12/6 おもてなし?
とにあ様のURONA・あ・らかると
12/6 放課後 『無限回廊』
の合間と後話的です〜
「宜しければ此方へどうぞ」
オーダーアクセサリーってどういうのですかー? と訊ねてきた小さなレディを、作業台があるカウンターの席へと案内する。
「オーダーアクセサリーというのは、お客様に注文を受けてから作る、一点もののアクセサリーの事なんだけれど」
と説明しかけていると、
「鎮君いらっしゃい。アップルティーどうぞ。壁際に椅子もあるから、ゆっくりしていってね」
「サンキュー空ねぇ。お使いついでに来ちゃったー」
少女と一緒に来店してきた少年に、青空さんがアップルティーを渡してから、カウンターへとやってきた。
「芹香ちゃんもいらっしゃい。アップルティーどうぞ。お好みでシナモンスティックもあるよ。あと、今日の付け合わせは焼ショコラだよ〜」
「ありがと空ねぇ」
いただきます、といって少女がカップに口をつけている間に、青空さんが僕の分のアップルティーをテーブルに置き。
僕は席に座りながら訊ねる。
「ご家族さん?」
「えっ? みたいなものですけど、違いますよー? 家がお隣さんで、幼馴染み同士なんです」
僕の言葉に青空さんがくすくすと笑って言う。
お、幼馴染み……うっわ、恥ずかし〜
空ねぇっていっていたから、僕はてっきり……
あぁもう。フェリニアルトが、縁ある者とかいうからだっ
もしかしたらそうなるかもね、と向かいに座る少女が、そんな事をボソリと言っていたような気もするけれど。
「空ねぇ。鎮兄の相手よろしく」
そう言って、僕に向き直る少女に笑いかけ、説明を開始する。
「お名前と生年月日、それとお好きな色を二つ選んでもらってから作るオーダーブレスが主ですけど、他にも色々ありますよ。例えば」
と言いながら、カウンターにストラップや指環、ブローチなどを置いていく。
「こういったものもありますし、レディなら、こちらは如何でしょうか?」
話ながらささっと作製した、星形のブルージェイドで作ったヘアピンを、そっとそのプラチナブロンドの髪に付けてあげる。
「色々あるんですねー」
備え付けの鏡を見ながら告げる少女に、それは差し上げますよ、とにっこり笑って。
「石によっても値段は様々ですが、ご予算に合わせて、お作りさせて頂きますよ? ヘアピン(それ)だと、大体三百円くらいからですね」
今の所の最高額は、ウン百万とかいきましたけどね〜と笑っていう僕を、少女が目をまんまるくして見つめている。
「お好きな形がないようでしたら加工させて頂きますし、ペアもののお承りもしておりますよ。あぁ、それと。土台があるような物でしたら土台をお持ち込み頂きますと、更にお安くご提供出来るかと思います」
一度に五千円以上買って頂いたお客様には、オマケで付けさせて頂いている巾着の他に、天然石を浄化するサザレ石を無料でお付けさせて頂いております。とにっこり、笑って告げる僕に、
「それなら大丈夫そうかな〜?」
と呟いて少女はちらりと、店内にいる少年を盗み見る。
青空さんが相手をしている少年は、なんか暖房がふわっふわくるんだけど、と呟きながら、手に持つトレイに勾玉やクロス、アゲートのストーンチップなどを乗せていた。
それにくすくす笑う青空さんがとっても楽しそうで、なんだか微笑ましいんだけど、その回りをふわふわと漂って少年にちょっかいを出しているモノを目に捉えて、ぎょっとする。
――ういのぅ、ういのぅ〜。空姫がほんにかわゆいのぅ〜
(ちょっ!? フェリニアルトっ! 邪魔はしない約束でしょ!?)
二人を、というかフェリニアルトを凝視しながら僕が胸中で呟くと、くるりと此方を振り返って、フェリニアルトがにこりとする。
――主よ。今のはちゃあんと、念であったの
(え、あ? とっ、兎に角今は隠れててっ!)
それに驚きながら呟く僕に、ふわりと身体を霧散させるフェリニアルト。
こそりと安堵のため息を吐いた僕は、僕を呼ぶ少女の声に我に返る。
「おにーさん?」
「あぁ、すみません」
にっこり笑う僕に、少女は告げる。
「じゃあこの二つ、お願いします。他のは、別々に包んでください」
「かしこまりました。お時間少々頂きますが、宜しいですか?」
「あ、大丈夫です。他にも見たいなと思ってたので」
首を傾げて訊ねる僕に、椅子からぴょこんと降り立って少女。くるっと此方を振り返って呟く。
「石屋さんなのに、どーしてお茶が出るんですか?」
「僕が好きだからですよ。それに、輝石たちも生き物ですからね。各々、相性というものがありますし。お客様には出来るだけ、リラックスした状態で選んで頂きたいのですよ」
少女の問いかけに、僕は微笑みながら答えた。
「ありがとうございました」
お店の外まで、青空さんと一緒にお見送り。
仲良く並んで歩いていく二人の手には、無限回廊の紙袋。どちらの袋の中にも来店特典という事で、一つオマケが入っている。
うん、いい仕事したなぁ。と僕が思っていると、少女の方が何かに気付いたように後ろを振り返って。
「空ねぇ! 明日のツリーの飾り付け、絶対来てねー!」
それに頷き、手を振る青空さん。しかし、少女はまだ言いたい事があるのか、此方を向いたままで。少年の、置いてくぞー? との声に重ねるようにして口を開いた。
「それと鎮兄、クリスマスまだ、予定入ってないからねっ!」
「ちょ、芹香っ!?」
それに驚く少年。その声は結構大きかったようで、周囲からなんだなんだと人が出てくる。
それにぎょっとして、少年が少女を抱えて小走りに駆け。
少女の、また明日ねー! との声が、路地にその尾を残すのだった。
「元気な子だよね〜。ねぇ、青空さん」
それにくすくす笑いながら僕が青空さんを振り返ると。
「…………っ」
頬を朱に染めたまま、少女と少年が去っていった方を、見つめたままの彼女がいて。
こそりと、呟いてみる。
「さっきの彼が、気になっている人?」
「へっ!? えぇと、あのっ」
更に頬を染めて慌てる青空さん。
不意打ちに弱いのかな〜? うんうん、女の子が恋してる姿とかって可愛いよね〜。
などと僕が思っていると、
「たっ、立神店長こそどうなんですかっ? その、き、気になる人、とか……」
青空さんがそう聞いて来るけど、僕の答えを聞く前に、店内から響いたすいませーんの声に、あ、はい、只今っ! と声を返して内へと行ってしまう。
それに苦笑しつつ、
「気になる人、ね。……僕はもう、ずっと前から、心を囚われたままなんですよ……」
呟いて、自分の瞳と同じ色をした護石を、そっと握り。
何処をとなしに景色を見つめている僕に、何やら残念そうな〈声〉が届いた。
――上総よ。我にはなんだか、あの者らにおもてなしをしたというよりは……お主がただ、貢いだだけのようにしか見えんのじゃが
「えぇっ!? そうなのっ??」
何かがズレている上総君でした(笑)
オマケでつけたのはスギライトですね
とにあ様のURONA・あ・らかるとより、鎮君と芹香ちゃん
お借りしております
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