11/4 告死天使の宣告
『現在桜月りま様宅でアリスさん奪還戦(12月1日付)にウチのフィル君参加中です!
こちら現在11月4日
ウチの『汐奪還戦』は桜月様宅の『アリスさん奪還戦』より一か月ほど『前』の話になります
メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが、各々『別日』の話になりますので、それそれでお楽しみ頂ければと思います』
ズズン、と。
凄まじい衝撃音、振動と共に巨鳥の身体が、めり込むようにして砂地に叩きつけられる。
それにより上がる砂煙の合間から見え隠れするのは、巨鳥の背から投げ出されるかのようにして砂地に転がる四人の者達と、半開きのような状態で砂を抉ってから倒れた赤い傘。
何かをその腕に抱えている者もいるようだったが、砂地にちゃんと立っている者は、誰一人としていなかった。
「成功? 成功?」
「みたいだよ。Mちゃん」
「ま、私とOちゃんにかかれば、こんなモンでしょ」
「まだ、安心は出来ないよL。先発の森部隊に、前衛の第一陣を突破してきているんだから」
窘めるかのような、少年のその声に肩を竦めて。
「もー、N君は心配性だなぁ。先発組も前衛組も、ただ弱かったってだけなんじゃないかしらね」
嘲笑気味に呟く少女。
「っぐ」
「う……動け、ない……っ」
「……ぬぅ」
「くぅっ」
四人の少年少女達の声が響く中、その場から動く事すら出来ない状態で、フィル、賀川、カルサム、天狗仮面が呻き声を上げる。
彼らが転がっているそこは見た目には何もないように見えるが、四隅に撃ち込まれた楔により、ある術が仕掛けられていた。
重力に、働きかける類いのその術が。
浜辺は揺らめく気配に被われ、三段階の陣に、人数分の魔道具。更にそれらを隠すように、まやかしの術がかけられているのだ。
術式等に通じているとはいえ互いに混じり合い、編み込むようにして多様に施されたその術を、一つ一つ選り分ける事など、早々出来うるものではなく。
更にその源に、中心部分に近付いていくにつれてその存在は大きなものとして認識されるのだから、その隣にごく小さな術が形成されていたとしても、気付かれない事の方が多い。
そしてその予想通り、此方に向かってきていた四人は、LとOが仕掛けた罠にまんまとはまってくれた。
四方に撃ち込んだ楔に、自分達の側に突き立てた魔道具から魔力を供給し。
その魔力を元に四つを繋いで、重力操作空間を作りあげる。
その範囲内に入り込んだ者達を地上へと引き摺り下ろし、地面へ張り付けさせる負荷をかけたものを。
発動のタイミングは術者に委ねられている為、目に見えているなら、外すなどあり得はしない。
「このまま押し潰しちゃおっか♪」
あははっといった感じで、まるで重しを乗せられたかのように浜辺に這いつくばって身動きすら出来ない悪者達に、Lは笑いながら告げる。
「うー、うー」
「L、そんな事したらMが怖がるから」
「私も、スプラッタなのは嫌だなー」
そんなLに口々に声を上げる三人。しかしLは尚も楽しそうに呟く。
「だぁってぇ。生かしておく必要なんてないじゃない。〈救済者を一人占め〉しようとしてる〈悪者〉だよぉ? ここで始末しちゃえば、奪いに来る事なんてもうなくなるんだし、それによって〈私たちのランク〉が上がれば……」
『!』
白の獣面越しにもニヤリとした笑みが、浮かんでいるのが分かるLのその言葉に、ハッとしたように顔を上げるM、N、O。
暫し、無言で互いを見つめていた四人の少年少女達だったが、四人の内三人が、ゆら……と。
浜に這いつくばる四人、フィル達に向けて妖し気な光を宿した眼差しを投げ。
「「頭」や「長」達の、お考えは素晴らしいんだ……」
「そうだね、そう。それに今より更に〈上〉に……。その先に、行けさえすれば」
「私たちにも――」
ぼそりぼそりと呟いて。
膝を付き、砂地に突き立てた魔道具にそっと、その手を添える三人。
「……や、べぇんじゃ……ねーの、かぁ?」
「く、そ……。う、ごけぇ……っ!」
「…………」
「……こんな……所でっ……負、ける訳には、いかないのであるっ……!」
それに身体は動かせないながら、その目はしっかりと敵の動きを捉え、その耳は四人の会話を、漏らさず聞いていたフィル、賀川、カルサム、天狗仮面の四人は、のし掛かる重力に耐えながら、言葉を絞り出し。
敵を油断無く見据えながら、なんとかこの重力負荷から逃れようとしてみるものの、箱に入れられピンで留められた標本の、昆虫であるかのように。その指の一本すら、ぴくりとも動かせないでいた。
