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11/4 北の森での戦い6


久々すぎあげー(汗)すみませんっ)


これ捻り出すのに、何故かすんごい時間かかってしまった…(汗)

なんとか頑張らないとヤバいですね(苦笑)






「……私と一緒に……、死んでください」


 少女の冷たい囁きと共に迸った、赤の閃光が視界を奪うその一瞬前に、既に動きをみせている三人。

 眼前の少女に、突っ込んでいくように地を駆け。


 フィルはその手に長針を。

 天狗仮面はその手に傘次郎を。

 賀川はノビている棍使いの男の側に転がっていた、棍を足先で跳ね上げてその手に掴み。

 勢い良く、少女へと向かっていく。


 しかし迸った閃光が、当然のように行く手を阻む。

 まるで生き物であるかのように空を自在に舞い踊り、牙を剥いて襲いかかる。


 針か、棘か。

 いや。

 銃から高速連射される弾丸の弾であるかのように、緋色の飛沫がまるで火の粉のように降り注ぐ。


「げ」

「なんの!」

「そんなものっ」


 それに嫌そうな声を出し一歩引いたフィルとは対照的に、勇んでそこへと突っ込んでいくのは天狗仮面と賀川の二人だ。

 天狗仮面は傘次郎を開き、賀川は棍をくるりとさせて。

 回転を利用して、赤い弾丸を弾き飛ばしながら前に進む。


「上手いモンだなぁ」


 それにヒュウと口笛を吹きながら、一歩後ろに下がったフィルが感心したように呟く。

 フィルの得物は長針。

 自分の周りだけなら長針を小刀のように扱い、飛んでくる弾丸を受け流し弾いて突っ込んでいく事も可能だろうが、如何せん数が多すぎる。

 それならば前方は天狗仮面と賀川の二人に任せ、自身は側面からの攻撃を捌いていく事に専念する。


 (うしお)はどう見ても此所にはおらず、無駄足を踏まされたのは言うまでもなく。確実に次戦があるのは、既に決定事項であり。ならば体力は温存しておくに限る。

 しかし体力の有り余っているらしいフィルは右に左にヒラリと舞いつつ、赤い弾丸を弾いていきながらカルサムに一瞬視線を投げる。

 少し先のそこでは黙したままのカルサムが、違わずに襲い来る弾丸をたった一人で捌いていた。

 居合いの太刀が飛んでくる弾丸を、高速で分断し。夜闇に、溶けるかのようにして消え去る飛沫。

 息すら乱さずに弾丸を捌くその様は、流石カルサムといった所か。

 だが、あまりカルサムに負担をかけさせる訳にはいかない。カルサムには別に、やってもらわねばならない仕事がある。


 それに、時間がないのは分かりきっている事ゆえに、早急にカタを着けねばならないのもまた事実。


 左右の弾丸を捌き、バックステップ状態で前を走る天狗仮面と賀川の二人を追いながら、ちろりとフィルは自身の後方を、獣面の少女の方に目線を向ける。


 少女を取り巻く、渦巻く気配は更に濃く。手に持つ魔道具が、夜闇にギラリギラリとその赤を妖しく明滅させている。

 壊れ血濡れた魔道具の、珠の部分がひたりひたりと、満たされていっているのが見える。

 集束(取り込み)と放出(攻撃)を同時にやっている為にその速度は遅々としたものだったが、三分の二は既に満たされ残り一分ももう、中程まで埋まっている。

 ユラリ、立っているだけがやっとの少女の、身体が揺れる。

 時間は残り少ない。

 アレが満杯になれば少女の「想い」が発動し、即ジ・エンド。だ。


 そんな事、させる訳にはいかない。


 少女との距離が縮まる度に攻撃の手が激しくなり、その確かな「熱」が、肌を通して身体に伝わる。

 側近くで微かに届いた「あちちちちっ」という声(?)を聞きながら、フィルは舌打ちし毒吐く。


「もう〈変質〉が始まってんのかっ。くそ、早すぎる! 草木の一本でもその〈炎〉に触れさせたとなりゃ、後で森付きの聖霊にどんな小言を言われる事やら」

「変質? せいれい? なんの事だっ!?」


 襲い来る無数の弾丸によって生まれた、豪雨の中叩きつけるかのような騒音が響く中、呟いたそれをしっかりと拾って賀川が声を張り上げる。その手が絶えず棍を回して弾丸を弾いているのを見ながら、賀川の耳が「良い」事を知っているフィルは、そのままの声を返す。


