表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/373

10/12 明日の為の準備、は…


早起きのミラクル!






 海の家ARIKAの室内。

 夏場のみお店として使用しているそこは、秋冬のこの時期に誰かがいたりする事などは、そうないのだが。

 今日は、少し様子が違うらしい。

 朝から二人の人物が、各々準備に追われていた。


 一人は料理担当、青空家の次女の(あみ)

 調理場で、せっせと明日の料理の仕込みに励む。

 調理台の上には既に、仕込み終わった数々の品が所狭しと並べられていたが、まだ足りないとでも言うように、休む事無くその腕をふるっている。


 もう一人は、四女の渚。

 営業時はテーブル等が置かれているその場所にブルーシートを敷き、濡れないよう山のように被せられたシートの裾から覗く、無数のコードが繋げられた先のPC画面を凝視して、キーを操作し細かな微調整を繰り返していた。


 そう。

 海と渚の二人は、明日浜辺で行われる特訓の、準備をしていたのだった。


 ストトトトッ

 リズム良く切られる食材の音とキーを叩く音だけが、室内に響く。


「どーよ? そっちはそろそろ終わりそうかぁ〜?」


 ブゥイィィィン……ガリガリガリと、食材を削るミキサーの音に負けないくらいの大声で、海が渚に声をかける。


「…………話、かけないで。気が散る」


 それに、いつも通りに声を返す渚だが、勿論、海に聞こえている訳はなく。


「はあ〜〜っ? なんだってぇ〜〜!?」


 更に、大きな声で聞き返される。


「!」


 それにより、ミスタッチが引き起こされる。

 本日、既に三回目。

 渚はひとつ、ため息を吐いて。

 じいぃ〜っと、海を見つめる。

 非難がましいその瞳で。

 それに気付きミキサーのスイッチを切って、肩を竦めながら海が呟く。


「なぁんだよ〜? 効率が良いから、一緒にやるって決めたんだろ」


 大体、そのロボ運ぶんは発明品使ったとしても、(あんた)一人じゃ出来なかったろ、とつけ足す海。

 海のその言葉に一瞬詰まる渚だが、じぃっと海を見つめてボソリと呟く。


「…………そう、だけど。終わるまで、声かけないで……って、言った」

「いいじゃ〜ん、もう昼なんだし。どうせ、声かけようと思ってたんだよ。渚だって昼飯食うだろ?」

「…………」


 それにちらり、PCの画面を見やる渚。

 画面の表示時刻は、調度十二時を指している。

 そして自分のお腹も確かに、すいている。


「…………」


 ただ、話を逸らされただけのような気がする。

 そう思いながら思案する渚だったが。

 海姉のご飯は、美味。

 人の三大欲求には、そうそう抗えるものでもなく。


 暫ししてから、渚は諦めたようにため息を吐いた。


 しかし実はそれが――、選択間違いだったと、気付く事もなく。




 海と渚。二人の昼食は賑やかに進む。

 専らしゃべっているのは海で、渚はそれに頷くか、一言二言言葉を返すのみで、黙々と食事を口に運んでいたが。


 今日の昼食は、温野菜サラダにささみと万能ねぎのスープ、ふわふわ卵のオムライス、デザートは桃とバナナのヨーグルトソース添え、だ。


 昼食前に起動させたチェックソフトが、終了するのは四十分前後。

 ゆっくり食べても充分間に合う。

 海の話を聞きながら、順調に箸を進め。


 明日、起動させたらすぐ特訓に入れるようにしておこう、と思いながらごちそうさまでした、と渚がその手を合わせた所に。


「――んで。これがその試作品なんだけど」


 と言って海が、つぃと差し出してきたのは、コップに入れられたドリンク。


「ジュース類は鮮度が命だから、また明日新しく作るんだけどさ。試飲(確認)は、しといた方がいいだろ?」


 どうやら、『ムキムキスペシャルドリンク』の試作品らしい。

 海のその最もな意見に、コクリと頷く渚。

 自分は鍛えている訳ではないが、それがどんなものなのか、という事に若干の興味があった。


 データ収集している渉先生の身体数値は、初期と比べぐんと上がっている。

 体力、肺活量、持久力。筋肉、骨盤強化度、血流量の増加。電気信号の伝導率、反応速度、瞬発力。

 そして、エネルギー変換率の向上。


 渉先生が常に貼っている〈測量くん・ミニ〉から、自動受信で更新される一日のデータの総数値は、目を見張る程の上昇を見せていた。


 そんなものを、毎日見ているのだ。

 ちょっとくらい興味を惹かれても、別におかしな事ではない。


「あたしも飲むし〜」


 と言って、同じコップを手にする海。それに頷いて。同時にコップに口をつける。


 色もキレイだし、味もまあまあ。これならいいんじゃないか、と思った渚だったが。


「…………!?」


 次の瞬間、ボンッ! と効果音が付きそうな程一気に、その身体に朱が上る。

 その事に、いきなり身体が熱くなって、何が起きたか分からないまま、渚が熱り顔を海に向けるが、海はいたって普通の状態で。

 海姉にはもしかしたらこれくらい、なんてことないのかも……とも思いながら、それに不思議そうに首を傾げ心持ち、ボンヤリしたような気分の中、取り合えず水を……と手を伸ばす渚だが。


「ほい」


 と言って、海から手渡されたコップを手に取り、それをちゃんと確認しないまま、ちびっと飲んで。


 今度は、その顔を青くさせ。


「あ、悪りぃ。こっちだった♪」


 と言って海から三度渡された、そのコップの中身をこくりと口に含み。


 最後は、その顔を紫に変化させた後蒼白になって、渚はへろっとカウンターに突っ伏して、暫ししてから昏倒した。


 そんな渚の耳に、最後に聞こえたのは。


「味としては大丈夫だったけど、やっぱ一種類ずつじゃあ、効果強すぎっぽいなぁ〜。折角色々取り寄せたのに。でも無駄にすんのは勿体ないし〜。ん〜、こーなりゃ仕方ない。全部入れて薄めっか♪」


 嬉々とした海の、そんな楽し気な声だった。



 そう言えば――、ARIKA(店)の入り口に、「超! 高濃度プロテイン」やら「◯◯特産、マル秘食材」やら「幻の超珍味!」やら「万歳生薬」やら……色々な段ボールの小箱が沢山積まれてた、と今更ながらに思う渚だったが、既に遅く。

 突如襲ってきた疲労感と急激な眠気に、その意識を手離した――……



たぶんこれで、

YL様のうろな町の教育を考える会 業務日誌 10月13日その2 修行編その6 雨の砂浜、君はそこにいた。

に続くんではないかな〜と


さて。完成した『ムキムキスペシャルドリンク』とはいかなるものか!(笑)

たぶん、データによる検分と確かな効能と、海の子供心で出来ているに違いない

色々混ぜられているので、調度良いものになっている筈ですよ〜


しかし、5日の仕返しですか?海さん(いや、たぶんそんな事本人は思っていない(苦笑)そして何者だ、この子…

きっと夜に、渚は頑張って作業を終わらせたんだ…

海が絡むと、どーしても一筋縄、といいますか穏便にはいってくれないなぁ〜


YL様のうろな町の教育を考える会 業務日誌より、渉先生のお名前と、スペシャルドリンクを


お借りしております

おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