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10/30 浜辺での戦闘1


えっほ、えっほ


※現在桜月様の所の10月27日話で賀川さんと我らが天狗仮面様がユキちゃん奪還戦!を繰り広げておりますが、此方はそれより後日話となります。ご注意ください






 ラッパによる、仲間(アプリ)からの報せを耳にした途端。


「はあぁっ!?」


 向かってくる四人を相手にしながら、フィルは驚きの声を上げた。


(来てんの、ロパジェじゃねぇのかよっ!?)


 そう胸中で呟きながら、飛んできた拳を避け。


(しくじった、だと!? アプリのヤツっ!)

「タダじゃおかねえぇっ!」


 敵である者の顔面に膝蹴りをめり込ませながら、フィルは一人叫んだのだった。




 今宵の彼らは、運が良いといえた。

 そう思うのも当然だろう。

 何せ、捕獲対象である〈七番〉が空から自ら、手中に飛び込んで来たのだから。

 その経緯がどうであれ、このチャンスを逃す手はない。


 先行した四人の事が気がかりといえば気がかりだったが、戻って来るのを待つより、七番を連れて先に本隊と合流した方が得策だと考え。

 七番を袋に押し込み担ぎ上げ、本隊がある所へと戻るべく走り出す。


 浜辺を、一直線に。


 常なら、そんな失態を犯したりはしないだろう。

 いくら漆黒の外套を纏っていて夜の闇に紛れているのだとはいえ、浜辺に遮蔽物の類いは一切無く、身を隠せるものもないのだ。

 そんな所を四人で、しかも袋を担いで走っていれば嫌でも人目につく。

 人通りの少ない、夜半とはいえ。全く人目が無いとは、言い切れないのだから。


 しかし、楽すぎる仕事に嬉々としていた彼らは自らが犯したそのミスに、その時まで気付く事は出来なかった。


「おいお前ら! 一体何やってるんだ!?」


 突如かけられたその声に、はっとする。

 足を止めてぐりんと、一斉にそちらへと面越しの視線を向ける。

 八つの瞳が捉えたのは、此方に走り寄って来る一人の男性の姿。

 それに一瞬視線が交錯するが、誰かが何か言う前に、ひとつ声が滑り込む。


「賀川のお兄ちゃん?」


 七番が発したその言葉に驚く面々だったが、


「その声、(うしお)ちゃんか!?」


 駆けて来ながら発せられた、その男性、賀川のまさかの返答に更に驚く。

 しかし、それにより瞬時に事態を理解した面々は、即座に行動を開始する。


 七番、汐を担いだ一人は、スピードを上げて浜を駆け。


「! 待てっ!」


 後を追おうとする賀川を、阻むように残った三人が立ちはだかる。

 それを、速度を保ったまま突っ切ろうかとも考えた賀川だったが、


「っと!」


 ヒュンッと風を切って飛んできたモノを避ける為、後方へと飛び退る。

 その間に走っていった者との距離が開いてしまい、ちっと舌打ちする賀川だが、代わりとでもいうように白い鳥が後を追随していくのを目端に捉え。

 そのままギッと眼前の三人を見やる賀川の瞳に、僅かな光を反射して夜闇にキラリと光る、一筋の線が見え。

 キュルルと、それを巻き取るかのような音を耳が拾う。


 それによりその線がワイヤーだと理解した賀川は、すっ……と身構え。

 それを見て、三人の内の一人がヒュウ♪ と口笛を吹く。


「へぇ〜。ちょっとは出来るみたいねぇ〜。ラク過ぎてつっまんないな〜って思ってたトコなのよねぇ?」

「!?」


 その声に、驚いた表情をする賀川。

 なんと相手は女性だった。

 しかしそれも一瞬の事で、刺すような視線を向けながら呟く賀川。


「……汐ちゃんをどうするつもりだ」


 賀川のその言葉に、ケラケラとした笑い声が上がる。


「それ、言うと思ってんのぉ? 言うワケないじゃな〜い♪ それに、私達には七番がこの後どうなろうと、関係ないの。どんな結末になろうとも、ね♪」


 腹を抱えて笑う女性の、面越しのその瞳が、ニィと細められたのを見て取って。


「――愚問だったな。もういい、失せろ」


 囁くように呟く、賀川の声が響く。

 静かな、冷を帯びたその声が。

 彼の雰囲気が変わったのに、一体誰が気付いたか。

 その事に気付きもしていない女性は、笑いを含んだ声のままに言い放つ。


「失せる(消える)――のは貴方の方よ、ボク? 私に、勝てるとでも思っているの?」


 その言葉が終らぬ内に、既に動いている賀川。

 ザッ、と砂が擦る音が聞こえた時には。


「くぅっ!?」


 一気に距離を詰められ放たれた鋭い蹴り上げを、間一髪顔を逸らす事で女性がなんとか避けたのと、同時だった。

 顔を逸らした勢いのまま、後方に大きくバックステップする女性。


『!?』


 それを目で追えていなかったのか、数歩引いた状態で女性と賀川を見ていた二人は、慌てて気を引き締め臨戦体勢を取る。


「へ〜え。なぁんだ、結構ヤるんじゃないの〜、ボクってば。愉しくなってきちゃったわぁ、オネーサン♪」


 んふふ、と笑い面の頬に走った亀裂を撫でて、熱っぽい声を出す女性。

 相手を見つめる眼差しに、ギランとしたものが混じる。

 その声色と態度に、嫌なものを感じずにはいられない仲間の二人。

 ヤる事のみにスイッチが入った時の、彼女の悪い癖が出た……とため息を吐く。

 一度こーなったら、相手が動けなくなるまで誰にも止められないんだよなぁ……とでも言いたげな視線が二人の間を交錯するが、勿論女性は気付いておらず。