「あのガキは自らの血を代償に、この現象を引き起こしてんだよっ! ただそれを〈力〉に変換してるだけならいいが、魔道具(媒介)が半ば壊れてる上、あいつが引き起こそうとしてんのはどー見ても爆発だぞ? ……爆破に必要なモンっていやぁ?」


 フィルの言葉に、訝しげな顔をしたまま答える賀川。


「うん? ……えぇと、爆弾と炎、か?」

「ご名答っ!」


 賀川の声に弾丸を弾きながら答えるフィル。


「爆弾は魔道具。それを発動させる為の〈炎〉。これは〈血の赤〉から、上手いこと連想したんだろーよ。ルーンの力は想いの力。それが強ければ強い程、現象が引き起こされる段階が上がる。繰り(あのガキ)にまだ意思があるのに加え、壊れてる魔道具を無理矢理動かしてるってのも合間って、相反する二つのそれが力の変質を早めさせたんだろうよっ」


 言って取りこぼしたモノを地面に押しつけて鎮火させ、開いた距離を詰めるフィル。そんなフィルに、傘次郎を回し同じく弾丸を弾きながら天狗仮面。


「つまり、血があの者の想いを通過し、魔道具(媒介)に触れる事で炎へと変容した、という訳であるな」

「さっすが天狗! 話が早くて助かるぜ」


 ヒラリ。その手を返しながら天狗的力である風を操って会話を聞き、この如何にも声など届きそうにない状況下で此方にその声を届けてきた天狗仮面に、ニヤリとして答えるフィル。

 暫ししてまた耳が豪雨のような音を拾い出した中、その反対側で頬に一筋の雫を滴らせながら、難しい表情の賀川が告げる。


「俄には信じ難いけど……この熱は本物だし、彼女の持つアレが、かなりヤバいものなんだってのはわかる。――何をすればいいんだ?」


 分からないなりにそう問うてきたのに、ニヤリとして。


「俺様があのガキの視界を塞ぐ。その間に魔道具奪って、砕いてくれ。それで終わるっ」

「解ったのである」

「了解」


 呟き声は賀川にしか聞こえていないだろうが、目配せし合ったその目が、しっかりと互いの意思(おもい)を伝え。頷き合い再び前方に意識を向けたその時には、既に獣面少女の側近くにまで達している三人。


「……自ら死に急ぐ、とは……愚かですね。……ならば望み通り……消し炭にして、さしあげます……」


 掠れた声を溢しながら、タプン、満たされつつある魔道具を揺らし、少女が魔道具を持つその手を掲げ。

 少女の周りを、渦巻くように赤い弾丸が舞い踊る。

 それにニヤリ、口角を上げて。


「いったろーが。負ける気はねーんだって、なっ!」


 告げると同時に踏み切り、一人舞い踊る弾丸の中へと躍り出たフィルは、素早く腰に巻いていたターバンを引き外し、ぶわわっと視界いっぱいに広げる。


「なっ……!?」


 それに獣面少女の驚いたような声が上がる。

 闇夜である為にただでさえ視界は不良だというのに、更に視界を遮るなど正気の沙汰とは思えない。

 それに此方の視界だけでなく味方の視界までをも遮るとは、一体何を考えているのか。

 フィル(敵)の、理解し難い行動に少女の動きが一瞬止まる。


 それを見逃す事無く。


 視界を覆い尽くす程のターバンのおかげで、飛来する弾丸を弾く事から一時的に解放された天狗仮面と賀川の二人が、夜の闇にも妖しく映える、その赤の明滅光を頼りに。


「あぅっ!」


 左から回り込んだ天狗仮面から繰り出された傘次郎による攻撃が、少女の魔道具を持つその手を打ち。


 カァンッ!


