくるのは、漁師仲間から大将と呼ばれている、恰幅の良いおっちゃんだ。
顔中に生えた髭の間から、キラリとした白い歯が光っている。
渚共々、よくお世話になっている人物。
「あのねぇ大将。いくらあたしでも、メニューにないモンは……」
と、そこまで言いかけた海に、眼光をキラリと光らせて大将が問う。
「飲食店てのは、お客さん第一に考えてねぇといけねぇんだろ? それともなにか? おめぇにゃ作れねぇってのか?」
「う……」
「――おめぇの事だ。どーせ用意してんだろ?」
「そ、それはぁ……」
「ほれみろ。だったらとっとと出しやがれってんだ!」
「……〜〜っっ!! だぁもうっ! わーかったよ、わかりましたっ! 出せばいーんだろ、出せば!」
「最初っからそーいやぁいーんだよ」
ガッハッハと大将が笑う。
どうやら今年も、この勝負は大将の勝ちのようだ。
暫く大将を睨みぐぬぬと悔しがっていた海だったが、そんな事より身体を動かせ、という問答無用の視線を調理補助してくれている陸から投げられ、渋々冷蔵庫からハンバーグのタネを取り出し、調理に取りかかるのだった。
それを見て、まだまだだねぇ、と苦笑混じりに太陽は呟き。
海の家での戦いは、まだまだ始まったばかりだった。
オープンしました、海の家!
第一ラウンドは、おっちゃんの勝利に終わり……(笑)
まだまだ、戦いは続きます(笑)
皆さんのご来店、お待ちしております
海の家開店期間
7/20〜9/1(9/1はたぶん6時閉店)
朝9時〜夜10時まで(LO9時半)
その日仕入れたものはその日のうちに!
がモットーの為、夕飯以降は創作料理、おつまみ系メインとなります
ご来店の際はお早めに(笑)




