11/4 オモチャ
『現在桜月りま様宅でアリスさん奪還戦(12月1日付)にウチのフィル君参加中です!
こちら現在11月4日
ウチの『汐奪還戦』は桜月様宅の『アリスさん奪還戦』より一か月ほど『前』の話になります
メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが、各々『別日』の話になりますので、それそれでお楽しみ頂ければと思います』
「えっ!?」
『なに!?』
「おぉ?」
攻撃を仕掛けたフィル達四人が驚いた声を上げ、一瞬動きの止まった、その機を逃さず。
後方の獣面達四人がその仮面の下で笑みを浮かべている中、正確に急所に攻撃を受けた事などまるで無かったかのように、素早い動きにヒラリとも靡かない、フードを目深に被っている者達がすかさず、攻撃を仕掛ける。
『っ!』
それに反射的に回避行動を取る四人。
賀川は側に突き立てていた棍を咄嗟に掴み、腕を振るって五つのその攻撃を弾いて後方へと退き。
天狗仮面とカルサムは、「兄貴!」との傘次郎の声にはっとして、傘を刀を振るい。地を蹴って飛び退く。
フィルは蹴りを放った勢いそのままに砂地をゴロゴロと転がり、手を使ってバク転し身を捻って足からスタンとそこに降り立つ。
それは示し合わせたかのように、最初の時同様四方に陣を組む形となり。
砂塵が舞う中互いに背を預け合いながら、二重に囲まれている状態で各々、眼前を見据え。
賀川は連撃を繰り出したその手に。天狗仮面は傘次郎に。カルサムは刀に意識を向け。フィルはその蒼の瞳をぱちくりと瞬いて。
「……なんだ、今の……」
「あやつら、もしや……」
「……うむ」
「……うつし身、か……?」
急所に間違いなく攻撃を食らっている筈だというのに、平然と周囲を歩き回る者達を見つめながら、各々に呟く四人。
賀川のその手に、天狗仮面に傘次郎に、カルサムに各々を介し伝わってきたその感触は、明らかに人のそれではなく。
フィルに至っては繰り出した攻撃諸とも、「その身体」を足だけでなく自分ごとスッポリと「すり抜け」。
感じた事の、起こった事の意味を考えながら眼前を凝視する四人に、四隅に立つ獣面達からくすくすとした笑いを含んだ声が届く。
「あ〜らら。どうやらMちゃんの、気付かれちゃったみたいじゃな〜い?」
「どう、かなLちゃん。まだ、露になった訳じゃないし」
「バレてても支障はないだろうけど、不用意な発言は控えた方がいいよ? L。その所為でMに何かあったら、どう責任取るつもり?」
「もー。N君ってばかーほーごー。Mちゃんなんだよー? 大丈夫に決まってるじゃな〜い♪」
水気を含んでいたその声がいつの間にか元に戻っているLが、言いながら妖しい光を宿した瞳をフィル達に向けているMを見やる。
にこりと、まるで慈悲のような微笑みを湛えているMのその目は、戦いを繰り広げる者達から一時たりとも外されていない。
それらを余す所なく見つめ愉しむその様は、全てを優しく包み込む神の笑み(もの)か、悪戯に戯れを落とした悪魔の微笑み(もの)か。
後者の方が有力かなぁ、と思いながらLは視線を戻し。
「さぁ、どう出るのかしらね? ま、〈そのまま〉の方が、良いとは思うけどねぇ〜」
くすくすと笑みを含みながら、Lはこそりと囁くのだった。
「……明らかに、人の……感触じゃなかった、よな?」
目線は前から離さずに。
その手を閉じたり開いたりしながら、賀川がポツリと呟く。
ゆらゆらと周囲を敵達が歩き回る中、それに答えたのはフィルだ。
「人の、って。実体すらなかったじゃねーかよ。幻影、魔法投影だろ、アレ」
それじゃ留まってる必要はねぇな、と続けるフィルに、「えっ!?」と驚いた声を上げる賀川。それに訝しげな目をちらりと向けて。
「えってなんだよ? 俺様、すっぽ抜けたんだけどなぁ? ……どーやら、お前らは違うみてぇだな?」
纏う雰囲気の違いに、他の二人にも問うように言葉を紡ぐフィル。
「アレらの気配を探ってみたが……人のそれと、そう変わりないように感じたが」
「私もである。しかし……あの感触は、人のそれとは異なるもの。なんと申すか。アレは、そうであるな……」
