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11/4 集団戦闘2


『現在桜月りま様宅でアリスさん奪還戦(12月1日付)にウチのフィル君参加中です!

こちら現在11月4日

ウチの『汐奪還戦』は桜月様宅の『アリスさん奪還戦』より一か月ほど『前』の話になります

メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが、各々『別日』の話になりますので、それそれでお楽しみ頂ければと思います』






 賀川とフィルが戦闘を繰り広げている、その時。

 傍らで背中を預け合っていた天狗仮面とカルサムも、同じく戦闘の真っ最中であった。


「ふっ!」

「せいっ!」


 カルサムは鞘に入ったままのその刀を。天狗仮面は傘次郎を振るい。敵の攻撃を捌く。


 三対一であるのは、両者共に同じ。

 一の攻撃を避け二の攻撃を弾き、三の攻撃を受けて払い。今度は此方が攻撃に転じようとした所に、また一か二か。或いは切り返して来た三の攻撃が繰り出される。

 それを弾き距離を取るも、追随するように迫って来ていた者に更なる攻撃を仕掛けられ、それを受けるか捌くかしている間に残りの二人に周囲を固められ。

 三方の陣からは、なかなか抜けられないようだった。


「敵ながら、なかなかに上手い陣形を組む」

「敵にしとくのが惜しいくらいでやんすねぇ」

「そうであるな。しかし、何時までも相手をしている訳にはいかないのである」

「無論」


 敵を退かせそれを追うように、或いは引き離すように立ち回りながら、すれ違い様ひそりと言葉を交わし合うカルサム、傘次郎、天狗仮面の三人。

 それは一瞬であり、直ぐ様各々の敵と攻防を繰り広げる為、三者が会話している事に気付く者はいない。

 そんな中、繰り出された攻撃を受け捌きながら、カルサムはふと思考を巡らす。



 ちらりちらりと、月も星の光も届かない夜闇に鮮やかに浮かび上がる赤い、魔道具(マジックツール)の光。

 森でのクリュリエ程ではないにしろ、それを身に付けている眼前の者達は、何らかの危険な状態、或いは危険な状態に向かいつつあると見ていいだろう。

  赤はフィルの言っていたように、危険信号等である事が殆んど。故に注意をしておくにこした事はない。

 様々なモノが入り乱れ、そのどれもが折々に混じり合っている為、自身の気を張り巡らせて各々の気配を読み取るのが困難なこの状況下では、尚更だ。


 最もカルサムも、この浜辺にかけられているモノ全てに、気を配っている訳ではない。

 いくら気を扱う事に長けているとはいえ、そんな事をしていればとっくに気がフレている。

 まだ繋がっているクリュリエは兎も角、その時に必要なものだけを、要所要所で切り替えているのだ。

 気はカルサムの一部であり手足。それを広範囲に広げたり、対象を覆う結界を張ったり。また糸のように細く凝縮させて誰かと繋げたり、など思うがままなのだから。


 思考を巡らし、三者の攻撃を捌きながら、カルサムは周囲を取り囲む新たな敵達のその後方にいる、(メノ)達へと意識を向ける。


 張り巡らされている陣上に描かれていた光糸は既に成りを潜めていたが、糸で描き出された幾何学模様の陣の、スポットのようにあった四つのサークルのその内部に、彼女達四人がいたのは把握している。


 四角形の四隅に立つようにしている四人の、手前右にいる少女(ルッテ)とその奥左側にいる少女(オーネ)の足元に突き立てられている魔道具が、ひび割れ赤い光を僅かに溢しているのが見て取れる。

 今、一番強い光を放っているのは右側奥にいる幼女(メノ)が手にしている魔道具。その次が幼女に兄と呼ばれていた、四人の獣面達の中で唯一男児である手前左側にいる少年(ニニクリ)


 先程楔を破壊した際、四人が四人とも呻いていた事と魔道具の欠損状態を考えると、魔力供給は四人ともに行っていたが、主で先の重力負荷空間を作り上げていたのは(ルッテ)(オーネ)なのだろう。欠損部分が他の二人より多い事からしても、それは間違いないだろう。

