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国立大学法人東京魔術大学 ─血継魔術科─  作者: おめがじょん


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シン・特別編:コミカライズが新体制になっても1人だけ出れない奴がいるらしい


「──というわけで、色々あったが我々のコミカライズの話は新体制となる。新たな漫画担当は戸成先生(@hina_kaz)だ。各自フォローしておくように」


 血継魔術科のゼミ室で織田清麻呂がそう告げた。

 本当に色々な事があった。大学生とは違い、大人の世界は色々な事が起きてしまう。だが、経費でウルフギャング(https://wolfgangssteakhouse.jp/)に連れて行ってくれるともなれば、細かい事情は聞かず騒がず全て忘れるというのが大人の処世術だ。ウルフギャングに行きたい。ヤングアンブル編集部様。宜しくお願い致します。何でもします。原作も頑張ります。生涯文句を言わずに一生懸命御社の利益の為に働きますといった感じである。もう二度と賞金上げろやなんて言いません。


 話が逸れたが、そんな中で一人ムスっとした顔をした人間がいる。──在原清春だ。前回の特別編で出番がない事が決定した哀れな男である。

 そんな彼の態度を見かねてか千ヶ崎真央が手を上げた。


「あの、マロ先輩……。新体制になるって事は、清春が出れる可能性とかも変わってきたり……?」


「いや、変わらない。【基本的に第一部までで、売上次第で第二部の連載が決まる】という契約はそのままだ」


「……別に構わねェよ。もう終わった話だ」


 清春の言葉で会話が終わった。他の面々もう散々弄ったので飽きているのかこれといった反応は無い。全裸は布団でゴロゴロしているし、梢子は煙草の吐いた煙で輪っかを作り、真央と美鈴もその輪っかの漂う先を目で追っていた。


「わかった。なら、これにてコミカライズの会議は一旦終了とする。以降は、キャラクターデザイン案もシナリオも変更は受け付けないからな」

 

 疲れたように清麻呂が部屋に置かれたサイネージへと目をやった。

 そこにはコミカライズ化の各話のシナリオや、血継魔術科のキャラクターデータが表示されている。この部屋にあるパソコンの画面を出力したものだ。血継魔術科の面々の我儘や当時の記憶から清麻呂が起こしたコミカライズ化の根幹を担う大事なデータである。


「姫先輩のデザインさ。癖っ毛っぽいバージョンとかも凄く良かったよね」


「あれ凄く良かったんだけどさ。八代と髪色も近いしワンチャン姉弟と勘違いされそうな感じだったから、ちょっとね~」


「風評被害という奴ですね。そんな勘違いされたら、私だったら死にます」


「はぁぁぁ!? ねぇ、ちょっとマロ先輩! やっぱ僕の髪型黒髪おかっぱ頭に変更で! 美鈴とお揃っちにしてやるんだ! ついでに名前も西園寺八代に変えて!」


「そんな理由で変えられるか! ただでさえお前はデザインにうるさく注文をつけたんだから、大人しくしていろ!」


 清麻呂に一喝されて八代がすごすごと黙った。

 目が血走っている。一触即発といった雰囲気だ。シナリオもキャラデザも纏め役をやったのは清麻呂だ。血継魔術科の我儘を先方に伝え、細かな調整も清麻呂が一手に引き受けていた。全ては五月祭で下がった血継魔術科のイメージ向上の為。

 その一心だけで清麻呂はコミカライズ化の窓口として日々頑張っていたのだ。


「はい、もう保存完了したからな。嘉納先生に明日の朝アップロードして貰って終わりだ。お前達はもう帰れ。戸締りと片付けは俺がやっておくから」


 清麻呂の言葉で血継魔術科が指輪を使った転移魔術を発動させて部屋から消えていく。各々言いたい事はありそうだったが、清麻呂が魔銃を右手に召喚したからだ。

 最後に清春が部屋を出ていこうとすると清麻呂が声をかけた。


「在原。シナリオ案自体は新宿の事件まで作っておいた。コミカライズの担当さんも連載継続は望んでいる。その内お前も出れるさ」


「登場したところで、女体化ってオチが待ってるんスけど」


「……すまない。配慮に欠けていた」


「別にいいさ。じゃ、オレも帰るよ。五月祭まで連載が続く事を祈ってるぜ」









「──まァ、そんな殊勝な人間じゃねェんだけどよ」


 深夜2時過ぎ。在原清春は再び東魔大のゼミ棟内に侵入していた。夜遊び名人の彼らにとっては、警備員の巡回時間は把握済みである。この時間は仮眠をとっている事も知っている。

 

