11/4 浜辺へと
更〜新っ!
『現在桜月りま様宅でアリスさん奪還戦(12月1日付)にウチのフィル君参加中です!
こちら現在11月4日
ウチの『汐奪還戦』は桜月様宅の『アリスさん奪還戦』より一か月ほど『前』の話になります
メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが、各々『別日』の話になりますので、それそれでお楽しみ頂ければと思います』
浜辺でリズとアプリが、四人の獣面達との戦いを繰り広げている、その時。
汐の居場所を聞き出し、鷲ルドと隼サムの背に乗り北の森から飛び立ったフィル、賀川、カルサム、天狗仮面(+傘次郎)の四人は、浜辺へと向かい闇が色濃く落ちる夜空の中を疾駆していた。
風を切る音が耳を打ち、高速で後方へと過ぎ去っていく。
「……む?」
「なんと」
そんな中、遠目にとはいえ浜辺の「状態」をその目に捉え、サムで前を飛ぶカルサムと天狗仮面が訝しげな声を漏らす。
常人には、ただいつもと同じ静かな夜の海が広がっているだけにしか見えないが、気を扱う事に長けているカルサムと妖怪である天狗仮面は、その「異様さ」を感じ取る事が出来ていた。
ゆぅらり、と。
まるで水滴が落ちた直後の、水面であるかのように。
波紋を描いて揺らぎ漂う、歪んだ浜辺。
更にそれを被い隠すかのようにして〈まやかし〉がかけられているのが、その目にはっきりと映っていた。
「なんですかい、ありゃあ……。出掛けに感じたモノよりも、かなり密度が濃くなってるんじゃないですかぃ?」
そのあまりの異様さに思わず、といった感じで傘次郎が声をあげる。
「浜辺が本陣であるならば、言わば先の森は時間稼ぎの為のもの、であったのであろうな」
それに声を返すのは天狗仮面。
空を駆る速度はかなり早く、意識の途絶えた獣面少女を抱き胡座をかいてサムの背に座するカルサムの、頭上高くで結わえたみつあみが、自身が羽織っている唐草模様のマントが、ばっさばっさとはためいており。
後続の二人とはかなりの距離がある為に、賀川に聞かれる事はないだろうと思ったが故だ。
我先にとルドで飛んでいきそうなフィルだったが、フィルと賀川を乗せたルドは、カルサムと天狗仮面を乗せたサムを追随するようにして、そのかなり後方を飛んでいた。
それは一度サムで曇り空の中、夜空を飛んだ事のある筈の賀川が「お、俺はイイ。戻ったら車があるし。鳥に……しかもそんな、デカイ鳥に乗って空を飛んでいくだなんて、非常識だよ……」と渋った為にフィルと僅かに言い合いになり。その間にすんなりとサムのその背に乗り、飛び立ったカルサムと天狗仮面の二人にあっさりと追い越され。
大きく出遅れていたのだった。
それ故に、そして声量を抑えての会話である為、そのまま続ける傘次郎。
「あっしら、無駄足を踏まされたって事ですかぃ!? でやすが兄貴。千里の姉御は森に、と言ってやしたじゃありやせんか」
日課の見回りに出る間際、千里に言われた事を思い出しながら呟く傘次郎に、苦笑して。
「そうであるが、千里、であるからな。それに北の森で「なにもなかった」という訳でもないのである。感じからして何か、考えがあっての事だとは思うが……。揺らめく気配が強い事からして、あの男を、逃すべきではなかったという事であろうな……」
私の落ち度である、と続ける天狗仮面に、座したままのカルサムが声をかける。
「お主らが森で獣面らを留めておらねば、朕らが確固たる確証を持つ事は、尚且つ成行上とはいえ協力者を得る事は、難しい事であったろう。故に、そんなに自分を非難するものではない。それよりも天狗仮面よ。あの男、というのはもしや……」
自身が抱いている獣面の少女にカルサムが視線を向ける中、サムの足に掴まえられている獣面の男に意識を投げながら、天狗仮面が頷いて呟く。
「そこの棍使いに「頭」と呼ばれていた、悠々とした喋り口の男の事である。同じ身形に、彼らより幾分か立派な獣面を付けておった。……見知りの者であるか?」
それに首肯して。
「先日、汐を拐いに来ていた者に相違ない。また、と言っていた宣言通りというべきか、やはりと言うべきか……」
「そうであったか。私は見てはいないが賀川殿は汐殿を追って、森に来たのだと言っていたのである。眼前の浜の揺らぎにその口振りからして、あの男が浜にいるのは間違いないであろうな」
カルサムの言葉に、揺らめく気配を帯びさせていた頭の男が、誘き寄せた汐殿を伴い浜辺へと赴いたのであろう、と結論付けて言葉を返す天狗仮面。
妙な気配と助言に導かれ、北の森へと赴いた私と、汐殿を追って来た賀川殿。それに汐殿を守るべくしてやって来た、カルサム殿とフィル殿と出会ったのは偶然か、はたまた面白い事には目がない、仙狸による作為的なものであるかはわからぬが、と胸中で呟きながら。
「兎も角急ぐのである! 私の目の黒い内は、このうろな町で悪事を成させはしないのである!」
天狗仮面のその声にカルサムは無言で頷き、抱く少女に負担がかからぬようにかかえ込むと、サムに空を駆るそのスピードを上げさせたのだった。
「賀川(お前)のせーで、出遅れちまったじゃねーかよっ!」
「そ、そんな事言われたって……」
真っ暗な夜空を疾駆しながら、ルドの背の上で言い合っているのはフィルと賀川。
フィルが操る鷲ルドと前方のカルサムが操る隼サムとでは、その飛行速度が違う。