 向かい合うようにして立っている賀川はというと、そんな事はさもどうでもいいと言いたげな顔をして、一つ息を吐き。


「来ないなら、此方からいくぞ。お前らの遊びに、付き合っている暇はない」


 静かに告げ、走り出す賀川。それに嬉々とした笑い声を上げながら、女性は自ら突っ込んでいく。


「オイタはだめよぉボク。――んでもぉ私。激しい子も嫌いじゃないのぉ♪」


 女性の手が微かに振られ、シャアアァン、と空を切る音が響く。

 それは賀川にしか、聞こえない音。

 その音を頼りに、〈見えない〉筈のワイヤーを避ける賀川。

 しかし、それはどうやら想定済みだったようで、女性の突進は止まらない。

 対する賀川も、その速度を緩めてはいない。

 互いに距離を詰める両者が、激突するかと思えた瞬間。


 賀川の右手が閃き。

 突進していた女性は、すんでの所で踏み留まり、前方から後方へ、何かを手繰るように勢い良く腕を引き抜く。

 一瞬の後。


 ギュリイィン!


 響く金切り音。


 女性のワイヤーと、賀川が懐から取り出し振り上げたナイフの刃が、磨り合わされ火花を散らす。

 しかしそれは一瞬の事で。


 自身の後方から迫っていた〈先の重し〉を正確に察知し、ナイフを手放し、絡め取られまいと賀川は地を蹴って即座に走り出し。女性の右側に回り込んで、その位置を交換するかのように退く。

 女性の方も女性の方で、周囲に放ったワイヤーの重しが軌道を外れたと見るや、手を自在に操って勢いを殺し、賀川からの追撃に合わぬよう身を捩って距離を開け、捩った時の反動そのままに足先で砂地を擦るようにして、細い白煙を上げながら後方へと下がる。

 調度、一瞬先まで賀川がいたその場所に。


 互いの動きがピタリと止まり、シン……、とした静寂に包まれる。

 女性の仲間の二人は繰り広げられる両者の攻防を、ごくりと唾を飲み込み食い入るように見ている事だけしか出来ず。


 波音だけが響く中、ゆっくりと立ち上がる、両者の衣擦れの音だけが聞こえ。


「強いのねん、ボク。ぞくぞくしちゃうわぁ〜♪ オネーサン、本気だしちゃうかもぉ〜?」


 甘ったるい、恍惚とした女性のそんな声が洩れ。すうぃ、と片手が水平にのびる。

 それを賀川はただただ見つめ。ヒュンッと持っていたペンを回してナックル代わりとでもするように指に挟み込み、構える。


 さわり、海風が緩かに流れ。

 見つめ合う、女性と賀川。

 じり……と、図るように女性がその足を横に擦らした、その時。


「っ!?」


 何かに足を取られ、がくっとバランスを崩す女性。

 斜めに傾ぐ視界の中、しまったと女性が思ったその時には。


「――終わりだ」


 その機を逃さず迫ってきていた賀川の勢いの乗った拳に、顎を突き抜かれた後だった。


 コロリと、足下からボールペンが転がり出る中、糸が切れたかのようにガクンと崩折れる女性。

 それを無言で見つめ、賀川は〈ワザと落とした〉そのペンを拾ってから、ゆっくりとした動作で後方を振り返り。


「……まだやるか?」


 肩越しにすっ、と細めた黒の瞳を向ける。

 呆然と、突っ立っている二人に。


『!!』


 暫ししてから、ただ突っ立っていただけだった二人は、微かな間の後ぶぶぶんっ! と首を横に振って、いっそ清々しいくらいに潔く、投降した。


「はわ〜、はわ〜。お兄さん、すっごく強いんだね〜☆」


 するとそこに、それを待っていたかのように一つ声が投げられ。


「……お前もコイツらの仲間か」


 顔は土下座する二人に向けたまま、ちらりと視線だけくれて声音低く告げる賀川。それに、


「違うよ、違うよ。アプリちゃんはどっちかいったら、お味方さんの方だよぉ〜」


 まわりにシャボン玉を漂わせているその者、アプリは自分の頭上を指差しながら告げる。

 それを怪訝に思いながらも賀川がそっと目線を上げると、曇天の夜闇に不釣り合いな虹色に輝く巨大な、シャボン玉が一つ、空にふわわんと浮かんでおり。

 賀川がそれに驚きつつよくよく目をこらし見てみると、その内部に獣の面に漆黒の外套を纏った四名の者達が、捕えられているのが見え。


「アプリちゃんは、アプリちゃんは。しおしお……汐の友達だよ☆ お兄さんも、でしょ? だったら、ここは任せて行って(追って)くれると嬉しいな〜」


 賀川が頭上を見上げている間に土下座している二人を眠らせ、頭上の奴ら同様、シャボン玉の内部に押し込みながら告げるアプリ。

 にんっと、八重歯を覗かせて笑うアプリのその顔をじっと見つめ。ついでこくりと頷いて、


「頼む」


 短く告げ、賀川は再び走り出した。

 汐を、連れ去った者を追うために。



賀川さんに、頑張って頂いております♪

しかしやはり、戦闘シーンは難しいですね〜(苦笑)

まだまだあるのに…

が、頑張ります〜


桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より、賀川さん


お借りしております

まだまだ継続お借り予定です〜

おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ


※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です

ご注意ください



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