11/4 袋のネズミはどっちかな?
『現在桜月りま様宅でアリスさん奪還戦(12月1日付)にウチのフィル君参加中です!
こちら現在11月4日
ウチの『汐奪還戦』は桜月様宅の『アリスさん奪還戦』より一か月ほど『前』の話になります
メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが、各々『別日』の話になりますので、それそれでお楽しみ頂ければと思います』
のんびり更新でいくかと思われます〜
速筆力と時間がほしい…
「ゴーレムなんて、ゲームの中だけの話だと思ってたよ……」
はは、と笑い迫ってきていた攻撃を躱しながら賀川が呟き。
破り捨てられた外套が風に浚われていく中、じわじわと距離を詰めてくる、泥人形達に視線を走らせる。
単に泥人形と言ってもその形は様々で、泥人形然としているものもあれば、まさしくゲーム内にいそうな幻獣、ドラゴンのような姿形をしているものもあった。
その姿形はMがオモチャと言っているだけあって、自由に造形出来るらしい。お腹部分が凹んだり、頭部分が盛られたりと、只今絶賛制作中のものまである。
集団が現れる前に聞こえていた音と振動は、この浜の砂を使って泥人形を造っていた時のものだったのだろう。
戦場は砂浜。泥人形を造る為の砂(材料)なら、いくらでもあるのだから。
Mにとっては本当に、ただ「オモチャ遊び」をしているだけに過ぎないのかもしれない。
「子供ってのは怖えぇなぁ〜」
後方にいるというのにそれでも漂い来るMの妖しげなその気配に、不敵な笑みを浮かべ振り下ろされた攻撃を避けながらフィルがぼやく。
羽織っていた外套がなくなったからかフィルと対峙している泥人形は、人と同じくしていたその腕部分が肥大し巨大なハンマーのようになり。
その大きさから重量はかなりのものだろうに、重さなどないかのように軽々と腕が振り上げられ。猛烈なスピードと共に重力に引かれ、重さの倍増した攻撃が繰り出される。
凄まじい衝撃波と共に白煙を巻き上げる、浜辺を揺らす程の鉄拳が砂地を穿つ。
「っ!」
まともに食らったらペシャンコになりかねないその攻撃を避け、地味にダメージの多い衝撃波から逃げるように地を蹴って。後方に飛び退く。
「ま、ゴーレムなんだから、emeth(真理)をmeth(死んだ)にすりゃいーだけだろ」
地に足を付けつつ、世間一般に広まっている対処法を口にするフィル。
「ゲーム通りなら、それで壊れる筈だけど……」
「そう、思う通りにはいくまい」
「うむ。各々が身に付けている、あの魔道具が気になるのである」
幅を詰めゆっくりゆっくりと、此方に近付いて来る者達を見据えながら呟く三人。
emethと書かれた紙が額に張り付けられている泥人形達は、その胸部分や腕、足部分に赤い光を放つ魔道具が嵌め込まれている。
人の心臓であるかのように脈動する、泥人形を構成する核であるとでも言いたげな、その魔道具が。
それが、若干の気掛かりを生み。どうしたものかと思案する、天狗仮面とカルサムの二人を嘲笑うかのように。
ゆぅらり
何処かで振り子が揺れ動き。
浜辺に張られている揺らめく気配が、よりその揺らぎを強くする。
それに。
『迷っている暇はない(ようであるな)』
同じくボソリと呟くと、目配せし合い天狗仮面とカルサムはコクリと頷いて。
「先に行け」
「流れるままに、その身を委ねるのである」
背後にいる、賀川とフィルに向けて各々告げると。
えっ? と驚いた表情をしている賀川の襟首を傘次郎の石突き部分で、フィルの首根っこを鞘入りの刀先で、天狗仮面とカルサムはひょいっと引っ掛け。
『せいっ!』
一声のもと、勢い良く振りかぶって振り下ろし。
賀川とフィルを、夜の空中へと放り投げる。
『なっ!?』
それに驚いたのは後方の獣面達四人。まさかそんな行動に出るとは思っていなかったらしく、呆気に取られたようにその動きをただ見つめ。
壁のように行く手を阻んでいる泥人形達を飛び越え、その先の漆黒の外套を纏った、増援組である者達との間にスタンと降り立った賀川に、同じくひらっと地に降り立ったフィルが囁く。
「行けると思うか?」
地に降り立ったのもつかの間、放り投げられた威力を殺さずに砂地を蹴って即座に駆け出しながら。
