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10/30 遊ばせてやる


※現在桜月様の所の話で賀川さんと我らが天狗仮面様がユキちゃん奪還戦!が繰り広げられておりましたが、此方はそれより後日話となります。ご注意ください






「さぁ――。選びたまえ、七の継承者よ。我々と来るか、否か。最も、否と答えた場合に彼らがどうなるかは――、君にもわかる事だろうがね?」


 夜の闇に、響く言葉。

 その言葉に選択肢などない事は、わかっていて。

 首筋にヒヤリとしたものを感じながら、(うしお)が手を差しのべる獣面達の頭である男を見つめて、口を開こうとしたその時。


「一緒に行く、なんて言う気じゃあねぇだろーなぁ?」


 フィルの、そんな言葉が滑り込み。

 はっとしてそちらに視線を向ける汐。

 此方を見つめるフィルのその表情はいつもの、ニヤリとした不敵な笑みで。

 さっきまでの、若干焦っていたような感じはなく、纏っていた風も既になりを潜めている事にほっとする汐だが、どうしたらいいか分からず押し黙る。


 なんとかしてやる――


 その勝ち気な蒼の瞳は確かにそう訴えかけてきているが、この状況からの打開策など汐に分かる筈もなく。

 それにあんな言い方をされてしまっては、頷く事はおろか首を振る事すらも出来ない。

 大体、ちょっとでも動けば爪先が首に触れそうなのだから、そんな質問しないでほしい。

 そう思いながら、どうする事も出来ずに瞳を揺らして、フィルを見つめて立ち竦む汐。


 それにはあぁ、と盛大にため息が吐かれる。やれやれと肩まで竦めて。

 それをしたのは勿論フィルだ。


「何を迷う必要があんだよ。お前はただ、一言告げりゃあいいだけだろ?」


 呟いてそうだろう? という目線をくれて、ニヤリと笑うフィル。


「他の奴らの言葉になんか耳も貸さず――、〈俺だけ信じて〉言ってみろよ。そうすりゃ直ぐ様助けてやる。どんな状況だろうと、な」

「…………っ」


 フィルの自信満々なその笑みに――、つい口をついて出てしまいそうになる。

 『助けて』の一言が。


 しかし素直に、そんな事言える訳がない。


 ここにいる獣面の者達は、汐(自分)の〈力〉を狙って来た者達な訳で。

 二人を巻き込んでしまったのは、他ならぬ汐なのだから。


 それなのにこんな明らかに不利な状況で、助けてなんて尚更言える訳がない。


 〈七の継承者〉と、確かにそう、眼前の男は呼んだのだ。

 その言葉の意味を、何処まで理解しているのか汐には分からなかったが、昔、何も知らずに拐いに来た人達とはワケが違う。


 ある、一部の者達しか知り得もしない筈のそれを、知っているというのだから。


 それが〈真実〉であれ〈偽り〉であれ、継承者(そういう者達)がいるという事を、ちゃんと知って(理解して)いるのだと。

 そう、眼前のこの男は言っているのだ。


 隠されている筈のそれを暴かれて困るのは、継承者(自分達)。

 本来であれば、〈ただそれだけ〉のモノでしかない筈なのに、彼に依頼した主である人物は、〈力が欲しい〉のだと言っていた。

 という事は少なくとも、依頼者である者は〈それ以外の使い方〉を〈知っている〉という事だ。


 それに一緒に行くと言わなければ、二人がどうなるのかくらい、まだ子供とはいえ汐でも分かる。

 彼らは、容赦したりなどしないだろう。


「……っ……」


 ぎゅう、と拳を握る手に力が入り。そのまま、円の中心にいる男に向き直る汐。

 それに、声を上げるのは賀川とフィル。


「ダメだ、汐ちゃん!」

「バカ、んな三下の言葉を間に受けてんじゃねぇよ! 大体、人質捕らなきゃなんも出来ねぇようなヤツが……」


 フィルの言葉が、不意に途切れ。

 ついでギィンと、金属同士を打ち合わせる音が響く。


「!?」


 それに、驚いて汐がそちらを振り向くと。

