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11/4 浜辺での戦闘その2 天狗仮面と少年翁2


200話めでたい〜って事で☆





 ーーしてやれる事は、最早一つしかないーー


 静かに囁かれたその言葉が、嫌でも耳に響いてくる。

 その静けさが、声が。

 それしか方法はないのだと、はっきりと突き付けてくる。


 だがそれは、聞かずとも分かっていた事。

 もう元には戻せないのだという事も。

 泥人形(彼ら)を「救って」やるには、それだけしか、既に手段がない事も。


 カルサムが言っていたように彼らが還る身体は、とうにないのだろう。

 あまりにも人体とは違う泥人形それに、彼らは「馴染みすぎて」いるのだ。

 その魂が、人が人として宿しているその身体と、相違ない程に。いや。或いはそれ以上に、土塊でしかない筈のその人形ヒトガタへの、浸透定着率が良すぎるのだ。

 視界が、聴覚が。もし五感が閉ざされていたならば、人間と間違うくらいはしていたかもしれない。

 それ程までに、眼前の泥人形達は「ヒト」であった。


 しかし、それはある意味異質といえる。

 どう見ても土塊でしかないモノが、人と同じくする気配をその身に纏っているなどと。


 天狗仮面の相棒である傘次郎は、番傘に宿った「想い」が年月を経て力を宿し、妖怪へと転身した傘化けという妖怪だ。

 そんな風に、この世に生まれ落ちる妖怪達がいる事を知っている天狗仮面達は、物に魂が宿る事も意思を持つ事にも、特に抵抗はない。

 天狗仮面も天狗という人ならざる存在ゆえに、人に紛れ隠れ住む者、或いは助け合って共存している人外の者達がいるのは、寧ろ当たり前だと思っている。

 だからこそ、眼前の泥人形達のような魔道具に魂を宿している存在がいたとしても、不思議ではないと考える。


 しかし。

 しかしその存在がーー、泥人形として生まれて来たのではなく、無理矢理そこに魂を定着させられ、繰り手によって個人の意思に関係なく操られている、元人間だというのならば話は別だ。


 人を助ける事を心情にしている天狗仮面には、人の魂を弄ぶ行為など万死に値する、赦し難い行為だ。

 見た所、泥人形達を主で操っているのはいくばもいっていないような、幼女。

 獣面で顔が隠れている中見た目、体格だけでその年齢を推し測るのは難しいが、彼女メノの態度や言動、まわりの者達の様子から、拐われたうしおと同じ、いやそれより下のように天狗仮面には見えた。

