10/23 弱みと貸し?
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話 10月23日 納品中です
とリンク+後話?です
マメ鳥に案内されて行った先は、どうやら学校らしかった。
背丈的に中学生っぽい。ってことは中学校か。
お揃いの制服を着たガキ共がたくさんいて、家に帰ろうとしているヤツ、球技やらなんやらに励んでいるヤツとかがいて、曲でも練習してるのか何処からか音楽が聞こえてきたりもしている。
中学って事は、上手くすりゃ渚がいるかもしんねーなー、と思いながらルドの翼越しに眼下を眺めていると。
「お?」
廊下を歩く渚を見つけ。案内役のマメ鳥が降下していくその先に、水玉模様の衣服に身を包んだアイツを発見して、ニヤリと口角を上げる。
いっちょ挨拶してやっか。
渚の元に一羽送るついでにアイツが気付いていない事を確認してから、思いっきり笛を吹く俺様。
「う、ああああああぁぁぁぁ」
上がるアイツの叫び声。
それにニヤニヤとしながら、マメ鳥がばさりと降り立ってアイツ等の視界が塞がれている隙に、ルドを変化させ肩に乗せて、ヒラリと地上に降り立つ。
「よぉ〜カガワ。久しぶりだなぁ」
にんやりしたまま呟くと、隣の兄ちゃんが言ってる事に構う事なく、掴みかかってくるそいつ、賀川。
八月下旬。二日という短い滞在期間を終え、うろなの町から立つその日、足りないマメ鳥を探して行った先で出会った男。
海と同じで、常人には聞こえない筈の笛の音を聞き取れる、耳の〈良い〉ヤツだ。
「殺す気かって言ってるだろーがっ! レディフィルド、むやみやたらに笛吹いてるんじゃないぞ」
「前から言ってんだろ? そんな気はねーって。大体、フツーは聞こえねんだっての。海くらいなんだぜ? んな反応したのはよ」
ガクガクと揺すられながらも、ニヤリとしたまま告げ。ついでやれやれと呟く。
「マメ鳥は手紙を持ってないヤツんトコにゃ、好んで降りねぇハズなんだかなぁ……。ミョーにカガワに懐いちまったなぁ」
賀川の肩にとまっている、そのマメ鳥を見やる。
明らかに、好んで側にいる体だ。
「専属」が出来るのは珍しい。
本来なら深く関わり合いにならないよう(様々なトラブル回避等も兼ねて)、その時限りで終わりになるように、躾られている筈なのだが。
経緯が特殊とはいえ汐みたいに、なんでもかんでも引き寄せるタイプもいるにはいるが、会って間もない者の所に、自発的にいく事などそうそうあるものでもない。
まー、マメ鳥達にも好みはあるし、収集に支障が出なけりゃ俺様は一向に構わねーんだけどさぁ。
などと思っていると、
「そんな事はどうでもいい。何でここに居るんだ、レディ(・・・)ちゃん!」
何でか知らんが、「あの名」を呼びやがる賀川。
途端に嫌な過去が脳裏に投影されて、
「なっ!? おいカガワっ! てめぇどこでその名をっ……!」
顔をしかめつつ俺様が吠えると、襟を掴んでいた手を離しふふんとした、勝ち誇ったような顔で言ってくる賀川。
「こないだ『セキの夜輝石』と言ってた時には、誰の事か迷ったけど、これをくれたのは汐ちゃんだからね。聞いたらビンゴだったよ、レディ(・・・)ちゃん」
なんと犯人汐だった!
あ〜い〜つ〜め〜!
会ったら覚えてろよっ。
「関係が見えないんだが。ここは校内だから……」
と、隣に立つ兄ちゃんの声に思考を戻し。
怒られた賀川をからかうとまたあの名を呼びやがったので掴み合いになりかけ、それを兄ちゃん先生、シミズが止める、を二度程繰返し。
「で、何だ。レディフィルド。ただ遊びに来たわけじゃないだろう?」
紹介を終えて切り出された賀川のその言葉に、自信満々で言ってやる俺様。
「おうよ! 俺様が直々に返事をもって来てやったぜっ」
「返事?」
ぱちくり、目を瞬く賀川にニヤリとして。
賀川とシミズが、死んだ人に出した手紙の返事が来ただなんてオカルトなのかだの、誰かが代筆して手紙を返してくれるんでしょう、等とぼそぼそと話しているのを気にする事なく袋を漁り。
「俺様は、そーゆー手紙専門の、郵便屋だから……返事が二通共に来るなんざ、愛されてるんだな、カガワ」
呟いて差し出したのは、二つの四角い箱。
それに驚く賀川。
「て、手紙じゃない?」
「誰も〈手紙〉だ、なんて言ってねーだろ。返事が来たとは言ったがな。ま、俺達が決めてんじゃねーよ。亡き者達の、〈届けたい想い〉なんだっての」
ほらよ、と薄ら笑いを浮かべている賀川に渡す。
まぁ、信じろってのが無理あるといやぁ、あるだろーがなぁ〜。
けど実際死者に手紙届けて返事持ってきてんだから、信じるやらなんやらの粋じゃねーだろ。
ちゃあんと現実だぜ? これ
後は、受け入れりゃいいだけだっつの。
「でもよ、出来れば次は手紙にして欲しいもんだぜ。なんでこの俺様が、ヤローに花なんか届けなきゃなんね……」
等と思い呟きながら包みを開いた賀川に視線を戻すと、賀川は――……
「っておい、泣くなって!」
「か、賀川く、ん……」
泣いていた。
その黒の瞳から、光の粒をポロリと溢して。
隣には兄ちゃん先生が、なんでか周りに集まって来ている、ガキ共達がいる中で。
それに、驚いた。
まさか、泣くだなんて思ってなかったかんな。
賀川が持つ二つの箱に入っていたのは、二つの花。
カーネーションと、マーガレット。
なんでもそれは、死期の淵にいる母親に渡せなかったカーネーションと、元彼女との、仲直りの意味が込められた、そんな思いの詰まったマーガレットだった。
「泣きやめよーーーーカガワぁ」
「ううっ、こんなモノ、公衆の面前で持ってきやがって……」
公衆の面前に、送られてきた返事を持ってきちまった事にちょびーっとの罪悪感を感じながらそう言ってみるが、賀川が泣き止む気配はない。
その間に、暫く呆然としていたシミズが我に返って、ぽんっと賀川の肩を叩き。
優しさのこもったそれに、更にその瞳から涙を溢れさせる賀川。
……どう、すっかな。
一瞬、迷う。
ただただ流される、その涙はすんげぇ綺麗で。
二人の事を思って流される、それには。
〈思い〉が〈愛情〉が、これでもかと詰まっていて。
雫石――何物にも変えがたい宝石、に見えた。
その時確かに繋がったんだと――、思わずにはいられない。
それにクるものがあって微かに息を詰める中、綺麗な涙の宝石が、賀川の黒の瞳から溢れ、落ちていく。
地に落ちてしまえば、それは儚く消えてしまうもの。
それが地面に落ちてしまう前に、舐め取ってやりたい衝動にかられる。
「っ!?」
そんな事を、一瞬でも思ってしまった自分に自分で驚きつつ、それを誤魔化すかのようにガリガリと頭を掻いて。
「……ったく。しゃーねぇなぁ」
乱暴に賀川の頭を引き寄せて、肩を貸してやる。
見られたまんまってのも、あんま気のいーもんじゃねぇだろうし。
他の奴らに、これ以上見せては、いけないような気もしたし。
それに誰を気にする事もなく、泣かしてやりたい、とも思ったし。
ま、俺様としては賀川の可愛いトコ(弱み)を一つ握れたワケだし、貸しも作れたっぽいから、結果オーライってトコだけどなぁ〜。
……アレ、はまぁ、たぶんアレだ。
孤児院にいる、子供共にしてやるのと、同じ理由だ。うん。
周りの奴らが妙に騒いでいるが、俺様はそれに構う事なく賀川が涙を溢すままに泣かせて、そして泣き止むまで、肩を貸し続けてやるのだった。
その後、若干頬を朱に染める賀川をニヤニヤと見送ってから、騒ぎをただ傍観していた渚と合流した俺様は。
源海がやっているホテルに暫く厄介になる旨を告げて、返事を心待ちにしていたらしい汐達と、二度目の再会を果たしたのだった。
BL?たぶんBL(笑)
しかし弱みと貸しが、知らぬ間にできてしまった賀川さん…
まぁ、どーかしたり…とかはないと思います、よ?(苦笑)たぶん
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より、賀川さん
YL様のうろな町の教育を考える会 業務日誌より、清水先生
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