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11/4 集団戦闘1


『現在桜月りま様宅でアリスさん奪還戦(12月1日付)にウチのフィル君参加中です!

こちら現在11月4日

ウチの『汐奪還戦』は桜月様宅の『アリスさん奪還戦』より一か月ほど『前』の話になります

メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが、各々『別日』の話になりますので、それそれでお楽しみ頂ければと思います』






 ガキン、と。所々で何かと何かがぶつかり合う、音が響く。

 そんな中、長針で牽制したり攻撃をいなしたりしているフィルの傍らで、賀川は攻撃が繰り出されるその「音」を正確に拾って、危なげなく避けてみせる。

 その後に続いた切り上げも身を捻って避け、着地地点を狙って迫る足を掬う為の攻撃も、持ったままだった(アディリオ)の棍を阻むようにして突き立て、ヒラリと躱し。

 砂地に足をついて漆黒の外套を身に付ける、眼前の者達を見据える。


 たえず移動するというそのスタイルは変わっておらず、眼前をゆらゆらと動き回る三者。ちらりと周囲に視線を走らせてみると、他の三人も三対一という状況は同じらしく、それが敵の戦闘スタイルなのだという事は容易に知る事が出来た。

 暫く待ってみたものの、戦闘が始まってすぐに増員されたらしい新たな敵達は、周囲を取り囲んだまま緩やかに移動するだけで攻撃を仕掛けて来るようなそぶりはなく。交代要員であるという可能性もあるが、それをさせる間すら与えず、戦闘不能にしてしまえばいいだけの事だ。


 それには連続攻撃(ラッシュ)を使って、一気に沈めてしまうのが効果的なのだが……


「っと」


 再び繰り出され始めた攻撃を、軽くステップを踏む事で避け。その直後、左右から振り抜くようにして迫るものを、後方に飛び退く事で回避する。

 ザッと砂を鳴らして着地したその先で、背後に感じるのは少年の気配。

 レディフィルドだ、と賀川が思った時にはそっと背中を預け合い、視線を交錯させる二人。


 ここは、息を合わせないとマズい。


 互いにそう直感した時には、二人が対峙する三人、計六人から各々に攻撃が繰り出される。

 前後左右、或いはその斜めから。

 それを余さず見つめ。感じ取り或いは聞き取りながら、賀川とフィルは迫るそれらをギリギリまで引き付け。

 最少の動きでもって対処する。


 賀川は、左から来た攻撃を弾き、右下方から来た切り上げとフィルの前方、即ち自分の背後から迫った攻撃を、棍を対角線上に構える事で同時に留めさせ。

 フィルは、左上部から振り下ろされた攻撃を躱し、その足を引っかけて転倒させると、そのまま足を軸に回転をかけながら右から来る攻撃と、賀川の前方、即ち自分の後方に迫ったその攻撃を、長針を持つ手を突き出して二つを留め。


 一息のもと甲高い音を響かせながら、受け止めた攻撃を弾き返す賀川とフィル。

 そのまま散じて各々の敵へと向かおうとする二人だったが、その時にはフィルに転倒させられた一人が起き上がってきており、その手を素早く切り上げる。


「甘いっ!」

「遅いっ!」


 しかし不意打ちのようにして繰り出されたそれに二人は短く呟くと、交差させるように出した棍と長針でその切っ先を受け止め、即座に勢い良く払い。

 バランスを崩しそいつが後方へと下がっていく中、その間にまた周囲を囲むようにして集まり出した五人に舌打ちしながら、賀川とフィルは互いの背を預け並び立つ。


「ちっ。このままじゃ埒があかねぇなぁ。此方を疲弊させて一気に、って魂胆かぁ?」

「充分あり得る、というか確実にそうだろうな。更に増えた奴らが、仕掛けて来ないとも限らないし。消耗が少ない今の内に、数を減らしときたい所だけど……」


 じりじりと、間合いを詰めてくる奴らを見つめながら呟くフィルに声を返す賀川だが、その後が続かず口ごもる。

 それに、一瞬だけちらりとその蒼の視線を向けて促してくるフィルに、眼前を回る者達を見やったまま賀川。


「今の状態じゃ、ラッシュが打てない。アレなら、一気に数を減らせると思うんだけど」

「うっまい事、入れ込んでくるからなぁ、あいつら。「タメ」を作る時間は、確かにねーよなぁ」


 間を開けず攻撃を仕掛けて来る奴らのおかげで、決定打を打ち込めずにいるのはフィルも同じ。同意するように言葉を続けるフィルだが、ふと先程の事を思い出し。ニヤリとして。


「賀川(お前)、身体で払うんだろ〜? ならお前がイケ」

「えええっ? 確かにそう言ったけど。こんな状態じゃ、タメられないってわかってるだろっ。無理だ!」


 既に決定事項の如く告げられたそれに驚きつつも、慌てていい募る賀川。

 これではまるで自分の方が囮のようで、その間にレディフィルド(こいつ)が他に行かない、とは考えられず……というか、物凄くありそうで考えたくない。

 そんな賀川の心内など知るよしもなく、尚もニヤリとしたままでフィル。


「んな事ねぇだろー? 無理って事程、やってみりゃ意外と出来るモンなんだぜ?」

「……じゃあお前、タメの時間作れよ?」


 各々から繰り出される攻撃を、捌きながら言い合う二人。

 そんな状態でもちゃんと敵の攻撃を避け、弾き。間を取って仕掛けに出たりもしているのだが、これでは敵との攻防の方が何か(言い合い)の「ついで」であるかのようだった。


「な?」


 仕掛けて来た二人を棍を振るって退かせ、呟いてじっとり、とした黒の瞳を向けてくる賀川に、長針を合わせていた手を返し、続いた攻撃を地を蹴って飛び退き避けながらフィルが声をあげる。


