11/4 浜辺での戦闘その1 二人の少女3+その先で
『現在桜月りま様宅でアリスさん奪還戦(12月1日付)にウチのフィル君参加中です!
こちら現在11月4日
ウチの『汐奪還戦』は桜月様宅の『アリスさん奪還戦』より一か月ほど『前』の話になります
メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが、各々『別日』の話になりますので、それそれでお楽しみ頂ければと思います』
『これで終わりっスね!』
完全にノビている獣面の者を、くわえる三つ首の獣、ケルベロス(リズ)がそう呟く。
その下方には、アプリ特製のシャボン玉が置かれており。
するんと、その内部に収容される獣面。これで四人。二人が戦った獣面達全てが捕えられた事になる。
三つ首の獣と化したリズと獣面達との力量さは、歴然だった。
巨大なその足から繰り出される、圧倒的なパワーとスピードののった重い攻撃。
口から吐き出される炎は業火の如く、身体を焼き焦がさんばかりの勢いで迫り。
運良く捌け、躱す事が出来たとしても。それは一時的なものであり毎回、などある筈もなく。
獣面達が勝利する為の勝機など、欠片もありはしなかった。
しかし、彼らとて幾度となく戦場を切り抜けて来たというそのプライドが、そして何も出来ずに敗北するという無様を晒す、など出来る訳もなく。
獣から響いた雄叫びのような声にはっと意識を呼び戻すと、果敢にも一番早くそこに突っ込んで行ったのは、誰より疲弊しているであろうHだった。
その後を追うようにIとKが続き。三人とは反対側にいたJも、バタフライナイフを投擲して援護する。
だが、その体毛は柔軟性がありながらに強靭さをも併せ持ち。短刀の、山人刀の、バタフライナイフのその刃を。体毛の下に届かせる事なくあっさりと弾き。
或いは、その巨大にそぐわぬ俊敏な動きでしなやかに攻撃をかわされ、その身体に傷一つ負わせる事は出来なかった。
それでも更にと攻撃を仕掛ける獣面達。しかし攻撃の威力は難なく削がれ、それまでに行われていた戦闘の疲労が蓄積し。
魔道具は壊され、ただでさえ陣形成の為にその身体から〈力〉を搾取されている状態であった為に、獣面達の敗北は最早時間の問題だった。
何か打開策はないものかと策を巡らせてみるものの、そうこうしている内に陣形は崩され。一人、また一人と戦線を離脱し。立て直しはかなわず、リズに蹴散らされる事となったのだった。
獣面達四人が、アプリのシャボン玉に収容されたのをちゃんと確認してから、巨獣のその姿から人の姿へと戻るリズ。
「あぁ、あぁ〜。戻っちゃったぁ〜。……なでなでしたかったのにぃ〜」
それにリズの邪魔をしないよう、後方で観戦者よろしく自身の周りに張っていた防御用のシャボン玉を闇間に散らしながら、てってけと歩み寄って来たアプリから、なんとも残念そうな声が上げられる。そんなアプリに苦笑して。
「なでなでって、私は犬じゃないっスよ! ……それにしても、そのシャボン玉凄いっスね。爆発(攻撃)結界(防御)収容(捕獲)まで出来るんスか」
「アプリちゃんの、アプリちゃんの。本領は支援さんだからね〜☆」
くるりん。手に持つラッパを回しながらにぱっとリズに呟くアプリ。
そんなアプリに頷き、それならと。リズはクルリと踵を返し。
「後は大丈夫そうっスね。じゃあ私は、これで失礼させてもらうっスよ」
「えぇ〜、えぇ〜!? お姉さん、もう行っちゃうの〜?」
リズのその言葉に不満げなアプリの声が上がるが、それを制して。
「妙な気配が満ちてるっスけど、あれだけの者達がいるなら、大丈夫だと思うっス」
一瞬交錯しただけで、かなりの手練れがあの巨鳥の背に乗っているのを感じ取っていたリズは、後は大丈夫そうだと判断してそう告げるが、それを留めるようにアプリが声をかける。
「でも、でも」
「それに、あの鳥から「嫌な臭い」が流れてきてたっス。って事はあの鳥には、賀川さんが乗ってるって事っスよね。なら――、いま森で、雪姫ちゃんは一人って事っスから」
「…………」
声を返したリズの、その言葉に。
〈同じもの〉を感じ取ったアプリは、コクリと一つ頷いて。
「そっかぁ、そっかぁ。お姉さんも、あのお兄さんも、アプリ達と同じ〈大切な人を守る者〉なんだね。じゃあ、じゃあ。引き留めるのはダメだよね〜」
にっこりと告げて。
改めてリズを見上げると、
「助けてくれて、助けてくれて。ありがとう、お姉さん」
お礼を述べてペコリ、そのおだんご頭を下げる。それに若干照れながら、
「お礼を言われるような事はしてないっス。私は、悪いヤツらが許せないだけっスから」
