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11/4 浜辺での戦闘その3 黒と白の青少年3 白少年side +その後


若干時間が戻ります





(エイフュ)嬢の上から退いてくれるな?」


 カチリと銃口の先をフィルに突き付けながら、砂埃まみれの男が告げる。

 それに蒼の瞳を向けつつ、そっとEの上から下り。銃口を突き付けたまま、男がEに近付くのとは逆の方向にゆっくりと歩き、そこから遠ざかるフィル。

 自身がEの側へと寄り、フィルとの距離が十分に離れた所で、男が声を上げる。


「オーケー。そのままそこで一旦止まれ。おいE、エイフュ! ――ダ〜メだ、完璧にノビてるな」


 フィルに銃口と視線を向けたままEに声をかける男だが、返事のないのにやれやれとその肩を竦め。


「後衛から攻めるあたり、ただのボーイじゃあない訳だ。ま、男同士ここはサシでいくとするか。邪魔されるのもなんだしな」


 含み笑みを帯びさせて眼前のフィルを見る。


「裏切りは重罪――と言いたい所だが、お前さん俺達の仲間じゃないな。その外套、どうした?」

「人様の(モン)ボロボロにしてくれやがったから、頂戴したんだっつーの。ホントなら一式、新調する分くらいは欲しートコなんだがなぁ?」


 フィルが纏う外套を見て世間話でもするかのように訊ねてきた男に、フィルも同じく軽い感じで返す。それにくっと、獣面の奥で男が喉を鳴らす。


「そーかい。口の減らねぇガキだ。聞き方から教え込む必要がありそうだ、なっ!」


 言いながらすぃと肩口に逸らされた銃口の側面から突起が出現し、危険を感じて咄嗟に腰を落としたフィルの腕に槍の先がざくりと突き刺さり、ゼロ距離で極自然にトリガーが引かれる。


「ぅぐ!」


 刺され撃ち抜かれた腕の熱に気を取られている暇もなく、腰を落としたそこに重さの乗った蹴りが迫り。

 先とは逆に今度はフィルの方が、後方へと勢い良く蹴り飛ばされていく。

 風を切る音が耳を過ぎる。しかしそれが止めば自重によって落下し、地面に叩き付けられる。砂は柔らかだろうが、叩き付けられた瞬間に総射撃なんか食らったら、致命傷は避けられない。

 それに飛ばされているこの状況も、格好の的である事に変わりはない。


 Eが呼んでいた他の獣面の一人、(ディエンツ)であろうあの男の武器は、銃剣の中の一つである銃槍。


 銃(遠距離)と槍(近距離)を合わせ持つもの。


 夜闇にもキラリと光る、銃口が此方を狙っている。

 最低六発、防げないとマズい。

 まだ先がありこんな所で、深傷を負う訳にはいかない。


 空中でなんとか体勢を立て直し、トリガーが引かれたのを直感的に察知して長針を素早く数本投げ。焦げてボロボロであるとはいえ、防御の為にとセラミック加工の施されているターバンを広げる。

 視界が遮られるが、ここは防ぐ事に専念する。

 ターバンを広げた間を置かず、鋭い衝撃がフィルを襲う。

 一、二、三、一つとんで五。

 計四発。肩に腕に腹に足に。重石を叩き付けられたかのような、鈍痛が伝わる。

 幸いターバンが防ぎきってくれた為、撃ち抜かれてはおらず。急所はどうやらワザと外されていたようだが、先の一発を合わせてもまだ、後一発残っている。


 バサリと重力に引かれて落ちるターバン諸とも砂地に落下し、そこから転げ出るかのようにして走り出すフィル。

 残り一発とはいえ、得物は銃。動きを止めたらヤられる上、新たな弾を装填させてやる気もない。

 移動のルーンを迷わず付加して長針を投擲しながら一気に距離を詰め。Dのその懐に飛び込む。


「……やっぱりボーイ(子供)だな。ツメが甘いぜ」


 フィルの、その動きを読んでいたかのように。Dが獣面で隠れた口元を緩めて呟き。ジャカッと銃口が向けられる。限りなくゼロ。直撃は必至だ。

 しかしその銃をきちんと認識して、ニヤリとフィルは口角を上げる。


 二十◯年式拳銃。シリンダーが固定されておらず、常に空回りしていて〈どの薬室が次に発砲されるかわからない〉銃だ。

 同じ守護者である生意気な双子の片割れ、エリュレオ――レオが銃マニアな為、有無を言わさず知識を詰め込まされた所為で、見分けられるまでになっていた。

 しかしそんなアバウトなものを所有しているのは生粋のコレクター、無類の銃マニアくらいなものかと思っていたが、このご時世にまさか実戦で使用する奴が出てくるとは、驚きだ。

