11/4 揺らぐ心
『現在桜月りま様宅でアリスさん奪還戦(12月1日付)にウチのフィル君参加中です!
こちら現在11月4日
ウチの『汐奪還戦』は桜月様宅の『アリスさん奪還戦』より一か月ほど『前』の話になります
メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが、各々『別日』の話になりますので、それそれでお楽しみ頂ければと思います』
「……た、助けるって……どーヤッテっすか? それに媒介って……」
自信満々に告げたアプリに、呆けたように呟くB。そんなBに、尚もにっこりとしながらアプリが告げる。
「アプリちゃんと、アプリちゃんと。ベニベニで、リエリエの負担を肩代わりして、危険状態からの回復……出来れば投薬治療が出来るくらいまで、身体を戻してあげるんだよ。カルカルの、カルカルの。気が繋がってるから、それをちょっとだけ利用して。アプリ自身が媒介だから、ちゃんと使えると思うんだ」
「つ、使えるって……ナニガっすか?」
砂地に横たえたクリュリエの手を取りながら告げるアプリに、呼び方の件は兎も角、判るような説明を求めるB。それに行動で答えるアプリ。
獣面達の手当てで一つ使いきった、包帯の芯を空に放って。
「〈K〉カノ」
炬の炎
Bには聞こえていないが、アプリの口から呟かれたそれは、夜闇にルーン文字を浮かび上がらせ、芯を媒介に現象を引き起こし。
その芯を焼き尽くす、小さな炎が闇中に生まれ。
突然起こったそれに獣面から覗くその目を驚きに見開いて、Bが声を上げる。
「おま、まさかっ……るっるぅ、〈ルーンマスター〉なンっすかぁ!?」
「違うよ、違うよ? ルーンマスターさんなのは、たぶんイルイル〜☆ アプリちゃんは、アプリちゃんは。使えるの限られてるし、媒介ないと使えないもん」
それに即座に声を返し、先導師さん達と同じくらいだよ〜と、驚くBに笑って告げて。
「これしか、これしか。方法がないの。二人で、二人で。支えるのは、ちょっと苦しいかもしれないけど。協力してくれるよね?」
ひたと視線を合わせて言ってきたアプリに、強い視線をBは返して。
「何度も言わセンナっす。当たりマエっすよ! けど二人が苦しいなら、よーするに人数を増やせばいいンっすよね? だったらどうにか、なるカモっすよ」
「どういう事、どういう事?」
含み笑みを帯びさせながら呟くBに、首を傾げてアプリが問う。それに手短に告げるB。
「ちょっとあって僕とC、仲間に裏切り者扱いされてるンっすよね。それで始末する為に、各々繋げられてるンっすよ。じわじわ生命力奪うって、悪っ趣味な方法で。でもこれって、あんたが言うカルカル? ってヤツと同じ状況なワケっすよね? なら、十分使えると思わナイっすか?」
「そういえば、そういえば。リエリエ診た時、もう一本繋がってたのがあったような……」
Bの言葉を聞いて、Cを診ていた時の事を思い出しながら呟くアプリ。確かにその手に一本、カルサムの気とは違う、光る糸が繋がっているのが感じ取れていた。しかし悩ましげな表情をして、Bに訊ね返すアプリ。
「でも、でも。いいの? 仲間、なんだよね?」
「裏切ったつもりもないのに裏切り者扱いされて、ムカついてんのはコッチっすよ? ちょっとくらい、イタイ目見れば良いンっす。別に……命まで取ろうって訳じゃ、ないンっすから……」
此方をじぃと見つめてくるアプリに苦笑混じりの声音で返し、「そ、それに今は、クリュリエの方がダイジっす!」とつけ足すB。そんなBに、アプリは本当は仲間思いの良い子なんだな、と思って笑みを浮かべ。その頭をなでなでとする。
「いいこ、いいこ。ベニベニい〜子だね〜♪」
「ちょっ!? ヤメルっす! なんナンっすか?! 今は、こんな事してる場合じゃナイっすよ!」
いきなりの事に驚いてなでなでを嫌がるBに、
「それじゃ、それじゃ。ちょ〜っとだけ借りちゃおっかなぁ〜☆ 二人より、二人より。四人の方が、負担が軽減されるしね〜♪」
にっこりと呟いて。アプリはCを治癒する準備に取りかかる。
