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10/19 抜け出して文化祭


抜け出して〜






「もう! 怒られても知らないんだからねっ」

「とか言って〜。ちゃーっかりついて来てんじゃん、(あんた)


 ニヤリとする(あみ)に、むぅと頬を膨らます(うしお)

 二人が今いるのは、文化祭で賑わううろ高の前。


 海と汐が厄介になっているホテル、ブルー・スカイは臨機応変経営で、季節ごとに様々なプランを打ち出している為、夏季シーズンが一番のかき入れ時ではあるが、秋口の土日もうろな高原の紅葉を見に来た客やらなんやらで、意外と忙しい。


 そんな中、うろ高の文化祭があると聞いた海はちょっとだけ〜と忙しい中抜け出してきたのだが、汐に見つかり延々と小言を聞かされつつも、なんとかうろ高の前までやって来たのだった。


「なんか奢ってやるからさ〜♪」

「食べ物なんかでつられないもん!」

「そーんなこと、言・わ・ず・に♪」


 などと言いながら、歩みが止まっているワケではないので、既に校内に足を踏み入れている海。それに一瞬躊躇する汐だが、賑わっていて人が多く、ここで海を見失うのはまずいと考え、そこに足を踏み入れかけた、が。


「!?」


 バシッと、首から下げた夜輝石が鋭く細い光を放ち。それに驚いて足を止めた汐は、ふと感じたその〈違和感〉に、はてなと小首を傾げる。


「なにやってんの? 置いてくよ〜?」

「あっ、待って〜っ!」


 しかしそれも一瞬の事で。海の呼ぶ声にはっとして、汐は海の元へと駆け寄るのだった。

 ほんわりと、夜輝石が常に光を放っていた事になど、気付く事なく。




 あれ見てこれ見てふらふらと、校内を回る二人。

 汐はどちらかというと、「お。アレなんだぁ?」と何かを目敏く見つけては、子供みたいにはしゃぐ海に、引き摺られるようにしてついていかされていただけだったが。

 演劇をちらりと覗いたり、飲食系の出し物をやっている所の学生達に、泣かれたり感謝されたり(此方もやはり泣かれたが)しながら、ひょこっと最後に覗いたのは、軽食処『うろ菜』。

 料理部がやってるんだってーというのを、道行く人達の会話で聞いて来たのだった。


 料理部なんて鎮と千秋(あいつら)らしいよねぇ〜、と思いながらちらっと中を覗き。

 あれ? と思い互いに顔を見合わせる海と汐。

 暫ししてから、時計が指している時間に気付いて、わたわたと慌てる汐につられるようにテイクアウトを頼んで、海と汐は若干急ぎ気味にその場を後にしたのだった。




 エンジン付きキックボードを急ぎつつギリギリ安全粋で走らせながら、汐が信じられない、といった感じの声を上げる。

 文化祭での滞在時間は、全然、まったく、これっぽっちも、「ちょっとだけ」ではなかった。


「海お姉ちゃんのバカ――っ! 源海(じーじ)に、言い付けてやるんだからぁっ!」

「なんでだよっ! (あんた)だって、結構楽しんでただろーがっ! 大体、クレープ奢ったげたんだから共犯だろっ!?」


 それに声を返す海。しかし負けじと、更に汐が声を上げる。


「奢りじゃないでしょ! 『特別』にって、貰ったものだよっ!? それは、奢りだなんて言わないもんっ」


 大体それなら、お兄ちゃんに奢ってもらったんだもん、と呟いてぷぅい、と頬を背ける汐だが。


 突如黙って、ん〜、と暫し悩んでから、そろりと傍らを並走する海を見上げ。

 それに、どうやら同じ事を考えていたらしい海が、くもりの空を見上げていた顔を戻して、ポツリと呟く。


「……けどさぁ、アレって……」

「……うん」


 その呟きに汐も声を返し。

 ついで二人同時に呟やいた。



『千秋(お兄ちゃん)じゃなくて鎮(お兄ちゃん)、だったよな(ね)?』



帰ったら怒られる、きっと海だけ(笑)


とにあ様のURONA・あ・らかるとより、鎮君と千秋君のお名前、軽食処うろ菜を


お借りしております

おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ



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