世界一早い速度で飛ぶ鳥とまで言われている隼に、出遅れた上更にそのスピードをあげられては、鷲のルドには最早、追い付ける訳がなかった。
「……そこのガキ、捨ててったらもちっと速く飛べんだけどなぁ〜」
ルドの足に掴まえられている獣面の少年を、ちろりと見やってボソリと呟くフィル。
命に別状はないとはいえ未だ予断を許さない状態の少女に、意識のない棍使いの男と少年。
男共は結界を張ったそこに置いていってもよかったが、どのみち送還するのだからまた回収に来なければならないという無駄を省く為、共に連れて行く事となり。
少女の方は、治癒を施したカルサムがその状態を一番良くわかっている為、置いていくなどという選択肢は最初からなく。
カルサム曰く浜辺付近にアプリを置いてきたとの事で、獣面達を連れて行く事に関してフィルに異論はなかった。
「捨ててって……それはマズイだろ。敵とはいえ、まだほんの子供なんだぞ?」
ボソリと呟いたフィルに、賀川が返す。
その声に若干同情めいたものが含まれているのは、勘違いではない。
何故ならルドの足に捕えられている獣面のその少年は、この寒空の中薄手のシャツとベスト。ズボンを穿いているその足は、なんと裸足という出で立ちだったからだ。
纏っていた漆黒の外套と履いていたブーツはというと、服をズタボロにされ、靴を履いてきていなかったフィルが、ちゃっかり頂戴していた。
声を返す賀川に、擦り傷と切り傷だらけの顔を肩越しに向け、じっとりとした蒼の目線を投げながらぽそり。
「だぁ〜れの、せいだと思ってんだ、こらぁ」
「……だから。それなら俺を、降ろして行ってくれていいって、さっきから言ってるだろう?」
フィルの言葉に、やれやれと賀川。既にこのやり取りは三回目。賀川のその言葉に、フィルも三回目となる言葉を返す。
「俺様も、さっきから言ってると思うんだがな? サムとルドで(飛んで)行くんは、体力の回復・温存と移動距離短縮の為なんだってな。次戦があんのは確実なんだ。なら、効率考えんのは普通だろーが。それに折角手に入れた戦力、なんで削がなきゃなんねーんだよ」
「最後まで付き合うって言っただろ。誰も、追わないなんて言ってない」
「んなこた心配してねぇよ。時間のロスを心配してんだっつーの、俺様は」
「…………」
「…………」
黒と、蒼の瞳が絡み合う。
互いに引く気がないのは、その目を見ればわかる。
しかし暫しして埒があかないと悟ったのか、同時に視線を逸らしたと共に吐かれる、両者の長いため息。
突っ込み不在ゆえに、彼らに妙案を提示してくれる者は、誰一人としていなかった。
闇の夜空に、ルドが羽ばたく音だけが響き。
「だぁ〜っ! もぅ面倒くせぇ! ルドの繰り手は俺様っ! なら俺様がルール! 今更もうどうしよーもねーし、降ろすんも捨てんのもナシだっ!」
「えっ?」
いきなり叫んで立ち上がったフィルに、賀川が驚いたようにその目を瞬いていると。
ビシリ! 指を賀川に突き付けてニヤリ。
フィルはその蒼の瞳をキラリとさせて、「けどなぁ、賀川? 出遅れてんのは事実だかんな?」と前置きしてから、一声のもとに言い放った。
「お前、身体で払いやがれっ!」
それにぱちり、その黒目を瞬いて。
問題発言(?)をしたとは露とも思っていない、ふふんとした表情をしたままの眼前のその少年に。
働いて返せ、って事だよな? と一人解釈してから。
「あ、あぁ……?」
賀川は一つ、ぽつりと呟いた。
そんな中バサリとその翼を羽ばたかせ、ルドは空を駆るその速度を僅かに上げるのだった。
移動回でしたー
情報交換はしないとね、と
にしても二組のこの差はなんでしょうね(笑)
三衣 千月様のうろな天狗の仮面の秘密より
http://nk.syosetu.com/n9558bq/
天狗仮面、傘次郎君、千里さん
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
賀川さん
朝陽真夜様の悪魔で、天使ですから。inうろな町より
http://nk.syosetu.com/n6199bt/
リズちゃん
お借りしております
継続お借り中です〜
おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ
※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です
ご注意ください
以降はただ言いたい?だけなので、スルーして頂いて構わないですよ〜
うろな町は14/05/25で一周年を迎えましたが、遅組の私は6/30で「キラキラを探して」が一周年を迎えました(二週間前くらい、ですか)
もう一年たったんですか…早いですねー
一年たったっていう実感は…ないですねぇ
始めた当初は、こんなに長く続けてるとは思ってませんでしたし
コラボは楽しいし、色んな事が起こっていて、うろな町は魅力がいっぱいで、書いても書いても、書き足りないんでしょうねぇ…(恐るべし!ですね)
前回のが一年と三ヶ月で全63話なのに比べてキラキラはなんと180話!と3桁いってるので、書くスピード的には若干早くなったんでしょうかね?(止まり気味ですけどね(汗)
元々書くのは遅いんですけども(苦笑)
キラキラ書き始めて一年ちょっと、なろうで書き始めてもうちょっとで二年ですか〜
こんなに続いてるのは珍しいかもしれない(苦笑)
さぁ、何処まで続くかな?
取り合えず、ちまちまですが進めていこうと思います〜