 そして今、相対している敵達を呼び出したらしいのは、Mと(ニニクリ)の二人。


 この四人、相互間で関係し合っているものの、どうやら二人一組のチームらしい。もしくは、二人一組でなければ大きな力を行使する事は出来ないのかもしれない。


 真意の程は定かではないが、何らかの制限がかけられているのは、その状態を見ればある程度は読み取る事が出来た。


 周囲を取り囲む者達の後方にいる獣面達四人は、その場から一歩たりとも動いてはいない。

 「柱になってもらえばいい」と言っていた事から察するに、また彼女達も(そしてそれ以外の獣面達も)、張られている陣のその柱とされているのだろう。


 呪文(スペル)すら唱えず魔道具を操っているのを見る所、〈魔法使い〉ではないにしろその筋に通ずる者であるのは明白。

 ならば常人に比べその耐性がある故に、要を司る柱を担わされるのは必然といっていい程で。

 柱として、力を搾取されている状態でありながらこれだけの数の者達を呼び出せるのだから、その内に秘めたる力は相当なものなのだろう。

 だがそれ故に柱としての役割は大きく、そこから動く事すら出来ず。

 援軍を導入しての、戦闘スタイルとなったのだろう。


 しかし、それならばまだ勝機はある。

 敵は多数とはいえ、勝てない等とは微塵も思っておらず。

 相対している三者に、増員された周囲を囲む敵を倒し、更なる増援をされる前に、動けない四人を押さえてしまえばいいだけの事なのだから。

 結界が張られている事も考えられるが、動けないだけでも敵にしてみればリスクであり、此方にしてみればそれは、好機であるのだから。



「そう簡単な事ではないが、な」


 ガンッ!

 振り下ろされた攻撃を鞘入りの刀でしっかりと受け止め。

 思考の海から戻ってきたカルサムはつい、といった感じで呟く。

 フィル(あやつ)の気質でも移ったか、と思いながら敵の攻撃を跳ね上げ、横薙ぎに払って後ろへと退かせる。


 カルサムの纏っている気配は静。

 水や風。自然のままに任せ、流れる中漂うもの。

 しかし時折その中に、僅かに流動の気配が混じる。


 久方振りの戦闘のせいというのもあるだろうが、なにより――

 背を預けるに相応しい、信なる者がいるという事の方が大きいだろう。


 北の森での戦闘は急遽組まれたトリオ(もの)だったとはいえ、その連携は見事なものだった。

 フィル(アレ)だけであったなら、自分達に、もしくは森に、なんらかの被害が出ていてもおかしくはない。

 フィルは無茶を無茶で通す所がある故、あの状況では先日のように既にズタボロの状態になっていても不思議ではなく、今回まだ擦り傷切り傷程度で済んでいるのはある意味、奇跡であるといえた。

 それは賀川と天狗仮面の采配、力量に助けられてのものなのだが、フィルがそれに気付いているのかは微妙な所だ。


 先日の浜辺での賀川の戦いぶり。その時は知りえはしなかったが、汐(友)の為に走ったというその心。そしてそこへ行き着くまでに天狗仮面(+傘次郎)と上空で(まみ)えた際、互いにただ者ではないと直感したが、先の戦闘を拝見しサムの背上での口上から見えるその心意気に、信の置けるものであると賀川と天狗仮面を定めたカルサムは静かに、自身すら気付かぬ内に沸き立っていたのだ。


 傘次郎を振るい、軽く跳躍して唐草模様のマントを翻しながら後方に退いた天狗仮面は、砂煙を上げながら下がりピタリと背に添うようにして留まったカルサムが纏う気配が、若干変わった事に気付き。

 仮面の下に隠れている、その口元を緩める。

 それに気付いたカルサムの口元も、ニヤリとした笑みの形を描き。


「ふふふふふ」

「ははははは」


 暫しして両者の口から溢れたのは笑み。

 その笑みに同じ事を考えていたのが垣間見え、更に笑みを深くして。

 驚いたように一歩後退った者達を見据えて、カルサムは刀の柄を、天狗仮面は傘次郎を持つその手にぐっと力を込める。


 ピン、と――

 張り巡らされたのは、鋭い刃物を思わせる気配(もの)