「はぁ? なぁんでこの俺様が」


 そんなフィルにぱちりとその黒目を瞬いてから。フィルを流し見るその目を細め、ふふんと笑って。


「出来ないのか? 大層な事を言うわりに、お子様(子供体型)のレディフィルドじゃ、やっぱり無理か」

「あぁ? んな訳ねーだろ! この俺様に、出来ねぇ事なんかねーんだよっ!」

「じゃ、宜しくな?」


 声を上げ、胸を張って言い切ったフィルににやりと含み笑みを向けながら呟き、その肩をぽんと叩く賀川。

 それにはっとして、乗せられた事に気付いたフィルがじろりと賀川を睨むが、自分で言ったんだろ、という笑み混じりの視線を向けてくるだけであり。

 コイツ後で絶対イジメて(泣かして)やると思いながら、フィルはガリガリと頭を掻いて。はあぁと長いため息を吐き。


 物凄く嫌そうな顔をしているフィルをちらりと見てから、打ち合っていた者を後方に退かせると、賀川は棍をぐるりと回して後の五人を牽制しつつ僅かに後ろへと下がらせ。

 側にザクリと棍を突き立てると、一つ息を吸い込み目を閉じて。集中し気を蓄え練り出す賀川。そのタイミングで。


「……〈E〉エオー」

 移動


 極小で呟かれた、ルーンを発動させる為の言語(キー)が、フィルの口から紡ぎ出される。

 チェーイールーから叩き込まれたその〈力〉が、ルーン文字を闇夜にふわりと浮かび上がらせた後、粒子となってフィルの身体に降り注ぐ。

 それはルーンを操る者にしか、聞こえない音、見えない光。

 チェーイールー(あんな奴)から教え込まされた、出来れば使いたくなかった力だが、四の五の言っていられない。


 時間は限りなく少ないと、思っておいた方がいい。

 (うしお)の行方を探して向かった、北の森での戦闘。そこからこの浜辺への移動時間。

 ここより前にいた奴らは、黒髪女とアプリに任せてきたとはいえ、先程なんらかの術によって砂地に押さえ付けられていた時の時間を考えると、かなりの刻が経っていると思われる。

 それに押さえ付けられていた際に光る糸によって描き出された陣は、大型のもののようだったが(大型になればなる程時間がかかるものだとはいえ)着々と、完成に近付いていっているのは嫌でも感じ取れていた。


 こんな所で、ぐずぐずしている暇はない。

 早急にカタをつけ、汐の元へと向かわねばならないのだから。


 粒子の光が身体に降りきり、それを見計らってフィルが左右の手に一本ずつ長針を構えた所で、突如動きを止めた賀川とフィルは敵の目には格好の餌食とでも見えたのか、六人が一斉に二人へと、勢い良く襲いかかる。

 六つの黒の線が、並び立つ二人にまるで引き寄せられるかのようにして迫り。

 敵が迫って来ている事はわかっているだろうに、微動だにしない賀川にニヤリとその口角を上げ。

 フィルがとん、と。その足を軽く踏み切った、瞬間。


 黒い横線が空を裂き。

 迫って来ていた六人が六人とも、一瞬にして後方へと一気に弾き飛ばされる。



 本来なら、他のルーンとセットで使われる事の多い「移動」のルーン。此方から彼方へなど、何処かから何処かへと移動する為に使われるこのルーンは、セットでのみその効果を発揮する、と思われている事が殆んどである。

 しかし、単体では使えないなどという事は、勿論ない。

 寧ろ戦闘などで行使される際は、非常に重宝されるルーンと言える。

 このルーンが施された対象は「移動」を行うその際、その移動速度が、即ちそのスピードが、上がるのだ。

 それは微々たるものから、目に捉えられない程の速さのものまでと様々であり。

 施された対象の耐性、熟練度等も勿論関わってくるのだが、常人や玄人であっても初見ではフィルのそのスピードを、目に捉える事すら難しいだろう。


『……っ……!?』


 後方にいる、獣面の少年少女達の息を飲む気配が伝わってくる中、敵の攻撃を弾いて素早くもといた場所へと戻り、賀川と背を預け合った状態のまま、くるりと長針を回して弄び。


「どうしたぁ? かかって来ねぇなら、此方からいくぜぇ?」


 フィルはニヤリとした表情(かお)で、サラリとそんな事を宣った。



集団?戦闘一回目

賀川さんとフィルのターンでしたっ

ここで使わせるつもりではなかったモノがちらり…

さて、お次は天狗仮面とカルサムかなーっと


桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より

http://nk.syosetu.com/n2532br/

賀川さん


お借りしております

継続お借り中です〜

おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ


※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です

ご注意ください



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