11/4 殺っちゃえ!
『現在桜月りま様宅でアリスさん奪還戦(12月1日付)にウチのフィル君参加中です!
こちら現在11月4日
ウチの『汐奪還戦』は桜月様宅の『アリスさん奪還戦』より一か月ほど『前』の話になります
メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが、各々『別日』の話になりますので、それそれでお楽しみ頂ければと思います』
きゃははははっ!
愉しそうな、少女の声が響く中。
ズッ、ズ……と、小刻みに続いていた振動が無くなったと、感じた瞬間。
フィル、賀川、カルサム、天狗仮面を取り囲むようにして漆黒の外套に身を包んだ集団が、いきなりそこに現れる。
『なっ!?』
それについ、驚いた声を上げてしまう面々。
しかしそれは一瞬で、次の時には互いの背を守り合うようにして、四方に陣を組む四人。
ゆらゆらとたえず移動するその者達に、隙無く視線を向ける。
揺らめく異様な気配が漂い、時折雑多に人の気配が入り交じる場所ゆえに、何が起こっても不思議ではなく。
此方は隠れてなどいないのだから、こんな風に囲まれてしまう事があるのは、ある程度想定されていた。
それ故にカルサムと天狗仮面は、長物の柄にそっと手を添え、傘次郎を自然に構える。
対するフィルと賀川の方も、カルサムや天狗仮面程ではないにしろこの浜辺の異様さは、ちゃんと感じ取っていた。
ただでさえ「見えない何か」に押し潰されそうになったり、眼前の獣面三人に、同種の面を被る幼女が纏うその雰囲気は尋常ではなく、周囲を取り囲む者達が目深に被っているフードの裾、着込んでいる外套の所々から見え隠れする、その赤い光は森で見たものと酷似していて、既に警戒レベルに達していた。
ピリッとした空気が漂い流れる中、視界に入っては消えていく赤い光を見つめながら呟くフィル。
「赤は危険信号なんだって、ちゃんとわかってんのかなぁ。(対象まで)迷わず行けるんはいーが、危険は危険でも、もっと別の危険がいーなぁ俺様〜」
「別の、って……。例えばどんな?」
戦闘中だというのにのん気にそんな事を呟くフィルに思わず、といった感じで傍らにいる賀川が訊ねる。それにニヤリとして。
「んなの決まってんだろ〜が。こう……、ボンキュッボンなお姉さん達に、しなだれかかられる〜とかさぁ」
「…………。レディフィルド、お前ってヤツは。こんな時によくもそんな……」
ボンキュッボン、の所で両手を艶めかしく動かしながら告げるフィルに、呆れながら返す賀川。そんな賀川にニヤリとしたまま呟くフィル。
「こんな時、だからこそだろ? 「構えすぎ」てんのも良くねぇからな〜」
「!」
なんて事ないように呟かれたそれに、はっとしてその黒目を瞬く賀川。
北の森で、赤い光と共に死をもいとわず遂げようとしていたCのその強い想いを見せつけられ、「死」を連想させるその色に、知らずと緊張していた事に気付き。
固く握り締めていた拳を開き、今度は軽く握ってから一瞬だけ苦笑を浮かべ。すぅ、と息を吸い込み緩やかに足を開いて構え、前を見据えて。
「そう言えばレディフィルド。お前、『身体で払え』って言ったよな?」
ルドで夜空を飛んでいた時の会話を思い出しながら呟く賀川に、視線は前から外さずにフィル。
「律儀なヤツ〜。俺様としては、ちょっとしたジョークのつもりだったんだがなぁ? んじゃま、お言葉に甘えてお前に全部、任していくとすっかなぁ〜」
「何となく、お前に「貸し」を作っておくのが嫌なだけだ。それにしても全部って……流石にそれは多すぎだろっ!」
にやにやしながら呟くフィルに、声を上げる賀川。俄に言い合いでも始まりそうなその雰囲気に、二人の後方から制止の声がかかる。
「戯れはその辺にせよ」
「同感である。仲が良いのは結構であるが、未だ戦場に身を置いているという事を、忘れてはならないのである」
「まったくでさぁ。賀三郎も隣の小童も、まだまだでやんすねぇ」
「……賀三郎?」
「……小童?」
「なっ、なんでもないのであるっ!」
続けられた三つ目(傘次郎)の言葉に小首を傾げるフィルと賀川に、見えないように手に持つ傘をバシリと叩きながら、天狗仮面は慌てて言葉を紡ぎ。
「殺っちゃえぇっ!」