 それ故善悪の区別もつかずにやっているという事も考えられるが、そこを差し引いたとしても、決して赦される行為ではない。


 人を貶め弄ぶなど。


 それに荷担している他の三人は、善悪の区別がつかない程子供ではないだろう。しかしそれを知っていて尚彼女に伝えていないのならば、その責は限りなく重い。


 しかし彼らにも、彼らの事情(正義)はあるのだろう。

 それは正義を貫く天狗仮面、わからなくもない事だ。

 しかしだからといって、誰かの犠牲の上に成る正義など、ありはしないのだ。

 そんなものの上に成り得た正義など、遠からず破錠し崩壊する。


 そんな事になる前に。

 止めてやるのが年長者としての務めだろう。


 同じく人ならざる存在として、泥人形(彼ら)を止めて(救って)やる事も。

 人界と人ならざるモノとの狭間にいる、限りなくならざるモノがわに近い彼らを救ってやる事は、もう天狗仮面達にしか出来ない事だ。

 戻してやる事が出来ないのならば、せめて。

 ヒトである内に、昇華させて(逝かせて)やるのが残された者達の、唯一の使命だ。


「……せめて、安らかに眠るのである」


 耳を裂くような豪風が響く中、囁くように天狗仮面は言葉を紡ぎ。

 傘次郎を持つ手に力を込めると、一声のもと力ある呼気を発した。


『喝っ!』


 僅かに風の力を帯びたその一喝は円状に広がり。迫る腕ごと眼前のものだけでなく、前後左右にいる泥人形達を一回り後方へと退かせた。


「なっ!?」

「くぅ!……まだ、余力を残してたのかっ」

「そんな……っ」


 それに、後方にいる獣面達から各々に声の上がる中、傘次郎を構え天狗仮面は言い放った。


「人を貶め弄ぶその行為、断じて許す訳にはいかぬ!」


 天狗仮面のその声に迷いを断ち切った、一本ピンと筋の通った強い意思の気配を感じて。

 そっと天狗仮面と背を預け合っているカルサムは、地に突き刺していた刀を引き抜くと、腰を低く逆手に構える。


 そんな天狗仮面と、カルサムを中心に。

 ピンとした静の空気が張りつめる。


 しかしそんな中でも、一度退かされた事などまるでなかったかのように平然と、十体の泥人形達はズシンズシンと地響きを轟かせながら歩み寄ってくる。

 その、すぐ後ろ。泥人形達同士の隙間から見え隠れする、周囲を囲ったまま一向に攻撃を仕掛けて来ない、漆黒の外套を纏った集団は。

 退かされた勢いそのままに泥人形達にその身体をすり抜けられ、姿の所々をボロリと欠損させながらも、まだ周囲を囲んでいた。


 戦闘が始まってすぐ増員された新たなその者達は、人の気配を帯びさせているとはいえ、その殆どが幻である幻影だったのだ。

 先程、重力空間に天狗仮面達はその身を捕らえられていた訳だが、おそらくこの幻影達はルッテOオーネの重力操作術の応用だろう。

 重力を操作して空間を歪ませ、幻影を造り出しているのだ。

 それならば今まで周囲を囲む事に専念し、攻撃を仕掛けて来なかった事にも納得がいく。

 幻影であれこの目に捉えているのだから僅かに注意を逸らす事くらいは出来るだろうが、所詮幻影は幻影。実体の無いものに実体があるものを傷付けさせる事など、出来はしないのだから。

 何か他に別の意図があるのかもしれないが、留まらせる為に幻影を作り上げていたのだろう。


 そんな者達の中にも未だ、綺麗な状態でいる者達がいる。

 十体の泥人形達の巨大化によってその輪から弾かれた二人ーーいや、一人と一体が。

 ちゃんと実体のあった、最初に現れた外套を纏った者達十二人の内の二人。

 天狗仮面とカルサムは知らないが、頭の男と共にいる金髪女がYワイヌビZザジィと呼んでいた者達だ。

 再び外套を羽織っているが、一度外套を脱ぎ去ったその時には、此方は泥人形の幻影をその身に纏っていたのだった。

 十体の泥人形を操るのは、一人では流石に難しい。

 それ故に操作をスムーズに行わせるサポート役として、繰り手と泥人形両者を中継する役が必要だった。

 それがYと、魔道具に取り込まれ半分泥人形化が進んでいるZだ。

 YとZは親友同士で繋がりが深く、半泥人形化しているZは、指令の伝達をさせるのにはもってこいの人材だったのだ。


 天狗仮面が二人の内一人が、カタチは人であっても既に、その外身は人ではないと感じた理由はこれだった。

 だが、半泥人形化したとはいえZはYと繋がりがある為に、まだ微かに人であるその意思を維持出来ていた。

 それ故に妙に統率の取れた、陣形を組む事が出来ていたのだった。


 それらを全て、理解した訳ではないだろうが、天狗仮面に傘次郎。背を預け合うカルサムは自らの信ずる思いのもと。

 一端は下がった泥人形達が各々に持つその魔道具の光を煌々と輝かせながら、ゆっくりゆっくり近付いて来るのを見据え。

 後方の獣面の幼女、Mメノがきょとりと彩るその目を瞬いている間に、天狗仮面は傘次郎の柄を握るその手に力を入れ直し。カルサムはスラリとその刀を構え。


「天狗流剣技三(散)の型ーー、壊突乱舞」

「ーー至閃回突」


 静かに囁くと敵に向かい、その足をしっかりと踏み切った。


さぁ、いっきまっすよー!

…てトコで終わってますね(苦笑)

自分トコ話なのに、天狗様にちょー頑張ってもらうつもりな作者…

宜しくお願いしますね、天狗様&傘次郎君!


三衣 千月様のうろな天狗仮面の秘密より

http://nk.syosetu.com/n9558bq/

天狗仮面、傘次郎君


お借りしております

継続お借り中です

おかしな点等ありましたら、お気軽にご連絡くださいませ


さてさてまた暫し色々触りつつ、続き頑張りますー

カメの歩みだと思いますけども…(汗)

また二ヶ月に一回、とかならないといいな〜…ふふ…


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