 フィルと賀川を、退いた筈の三人の獣面の者達が、ぐるりと取り囲んでいた。


「フィル! 賀川のお兄ちゃんっ!」


 自身の首を捕える爪先が、僅かに首筋を掠めるが構う事なく汐が叫ぶ。しかし、それを聞いていないかのように二人を取り囲む内の一人、フィルと打ち合った者が手に持つピックをクルクルと玩びながら、笑いを含んだ声で告げる。


「おぉっとぉ〜? テーコーすんなよぉガキんちょ。お姫様が、どーなっても知らねぇぜ〜? ひひゃひゃっ」

「頭ぁ、もうヤっちまいやしょうぜぇ? どのみち生かして返す、気なんて更々ねーんですから」


 触発されたように、もう一人も含んだ声を洩らす。


「やめてっ!」


 それに汐が叫ぶが、二人の周りを面白がるようにふらふらと移動する三人は、意に介する事もなく足を運び。

 卑下た笑いが周囲に響く。

 それを見て取って、汐は頭の男に視線を合わせ、


「お願い、止めさせて!」


 懇願するように告げるが、悠々とした態度のまま頭の男は冷たく囁く。


「君が、共に来ると頷くのならば、直ぐにでも。だがもうあまり、時間の猶予はないだろうがね?」


 含みあるその声はまるで支配するかのように、汐の耳に滑り込み。


「……っぁ……」


 それに、ヒヤリとした氷のようなモノを感じて、ぞくりとその身を震わせる汐。

 まるで氷の棘を思わせるそれに、身体をガチリと絡め捕られてしまったかのような、嫌な感覚に襲われる。

 その事に、息を飲む。

 恐怖なんて――今の今まで、感じてすらいなかったのに。

 足下からぞわぞわと、冷たいモノが這い上がる。


「……あ……っ、い……」


 震える声がその小さな唇から微かに溢れるが、言葉にはならず。

 しかしそれを、促すかのように頭の男がゆるりと頷き。

 それに誘発されるかのように再度、汐がその口を開きかけるが。


「……ぃ――」

「悪党ってのは、どーこ行ってもおんなじなのな」


 汐の言葉に被せるように、フィルがそんな声をあげる。にんやりとした含み笑みの表情で。


「そりゃそうだろ。なんたって悪党なんだから。やる事は一緒(同じ)なんだ。そんな奴ら、たかが知れてるだろう?」


 それに、便乗するかのように呟くのは、フィルの傍らにいる賀川。此方もやはり、その顔に含みある笑みを浮かべている。


「へ……?」


 いきなりの事に、キョトンとしてそちらを見やる汐。

 そんな汐に視線を合わせ、安心させるように頷いて、一つ言葉を呟く二人。


「大丈夫だから、ね」

「汐(お前)は、目ぇ閉じてそこで待ってろ。こんなん、すぐ終わらせてやる」


 ニッと笑って告げて、周りを取り囲む三人に意識を向けながら、フィルと賀川は同時に告げる。


『かかってこいよ。遊ばせてやる』


「……こっ、この……っ!」

「言わせておけばっ!」

「自分達の立場、全くわかってねぇよーだなぁっ!」


 二人のその言葉に散々コケにされた三人が、鎖を、ピックを、弓を持ち換えた短剣(ダガー)を振りかぶり、勢い良く襲いかかった。



格好良く、書けてたらいいなぁ…(しかし何故か照れ///)


頭の男が知るものは…?

しかし、もぅなんかすんごい、俺様劇場が展開されているような…(苦笑)

さぁ反撃…と、いきたい所です、が


桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より、賀川さん


お借りしております

まだまだ継続お借り続行中〜☆

おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ


※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です

ご注意ください



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