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11/4 浜辺での戦闘その1 二人の少女2


『現在桜月りま様宅でアリスさん奪還戦(12月1日付)にウチのフィル君参加中です!

こちら現在11月4日

ウチの『汐奪還戦』は桜月様宅の『アリスさん奪還戦』より一か月ほど『前』の話になります

メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが、各々『別日』の話になりますので、それそれでお楽しみ頂ければと思います』






 ラッパの音が鳴り響く中。

 去り行く二羽の巨鳥を、追うように伸びた菌糸がその背を捕らえんとした、その時。

 巨鳥と菌糸の間に、割り込むようにしてふわりと現れたシャボン玉が、(カルカロ)の手から伸びたその菌糸を、留めさせる。


『なにっ!?』


 それに驚いたような四つの声が上がる中、ふわふわと自身の周囲にシャボン玉を漂わせながら、アプリはにぱりと笑みを浮かべ。


「なんとか、なんとか。ギリギリセーフ! そんな、そんな。簡単に。捕まえさせてなんかあっげないよ〜☆」


 少女らしいその声で呟く。その間に巨鳥は飛び去り、それに(イーン)は舌打ちしながら山人刀を振りかぶり。


「おらぁっ!」


 眼前のアプリに勢い良く迫る。

 そんな獣面男を見て、ふわり。菌糸が垂れ下がったシャボン玉が闇に紛れ漂う中、ニヤリとその口元に笑みを浮かべるアプリ。


「い、イーン君っ!」


 その笑みに気付いて、留められたと共に薬の塗り込まれた短刀で菌糸を切り裂いたKが、叫んで菌糸をIに向かって伸ばし。中肉中背のその男の身体を絡め取ると、ぐんっと後方に強く引っ張る。


「おわっ!?」


 それによりガクンとつんのめった形になったIが、引かれるままに後方に退き。一瞬前まで男がいた、その場所が。


 ドドドッ!


 盛大に音を轟かせ爆発する。

 砂塵が巻き上げられ、もうもうと立ち上る黒煙が、少女の姿を覆い隠し。


「残念、残念〜☆ 今度は、ちゃんと捉えたと思ったのにな〜♪」


 黒煙の向こうから、アプリのそんな声が届く。

 上る黒煙を凝視したまま、最初の攻撃がアプリ(敵)が持つラッパから吹き出された、シャボン玉が破裂して引き起こされたものだったと、ちゃんと覚えていたKが呟く。


「だ、駄目だよI君。あ、あのシャボン玉、爆発するんだから。き、気を付けなくちゃ」

「あ、あぁ。そうだったな」


 それに、一番ちっこい(こいつ)のその細腕に、一体どんだけの力があるんだと思いながら、菌糸から解放されたIが呟き頷く。


「そんな必要、もう無いと思うっスよ?」


 しかしそこに含んだような、リズの声が滑り込み。


『!?』


 その声にはっとして、IとKがそちらを振り向くと。

 獣化したリズの腕から伸びる、微かに炎を纏っている爪先にその喉元を捉えられ、砂地に組み敷かれている(ヒヒリナ)の姿が目に入った。


 付けている獣面から覗く瞳はまだ闘志に燃えているが、その両手は獣化したリズのもう片方の手に易々と捕まえられており、その身体は、まるで鎌鼬にでも切り付けられたかのようにボロボロで、外套は最早意味をなさず。

