表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/373

12/7 いなく、ならないよ


とにあ様のURONA・あ・らかると 12/7 お部屋で言い訳タイム

とリンクです〜

空ちゃん視点






 休憩の準備が出来て、密室状態の鎮君の部屋にいるっていうのと、そんな所で二人っきりっていうのにドキドキしているのを落ち着かせる為に、ミルクティーを口に運ぶと、


「空ねぇ、えっと、その、ごめん?」


 鎮君がいきなり謝ってきて、ちょっとびっくりする。

 たぶん飾り付け中の時の事だよね、と思いながら耳を傾けると。


「そのさ、あーゆー人の多いトコで言うもんじゃなかったよな。と、ちょい反省?」


 聞きながら、コクリとミルクティーを飲み込んで。


「だからさ、そのさ、言い訳タイムよい?」


 言い訳タイムを始めるのを確認してくる鎮君に、いいのにとも思いながら、頷いてカップに口をつける。


 ……た、確かに皆の前だと、やっぱり恥ずかしいんだけど……

 ……でも、きっとそれは……


 と、一瞬意識が逸れかけるけど、鎮君が静かに話始めたのに、そっと聞き入る。


「えーっとさ、……今日、半端なく夢見悪くってさぁ、ちょっと引きずってたのはあるんだ。あと、芹香達がほのめかしたように、ってアレ、ほのめかしたのレベルじゃねーけどよ、懐が寂しいのもマジかな。でもさ、それはそれ以上の経験を体感できているんだし、後悔はしてないんだよ? ただ、簡単に総督やおじさんがさ、デートの介入をしようとするから苛立つんだ」


 距離が近くて、低ボリュームで音楽が流れる中、鎮君が息を整えるのが聞こえて。


「だってさ、デートとかで誘って過ごす相手との時間は二人の時間だろ? ちゃんと自分の身の丈にあった過ごし方がいいなって俺は思ってるんだ。そこに他の人の存在を感じるのは少し面白くないし、確かにさ、アレの影響でバイトにかけれる時間は減ったけどさ、それ以上に楽しい話題になるネタだとは思ってるしさ。空ねぇの歌は綺麗だったなぁとかさ」


 いきなり出た歌の話題に、不意打ちされてドキッとして、頬が染まって。


「それにデートって言ったらさ、空ちゃん、緊張するだろ? 遊びって言っといたらいろんな意味でハードル下がるかなぁって思ったんだ」


 その言葉に、不意打ちされたのもまだ収まってないのに、と頬の熱が上がるのがわかる。


 ……っ、い、いきなり、ちゃん呼び、は……ダメだよぅ

 な……慣れてないのにっ……


 距離が近いから、顔を見られちゃうかも、とうつむき加減になった所を覗き込まれて。


「怒った?」


 そう聞かれるけど、驚いて息が詰まったのと、見られた恥ずかしさで、気遣ってくれてるのが嬉しいのに、声が出なくて。


「クリスマスなんてやっぱさ、特別な日だし……」


 でも、続けられたその言葉に、ピンと来て。

 詰まって声が出ない変わりに、手を伸ばして。


「…………」

「……」


 むぅ、とした顔をしながら、鎮君の頬をつねる。


 俺とじゃなくても、って思ってるでしょう? という思いを込めて。


 ……同じに……特別だって、思ってくれてるなら……

 ……だったら……、だったら一緒がいいよ……



 ……鎮君と、一緒がいい



 そこまで考えて、なぜか急に恥ずかしくなって。

 でもそうじゃなくても、って思われたのが、少し悲しくて。

 目が、潤むのが止められない。


 そっと、頬から外した手を、涙を堪える為にきゅっと握ると。


「空ねぇとさ、過ごす時間って凄く安心するんだ。ふんわりした感じ?」


 そう、鎮君が続けて。

 暫しの沈黙のあと。




「安心できる分、こわい」




 囁くように、呟いて。




「夢が、忘れちゃダメって言ってるみたいでさ、今日はちょっとピリピリしてたんだ」


 掠れ気味の声が、静かに言葉を紡ぐ。


「好きの種類が変わるのがこわいんだ。たぶん、俺は自分がソレに立ち向かえるとは思っていない。空ねぇへの好きが少し違う好きに変わってるような気もしてさ、たぶん、不安なんだ。空ねぇもいなくなるのかもって思うとさ、とてもこわいんだ」


