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11/4 造られた魔法使い


『現在桜月りま様宅でアリスさん奪還戦(12月1日付)にウチのフィル君参加中です!

こちら現在11月4日

ウチの『汐奪還戦』は桜月様宅の『アリスさん奪還戦』より一か月ほど『前』の話になります

メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが、各々『別日』の話になりますので、それそれでお楽しみ頂ければと思います』






「七人もやられちゃってるみたいだし、三分の一も持ってかれてるのは流石にマズイと思うの。だから、代わりに。浜辺(ここ)に張り巡らされ敷かれてる陣の、〈柱〉に――、なって貰えばいいんだよ」


 にっこり。

 子供特有の、無邪気な笑顔がそこにあるのが、面越しであるというのにはっきりと見える。

 それを見て取りつぅ、とフィルの頬を一筋の汗がつたう。


 屈んでいる獣面達の中でただ一人、そこに立つ小さな少女は天使の微笑みを湛えたまま、悪魔のごとき言葉を紡ぐ。


「折角身動き出来ないように、捕まえたんだから。それなら〈繋ぐの〉、簡単だもん」


 ね? と。小首を傾げて呟くそれは、最早問いかけですらない。

 既に決定事項だ。


「……あっく趣味だなぁ……」


 その言葉にニヤリとした笑みは絶さずに、呟くフィル。するとそれに反応して、(メノ)がそちらへと視線を向け。今気付いたというように呟く。


「あれ、あれ? 外套(それ)メノ達のとおんなじ? お兄ちゃん、メノ達の仲間だったの?」

「違うよM。僕達の仲間に、白髪蒼瞳の子なんていない」


 Mの言葉に、(ニニクリ)がすかさず訂正を入れる。


「〈救済者〉を、奪いに来るような奴らだよ? 外套(アレ)(ベニファー)あたりのを、強奪したんじゃないのかな」

「なんだ、なんだ。そうなんだぁ」


 N(兄)のその言葉を聞いて、少女が漂わさせるその微笑みに、妖しさが足される。

 紫と黄の、危険なタイプの笑みが。


「じゃあ、じゃあ。やっぱり繋いじゃおうよ。四人とも〈不思議な感じ〉がするし、質は違っても、それなら馴染むの早いと思うの」


 獣面に開けられた目の部分から覗く、その瞳をにこりと細めて呟く少女。



 M達四人は、ルーンを読み解く先導師や(クリュリエ)のような結界術を扱う者達とは違うが、術式等を操る事に長けている。

 長けているというよりは、ある種のエキスパートと言った方が正しいだろう。


 うず高く聳える、雲をも突き抜けた山の頂きに立つ神殿の、表部分と裏部分。

 その裏を担う元老院の、八つある内七つの長を戴く、七人の長達が裏事用に〈子飼い〉にしている者達は各々、独自の特色がある。


 ある長の所は暗殺主体。またある長の所は諜報主体というように。

 それらは各々間の差別化を図ると同時に、その一点にだけ磨きをかけていれば良いというそれが、自ずとプロを育て上げる事となり。

 要所要所で、子飼いにしている者達を貸し借りして編成を組むというそのやり方が、互いの繋がりを認識させ、更に強固なものにして来た。


 互いが求める〈それ〉を、確実に手に入れる時の為にと。


 そんな中でM達の部隊は、術を扱う事に重点を置く所だった。

 先導師達のような、自然(ルーン)の力を、というものではなく。

 支援隊としての、Cのような座学と実践によって得た結界術を、というものでもない。


 その身体、その存在からして術を――、魔力を扱う事に長けている者達をと、〈造られ(調整され)た〉。


 魔力を内包する宝珠、魔道具(マジックツール)を細かく砕き、それを徐々に体内に取り込む事によって、自らの身体を〈魔力持ち〉に、魔道具〈そのもの〉へと成るよう改変させられた存在。

 襲い来る魔力、その波動による負荷と身体を内部から喰い破られ沸騰し蒸発するかのような、灼けつく熱に堪えうる事が、尚且つちゃんと自我を保てている者だけが、至れる境地。


 人工的に造られた〈魔法使い〉。


 魔法使いに憧れを、羨望を抱く者はそれらがいるとされていた時代(とき)より、徐々にその数を増やし。

 〈魔法〉も魔法使いも廃れたに等しい現代(いま)なお、いやだからこそ。

 その存在を、その力を。

 より強く追い求める者達は後をたたず。

 力を隠して現代に紛れ、細々と暮らしていた魔法使いの末裔や、魔法に魅せられ取り憑かれた研究者達によって、秘密裏に。

 長年行われてきた研究のその成果であるのが、M達四人の少年少女達だった。


 力を行使する際にはまだ僅かばかりの代償が必要である為、完全な魔法使いとまではいかないものの、力の制御率、自我保持時間の統計が合格ラインを越えているという点においては、幾分はマトモな成功例であるといえた。

 それ以外の者達などその殆どが、魔力に呑まれ自我を崩壊させて廃人と化すか、本能のみに突き動かされる、獣へと変貌を遂げ。魔力負荷に耐えきれず、見るも無惨な姿を晒したのち、その誰もが例外なくこと切れ。そうなれば後は再利用(リサイクル)するしかなくなる訳だが、再利用出来るだけ、まだいいのかもしれない。

 最も他の者達にとっては魔力云々がどうこうではなく、言う事を聞く(服従)状態である事の方が重要だったのかもしれないが。


 造られたとはいえM達は魔法使いであるが故に、森部隊の三人はまだ微かにその繋がりを感じるものの、前衛である獣面達四人の転送陣への繋がりがプツリと途絶えた事も、眼前に転がる四人が、なんらかの力を有している事もちゃんと分かっていた。