 それに、天狗仮面とカルサムを囲む計六人の敵達は、窺うように周囲をのろのろと歩き回る。そんな中そば近くで感じた気の集束に、どちらともなく声が上がる。


「賀川殿が、何か仕掛けるようであるな」

「そのようだ。ならばそれに合わせ、此方も少々気を入れるとするか」

「そうであるな。そろそろ、身体も温まって来た頃なのである」

「ありゃあ、あの時の……」


 各々に呟き、天狗仮面とカルサムの二人が纏うその気を深めていく中、傘次郎がぽつりと呟く。



 天狗仮面と賀川は、この日より少し前、戦線を共にした事があった。


 十月末週の日曜日。

 午前中、河原で子供達と清掃活動に精を出していた天狗仮面は、その最中不審な動きをしていた賀川と遭遇し。

 賀川の話により恋人であるユキが無法者に攫われたという事を知り。うろな町の平和を守る事を心情としている天狗仮面は、勿論賀川と共にユキ救出へと向かう。

 ドリーシャの案内の元、たどり着いた先で繰り広げられた戦いは苦戦を強いられるものだったが、協力して敵を倒し。二人はユキ救出に成功したのだった。


 その戦闘の終盤、賀川が使っていた連続攻撃(ラッシュ)。気が集束し練られていくのを感じながら、その時の技を放とうとしている事が傘次郎には理解出来た。機械仕掛けの人形ですら軽々と破壊してしまう(もの)。あれならば場を乗り切る事が出来るだろう。



「あの技なら、あっちは問題なさそうでやんすね。さっすが、あっしの弟分と言ったところですかい。隣の小童も、なにやら妙な気配を纏っているようでさぁ。兄貴! あっしらも負けてられやせんぜ」


 二人が纏う気配がより深く、濃密なものになっていく中、あの時の賀川は天狗仮面(兄貴)と同じで、天狗面(ただし鼻の低い方)に唐草模様のマントを羽織った出で立ちで、あっしの弟分(賀三郎)でやしたねぇ、と思いながら傘次郎が呟き。

 そんな者達の傍らで、


「おらおらどーしたぁ? 賀川(囮)に、全っ然近付けてねーじゃねぇかよお前ら。今更、怖じ気付いたってーのかぁ〜?」


 カカッ、キィン!

 長針で迫り来る敵を、微動だにせず気を集めている賀川に近付かせないよう立ち回っているフィルが、ニヤリとした不敵な表情で挑発めいた言葉を呟き。

 それに触発されたかのように、賀川とフィルを囲んでいた六人と、天狗仮面とカルサムを窺っていた六人が、一斉に各々へと襲いかかり。

 側近くにまで勢い良く迫った、その絶妙なタイミングで。


「はああぁぁっ!」


 練り上がった気を纏うその拳を振り上げ、賀川が迫る五人に向けて連撃(ラッシュ)を放ち。


「ハズレ、だっつの」


 賀川が取りこぼしそうな真後ろ(六人目)の敵に向けて、移動のルーンがかかったままのフィルが一気に距離を詰めると、ハッとしたその瞬間にスルリとその脇をすり抜け、背後から首筋辺りを狙って渾身の蹴りを繰り出し。


『――参る』


 声を揃え散じた天狗仮面とカルサムは、各々三者の急所に向けて次々と攻撃を仕掛ける。


 それはほぼ同時に四人から繰り出された、目にも止まらぬ早さの攻撃。

 何が起こったのか等フードを目深に被っている者達には、知る事すら出来なかっただろう。


 しかし――


「えっ!?」

『なに!?』

「おぉ?」


 驚いたような疑問の声を上げたのは、攻撃を仕掛けた賀川、天狗仮面、カルサム、フィル達四人の方だった。



集団?戦闘二回目

天狗仮面の、といいますか、カルサム思考回?ですね…(苦笑)

そして賀川さんにラッシュを撃ってもらってたり…


さてさてそろそろ…?


三衣 千月様のうろな天狗の仮面の秘密より

http://nk.syosetu.com/n9558bq/

天狗仮面、傘次郎君


桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より

http://nk.syosetu.com/n2532br/

ちらり賀川さん


お借りしております

継続お借り中です〜

おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ


※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です

ご注意ください


ちょこっと説明してますが、賀川さんと天狗様の共闘回をより詳しく!知りたい方は

桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話 10月27日、ユキちゃん奪還戦

をお読みくださいませ〜♪


とある所を短くしようとしていたのに、逆に長くなるというミラクルにはまっていましたが、桜月様と三衣様のおかげでなんとかなりました!ありがとうございました〜☆



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