11/4 交わるものたち
『現在桜月りま様宅でアリスさん奪還戦(12月1日付)にウチのフィル君参加中です!
こちら現在11月4日
ウチの『汐奪還戦』は桜月様宅の『アリスさん奪還戦』より一か月ほど『前』の話になります
メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが、各々『別日』の話になりますので、それそれで、でお楽しみ頂ければと思います』
視点切替ありです、ご注意ください
「おやおや。最前列が、どうやら乱れたみたいだよ。邪魔が入ったようだね? 邪魔者は、可愛らしい少女二人のようだけど」
何処から出してきたのかロッキングチェアに腰掛け、膝の上に七番の少女を乗せてゆらゆらと揺れながら、金髪の女がニヤリと囁く。
こんな所(最後尾)から、最前列など見える筈もないというのに。
まるで今まさに、見て来たかのように告げるその女。
それに一つ息を吐いて。
この何処までもデタラメな「女」に、境や隔たりなど無意味だったな、と思いながら。
「邪魔が入らない――とは、流石の私でも思ってはいないけれどね。……少々早いね。(転送)陣の形成には今暫くの刻がいる。守護者側も、二手に分けてきたという事か。用意の良い事だ」
「どうするのさ? まぁ、最前列なんて末端ではあるけれど、彼等にもちゃーんと「役割」はある訳だからねぇ」
頭の男がやれやれと呟いたのに、含んだままの笑みを乗せて呟く金髪の女。
それに同じく笑みを浮かべて返す男。
「出来れば陣を形成しているままの状態でいてもらいたかったが、邪魔が入ったのならばそれも不可能だろう。だが各々、〈柱〉としての筋は繋がっているのだから、そう問題はないと思うのだがね。それにもしもの時は『予備』を、使えばいいだけの事なのだから」
そこで一端言葉を切り、最もと呟いて続ける。
「一番手っ取り早く、というのならば、ただ始末してしまえばいいだけ事だ」
頭の男のその言葉に、金髪の女の紅い唇の端がニィと上がる。
「まぁねぇ。もしくは彼女達を――、『使う』という手もあるけどね」
告げて、くすくすくすと女が嗤う。
目深に被ったフード越しだというのに、細められたその目が無邪気を晒しているのが見え、溢れた紅い唇が、妖艶な笑みを作る。
「怖いねぇ」
それに苦笑しながら、頭の男は返すのだった。
その耳元で、指から耳へと付け替えられた二つの振り子が、絶えずゆらりゆらりと揺らめいていた。
砂浜に波が寄せては返し先導師達の唱詞が微かに響き流れる中、言葉を交わす男女の背後を、無数の赤の光が暗闇に覗き。
しかしそれは、瞬く間の事であり。当事者同士しか気付かない程微細なそれは、風にさらわれ消え去ったかのように、その片鱗をその場に残す事はなく。
金髪の女に抱かれたままの汐は、その事にも素肌と肌着の間で揺れる、首から下げた夜輝石がキラキラと輝いている事にも、気付く事はなく。
「…………」
眼前で砂と共に踊っている真っ黒な波のダンスをただただ、何も映していないその瞳で見つめるのだった。
ザッ、と。
浜の砂を擦るその音が、聞こえたか聞こえないかというその間に。
至近に距離を詰めたリズが、獣化したその腕を繰り出す。
「っ!」
「わわっ!?」
それを紙一重で避けるのは、HとKの二人。
ヒラリと身を捻って難なくかわしたHには目もくれず、なんとか回避出来たという感じのKの方に標準を合わせ、間髪入れず勢いそのままに回転するようにその片足を蹴り上げる。
「っぐ!」
リズからの膝蹴りをまともにくらって、微かに呻いてKがそこから蹴り飛ばされていく。
バタバタと外套の裾をはためかせ、Kの身体が空を舞う。
あと二、三発その腹に入れてやればKは沈むだろうと推測するリズだが、それを追う事はせず軸足をくるりと回転させると、背後に迫っていたHが振るったその手を掴み取る。
側近くで、バシャンという飛沫の上がる音を聞きながら、
「女だからって、私は容赦しないっスよ。このまま、握り潰してもいいんスけどね?」
呟いてナックルが嵌められたままのHの手に、そのまま力を加えるリズ。
ただのナックルなどリズには玩具に等しく、Hの手を握り潰す事など造作もない事だ。
それに本能的に危険を感じたのか、短刀を持ったもう片方の手が切り上げられ。
「遅いっスよ〜♪」
ぱっと掴んでいたHのその手を離すと、しなやかに攻撃をかわすリズ。
くるくると空中で回転し、数歩開いたそこにスタンと降り立つ。
それに舌打ちしながらも突っ込んでいく事はせず、睨み付けるような視線を向けるH。
波音が響く中、二つの視線が絡み合う。
リズとHが対峙しているその側で。
交戦しているのはアプリとI、Jの獣面男達。
アプリからの刺突技を避けながら、囁き合う二人。
「ねぇ、I君」
「あん? なんだよ」
スレスレの所を避けながら呟くIに苦笑を漏らしながらJ。
「ちょっと思っただけなんだけど〜。僕達、あの場から動いてよかったのかなぁ? って〜」
「……俺達が露払いなのは、最初からわかってた事だろ。敷かれてる術や陣がどうとかなんてのは、俺にはわからねぇけど何も言って来ないって事は、大丈夫なんじゃねーのか?」