砂が盛られ巨大化した数体の泥人形達が、のっそりと後方を振り返ろうとしているのを天狗仮面とカルサムが留めている中、フィルはさっき自分が体験したばかりの、その感覚を思い出しつつ走り。意識が削がれ、移動の効力の切れたフィルのその隣を並走する賀川は、その「良い耳」をピンと立て。周囲を漂う風の音を拾って、即座にフィルに返す。
「イケるっ、正面!」
賀川のその言葉を疑う事無く。フィルはニヤリと口角を上げると、得物を構える眼前の敵目掛け、勢い良く突っ込んでいく。
フィルが蹴りを放った者は「幻影」だった。町中の街灯の下で見た、幻の汐と同じく。
対象の複製として造られたそれらに、実体などはない。稀に実体のある幻影を造形出来る者もいるが、そこまでの術を扱える者などここにはいないだろう。
感じる風が、聞こえる音が、眼前の敵は幻だという事を教えてくれる。
たえずぐるぐると周囲を歩き回る敵達。此方を撹乱させる為というのもあるのだろうが、足音の違いを紛らわせるという意味もあったのだろう。
いくら各々に気を纏わせ人と同じくしていても、人と幻影と泥人形とでは、その足音が違う。
一人ひとりに個性があるように、足の運び方、踏み切る時の力のかけ方など各々に違いがあり、構成物質からして違う彼らでは、その足音は更に異なる音を奏でる事だろう。
それらを紛らわせるのに波音がたえず響く、砂が敷き詰められている浜辺はまさにうってつけの場所だったのだ。
先日の騒動での、敵側唯一の帰還者である頭の男がいるのなら「勘が良い」者達がいる事くらい、リークされていてもおかしくはない。
しかし、風の動きを読んだりその音を拾ったり、等とは思っていなかったらしい。
障害物があればそこに向かって流れている風は障害物にあたり、上下左右へと分かれ先へと流れていくが、フィルはその風の流れを感じ、賀川は僅かに生じる風か流れていく際の擦れる音を聞き取り。
障害物(漆黒の外套を纏う敵)がいるにも関わらず「阻害される事なく吹き抜けてくる風」のその動きを、音を読み分け聞き分けて。賀川とフィルは。
眼前の、敵のその身体をすり抜ける。
「ちぃっ! Oッ!」
それに舌打ちしたLの鋭い声が響くが、
「……! ダメ、だよLちゃん。妨害されてる……っ!」
ひび割れている魔道具に手をかざすOが、弱々しく返しているその間に。
「んじゃ、後宜しくな〜」
ヒラヒラと手を振って、そんな一声を残しフィルが、賀川が先へと向かい駆け去っていく。
しかし当然、外側に位置している者達がその後を追おうと踵を返す、その前に。
「無駄だよ、無駄だよ」
幼女の声が響き。
それと同時に敵達の行く手を阻むように、海風とは違う風が吹き荒れて道を塞ぎ。夜闇に一瞬だけキラリと、光を跳ね返す四面が見えた。
それは泥人形を押さえながら傘次郎を通じて天狗仮面が起こした風と、カルサムが気を張り巡らせながら織り込んだ結界によるものだったが、まるでそれが分かっているかのように幼女が言葉を続ける。
「逃げられちゃった。でも代わりにお兄ちゃん達が、いっぱい遊んでくれるって事だよね?」
にこり。
獣面にくり貫かれた、目の部分から覗くその瞳が細められ。
それを見据えながら。
「遊びに、興じれるかどうかはわからぬが、な」
「任されたからには、応えるが流儀。――お相手願おう!」
カルサムと天狗仮面は各々に呟き。
それににっこりとして。
幼女、Mは含み笑みを帯びさせたままに呟いた。
「メノ達を、閉じ込めたつもりみたいだけど――。袋のネズミさんは、どっちなのかなぁ?」
その声が合図だったとでもいうように。
天狗仮面とカルサムが相対している泥人形達が、一斉にその腕を振り上げた。
やっと別れました、この子達…(苦笑)
さて、少し視点が戻りるかと思いますが、各々進めていきたいと思います
三衣 千月様のうろな天狗の仮面の秘密より
http://nk.syosetu.com/n9558bq/
天狗仮面、傘次郎君
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
賀川さん
お借りしております
継続お借り中です〜
おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ
※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です
ご注意ください




