10/21 何も出来ない
とにあ様のURONA・あ・らかると 10/21 はんぶん
とちょびリンク
師匠のホテルに帰ってきて。
プライベートフロア一階の、リビングのソファに鞄を置いて。
自分もそこに、ぽすっと座る。
「…………涼維。隆維……」
呟かれたそれは、電気の点いていない薄暗がりに消えていく。
今日、一人で学校に来ていた涼維。
いつも隆維と二人一緒だから、涼維が一人でいるのなんて不思議で、声をかけた。
それに慌てて告げる涼維は、なんだかいっぱいいっぱいで。
安心させるようにその頭を撫でたけど、逃げるように離れられた。
その間際に見た青の瞳が、艶めいていたような気がする。
……泣きそう、だった?
それが気になって、あたりをつけて行った先。
やっぱり涼維は一人で、そこにいた。
「馬鹿じゃないのっ?!」
叫んだ天音に勢いよくかばんで殴られて、ぽろぽろと涙を溢す涼維。
話を聞いたら、みあちゃんと隆維が熱を出しているらしくて。
みあちゃんは、意外と元気みたいで安心する。
でも。
じゃあ、隆維は?
熱を出しただけで、ここまで涼維が、不安定になるだなんて考えられない。
いつも、当たり前にいた存在が傍にいない。
それで「不安」になるのは、わかるけど。
「不安定」に、なる理由に足りない。
……聞かない方が、良いような気もする。
憶測や推測は簡単。
だけど、真実(本物)には届かない。
それに涼維を、このまま放っておく事は出来ない。
…………
「隆維、は?」
ポツリと呟いた後、途切れ途切れ、涼維から告げられたそれは。
「…………隆維……涼維…………」
立てた膝をきゅっと抱える。
「目を覚まさない」
どうして。
それは――、聞けなかった。
軽々しく、踏み込んではいけないその領域に、踏み込んでしまったから。
どうする事も、出来ないのに。
訊くのは簡単。
だけど、それが大丈夫なものなのか、察するのは意外と難しい。
それに見合う言葉を、私は持っていないのに。
聞いてしまった事を、少し後悔する。
『大丈夫だから』
『きっともうすぐ目が覚めるよ』
なんて言葉は言えない。
そんな――、「重い」言葉。
……ただ、側にいる事だけしか出来ない。
「…………何も出来ない……」
呟いて、抱えた膝に顔を埋める。
その時開いた扉に気が付いていたけど、それに反応を返す事は、出来なかった。
暫くしてからぽふりと、柔らかく温かなぬくもりが触れて。
そっと上げた視界に、ふわりと栗色が揺れる。
「だいじょうぶだよ」
囁かれる、言葉。
「何も、出来なくても。傍に、いるだけで。良い時もあるの」
小さなそのぬくもりが、私の頭を優しく撫でる。
「それだけで――、伝わる時もあるんだよ」
だからお姉ちゃんは、そのままでいいの。囁くその声を聞くたび、目の前が歪んで。
私は抱えた膝にもう一度、そっと顔を埋めなおした。
たぶん次の日
「…………ごめん」
と一言だけ呟いて、涼維君の頭を撫でるんだろうなぁ、渚は
とにあ様のURONA・あ・らかるとより、隆維君、涼維君、天音ちゃん、みあちゃんのお名前を
お借りしております
おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ




