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11/4 助ける!


『現在桜月りま様宅でアリスさん奪還戦(12月1日付)にウチのフィル君参加中です!

こちら現在11月4日

ウチの『汐奪還戦』は桜月様宅の『アリスさん奪還戦』より一か月ほど『前』の話になります

メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが、各々『別日』の話になりますので、それそれでお楽しみ頂ければと思います』


ちょっと時間が戻ります






「こんな、こんな。もんかなぁ〜?」


 キュッと、包帯の端と端を結んで。

 ふぅ、と一つ息を吐くアプリ。


 戦闘の終わった浜辺はそれがあった事すら忘れてしまったかのように、寄せては返す波音だけがただ静かに響いていた。


 リズを見送り、雀のアムが飛び立ってから。

 アプリ特製のシャボン玉に捕えた獣面達四人は、リズにコテンパンにやられたうえ睡眠効果が付加されているシャボン玉内にいる為に、起き出してくる気配はなく。

 それならばと、あっちを診たりこっちを診たりと獣面達を診察し。軟膏をぬったり包帯を巻いたりと、手当てをしていたのだった。

 神殿に郵便屋兼薬師として登録しているアプリには、敵とはいえ負傷している者達をそのまま放置しておく事など、出来る訳もなく。


 打撲、切り傷、擦り傷、火傷、若干の骨折等々……怪我の種類は多々あったが、幸い命に別状のあるものはなく。安堵の息を漏らすアプリのその耳に。


「このっ、いいっ加減に、ハナスっすよぉ〜っ!!」


 そんな少年の声と共に、バサリという鳥の羽ばたき音が届き。頭に相棒が降り立った感触と、巨鳥と鳩が側に寄ってきた感覚を捉えて。


「お帰り、お帰り。アムアム〜♪ え〜っと、君はドリドリだねっ☆ それで〜、ルドルドとサムサムが連れてきたのはぁ〜?」


 頭の上にちょこんと鎮座するアムと、パタリと肩にとまった鳩のドリーシャににぱっと告げて、両脚に掴んでいた者達を浜に下ろす鷲ルドと、ふんわりと柔らかに砂地に降り立った隼サムを見やるアプリ。

 ルドの脚に鷲掴まれているひょろい獣面は完全にノビているようで、その脚が外れていたが、


「はなっ、放せって、言ってるンっすよおぉ〜〜っっ!!」


 と叫んでいる、元気な獣面少年の方はまだ脚に捕えられたままだった。


「!」


 その少年のシャツの肩部分が切り裂かれ、変色しているのを目敏く見つけ。

 パタパタと駆け寄り側に膝を付くと、「おま、なン……ギャ――ッ!?」と叫ぶ少年の制止の声を聞かず、シャツを破いて患部を覗き込むアプリ。


 何かの刃物で深めに、切り裂かれた肩。光が届かない闇夜の為分かりにくいが、その周囲が浅黒く変色しているのが見て取れた。


 毒だ、と瞬時に見抜いたアプリは常にぶら下げているポーチの中から消毒液を取り出し、自らの口を濯ぐとその毒を吸出しにかかる。が、それを止めるような少年の声が上がる。


「イイっすよ! 自分の仕込んだ毒にヤられる、なんて洒落にもならナイっすから。普通の人よりは(毒に対する)耐性、あるンっす! それに敵の施しなんか、受ける義理ナイっすよ!」

「敵とか、敵とか。関係ないよ! アプリちゃんは薬師さんだもんっ。目の前に、目の前に。怪我してる人がいたら、助けるんだから!」


 少年に強めに声を返すと吸い出すのは止めたものの、少年がルドの脚に押さえられているのをいい事にバシャリと患部に消毒液をふりかけ、解毒薬が塗布されている湿布をベシッと貼り付けると、その肩にぐるぐると包帯を巻いていく。

 その間「ギャ――! 痛いいたいっイタイっす! シミルっす〜〜っ!!」と少年が叫んでいたが、お構い無しだった。



「うぅ……酷い目にアッタっす……」


 毒による痺れの効果より、消毒液による攻撃にヤられた少年は、ボソリと呟いて力なく砂地に埋もれる。

 ピクリとも動かなくなったのに敵意はないと判断したのか、ルドが少年を脚から放し。ひゅるりとその身体を変幻し小型化させると、旋回してから来た道を舞い戻っていく。

 それを確認してから少年の隣でノビている、ひょろい獣面を診ようとしたアプリだったが、ピュイッ! というサムの鳴き声が届き。


「! そこのおっさんなんか放っといてイイっすから! あんたが医者だってんならクリュリエっ、クリュリエ診てやってホシイっす!」


 自分は敵の施しなど受けないと言っていたものの、クリュリエという者に対しては何やら様子が違うらしい。

 がばりと起き上がりひょろい獣面に伸ばしかけたその手を取りつつ、言ってきたのに驚きながら。切羽詰まっているその様子にこくりと頷いて。未だ巨大化したままのサムのその背に回るアプリ。

 サムの背中にいる、漆黒の外套にくるまれている人物をその目に捉えて。


「っ!?」


 その翠眼を驚きに見開くと、自身をシャポン玉で被いながら少年がクリュリエと呼んだ、小柄なその獣面の者をシャポン玉で包み込み。そっと砂地に下ろすと、二つのシャボン玉をくっ付けて道を開いて側へと駆け寄り。

 その手を素早く取るアプリ。


「どうして、どうして」


 その呟きは知らずと漏れたものだったが、近くにいた獣面の少年には聞こえていたのだろう。シャボン玉の壁を叩きながら叫ぶ。


「なんナンっすか!? クリュリエ、大丈夫ナンっすよねっ!?」


 少年の声に、外套の留め具を外して胸元を緩め、外傷等がないか触診しながら。アプリが鋭い声を上げる。


「なんで、なんで。この子こんなに……っ。きみっ、きみ! 何があったか知ってるんだよね!? 教えてっ!」

「っ!」


 それに一瞬気圧されたように息を飲み。目を逸らしつつ呟く少年。


「……わから、ナイっす。僕気絶、しちゃってたンっすよ……。さっきちょっとヤり合った時は、意識あったハズっすけど、クリュリエいきなり、倒れたみたいになったンっす。でもみつあみのじーさん口調のヤツが、予断は許さないとかどーとか、言ってたのは聞こえてタっすけど……」

「!」


 少年のその言葉に、全てを理解し唇の端を噛むアプリ。

 カルサムが、気を纏わせている獣面の少女(胸のふくらみから女性と認識)。

 カルサムがその気を割いてわざわざ守っているのだから、大丈夫なのだと思っていた。


 しかしそれは間違いだった。


 纏っている気配は微細。しかしだからこそ、本来ならば真っ先に治癒を施さなければならなかった。

 微細な守りは程度が軽いから、ではない。

 微細な気でなければ受け取る事が出来ない程、相手が弱っているからだ。


 だからこそカルサムは、医療に長けているアプリ(自分)に、彼女を託したのだ。


 しかし浜辺(ここ)に、神殿の医療室にあるような設備は、ない。

 アプリも少しばかり気を読む事が出来るとはいえ、それは経験によるものでありカルサムのように、気を操り扱える訳ではない。

 それにここまで弱っているのなら薬を投薬した所で、余計その身体に負担をかけてしまうだけだ。

 薬は治癒を助ける手助けをしてくれるものであり、症状を引き起こしているもの自体を、無くしてくれるものではない。あくまで患者の体力と生命力、免疫力があってこそ効果が発揮されるものなのだから。


 薬での治療は不可能。カルサムのように気を送る事も出来ない。医療機器もない。


 この状況下で、残る唯一の選択肢は――……


「ねぇ、ねぇ。きみ」

「……なンっすか?」


 少女に目を落としたまま呟くアプリに、少年が訝しげに声を返し。暫しの沈黙の後、アプリがそっとその口を開いた。


「この子の、この子の。為に――。きみは命をかけられる? アプリちゃんは、アプリちゃんは。かけられる――うぅん、かけるよ」


 茶色のおだんご頭を揺らし。少女に落としていたその翠眼の瞳を、真っ直ぐに。

 此方へと向けて言い放ってきた、アプリに。

 少年は叫んだ。


「さっきからきみきみって、僕にはちゃんとベニソ……っ、(ベニファー)って名前がアルっす! それにクリュリエは仲間ナンっすよ! 当たりマエっす!」


 その答えに満足したように頷き微笑んで。

 シャボン玉の内側から外に手を差し出し、少年Bを中へと招き入れるアプリ。

 もにょんと揺らぎはしたが、割れる事なくBを中へと誘い、シャボン玉はつるんとその外郭を闇夜に反射させ。

 冷たい冬の冷気を帯びさせていた外に対し、シャボン玉の内部が思った以上に暖かい事に驚きながら、クリュリエの側に膝をついたアプリに習って、側へと腰を下ろしながらBが訊ねる。


「……それで僕は、一体何をしたらいいンっすか?」

「別に、別に。何かしてもらう必要はないよ? ただ、堪えて欲しいだけだよ」

「タエル……っすか?」


 にっこりと呟くアプリに、訝しげにBが呟く。一体何を堪えたらいいのか、検討もつかずに首を傾げるBに、アプリは事も無げに、サラリと呟いた。


「そうだよ、そうだよ。アプリちゃんとベニベニを代償(媒介)に、リエリエを助けるんだからねっ☆」



敵とはいえ薬師であるアプリに、負傷者を放っておく事なんか出来ませんでした


やり方は…どうやら荒っぽそうですが(苦笑)


朝陽真夜様の悪魔で、天使ですから。inうろな町より

http://nk.syosetu.com/n6199bt/

リズちゃん(お名前ちらり)


お借りしております

おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ


※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です

ご注意ください



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