「五月祭まで待ってられッか。八代とオレの立場を入れ替えて、姫先輩がセフレのハーレムバトル漫画にしてやるぜ……っ!」


 清春は諦めていなかった。第一話から出てやる気満々であった。

 全裸パトカーは嫌なので、テロリストへの抑止力として選出された学生傭兵みたいな設定に変えようとも思っていた。ゼミ室への直接の転移魔術は昨年宴会でバカ騒ぎを起こしすぎて夜は封印されている。今、清春がいるゼミ棟の他の部屋に転移して歩いていかなければならない。ゆっくりと足音を殺して歩いていこうとすると、


「転移魔術……?」


 清春が先ほどまで居た空間に魔術印が浮かんだ。

 清麻呂か嘉納だったら終わる。──転移魔術が発動し、現れたのは黒いマウンテンパーカーを着込んだ小柄な女だった。


「──ッ。在原先輩……!」


「ンだよ。美鈴。お前もか」


 とりあえず清麻呂と嘉納でなかった事に安堵した。まだ美鈴なら交渉の余地があるからだ。美鈴も同じような結論に至ったようで咄嗟に構えていた拳を下げた。最悪暴力でカタをつけるつもりだったらしい。真面目そうに見えてこいつも根っこは血継魔術科なんだと改めて清春は思った。そして、美鈴の目には憐れみの感情が生まれていた。

 

「在原先輩……。そこまでして出番が欲しいんですね……」


「うるせェ。お前こそ何なんだよ。キャラデザもいい感じに仕上がってたじゃねェか」


「キャラデザには満足してます。その……私の目的は全裸と流星寮の抹消です」


「滅茶苦茶ヤバい事言ってるって自覚ある?」


「違うんです! 今日、御爺様からコミカライズの話について聞かれたんですよ! 掲載されたら教えなさいって! 第一話なんか初手全裸パトカーでしょ!? あんなの見せたら私の人格まで疑われてしまいます! 相手は内閣総理大臣なんですよ!?」

 

 相当嫌なようで美鈴が憔悴しきったような表情でまくし立てる。

 家族にどこどこの誰々とキメセクしたとか全て筒抜けな清春にとっては心底どうでもよかった。

 

「丁度オレも八代のシーン全部オレに書き換えようと思ったンだよ」


「んー……どちらにせよ……いや、でも他はもっと論外……」


 余裕がないせいか、平気で失礼な事を口走る美鈴だったが妥協点には達したようだ。腕を組み顎に手を当て「手を組みましょう」と口にした。清春も異論はない。二人してゆっくりとゼミ室へ向けて歩く。

 そして、廊下を渡るとゼミ室の扉が開いており、光が漏れているのが見えた。他にも侵入者がいるらしい。一気に警戒モードに入った二人は音もなくドアまで身を寄せるとゼミ室をこっそりと覗いた。


「うーん。やっぱ東京魔術大学血継魔術科ってタイトルよりも、僕のことが大大大大大好きな100人のセフレ計画の方がしっくりくるな」


 中では伊庭八代がサイネージに映った画面を見ながらぶつくさ言っていた。

 主にキャラクター設定の部分を弄っているようで、梢子の所に"下着は毎回書いてください"等好き放題書いている。

 

「おっ。なんだ清春のキャラデザもあるじゃん。出ないのに。なんか身長盛ってないかこれ? あいつもっと小さいだろ。靴も厚底過ぎるから便所サンダルにしてくださいって書いておこ」

 

「──あの野郎……っ!」


 八代の発言に美鈴が思わず小さく笑みを漏らした。

 ジロリと清春に睨まれてすぐに黙ったが。何も気づかないまま八代はキャラデザを眺め、今度は美鈴の所で止まった。しばらく無言で美鈴のキャラデザを睨んでいたが、やがて"実は男の娘"とか"AAAカップ"とか好き放題属性を追加し始めた。


「…………殺ス」


「あァ……オレが氷柱であいつを左端に誘導する。そこでお前がキメろ」


 お互い青筋を浮かべ小声で話しながら作戦を立てた。伊庭八代の素早さと反応速度は血継魔術科でもトップクラスである。まともに打撃を当てられるのは美鈴ぐらいのものだ。現に清春が何の前触れもなく顕現させた氷にすぐに反応し、回避行動をとった。その隙に美鈴も狂化を発動させて氷柱に隠れるようにして左側へと回る。無数の氷柱を魔剣を召喚するでもなく避け続け、左端へと移動し、跳躍。そこに美鈴もタイミングを合わせて突進したが、


「うぉっ!? 何するんだよ!」


 空中でぐるんと体勢を変えて美鈴の拳が空を切った。

 運動神経の塊のような動きだった。清春だけでなく美鈴も相手では厳しいと判断した八代は器用に着地すると、指を噛んで支配の魔剣を召喚する。三人の血継魔術師が際限なく暴れたらどうなるかといえば、明日また嘉納と清麻呂からの折檻は確定する。

 