Mの歓喜が混じるそんな声が響いたと共に、それまで周囲をぐるぐると回っていただけだった者達が、一斉に四人へと襲いかかる。
「……行くぞ」
「――参る!」
「団体さんご案内〜ってか」
「あぁもうっ、来いっ!」
それに各々呟いて、各々敵に向かい行く四人なのだった。
「一陣目は突破され、二陣目と只今交戦中、っと」
相も変わらずロッキングチェアに深く腰掛け膝の上に乗せた七番、汐のその栗色の髪を弄びながら、金髪の女が一つ呟く。
「……今までどうかと思っていたが、意外と便利なものだね。君のその能力は」
それに関心したように傍らにいる頭の男が告げると、目深に被ったフードの裾から覗くその紅い唇の端をニヤリと上げて。
「今頃褒めても何も出ないぞ? ま、そんな凄いモノでもないよ。大体私は、欲しくて手に入れた訳ではないし。ちょっとした代償の産物さ」
「だが、状況を把握出来るのと出来ないのとでは、その後の展開に大きく差が出てくるからね。――それで? 二陣は今、どんな状態なのかね?」
自嘲気味に呟かれたそれを気に留める事なく、頭の男は女に問う。それに苦笑を浮かべ。
「素直に教えると思っているのか? 私の性格ならもう知って(充分理解して)いるだろうに。――まぁ、いいけどね。今日は機嫌が良いしねぇ」
くすりと笑み直し、弄んでいた髪からするりと指を解くと、ぎゅうと汐を抱き締めながら女が告げる。
「そろそろ、Mの「お遊び」が、始まったって所かな」
「ほう。喰い散らかされなければいいが。……動員されている者達の数は?」
「えぇと……十二、かな。YにZ。他はΔ(デルタ)、Ω(オメガ)、Θ(シータ)、Σ(シグマ)、Γ(ガンマ)、Λ(ラムダ)、Ξ(クシー)、Π(パイ)、Φ(ファイ)、Ψ(プシー)だね。アレの「オモチャ」がこれだけいるなら、なんとかなるんじゃないのか?」
「それならいいが、どうだろうね。彼の者の力のその片鱗を、私は見てみたいのだがねぇ。ま、陣完成までは、ゆっくりとしているがいい。お楽しみは、後に取っておかなければ、ね」
含みある男のその言い方に、金髪の女も笑みを深め。意地悪く告げる。
「まるで突破されてきた方が、良いような口振りだね? そんな事を配下の者達が聞いたら、どう思うかなぁ?」
それに苦笑を浮かべ、肩を竦めながら男。
「早々に飽きて、森まで見に行っていた君がそれを言うのかい? 「遊びたい」のは、君も同じだろう?」
「まぁねぇ〜。待つのは得意の筈なんだけどね。眼前であんなものを見せ付けられて、おとなしくしてろという方が無理があるだろう?」
「確かにね」
赤の光がちらちらと舞い、先導師達の唱詞が流れる中、森での事を思い出してか、男女の含み笑みが溢れる。
「陣の完成は近い。それまでに、辿り着く事が出来るかな?」
「どうかなぁ? あぁでも。それなら早く早く来てくれないと、「僕」――。悪戯しちゃうかもしれないなぁ」
頭の男の後に続けるように呟いて。金髪の女はつつぅ、と布越しに汐の腕をなぞり撫でてその手を取り。
ぱくり、と。
その指を一本食み。
暫くしてから口を汐の指から離すと、頬に手を添えて自分の方を向かせ。その唇にいやらしく指を這わせながら。
「もぅ、誰かにあげたのかな? それとも、まだなのかなぁ。あぁ、ちょっとだけ暗示の枷を解いて観客の面前で奪ってやったら、この子自ら、僕達と来るって言い出すかもしれないねぇ」
くすくすくすと嗤いながら、金髪の女は愉しげにそう呟いた。
周囲を取り囲む、外套を身に付ける集団とは
そしてなにやら汐がヤバそうですね〜
三衣 千月様のうろな天狗の仮面の秘密より
http://nk.syosetu.com/n9558bq/
天狗仮面、傘次郎君
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
賀川さん
お借りしております
継続お借り中です〜
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※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です
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