12/31 かなわないと思う
とにあ様のURONA・あ・らかると 12/31 そば
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空ちゃん視点
大晦日のその日。
浜辺が初日の出を見る人達で賑わう中ARIKA(お店)を開けると。
元々人が多かったのに更に拍車がかかったみたいに、すぐに人でいっぱいになって。外寒いし暖をとるっていうのもあるんだろうけど。
今回は事前告知してなかったのになぁ、と思いながら接客に勤しむ。
メニューは年越しらしく、〈年越しそば〉〈甘酒〉〈漁師汁(いわゆる海鮮汁)〉〈ぜんざい〉とかの筈なんだけど……
そばには天ぷらだろとか、かき揚げだろとかの声に答えて、揚げ物を作り出す海お姉ちゃん。
臨機応変なのもウチの売りだけど、その横では何故か肉の串焼きが焼かれてて、塩と胡椒、それに肉の焼ける香ばしい匂いが周囲に漂っていたりする。
誰の注文なんだろう……?
首を傾げつつ一端接客を中断して、器の回収にいく。
ARIKAは使用した器は返却制。でも今日は日が日だから、盛り上がっちゃって返却をし忘れるお客さんもしばしば。
さっきは陸お姉ちゃんと渚だったから、今度は私と汐+フィル君で、カラスマント(鎮)君の逃亡劇を見物しているお客さん達から笑い声が上がる中、左右に分かれて回収に向かう。
人が多い中見つけるのは結構大変だけど、白の器にARIKAの文字が入っているから、暗くても比較的見つけやすくて。
ある程度回収してお店に戻った、その途端。
「やっと帰ってきたっ」
「おぉ。ギリギリ今年中にも一回くらい聞けそうでよかった〜! マジタイミングいーよ」
「え? え?」
いきなり人垣に囲まれてビックリしていると、その中の一人がウィンクしながらマイクを差し出して言ってくる。
「歌いおさめしない?」
「えぇっ!?」
それに更に驚くけど、にわかに人垣の先が騒がしくなって、なんだろうと思ってそっちに視線を向けた瞬間。
「セイレーンは攫って行くぞ!」
人垣を分けいって飛び込んできたカラスマント(鎮)君がそう公言して、え? と思う間もなくひょいっと抱き上げられて、人垣の中から連れ出される。
背後でブーイングの嵐が起こってるみたいだったけど、それ所じゃなくて。
……お……お姫様だっこっ……!?
はうぅっ、恥ずかしいよぅ〜〜
……そっ……それに、それにあんな……
〜〜〜〜っっ!!
周囲は暗くて頬が染まってたとしても、きっと気付かれたりしないだろうけど、見られたくなくて。
そっと鎮君の胸に顔を埋めて、規則正しい速度に揺られる。
でも実はそれ、判断ミスだったんじゃないかな、とちょっと思う。
鎮君の、体温と鼓動に安心する。
でも今は鼓動が早くて、自分のドキドキが、上乗せされたんじゃないかなって思ったから。
「揺れて、気持ち悪くとかならなかった?」
「……う、ん」
「そう。よかった」
ドキドキしながらなんとか答えると、若干人目の無さそうな所で、そっと下ろされて。
その事にほっとしていたら軽く抱きしめられて、仮面をずらした鎮君に、そっと触れられる。
「今年、最後のキス。な」
そう呟いて、ヒョイっと仮面を戻す鎮君。
いきなりだったから驚いて目を瞬いて。それに、「それ」がキスだったのをちゃんと理解した途端に、一気に顔が熱くなって。
「……ズルイよ」
「うん」
不意打ちなんてずるいって鎮君を見上げるけど、その表情は仮面に隠れて分からなくて。
自分だけドキドキしてたらすごく恥ずかしいよ……って思ってたら、ちょっと離れた所からカウントダウンが聞こえだして。
日付がかわった瞬間。
「ハッピーニューイヤー」
その声と共に落とされる、二度目のキス。
今年、最初のキス。
「今年もよろしくお願いします」
「こ、ちらこそ……よろしく、お願いいたします……」
新年の挨拶をされてそれに挨拶し返すんだけど、ちゃんと言えてたかどうかわからない。
二度目のキスで足の力が抜けてふわふわして、鎮君の胸にぽふりと、倒れ込んじゃったから。
それだけでもドキドキなのに、ふわりと抱き止めてくれた鎮君が耳元で、
「好きだよ」
「っ!」
そう囁くから余計ドキドキして。
もう絶対顔赤いよぅ、と思いながらぎゅうと鎮君を抱きしめ返しつつ、もらってばっかりはダメだよねって思って、
「……わ、……私も……」
好き、って言おうとしたんだけど。
ここが外なのと、人をある程度まいたとはいえ、全然人目が無い訳じゃないのを思い出して。
聞かれちゃうんじゃないかとか、今更思い出した事が恥ずかしくて。
そろりと顔を上げた状態のまま、固まっていると。
「じゃあ、こっち?」
呟いて、鎮君の手袋越しの指が、私の唇をそっとなぞる。
…………
……え……
えっ!?
そっ……それって、わ……私からってことっ?!
そう思い至って、身体の熱が一気に沸騰するのがわかる。
一回思考停止したからか、ドキドキが激しい気がして混乱しそうになるんだけど、「ダメ?」って鎮君に小首を傾げられて、ドキンとして。
……そ、そんな顔されたら断われないよ……
やっぱり鎮君はズルイと思う、と思いながらちょっと背伸びして。
私から、触れるだけのキスをして離れる……つもりだったのに。
いつの間にか顎に添えられていた指に、離れる事が出来なくて。
「んんっ」
落とされた三度目のキスに、身体の芯が甘く痺れて。
背伸びしてたのもダメだったのかもしれないけど、立ってる事が出来なくて、ガクンと崩折れる。
砂地に完全に座り込む前に、屈んだ鎮君が抱き止めてくれたけど、
「……も……たてな……」
それだけ言うのが精一杯で。でもそれなのに、
「ごめん」
って言って柔らかに額に触れた唇の感触に、意識飛んじゃいそうだった。
もう、本当に。
鎮君にはかなわないと思う。
初詣、約束出来なかった理由?かな〜と
鎮君は小悪魔ですね(笑)
空ちゃんは、きっと一生かなわない
そして肉の串焼き注文したのはたぶん大将(笑)
とにあ様のURONA・あ・らかるとより、鎮君
お借りしております
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