かかっている重力負荷は、フィルや天狗仮面より巨鳥のままである鷲ルドと隼サム、その腕に少女クリュリエを抱くカルサムや賀川、半開きの状態の傘次郎の方が大きかった。
巨鳥のままのルドとサムは、その巨体故に、重力がかかる範囲が広すぎる為に。
カルサムと賀川に傘次郎は、その内部に各々、獣面達を抱え込んでいる為、砂浜とぴったりと密着しほぼ水平に近い状態のフィルや天狗仮面に比べ、地面との空きがあり曲線を描くような体勢の為、更に余計な負荷がかかっているのだ。
落下のその瞬間、ルドの背から投げ出されるかのように空中に放り出された為に、若干の浮遊感に見舞われたその時、咄嗟にポケットから出した紐をルドの足元に投げ伸ばした賀川は、その足に掴まえられていた獣面の少年ベニファーを絡め取って、自身へと引き寄せるようにして引っ張り。
地面に叩き付けられる前に、少年を抱き込んで来たる衝撃を軽減させ。
するりと、まるでただ隼のその背中から落ちてしまったかのように。自然と夜空の中へと滑り出した傘次郎は、サムの足に掴まえられていた棍使いアディリオを傘の内側へと収容し。
ひょろい背丈の所為で思ったより重力に引かれる率が高く、砂浜を抉って倒れる、等という事になってしまったとはいえ、なんとか衝撃を和らげてやる事ができ。
二人(?)共、意識もなく巨大な鳥に何も出来ないまま押し潰されて死ぬのは、あんまりだと思ったが故の咄嗟の行動だった。
その時は、後の自分がどうなるか等、考えてはいないかっただろう。
しかしフィルと天狗仮面にしてみても、他の者達よりは負荷が軽減されているとはいえ、動けない事に変わりはない。
自分達への体感的負荷は軽減されているのだとしても、「それ以外」の要因により動かせるとされる範囲は、他の者達よりもかなり限定される。
敵から頂戴した、若干大きいその漆黒の外套が。
自身の背で揺れる、唐草模様のそのマントが。
まるで身体にフットするよう造られた、超重装の鎧であるかのようで。
広がった、砂地に落ちる部分など、杭ででも打ち付けられたかのように、ぴったりと砂地部分と結合していた。
もし今その部分を大きめに切り取って立つことが出来たなら、砂地部分まで、一緒にくっついてきそうだった。
砂地に無力に。
這いつくばったまま、何も出来ない四人の眼前で。
膝を付いた獣面三人が手を添える、微細な光を放っていた魔道具が、いよいよ。夜の暗闇にも鮮やかに、その光を現させる。
万事休すか。
夜闇に、煌々と光を放つその魔道具を凝視しながら、フィル、賀川、カルサム、天狗仮面、傘次郎がそう思った、その時。
「待って、待って」
四人いる獣面達の中で一番小さな少女Mが、制止のその声を上げ。
それに他の三人が、訝しそうにMに視線を向けるが。
「押し潰す(そんなの)より、もっといい方法があるよ」
言いながらの少女から醸し出される、その。
無垢の中にあっても僅かな毒を孕んだ、媚薬であるかともいえる、面越しにでもはっきりと見て取れる程の、その告死天使の微笑みに。
獣面三人は、微動だにすらせず耳を傾け。
這いつくばったままのフィル達四人は、ゾクリとその身を震わせた。
アレは。
一難去った、などという、温かなモノなんかではない。
押し潰される事なんかより、もっと無慈悲で残酷な――
そこまで思考が回った所で。
天使のような微笑みを漂い向かせるその少女が、子供らしいその声で。
新しい玩具を見つけ歓喜を帯びさせたその声で、宣告した。
「七人もやられちゃってるみたいだし、三分の一も持ってかれてるのは流石にマズイと思うの。だから、代わりに。浜辺に張り巡らされ敷かれてる陣の、〈柱〉に――、なって貰えばいいんだよ」
まさか、引きずり下ろされたままの状態で、一話分使う事になるとは…
さて、どうしようかなー?
三衣 千月様のうろな天狗の仮面の秘密より
http://nk.syosetu.com/n9558bq/
天狗仮面、傘次郎君
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
賀川さん
お借りしております
継続お借り中です〜
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※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です
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