 最も優先すべきは〈七の継承者〉を無事に、長達の元へと送り届ける事。

 その為には、転送陣の早期完成は不可欠であり。


 (ルッテ)の言うように邪魔者はさっさと排除し、邪魔など入らない状態でより多くの力を陣に供給するという手も、確かにある。

 しかし邪魔がこれ以上入らないという保証はなく、自分達の魔力にはまだ代償が必要である為、限界があり。

 更なる敵がいる可能性。陣と繋がったまま、陣に影響が出ない範囲での魔力行使が出来る回数。不測の事態への対応等々……それらを加味した上で、眼前に転がる四人を排除する事も、可能であるといえば可能だった。


 しかし、いい具合に捕まってくれているのだ。

 ならば、それを使わない手はないだろう。

 此方がわざわざ、力を使ってやる必要など無いのだから。


「じゃあ、ちゃっちゃとやっちゃ(繋いじゃ)おっか♪ 質の違いによる相違は、こっちで調整すればいいんだしぃ」

「うん、そうだね。最終的には殺し(ヤッ)ちゃう訳だけど、(力を)搾り取れるなら、搾り取れるだけ搾り取ってからでも、遅くないし」

「救済者を――いや、継承者を奪いに来るような奴らには、お似合いの末路だよね」


 口々に、そう呟く三人の獣面達が手を添える魔道具が、その輝きを別のものへと変化させる。

 その中心部分から煌々と光を放っていたそれは、今や光る糸を思わせる程に細くなり。

 それを見やり、それまで立っていたMも砂地に膝をつくと突き立てた魔道具に手を添え、同じく光る糸を形成し。


 四つの糸は各々に砂地の上を走り回り、この浜辺一帯に敷かれ張り巡らされている陣を、夜闇にぼんやりと浮かび上がらせる。


 北の森から繋がり折り重なるようにして編まれ組まれた、三段階の巨大な、所々にサークルを有した幾何学模様の円陣を。


 その内部にいるフィル達にはその大きさを測る事など出来はしないが、それが相当のモノなんだという事は、その肌を通して嫌という程伝わって来ていた。


 浜に転がったままフィル、賀川、カルサム、天狗仮面(+傘次郎)達が油断なく走る光糸を見据える中、ポロリと。四つの糸の先が溢れ出で。その先がフィル達へつとと向けられる。


 それにごくり、各々がその喉を鳴らす。


 身動きの取れないこの状況下では、繋がれてしまうのは最早避けられないだろう。

 そうなれば力を無理矢理に搾取され、その糧とされるのは時間の問題だ。


 しかしそんな事、易々とさせてやる訳にはいかない。

 守るべき対象である筈の(うしお)を、敵の手に渡す為の手助けなど、まっぴらごめんなのだから。

 そんな屈辱を、甘んじて受けてやる気などない。


 だが、指一本すら動かせないこの状況からの打開策など、なきに等しい。


 先日の戦いであまりの事に、内なる力のその片鱗を呼び起こしかけはしたが、その力は、使わないと決めている。力を、使う程の事態ではないと思っているのもあるにはあるが、力なんてものは、あるからと言ってむやみやたらと、使うものではないとフィルは思っているからだ。


 ならば別の手を考えなければならないが、気を扱う事に長けている賀川とカルサムに任せる、という手もどうやら使えそうにない。

 気は必ずしも、そのまま使える、というものではないからだ。

 玄人であっても、その気を「練る」という行程を踏まねばそれを行使する事は難しく、十月末の戦いの終盤、賀川はその気を練り拳へと宿して行使していたが、気を練り上げるのに僅かなりと時間は要するようであり。

 そもそも負荷のかかっているこの状態で、集中する、という事が易々と出来るとは思えず。


 では天狗仮面にとも思うが、指一本すら動かせない状態なのには変わりなく、賀川が側にいる状態でその力を行使するのは、難しい事のように思えた。

 出会ったその瞬間に人ならざる者である事は、互いに理解出来ていた。

 天狗のその面を付けている事から「天狗」なのだろうとあたりをつけたフィルは、森での後始末を天狗仮面に任せた訳だが、賀川にバレないようにその力を使っていたのが端々に見え。

 それ故に、手を借りるのは難しそうだと結論付け。


(……どーすっかなぁ。森での(さっき)みたいに、繋がさせてぶち壊すには、ちぃーとばかし骨が折れそうだしなぁ。かといって、チェーイールー(あいつ)の力を使うんは癪に障る……)


 わざとゆっくりゆっくりと、此方の恐怖心を煽るかのようにしてひたひたと、砂上を這いずり来る光糸を見つめながら、フィルは思考を巡らし。

 その間にも徐々に此方へと這い寄り来ていた、その光糸がいよいよ、四人のその手に伸ばされかけた、その時。



 光糸を自ら掴む二つのその手と、チュチュン、くるぅ、という雀とマメ鳥の鳴き声が、そこにいる者全員の耳に響いたのだった。



造られた少年少女達

しかし、まだ代償がいるようで

そろそろ重力負荷フィールドから抜けたいですねー


三衣 千月様のうろな天狗の仮面の秘密より

http://nk.syosetu.com/n9558bq/

天狗仮面、傘次郎君


桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より

http://nk.syosetu.com/n2532br/

賀川さん


お借りしております

継続お借り中です〜

おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ


※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です

ご注意ください



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