12/25 クリスマスデート★伝えたくて
空ちゃん視点☆
最後のクリスマスデート回!
「……ちゃん? 空ちゃん?」
「!」
呼ばれてはっとすると、〈ブルー・スカイ〉のホテルの裏口前だった。
顔を覗き込む鎮君に、何でもないように振舞って笑う。
あれからの、記憶が全然ない訳じゃ、ない。
確かに頭の中は、ぐるぐるしてるけど。
受け答え、は……ちゃんとしてた筈、だし……
テラスに出て、二人で雪を見て。
転ばないからって言ったのにうっすら積もっていた雪に滑って、転びそうになったのを、鎮君に受け止めてもらったの、覚えてるもん。
……男の子の……
ううん。
ちゃんと「男の人」の腕だって、ドキドキして。
告げられて跳ねた鼓動に、更にドキドキがプラスされて、熱くて、沸騰しそうで。
「空ちゃんのいろんな表情見てるの好きだよ」
その意味を、ぐるぐる考えてたらいつの間にかホテルの前。
あうぅもう、私のばかっ
折角一緒にいるのに……
後半ぼんやりとしてしまっていたのを残念に思いながらも、笑みを作って。
「あ、えっと、大丈夫。ちょっとぼんやりしてただけだから」
「ほんとに?」
「うん」
訊ねてくる鎮君に、大丈夫だよって笑って。
「えっと……じゃあ、また?」
「うん。また、ね?」
呟いて、そっと手を離して。手を振って鎮君を見送る。
赤髪と深緑のコートが遠ざかっていくのを、暫く見つめてから。
……私っ、プレゼント渡してないっ……!!
……そ、それに……
それにまだっ……
そう思ったら、プレゼントを持って走り出していて。
「……待って、鎮君っ」
走りながら声を出すけど、ドキドキしてるのもあって苦しくて。
大きな声は出せなくて。
届かなくて、前を行く鎮君の歩みは止まらない。
「鎮君!」
「!」
二回目の声はなんとか届いたみたいで、若干驚いた顔の鎮君が後ろを振り向く。
「空ちゃん?」
「よ……かった。止まってくれ、た」
首を傾げる鎮君の側まで行って、乱れた息を整えて。
一度止まったら言えなくなっちゃいそうだったから、走ってきた勢いのままに告げる。
「えっと、あ、あのねっ……遅く、なっちゃったけど……、こ、これっ!」
差し出すそれは、スラリとした長方形の小箱。
「クリスマスプレゼント?」
言えなかった言葉を、鎮君が補完してくれる。
それにこくこく頷いて。
「開けてもいい?」
「っ!」
続けられたその言葉に、ドキリとする。
……う……。ど、どうしようっ……
た、……確かに今すぐ……開けて、もらいたい……っていうのも、あるには、ある……んだけど……
ででっでもっ……
は……恥ずかしいよぅ〜〜っっ!!
「え、えっと、あのあのっ」
鎮君からのプレゼントを開けていた時の事を思い出して、若干俯きながら左右に視線を走らせつつ瞳を瞬いて、もじもじとしていたら、
「あ、ごめん。帰ってから、開ける」
鎮君がふと呟いて、持っていた小箱をコートのポケットにしまう。
それが少し残念なような、安心したような、複雑な気持ちになりながら、「ご、ごめん、ね」って謝って、ほぅと息を吐き。
瞬間、固まる。
お……落ち着いちゃったら、ダメだったのにっ
はうぅっ! あ、改めてって……余計っ、恥ずかしいよ……っ
思考がぐるぐるして、身体の熱が、一気に上昇する。
心臓が、早鐘のように脈打って。
息が上手く出来なくて、苦しくて。
頬が身体が熱くて、頭の芯がぼぅっとする。
……ちょっとでも気を抜いたら、座り込んでしまいそうで。
……とてもじゃないけど、何か、言えそうになんてなくて。
……だけど、でも。
今じゃなきゃ、絶対言えない……
それに……
……伝えたくて。
……届けたくて。
私、……わかったから
ぎゅう、と両の手を握る。
「……空ちゃん?」
不思議そうに訊ねてくる鎮君に、触発されるように呟く。
「あ、あのっ……あのね鎮君、私っ……わたし……」
息が出来ない。胸が苦しい。声が掠れる。
ドキドキが、大きくなる。
でもそれは……相手が、鎮君だから。
鎮君じゃなかったら、こんなにドキドキしたりなんて、しないもの。
きっと……初めからわかってたの。
他の、誰でもなんかじゃなくて。
鎮君と、だったからなんだって。
「……私ね……し、鎮君、の事が……」
ちゃんと、伝えたくて。届けたくて。
そこまで言ってから、ぱっと頭を上げるんだけど。
深緑の、その瞳と目が合って。
「!」
鼓動が跳ねる。熱が上がる。
心臓が、壊れちゃうんじゃないかってくらい、脈打って。
もの凄く……、恥ずかしくて。
目を見たまま……それに見つめられたままで、なんて言えそうになくて。
胸が苦しくて、これ以上大きな声も、出せそうになくて。
でも。
伝わらないのは、嫌。
届かないのも、嫌だったから。
潤んだ瞳で、鎮君を見つめてから。
勇気を出して。
一歩、前に踏み出して。そっと、傍に寄り添って。
顔を、見られちゃうのは恥ずかしかったから、その肩にちょこんと頭を預けて。
囁くように告げる。
でも精一杯、届くようにって。
「……すき……」
長いのか、短いのか、わからない時が流れた後。
いつもより強めに、鎮君に抱きしめられて。
頬に、添えられた手にドキンとしている間に。
唇に。
舞う雪みたいにふんわりと、口づけが一つ落とされた。
言わせた所で切ろう、とも思ったんですが…
クリスマス?なので!!
進めてみました///
とにあ様のURONA・あ・らかるとより、鎮君
長々お借りしておりました
ありがとうございました!
おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ
たぶん、更新速度が落ちます(戻ります?)です…(汗)