 囁く鎮君の声は、苦しげで。

 胸が、きゅうっと締め付けられて。

 何か言ってあげたいのに、言える言葉を持ってなくて、言えなくて。


「ごめん。何言ってんのかわっかんねーよな。自分でもわかんねぇ。不安だから距離を取りたくもなるし、安心したくてソバにいたくもなるんだ。そんな揺らいでる心境で誘ってるし、 断られても仕方ないと思ってるし」


 ちょっとだけ、和らいだその声に。

 大丈夫だよ、って声を返す。



「いなく、ならないよ」



 鎮君が、どんな夢を見たのかは、私にはわからない。

 それにどのくらいの思いで、「こわい」って言っているのかも。


 確かに、変わるのって怖いよね

 変わった心に、気持ちが追い付かなくなる事もあるから


 こわくて、不安にもなるんだよね


 でも……、大丈夫だよ

 そんなふうに、思ってなくて、大丈夫だよ

 私は、いなくなったりしないから


 だから、ゆっくりでいいと思うの

 ちょっとずつで、いいんだよ


 それに、一人で無理なら二人で、立ち向かったらいいんじゃないかな?



 不安だから、距離を取りたくなるんだとしても

 安心したくて、傍にいたいって、思ってくれるのなら

 ……傍に、いさせてくれるなら



 いるよ、鎮君の傍に

 それに、傍にいる事で安心の方が大きくなったら、不安が小さくなって、いつかなくなるかもしれないよね?


 すぐには無理でも

 全部、無くすことは出来なくても


 鎮君の、不安やこわさを、少しでも和らげる事が出来るのなら


 それだけで、凄く嬉しいんだよ



「……っ」


 思いが溢れて、溢れすぎて、それ以上言葉に出来なくて、考えれるだけ考えていたら、いきなり鎮君に抱き締められて。


 いきなりだったから、びっくりして。

 心臓が、聞こえちゃうんじゃないかってくらい、うるさくて。

 息が詰まって、身体が固まるけど。


 抱き締める手は、ふわりと優しくて。

 伝わる温もりに、安心して。

 聞こえる鼓動に、落ち着いて。

 自然と、身体から力が抜ける。


 それに、小さく息を吐いて。

 鎮君の方が大変なのに、落ち着くのを待っていてくれた事にありがとうをいうように、その肩にちょこんと頭をあずけて。

 大丈夫だよ、ってその背に手を回して、安心させるように撫でながらそっと目を閉じた。




 短いような長いような、不思議な時間感覚の中そうしていたから、落ち着いて離れる際に鎮君から落とされた頬へのキスに、またドキドキが高鳴るんだけど、


「でね、見たい映画ある? さくーっとチケット予約しようと思ってるんだよね」


 と言いながらノートPCを引っ張り出して映画情報サイトを立ちあげる鎮君に、つられるように思考が切り替わる。


「この日も旧水族館ウチは六時閉館でさ、節約コースとして、閉館後のレストランスペースで食事って、どうかなぁ?」


 節約コースっていう鎮君に苦笑しながら、


「素敵」


 ポン、と手を合わせて告げて、一緒にPC画面を覗き込む。


「今って何やってるんだっけ? 鎮君は観たいのとかある?」

「ん〜と、コレとか? あ。でもクリスマスならこっちかなぁ?」


 二人で色々言い合いながら予定を決めてたら、夢中になってたみたいで、「休憩終わったよー?」と隆維君が呼びに来るまで、結構時間が経っていたのに気付かなくて。

 二人でくすりと笑い合ってから、飾り付け再開の為に、そっと部屋を後にするのでした。



書いているのは自分なのに、何故かドキドキしていました(笑)


空ちゃん、意外に強い子なのかも


とにあ様のURONA・あ・らかるとより、鎮くん、隆維くん、リンクの流れで、芹香ちゃん、暁くん、総督


お借りしております

おかしな点等ありましたら、ご連絡下さいませ



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