言いながら、アプリに山人刀による攻撃を繰り出すI。重さの乗ったそれに捉えられれば切れ味の鋭さも加わり、致命傷は免れない。
それがちゃんとわかっているのか、十分に余裕を持ってアプリはその攻撃を避ける。
そこにひょいっといった感じで、Jが弄んでいた折り畳み式ナイフを投擲する。
それは回転しながらアプリへと迫り、絶妙なタイミングで内部に畳まれていた刀身部分が、ジャキンと跳ね上がる。
「ひゃわ、ひゃわ!? あっぶないよ〜?」
それに驚きながらも、鼻先を掠めただけで回避すると、細剣を振るってバタフライナイフを弾き飛ばすアプリ。
「不意打ちにはかからない、か」
そんなアプリを見て毒づくIにJは苦笑して。
「頭の上の雀(子)のおかげかもねぇ〜」
アプリの頭の上にいる雀を見ながら、手を返すJ。すると腕に付けられたスライド式の収納部分から、新たなバタフライナイフが飛び出してくる。それをくるりと回しながら、思考するJ。
(……敷かれた陣は三段階。僕達は末端だけれど、その芯はまだちゃんと陣と〈繋がってる〉。なら、転送には問題ない筈だけど配置からはズレた訳だから、その分陣完成までの時間が延びる訳なんだよね〜)
その辺(頭達は)どう取るのかなぁ……と、Jがぽつりと呟いたその時。
バサリと、鳥が羽ばたくその音が、耳に届き。
「なんだぁ?」
Iが訝しげに空を仰いだと共に、巨大な鳥がその頭上を高速で通過し。くるりと反転すると、六人の頭上を旋回するように夜空を舞う。
それを呆然と見つめるIの傍らでJは、巨鳥である隼の足に、捕まえられている者をその目に捉える。
「あの坊や達、しくじったようだねぇ」
それはリズと対峙していたHもわかったらしく、その獣面の奥でちっと舌打ちする様が見て取れた。
そんな中、IとJと対峙しているアプリから一つ声が上がる。
「もぅ、もぅ。カルカルおーそーいーっ! でも、でも。こっちはアプリ達だけで大丈夫だよ〜☆」
やはりというべきか、戦闘中にも関わらずそのなんとも可愛らしい声で告げられたその言葉に、若干拍子抜けしそうになるが、その内容は簡単に容認出来るものではない。
内容からして、敵である事は明白でありこれ以上先に、など進ませる訳にはいかない。
「この先に、行かせる訳にはいかないよっ!」
「アンタの相手は私っスよ!」
踵を返し、上空の隼に向かおうとするHをリズが牽制する。
その時には我に返ったIがアプリを留めるように山人刀を振りかぶって襲い掛かり、Jは旋回する隼目掛けてバタフライナイフを投擲する。
しかしそれは、くるりと背を向けたその上に、乗っていた赤い面を付けた者の傘による斬撃によって弾かれ。
更にと投げたその攻撃も、同じく巨鳥(此方は鷲)に乗った黒髪の青年が投げた円月輪によって、その軌道を逸らされ届かない。
「あ〜らら。アレってB君が持ってた武器じゃなかったかな〜? 盗られちゃったのかぁ。円月輪を扱える程の、遠距離型がむこうにもいるって事か。それじゃあ、下方(こっち側)にいる僕には不利だね〜」
弧を描いて円月輪が青年の手に戻ったのを見やって、やれやれとJが肩を竦め。
繰り出される拳の、そのスピードが段々と上がってきたリズの攻撃をスレスレの所でなんとか避けながら、Hは自分が動けない事に舌打ちしつつ、
「カルカロォッ!」
後方に投げるように鋭い声を上げる。
するとその声に反応したかのように、リズに蹴り飛ばされ海面に沈んでいたKが、ガバリと飛び起き。
飛び去って行こうとしている、二羽の巨鳥に向けてその手をすぅと、差し伸ばし。
「!」
それに直感的に危険を察し山人刀を振るうIの攻撃を避けて、距離を取りながらアプリは腰元のラッパに手を伸ばし。
Kが放った菌糸が空に伸びたと共に、アプリが鳴らしたラッパの音が、その周囲一帯に響き渡った。
やっとこさ?交わりましたね、この六人…(ちらり、ですけれど)
しかし、そこは任せて先に行く模様
三衣 千月様のうろな天狗の仮面の秘密より
http://nk.syosetu.com/n9558bq/
天狗仮面、傘次郎君
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
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賀川さん
朝陽真夜様の悪魔で、天使ですから。inうろな町より
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リズちゃん
お借りしております
継続お借り中です〜
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※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です
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