それだけ言うと、そこから立ち去ろうとしたリズに、アプリがあっと気付いて慌てて声をかける。
「待って、待って。お姉さん! お姉さんのお名前はっ!? アプリちゃんは、アプリちゃんは」
リズがくるりと此方を振り返ったのを見て、姿勢を正し。右手を胸前に、礼をとって。
その翠眼を真っ直ぐにリズへと向けて。
「アプリファム・トゥリディース・スクロム。七守より賜るは「支」の四番。雀アムを繰りし守護者の一人」
「――私はナベリウス。ソロモン七十二柱が一柱。序列二十四位の堕天使っス」
各々告げて暫し、その視線が絡み合い。
続けるように「でもここ(うろな)では、緋辺・A・エリザベス、皆にはリズって呼ばれてるっス」とリズが呟き。
どちらともなくふっと笑うと、今度こそリズは地を蹴って、夜の空へと舞い上がり。
夜の闇に紛れる事無く艶やかに光沢を弾く、ポニーテール(しっぽ)がゆらりと揺れる中、風の如く疾さで駆け去っていくリズのその後ろ姿に、手を振って。
「今度、今度。会えたら! その時は、その時は。手合わせしてね――リズお姉さんっ!」
大きな声でアプリはそう告げたのだった。
そんなアプリの頭の上に今までおとなしく鎮座していた雀のアムは、パタリと翼を羽ばたかせるとアプリの頭上をくるりと一回りしてから、飛び去った鷲と隼を追うようにその進路をとったのだった。
アプリとリズが戦った場所より、先の浜辺で。
「来たよ、来たよ」
「うん、来たね」
「私達から」
「〈救済者〉を、奪おうとする悪者が」
バサバサと、二羽の大きな鳥が羽ばたくその音が近付いてくるのを聞きながら、正方形に敷かれた陣のその中で。
四隅に立つ、漆黒の外套に身を包みその顔部分に白の獣面をつけた四人の、少年少女達がくすくすと囁き合う。
「どうする? どうする?」
「どうするって、そんなのもう、決まってるよ」
「断固阻止でしょ」
「僕達が、救済者を〈守る〉んだ」
力強く告げられたそれに、同意するように頷いて。
各々が立つ、その場所と波打ち際との調度真ん中に。四つの楔を撃ち込み。
「M、準備はいいね?」
「はい。Nお兄さま」
「Lちゃんの方は?」
「勿論バッチリよ、Oちゃん♪」
各々確認し合うと、笑みを帯びた気配を色濃く漂わせ。四人は。
微細な光を放つ魔道具を、砂地に勢い良く突き立てた。
時は少し戻り。
アプリと黒髪の少女にその場を任せ、鷲ルドと隼サムで先へと赴く四人。
出来れば、医療に長けているアプリに自身が抱く獣面の少女クリュリエを託していきたかったカルサムだったが、アプリも敵と交戦状態であった事から、それは不可能だろうと判断し。
その進路を、揺らめく気配が漂い流れてくる中心へと向ける。
異様異質な、揺らめく気配が漂う浜辺。
それに混じって時折、雑多に人の気配が溢れ出す。
それにより、まだ敵は複数いる事が容易に知れ。
ステルスコート等姿を隠す類いのものは付加していない為、此方の動きも敵側に既に知れていると想定したカルサムは、そんな中で少女を守りながら戦う事も、尚且つ少女の治癒をさせてくれる、などとは勿論思ってはおらず。
ならば、早急に敵を排除し、しっかりと安全を確保した上で治癒にあたるのが最善だと、同乗している天狗仮面と隣を並走する鷲ルドの背上にいるフィルと賀川に論し。
皆の同意の元、先へと歩みを進める二羽と四人だったが。
暫し、浜を行ったその先で。
ズンッ! と。
空間が、空間ごと揺れたかのような衝撃を受け。
「げ」
「なんだっ!?」
「ぬぅっ」
「いかん!」
突如かかった負荷に耐えきれず。
重力に引かれ。
ルドとサム、そしてその背に乗っていた面々(+捕われている獣面達)は、空から地上へと。
ズルリと引き摺り下ろされた。
浜辺での戦闘その1、なんとか終了です!
本気モードのリズちゃんには、流石に敵いませんでした(苦笑)
朝陽真夜様の悪魔で、天使ですから。inうろな町より
http://nk.syosetu.com/n6199bt/
リズちゃん
三衣 千月様のうろな天狗の仮面の秘密より
http://nk.syosetu.com/n9558bq/
天狗仮面、傘次郎君
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
賀川さん
お借りしております
継続お借り中です〜
おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ
長々リズちゃんお借りしておりました
朝陽様、本当にありがとうございましたっ!
※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です
ご注意ください