 右から切り上げるようにして振り上げられた賀川の棍による攻撃が、力の緩んだ手から魔道具を奪うようにして夜闇の広がる空へと弾き飛す。

 その軌道を目で追いながら、フィルが叫ぶ。


「カルサムッ!」

「――承知」


 それに短く呟いて。

 じわじわと距離を詰めて来ていたカルサムが、音もなく滑るようにして地を駆け。

 ガクンと、まるで操り人形の糸が切れたかのようにして崩折れる少女を、勢いそのままに拐うようにだき抱え。

 体格差などまるでないかのように少女を抱えたまま弧を描き、軽やかに三人の後方へと退くと、即座に自身と少女を覆う結界を張る。


「せいっ!」

「はぁっ!」


 その間に、再び繰り出された天狗仮面と賀川の傘と棍の攻撃が、渦巻く気配、赤い弾丸が舞い狂う中、魔道具へと吸い寄せられるようにして迫り。

 その先が、魔道具の珠部分を貫かんとした、その時。


 カカンッ!


 珠をくわえ込むようにして作られた三日月型の装飾品の部分が、いや。〈魔道具自体が意思を持っているかのように〉クルリと回り。

 わざとズラして放たれた傘と棍の攻撃を、難なく弾く。


『なにっ!?』


 それに四つの驚きの声が発せられ。

 それと同時に空に浮かんだままの魔道具がドクリと脈動し、水面に波紋が広がるかのように、周囲の空気を震わす衝撃波を生み。


『っ!』


 その衝撃波をまともに受け。天狗仮面、賀川、フィルの三人が舞い狂っていた赤い弾丸と共に、後方に退いたカルサム達の側近くにまで吹っ飛ばされていく。


「っぐ!」

「ぐぅ!」

「ぐえっ!」


 呻き声をあげ、土煙を上げながら地を滑り。木々や土の盛り上がり等にぶつかって止まると、バネのように跳ね起き眼前を見やる三人。


 見上げた先には、夜闇を妖しい赤に染め上げる、空に浮いた魔道具があり。

 渦巻いている気配はその内部(なか)を、後ほんの少しで埋め尽くしてしまいそうな勢いだ。

 繰り手(少女)を失い周囲を狂ったように舞っている赤い弾丸が、その赤を緋に紅に彩る。


 それはいやに機械的な、統率の取れた、規則正しい動き。

 ただただ、荒れ狂っているだけとは違う。

 〈司令塔〉がちゃんといる動きだ。


「……遅かった、か」


 それを見て、息も絶え絶え意識の朦朧としている少女に自身の気をゆっくりと流し込み、治癒を施しながらカルサムが呟く。

 魔道具は既にその手を離れ、魔道具との〈繋がり〉を遮断するべく張っている結界内に少女がいるというのに、その威力は留まる所を知らぬように、むしろ〈余計なもの〉がなくなった分、更にその威力を増しているようにも見える。


 初めの「想い」だけに、突き動かされ。

 ドクリと、魔道具が鼓動する。


「……っ!?」


 その鼓動に〈連動する〉かのように、フィルが小さく息を詰め。

 カルサムがフィルのその様子に片眉を上げ、異変を見逃さなかった天狗仮面と賀川の、二つの視線がフィルに注がれる。

 そんな中衝撃波によって一度肩から離れたルドが、定位置に戻ってきた羽音をその耳に捉えながら、フィルはニヤリとしたまま呟いた。


「……魔道具(ヤツ)の次の搾取先(エモノ)は、どーやら俺様みたいだぜ」


 呟かれたそれに。

 まるで応えるかのように、魔道具がその身をドクリと震わせた。



傘と棒、回しております!

便利ですねっ

ターバン、また使っちゃいました(苦笑)

でもきっと焦げ焦げだ…(苦笑)

さて、ホントにそろそろ、森stageは終わりかなーっと


三衣 千月様のうろな天狗の仮面の秘密より

http://nk.syosetu.com/n9558bq/

天狗仮面、傘次郎君


桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より

http://nk.syosetu.com/n2532br/

賀川さん


お借りしております

継続お借り中です〜

おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ


※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です

ご注意ください



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