 着脱式の槍があるが無造作に投擲した長針が上手く作用したのか、装着出来ていない。

 弾はもう五発発砲している。再装填させる隙は与えていない。ならば残りは一発。確率は六分の一。


 最後のその一発が、次に必ず出るとは限らない。

 だからこそフィルはそのままDの鳩尾に、針を持つその手を叩き込む。


「っらぁ!」

「ぐっ! い、ってぇなオイッ!」


 突然の痛みに吼え、正確にフィルの急所に据えられた銃のトリガーが、引かれる。――しかし。


 発射されたのは空砲。


 尾を引くように乾いた音が耳に響く中、胸元にビリッとした息を詰める衝撃が加わるが構うことなく、僅かにバランスを崩したDのその横っ面に蹴りを叩き込むべく、足に力を入れて踏み切り。

 回転をかけながら一気に放つ。


「んの……やろうがぁっ!」


 だが、それを阻害するかのように再度、フィルに銃口を向ける(ディエンツ)

 躊躇なく引かれるトリガー。迫る回し蹴り。


 チュィン!


 一足早く。身を捻りながらのフィルに向け、今度こそその銃口から飛び出した弾丸が、勢い良く発射される。

 しかし、蹴りを回避しながらのそれは狙いを外れ、フィルが耳に付けていたシルバーのカフスを分断し、遥か彼方に弾き飛ばしていった。


 渇いた発砲音と金属の涼やかな音色が響く中、フィルがニヤリとその口角を引き上げ。

 カケに競り勝ったのは自分なのだと言いたげな、勝者のその表情が向けられる。

 それに一瞬息を飲んだDだったが、耳に衝撃を受けたくらいでは迫る蹴りの威力を殺せないと悟り。

 ちっと舌打ちして装填する間を惜しむように銃を投げ捨てると、針に阻害され再装着出来ていなかった槍を防御の為にと構える。

 それでも尚。笑みを浮かべるフィルはそのまま、躊躇なくそこに蹴りを叩き込み。

 一蹴目は留められたが、身を捻って先より重さを乗せて放った二蹴目が、その槍を蹴り折る。


「なにィっ!?」


 Dの間抜けな叫びが上がる中、槍を蹴り折ったフィルは、その勢いを活かして更に身を捻ると回転をかけ、Dのその横っ面を、これでもかと威力を乗せて蹴り飛ばしたのだった。


 後には人一人が倒れ伏す、その音が夜の波間に響くのだった。






「これでいい、か」


 持っていた麻紐や浜辺に落ちていたビニール紐等で、意識のない獣面達を縛りながら賀川が呟く。

 一刻も早く先へ行きたかったが、意識を取り戻し後を追われても面倒な為、逃げられないようしっかりと拘束しておく。


「ついでに、これで囲っとけばいいんじゃね?」


 一ヶ所に集めた獣面達四人を砂地に刺さったままのすだれでぐるぐると囲み、牢獄のようにしながらフィルが告げ。

 徐に、首から下げていた笛をくわえて吹き鳴らす。


「あぁああぁっ!!」


 それに耳を塞いで踞り叫び声を上げる賀川に、「あ」という間抜けな顔をして、ポロリと口から笛を離すフィル。

 フィルとしては、捕獲者がいる事を仲間に伝える為にするいつもの事なのだが、「耳の良い」賀川が傍にいたのを忘れていた。


「おっ前〜〜っ!」

「悪りぃ悪りぃ。賀川(お前)がいんの、すっかり忘れてたぜ〜」


 笛の音が止んだと見るや勢い良くフィルの胸ぐらを掴んで、その頭をガクガクとさせる賀川だが頭を揺すられているフィルは飄々と告げていて、どう見てもワザとやったとしか思えない。

 そんな中バサリと翼を羽ばたかせ、ククッと一鳴きして此方へと飛んで来たルドをその目に捉えて。


「さっすが俺様の相棒、良〜いトコに。他の奴らに連絡はした。見張り、頼むぜ?」


 スルリと賀川のその手から逃れると、やって来たルドに手短に告げて直ぐ様そこから駆け出すフィル。

 外套の上、肩から上腕にかけぐるぐると巻かれた、ターバンの結び目部分がヒラヒラと揺れるのを何とはなしに目で追い。はっとしてフィルの後を追って走り出した賀川を見送り、くるりと旋回してルドは獣面四人が捕えられている、そのすだれの上にちょこんと降り立ったのだった。



なんとか獣面四人撃破っ!

実用的には向いてませんが、シリンダーが固定されてない銃って面白いですよね〜

しかし、銃剣はオートマチックが主流の今、所持してたり訓練があるの日本の自衛隊だけだそうですねぇ


桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より

http://nk.syosetu.com/n2532br/

賀川さん


お借りしております

おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ


※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です

ご注意ください


実はこの黒白青少年回、初めは1話で終わりでした(苦笑)

でもあんまりにもあっさりしすぎ?だった為、延ばしたんですよね


以降がさっぱり出てきません(汗)

なので以降更新は未定です…すみません

出来るだけ早く、更新出来ればいいなと思います


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