 激しく胸を上下させる様子からHがかなり疲弊しているのは明白であり、馬乗りされた状態から抜け出すのは、困難だろう事が容易に想像できた。


「くぅっ……」


 呻いて、爆発の騒ぎに紛れ俊敏に此方へと迫り、たった二手で自分を組み敷いたリズを、憎々しげに見上げるH。そんなHをニヤリと見返し、IとKに視線を投げながらリズ。


「いくら悪党でも、仲間の命は大事っスよね?」


 それに。


「そうだね〜。だから、解放してくれると嬉しいなぁ?」


 リズの背後から声が響き。


「!」


 咄嗟に後ろを振り返りかけた、リズのその首筋に。ヒヤリとした、冷たいモノが押し当てられる。バタフライナイフの、その刀身が。


「……(爆発に紛れて)動いてたのは、私だけじゃなかったって事っスか」

「そういう事。さぁ、Hの姉御を放してくれないかなぁ」


 鋭い視線を寄越しながら告げるリズに、にっこりと(ジュケ)は言う。

 本来なら、腕だけとはいえ獣化したリズのそのスピードに、追い付ける人間(者)などいない。本気を出していないとはいえ、そのスピードは風のように疾く、Hはなんとか避けるだけで、精一杯だったのだから。

 しかしそんなリズの後ろを取ったJ。

 ただ、KがIの援護に回った為代わりにHの支援に向かった矢先、その場面に居合わせたというだけだったのだが、そんな素振りは一切見せずに言いながらつつぅ、とリズの首筋に添わせたナイフを滑らせる。

 それにより、生身の首筋に走った線から赤い鮮血がじわりと溢れ。着ているライダースーツに、その赤を落とす。

 それにちっと舌打ちしてから、リズはそっとHの上から降り。

 解放された事で安堵したせいか、知らずと息を詰めていたHが激しく咳き込み。それに慌ててIとKがHへと駆け寄っていく。

 二人がリズとHの間に割り込むように来た為に、僅かにHとの距離が開いたものの、その刃は未だリズの首筋に添えられたまま。


「あぁ、そうそう。黒煙で姿をくらませて〈何かしようとしている〉、そこの君も、ね。この子が、殺されちゃうのは嫌だよねぇ?」


 今気付いたというように、黒煙の上がる箇所を見つめて獣面のくり貫かれた穴から見えるその目を、にこやかに細めて話を振るJ。

 しかし、返ってくるのは沈黙のみ。

 つるぅり。更にその刃がリズの首筋を滑る。


「あれれ、いいのかなぁ? 君の所為でこの子が死んでも。仲間なんじゃないの? ――あぁ、違ったっけ。でも、それならなおのこと嫌なんじゃない? なんの関係もない子が、君の所為で死んじゃうんだよ〜?」

「この……っ!」


 我慢ならず、といった感じで声を上げようとしたリズの目の前で、立ち上がっていた黒煙がサァッと霧散し。


「それは、それは。流石のアプリちゃんでも困っちゃうかなぁ〜?」


 ふわふわり。

 大量のシャボン玉を周囲に漂わせながら、苦笑いを浮かべてアプリが呟く。


「なっ!?」

「い、いつの間に……こんなに」


 その光景にHを介抱しているIとKが息を飲む。

 新月の次日。月も星の光りも届かない、闇夜。

 夜の暗闇に紛れるよう調整された、そのシャボン玉はよくよく見ないとわからない程だったが、ざっと見ただけでもその数はゆうに百を越えている。


 眼前のアレがもし。

 全て、爆破を引き起こすシャボン玉なんだとしたら――。


 その事に思い至り、背筋に冷たいモノが滑り落ち。ゾクリと、その身を震わせるK。

 しかし、眼前のアレが何かわかっているだろうに、恐怖(そんなもの)など感じてすらいないのか、Jは笑みを含んだままの声音で告げる。


「人質諸とも、心中でもするつもりなの〜? まぁ、この状況で行使出来るとは思わないけど。そのつもりだったのなら、そのまま爆発させればよかったんだから」


 ねぇ? と訊ねるような視線をアプリに向けるJ。それを翠眼で真っ直ぐ見つめ返し。


「そうだね、そうだね〜。そのつもりだったんなら、ね〜☆」


 にっこり。サラ、と何処かでシャボン玉から垂れ下がる菌糸が、ふわりと風に靡く中。笑顔で呟くアプリ。そのままちらりと視線を逸らし、Jに捕われたままのリズを見つめる。夜闇にキラリと、アプリの翠眼が光を弾き。