「お前らもシナリオを変えにきたようだな……でもいいのか? このまま三人で暴れたら明日嘉納先生に殺されちゃうぞ」


 八代がニヤリと笑った。とりあえずこれ以上争う気は無さそうである。美鈴と清春も拳を下げた。だが、誰も引く気はない。


「暴力以外で決めましょう」


「成程、野球拳か」


「ああ、それしかねェ」


「嫌ですよ。私だけ不利じゃないですか!」


 美鈴の抗議に「ハァ」と清春と八代が大きくため息をつく。お前の裸に興味なんて無いというのがこれ以上なく美鈴に伝わってきた。二人の態度に殺意をどうにか堪えながら美鈴は建設的な提案をなんとか絞り出した。


「普通にじゃんけんしましょうよ。恨みっこなしで」


「普通のじゃんけんってどうやるんだ? 僕たちあまり経験がないんだから難しい事言うなよ」


「服脱がなけりゃいいんですよ死ね。──はい、では最初はグーからで行きましょう」


 苛立ちが限界に達した美鈴が顔を引きつらせながら声を出した。


「──最初は、グー!」


 掛け声と共に完全に油断していた八代の顔面に美鈴の拳が炸裂。

 何時もだったら避けれていた八代も、これは予想できなかったらしく一撃でぶっ飛ばされていった。


「じゃんけんッ!」


清春も遅れて反応した時には、既に美鈴は拳を振り抜いた勢いを利用して清春へと回し蹴りの体勢へと移行していた。


「テメッ──!?」


「────ぽォいッ!」


 八代より圧倒的に身体能力で劣る清春がこれを避けれる訳もなく、これまた一撃でぶっ飛ばされていく。


「ふぅ……」


 部屋のゴミ掃除を終えた時のような妙な達成感を感じた。

 八代を始末した後、清春の処理をどうしようか悩んでいたが、ここしかチャンスがないと動いて正解だった。動かない二人を捨て置き美鈴は自分が祖父に見せても恥ずかしくない作品にすべく、パソコン前に移動して全裸とバカ軍団の記述を抹消しようとした、が


「────ッ!?」


 氷の矢が美鈴目掛けて放たれた。

 腕を振って打ち落としたが手には痺れが残っている。

 見ると八代と清春が怒りに燃えた瞳で美鈴を睨んでいた。打撃が甘かった。殺すつもりで殴ればよかったと後悔した。


「…………」


「…………」


「…………」


 三者誰も言葉を発しない。

 もう殺るしかない。三人の血継魔術師が同時に動き出した。支配の魔剣が清麻呂の何時も座っている椅子を真っ二つに断ち切り、氷結魔術が嘉納のデスクを凍らせる。そして狂化によって鬼へと変化した美鈴の拳が投げつけられたそれらを拳によって粉々に破壊していく。そして──


「「「あっ」」」


戦いで飛び散った破片の一部がパソコンのキーボードに直撃し、サイネージにあるメッセージが流れた。



特別編:コミカライズ化が決定したが、この中に一人だけ出れない奴が居るらしい が削除されました。



 三人の顔が絶望に染まった。

 シナリオデータのどれか一つが削除されてしまったようだ。これはやばい。しかもノートPCのキーボード部分に破片が突き刺さっていて修復も難しそうである。もうどうしようもない。美鈴があまりに絶望的な状況に泣きかけていると、清春が低く呟いた。

 

「逃げるぞ。オレ達は今日ここにはいなかった。いいな?」


 清春の言葉に美鈴も八代も無言で頷きゼミ室から逃げ出した。

 そして、翌日。事態を把握した嘉納と清麻呂によってまず新宿に潜んでいた八代がボコボコにされ、次に最近できたセフレの家に逃げ込んでいた清春がとっ捕まってブレーンバスターをくらい、最後に成田空港で荷物を纏めて出国するかどうするか悩んでいた美鈴が保護され、西園寺家からしばらくの外出禁止令をくらった。そして──


「……在原。お前の気持ちもわからんでもないから、第一話に急遽お前の存在をねじ込んで貰えないかとお願いしてきた」


「マジ!? じゃあ、オレも第一話に出れるって事?」


「ああ、どういう形かはわからないが何とかするという返事を貰えた」


 在原清春も第一話のどこかに登場が決まった事で、ようやくこの事件は幕を閉じた。




 

というわけで、コミカライズの話の続報でした。

またどうでもいい話も再び見れるようになりました。

ご不便おかけしました。

Twitterで #東魔大どうでもいい話 で検索すると

私をフォローせずに東魔大のクソどうでも良い話が読めます。

よければどうぞ。

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― 新着の感想 ―
いつも楽しく読んでます。 だんだんこの章の終わりが近づいてきましたね。 ゾクゾクしてしまいます(笑) Xの方ありがとうございます。早速読んできます┌(・。・)┘
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