フィルの言葉に刀の柄に手を添えたまま、難しい顔をしてカルサムが呟き、傘次郎を構えたまま天狗面の鼻を擦りながら、うぅむと天狗仮面が唸る。
そんな中棍を構えつつ、自分の片手を開閉していた賀川が、その手からパラリと落ちたモノに気付き。
「! これだっ!」
ぐっと拳を握り、閃いたように声を上げる。
賀川のみ布越しとはいえ素手での攻撃だった為に、その「一部」が指の隙間から紛れ込んでいたのだ。
賀川のその声に、他の三人が賀川へと意識を向け。それを受けて賀川がそっと口を開く。
「……俄には信じられないけど。敵に打ち込んだ時、ザラっとした……そう、砂山の中に手を突っ込んだみたいな……そんな感じがしたんだ」
「はぁ!? 砂ぁ?」
パラリと。開いた賀川の手から落ちたもの(砂)を見やりつつ、声を上げるフィルのその背後で、天狗仮面とカルサムが同意するように頷いている。
「成る程、砂であるか」
「砂、か。ならばあやつらはさしずめ、泥人形といった所か」
人だと思っていたからこそ、その感触に違和感があった。
肉と骨。温かみを感じるその感触とは違う、ざらりとした、無機質な固く冷たい感触。
一点にと定め放った攻撃が、周囲に分散しその威力が緩和されたような感触もあった。
そんな芸当人に出来うるものでないが、それが泥人形だというのならば納得出来る。
いくら人型に造ったのだとはいえ、泥人形の構成物質は岩や石、砂に土だ。
細かな粒子の集まりによって作られている為、此方が一点に絞って放った攻撃は、無数の粒子によって分散され。その身体を伝い、地面に上手く力を逃がされているのならば、その威力は更に低くなり。
大の攻撃は小となり。
攻撃でのダメージは、ほぼゼロといって良いだろう。
「朕も賀川(お主)のそれと相違ない。フィルの言ったすり抜けが、気にはなるが……」
「そうであるな。しかし人でないのならば、やりようはいくらでもあるのである」
「そうだけどあいつら、ダメージ受けてなさそうだよな……どうするか……」
周囲の敵達を牽制しながら囁き合うカルサム、天狗仮面、賀川の三人。
そんな中ざりっと砂を鳴らして、足に力を入れながらフィルが告げる。
「すり抜けたんは、ま、一端置いとくにしても、だ。そのツラ、拝ませて貰えばいーんじゃねー? ゴーレムだってんだから、あるだろーがよ、アレが」
言うが早いか、既に敵の一人に向けてその足を踏み切っているフィル。その直前に呟いたスペル(もの)により、一度解けた移動の効果が再び付与され。
砂を踏んだ音だけを残して、フィルのその姿がかき消える。
「ちょっ!?」
それに驚いたように声を上げる賀川だが、それは姿が消えたように見えた事に対してだけで、その良い耳が、ちゃんとフィルの軌跡を捉えていた。
「あやつ」
「無茶を」
フィルの突然の行動に、触発されて動いた者達を押さえつつ呟くカルサムと天狗仮面。
その傍らに立つ賀川にも、敵の手が迫る中。
ばさりっ
これまでヒラリとも靡かなかったフードが、その顔面部分から勢い良く剥ぎ取られ。
その顔が露になる。
「emeth」の紙が貼り付けられた土塊の、その顔が。
それにニヤリと口元を緩めるのは、獣面の幼女。
「やーっぱりな」
ちらりと、その顔を確認して呟いて。即座にもといた場所までフィルが戻った、その時。
「メノの、メノの。ゴーレムちゃん(オモチャ)だよ。お兄ちゃん達、気に入ったぁ?」
微笑みを湛えたままのMの愉しそうなそんな声が響いたと共に、二重にフィル達を取り囲む、その内側にいた者達の外套が、一斉に破り捨てられた。
実は、でした
前回やりませんでしたし、砂が無限にあるんだから、と
三衣 千月様のうろな天狗の仮面の秘密より
http://nk.syosetu.com/n9558bq/
天狗仮面、傘次郎君
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
賀川さん
お借りしております
継続お借り中です〜
おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ
※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です
ご注意ください




