なんとかなりますよ
※うろな町外話
「神官様ああぁ〜〜っ!!」
常なら、静寂に包まれている山頂の神殿に、そんな間抜けな声が響き渡る。
バタバタと騒々しく足音を響かせ、装飾の施された扉を勢い良く押し開き。
「や……やら、れ……っ」
そこで力尽きたのか、扉の縁にへちょりともたれかかるようにして座り込み、はぁはぁと荒い息を吐きながら金色の頭を揺らす少年。
その少年に、水差しから冷水を注いだコップを持って歩み寄り、それをそっと差し出しながらラタリアが告げる。
「大丈夫ですか、ロパジェ。とにかく落ち着いてください」
ほら、水ですよ。と差し出されたその手から、コップをひったくるかのようにしてその少年、ロパジェは中の水を一気にあおり。
ぷはっと息を吐いてから、声を上げた。
「おお、おちっ、落ち着いてるバアイじゃないですよ、神官様っ! アプ、アプリの奴がっ!」
まだ慌てているロパジェに、苦笑しながらラタリアが呟く。
「わかっています。アプリ(彼女)が、うろなの方へ行ったんでしょう?」
「へ……?」
苦笑するラタリアを、ロパジェがポカンと見上げる。そんなロパジェに各々から声がかかる。
「あれぇ〜、忘れたの〜? ラタリア様(彼)は、〈神の声聞く者〉だよ? なら、知らないワケないでしょ〜?」
手に持つフォークをくるくるとさせながら、悠々と告げるのは薔薇色の髪の少年、チェーイールー。
「それに、もう。事から三日も経ってるしね」
ちぎったパンをもぐもぐしながらそう呟くのは、銀髪金瞳の少年エリュレオ。
「まったく朝から騒々しいですこと。朝食くらい、優雅にさせて頂きたいものですわ。――あぁ、ほらレオ。頬にパンくずがついてましてよ」
ナプキンで口元を拭って、ポカンとしているロパジェをじろりと睨み、傍らにいるエリュレオ――レオに甲斐甲斐しく世話をやくのは、同じく銀髪金瞳の少女エトゥリカ。
「さぁ、ロパジェ。貴方もお腹がすいているでしょう? 席へどうぞ」
そう言ってにこりと微笑むのは、白紫の髪に紫水晶の瞳を持つラタリア(神官 この中で見ため的には一人だけ青年)。
「…………」
その様子を、呆然と見つめるロパジェ。
ロパジェが足を踏み入れたのは、神殿内にある食堂だ。
時間帯的に、皆そこにいるだろうとふんで来たのはどうやら当たりだったようだが、あまりにもいつも通り過ぎるその態度に、そしてラタリアが神の声を聞く者だという、その事を忘れていたロパジェは、更にへちょっと床に崩折れる。
「そーでした。そーでしたね。……けど、もうちょっとなんかこう……」
いじいじと、磨かれた床にのの字を書いていたロパジェだったが、はっと気付いてがばりと飛び起き。
「じゃ……、じゃあカルサムのおやっさんは!? おやっさん、もう行ったんですかっ!?」
慌てて捲し立てるロパジェに、紫水晶の瞳をぱちぱちと瞬きながらラタリア。
「え、ええ。アプリが行った前日くらいでしょうか。「発つ」とだけ告げて」
ラタリアのその言葉に、恐る恐るといった感じでロパジェが訊ねる。
「……ひ……、一人、で……?」
イヤ〜なものを感じながら呟くロパジェに、にこりと答えるラタリア。
「ええ。一人で」
それに、白のテーブルクロスがかけられた長テーブルの端に勢い良く駆け寄って、そのテーブルをバン! と叩きながらロパジェが叫んだ。
「どーすんですか、もし間に合わなかったらっ! おやっさんは……、おやっさんはっ」
ぶるぶる、身体を震わせながら呟くロパジェを、四人はぱちくりと目を瞬きながら見上げ。
そんな四人をキッと見やって、ロパジェはありったけの声を出し切るかのようにして告げた。
「重度の、方向音痴なんですよっ!!」
それに、暫し落ちる沈黙。静寂が、周囲を包む。
そんな中きょとん、とした顔でロパジェを見つめるラタリア。
ロパジェから顔を背け腰を折って、身体を震わせながら必死に、笑いを堪えているチェーイールー。
リカとレオは互いを見つめて、はてなと首を傾げている。
何を言っているんだろうロパジェ(この男)は、というような表情で。
それすら見越しての事だろうに、と。
しかしロパジェは、またもや忘れていたのだった。
そんなロパジェに、ラタリアは綺麗に微笑んで。
「なんとかなりますよ。それに、偶然はないのですよ、ロパジェ。ですから、『もし』などという事はありえません。訪れるのは必然だけです。起こるべくして起こされるもののみ」
ですから、と呟いて。
ラタリアは、窓から見える青空を見つめ。
「繋がれ惹かれ合うのならば――、必ず響き合い(出会い)ますよ」
にっこりと微笑み呟いた。
なんとかなりますよ、たぶん(笑)
しかし、増える増えるキャラ達…
まぁ、名前だけのキャラが他にも沢山いますけど、ね…(苦笑)
※後日、日付を揃える為差込で移動させる予定です
ご注意ください