「…………」


 そんなアプリの目を見つめるリズのその目端に、闇夜をふわりと漂う、微かな丸い線が映り込み。

 リズのその超感覚が、周囲の様子を正確にリズへと伝え。

 それによりアプリの意図に気付いて、リズの唇が笑みの形を描き。


「私は〈人質〉に、なんてなった覚えはないっスよ。あんまり――、見くびらないでほしいっスね」


 呟いたと共にさわりと、リズの周りが熱をおび。

 それに煽られるかのように、ふわわとシャボン玉が周囲を彩る。


 この辺り一帯を囲い込むかのようにして張り巡らされた、無数のそのシャボン玉が。


「な、に……?」

「ま、まさか」


 それに目を見張る四人の獣面達。

 その様を見て取り、リズとアプリの口元がニヤリとした笑みを作る。


 なにもアプリは黒煙に隠れ、ただシャボン玉を量産していただけではない。

 自在に操れる漂う凶器を闇夜に紛れさせながら、風の流れに乗せるようにして自然と漂わせ。


 知らずと周囲を取り囲む、シャボン玉の檻を形成していたのだった。


 (ヒヒリナ)を砂地に組み敷いたリズに、獣面達の視線が集中していたからこそ、出来た芸当。悟られずに檻の形成が出来た事に、にんやりとした笑みを浮かべながら。


「背後を、背後を。取ってたのは、お兄さんだけじゃなかったって事だよ〜☆」


 可愛らしくアプリが呟いた、その時。


 オオン、と。

 浜辺を揺るがすような、獣の雄叫びが響いたと共に。


 突如沸き起こった巨大な、大きすぎるその炎が瞬く間に弾けると。

 夜闇を緋色に彩る燐光を撒き散らしながら、その場にズンと現れたのは。


 ――三つ首の。口から灼熱の炎を吐き出す、巨大な獣。


 緋色の光を反射させる黒々としたその毛並みが、夜の闇にも艶やかに映る。


『…………』


 目を見開き、ただただその獣を見上げる(ヒヒリナ)(イーン)(カルカロ)の三人。

 突如現れた、見上げる程デカイその獣に、思考が完全に停止している。

 そんな中、側近くにいた為に沸き起こった炎と衝撃波によって後方へと弾き飛ばされた(ジュケ)は、シャボン玉の檻を背に座り込んだ状態のまま、獣面が割れて砂地に落ちたのにも気付かずに、眼前に聳えるように座する黒き獣を見上げ。


「……腕や足、一部分の(ビースト)化や狂暴(バーサク)化なんかは薬やなんかで、引き起こせたりするけれど。まさか既に、完全体がいたとはねぇ〜……。いや。どっちかといえば、獣が人間(ヒューマ)化していた、といった方が正しいのかなぁ、アレは」


 ポツリと呟かれたそれは、波にさらわれ誰に届く事もなく。


「はわ〜、はわ〜☆ おっきい、おっきい。ケルベロス(ワンちゃん)だあぁ〜♪」


 リズが一度変身したのをキラキラした眼差しで見つめていたアプリは、思った通り、更なる変身を遂げたリズに歓声を上げ。そんなアプリの声が響く中。


『『『片付けるっスよ!!!』』』


 底から響くような、三つの声が連なり聞こえ。



 シャボン玉に覆われた、檻の内部(なか)で。

 口から炎を吐き出す、三つ首のその獣は。


 宣言通り、四人の獣面達を瞬く間に蹴散らした(片付けた)のだった。



まさかの巨大(獣)化でのお片付けでした(笑)

そんなつもりではなかったのですが…

浜辺での戦闘1回目、なんとか終了かな?

次は(たぶん)あの彼ら、です


朝陽真夜様の悪魔で、天使ですから。inうろな町より

http://nk.syosetu.com/n6199bt/

リズちゃん


お借りしております

継続お借り中です〜

おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ


※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です

ご注意ください


告知?遅れましたっ

今年も海の家ARIKA 7/19土曜から8/31日までやってます!

宜しければいらしてくださいね〜♪

あ。海ちゃんだけ、使用の際はご一報頂けると嬉しいです〜



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