「…………」
そんなアプリをCを挟んだ対面にいるBは、複雑な心境で見つめ返す。
眼前にいるアプリ(相手)は、〈継承者〉を〈一人占め〉している「悪者(奴ら)」の仲間だ。
自分達はそんな奴らから、〈皆のもの〉である継承者を「救出」する為にここに来た。
だから本来なら、戦闘(殺し合い)になっていてもおかしくはない状況。
だというのに、捕えられているとはいえアプリは負傷していた他の仲間を治療し、自分の傷まで診てくれたうえに、弱っているCを、命をかけて救ってくれるのだという。
敵である筈なのに。
これが此方を油断させる為の敵の策略なのかもしれないが、眼前のアプリに人を騙すような、そんな事が平然と出来るようには見えない。
それになにより、Cに命をかけると言った時のアプリのあの目は、本物だった。
嘘や偽りの無い、強い意思の。真摯なまでに真っ直ぐな、その心をまるで写し出したかのような。
信じられる、素直にCを預けられる、そんな目だった。
それは敵対関係でなければ、喜ばしい事なんだろうけれど。
しかし両者は敵対関係であるが故に、それがBの心を掻き乱す。
本当に「そう」なのか――、と。
溢れた疑問は、心の中に徐々に徐々に溜まっていく。
疑問が疑念を抱かせ、心が揺れて、不安な思いが増幅され。
判断が鈍り、思考が固まり、視野が狭められていく。
「それじゃあ、それじゃあ。始めるからね?」
だから、つい。
そう訊ねてきたアプリに、Bはポロリと溢してしまう。
「……お前、本当に――。長や頭達が言うような、「悪者」ナンっすか……?」
Bのその囁きに。
アプリはそっと顔を向け苦笑混じりの、はにかんだ表情をして。
質問に答える事なくBの手を取り、Cの手を握らせると空いている方の手を自分と繋いで。輪のようになっているのを確認してから、静かに。
アプリはルーンを紡ぎ出すのだった。
「いい、感じはしないな……」
獣面の幻影をすり抜け、泥人形や怪しげな幼女がいるその場を後にして。
更に先へと、浜を駆けながら賀川がぼやく。
二重の包囲から逃れる際幻影とはいえ、人の身体をすり抜けたのだ。
感覚等はないとはいえ、あまり気持ちのいいものではない。
走りながらなんとなく、腕を擦り擦り言う賀川に隣を並走するフィルが、その口角をニヤリとさせて告げる。
「んな事、言ってるバアイじゃねぇみてーだぜ?」
その蒼の瞳を向ける先。
四人の獣面達が、此方に向かって駆けて来ているのが見えた。
泥人形が出現して暫く。
何かが大きく揺らいだかのような気配を感じた瞬間、天狗仮面とカルサムに「先に行け」と空に放り投げられた。
この浜辺が何か異様な感じに包まれているのは、嫌でも感じる事が出来る。
それにあの二人がわざわざそんな事をしてまで先にと言うのだから、マズい方向に行きかけているのは容易に想像する事が出来た。
ならば自分達が取れる手段は一つ。
こんな所で、足を止めている暇はない。
グッと拳を握り、迫ってくる獣面達を見据えながら、賀川は声をあげる。
「わかってるっ! ――いくぞ!」
それと共に勢い良く踏み切り、走る速度を上げた賀川にフィルは難なくついていき。
二人は迫り来る敵に向けて、同時に言い放った。
『邪っ魔、するなあぁっ!!』
少年の心に芽生えたものは
さぁ、アプリの施術は上手くいくかな?
そして賀川さんとフィル君先に行けたのはいいですが、さてさて
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
賀川さん
三衣 千月様のうろな天狗の仮面の秘密より
http://nk.syosetu.com/n9558bq/
ちらり天狗仮面
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継続お借り中です〜
おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ
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