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国立大学法人東京魔術大学 ─血継魔術科─  作者: おめがじょん


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71/78

前科71:男だってメスイキしちゃう夜もある



 歌舞伎町から少し離れたタワマンの上層階。

 在原清春は高そうなガウンを身に纏い、煙草を咥えようとしてすぐに辞めた。


「クソが……」


 状況は最悪。一服つけたい気分であったが、清春のマンションじゃないので吸えない。ここは清春の女の部屋だ。今は丁度韓国に整形しに行っているので不在である。ゴリゴリの魔術貴族の長女が住むタワマンなので安全性はそれなりに確保されている。


「いつまでもメソメソしてんじゃねぇよ。飯ぐらい食え」


 部屋のソファーでは美鈴が足を丸めて落ち込んでいる。

 美晴が攫われてしまったのだ。昨晩は助けに行こうと一人で殴り込みに行きそうな美鈴を抑えるのが大変だった。アイラには知性を感じた。在原家という威光を使って脅しもかけてある。加害される見込みは多少低くなった。もしもの時は、宣言通り報復をするつもりでもある。


「そーそー。りりたん。ご飯食べるのマジ大事」


 清春が用意した朝食を既に完食し、冷蔵庫にあったストゼロをストローを刺して飲みながらまぁたそが言う。図太い女だな、と清春は思う。この街でそれなりの生き方をしてきた女だとも。二人に言われて美鈴がピザトーストを口に含む。無表情で暫く噛んでいたが、味が良かったのか雰囲気が少し緩む。


「清春君。料理できるんだねー。意外」


「オレはモテる為の努力は惜しまない男だからな」


 ニヘラと笑い軽口を叩いて煙に巻く。

 子供の頃から逃亡生活を送り、捕まった後は在原で寵愛を受ける為の努力だが語らない。美鈴が黙々と食べ続けたのを見て一息つき、まぁたそが奪った鞄へと視線を向ける。


「んで、それが騒ぎの発端か」


「うん。あいつらが捌いてる魔術師になれる薬だか何だか。ウチらはカプセルって呼んでる」


 立科が服用してたものと同じものだ。

 これに手を出してしまった彼女の惨状を思いだして、清春の目に仄暗い殺意が宿った。


「そか。それと、夏目諭吉って奴知ってる? あいつだけ全然みつからねェんだけど」


「あー……。あの幹部補佐のね。あいつヤバいよ。表向きはホストらしいけど、かなりの武闘派だって聞いた事ある」


 立科の担当の名前だ。まだ見つかってはいない。

 他の幹部は締め上げたのにこの男だけは所在がわかっていない。一介の半グレホストかと思いきやもう一段階ぐらい裏がありそうだと清春は認識を改めた。そのまま近くにあったテレビのリモコンを手に取り、電源を入れる。緊急ニュースは特にない。今日も平和な一日が画面に映っている。


「報道されてないですね……」


「ビルぶっ壊れてたのにねー」


「あァ……。しかも見ろよこれ。オレの知り合いに、昨日の場所の確認に行かせた写真がこれだ」


 清春がスマホに表示させた画面には昨日戦ったビルの周辺が映っていた。それを見てまぁたそと美鈴が言葉を失くす。清春も送られて来た時は正気を疑ったからだ。


「何コレ……」


「全部、元に戻っている……? そんな魔術、ありえるんですか!?」

 

「さぁな……。アイツとも連絡つかねェし。この分だと死んではなさそうだけど」


 昨日の惨状が全てなかったかのような元通りの景色が写真には写っていた。報道も全くされていない。一つのビルが倒壊していた筈なのに。全部がなかった事になっていた。


「昨日の顛末は聞きましたが……支配の魔剣って一体……ああ、もう。考えが纏まらない……!」


 美鈴がまた限界を迎えたのか頭をかきむしり始めた。人智を超えた魔術の所業である。家の外壁ぐらいなら魔術師でも修理できる人間はいる。あれだけ激しく戦って倒壊したビルを数時間で元に戻す等清春にだってどんな魔術を使ったのか想像すらつかない。

 ただ一つわかる事といえば──


「三十年前に、東京を壊滅させたってのは嘘じゃねェみたいだな」


 窓の外は今日も良い天気だった。東京が一望できる。抗争から三十年。まだ一部に更地となっている部分が見える。先代支配の魔剣が遺した戦争の傷跡はまだ目に見える形で東京都に刻まれていた。支配の魔剣ならばそれが可能だと昨夜はこれ以上なくよくわかった。


「ま、いねェ奴の事うだうだ言ってても仕方ねェ。こっちも応援呼ばないとな。この面子だとちょっと厳しい」


「……他の先輩方ですか?」


「姫先輩が来たら作戦もクソもなくなって滅茶苦茶になるし、この試験前に真央なんか呼んでみろ。今度こそ留年だ。マロ先輩も就活でそれどころじゃねェ」


「では、どなたが……?」


「お前も会った事あるんじゃねェかな。──この街の隅々まで知っている、どうしようもねェ変態だ」














 関東銀泉会かかりつけの闇医者がある。

 マンションの一室ではあるが、大病院の個室クラスの設備がそこにあった。そこに体中に管が刺さった女が一人。濁った目で天井を睨んだままずっと目を見開いている。相馬道征だ。状況がようやく動き出したのは、関東銀泉会の人間が入って来たからだ。


「……状況はどうです?」


 道征がそう問うと、関東銀泉会の遠野健剛は忌々しそうな声で吐き捨てた。

 

「魔剣使いが七人死んだ。アンタは回復にどれぐらいかかりそうだ?」


「ぶった斬られた足と右腕は魔術で繋がりました。ですが、失った血ばかりはどうしようもないです。明日か明後日まで時間をください」


 恐ろしい程の殺気を迸らせながら相馬道征は言葉を漏らすように吐いた。昨晩の戦いで久しぶりに死の危険を感じた。八代に腕を斬られたまではまだいい。竜種が道征を殺さんとターゲットを絞ったにも怒り心頭だ。だがそれ以上にあの時の状況をずっと痛みに耐えながら考えているのだ。あの魔剣は一体何だったのかと。


「アンタが回復次第、総攻撃を仕掛ける。龍頭は全員皆殺しだ。この街は俺らが獲る。アンタは竜種を頼むよ」


「了解。借りは必ず返します。──それと、遠野さん。貴方も確か三十年前の生き残りですよね?」


「あァ。オヤジの鞄持ちだったんでな。あんなイカれた魔術師の戦いの最前線まで行っちまったわ」


 三十年前。支配の魔剣と最後の戦いを思い出す。組長は最前線で鬼神商会と互角以上に戦っていたが、己は自分の身を守るので精一杯だった。数多くの犠牲の果てにあの魔術師を倒した事は今でも鮮明に覚えている。最期に、笑いながら死んだ事まで含めて全部。


「支配の魔剣固有の魔術の正体って何なのです? 征服者の権能(私の魔術)も大概ですが、アレはそれより更に──」


 とまで言いかけて口を噤んだ。己より上だと認めたくなかったからである。遠野もどこか遠い目をして昔を思い返す。懐から煙草を取り出そうとすると、箱が真っ二つに斬られた。


「副流煙は体に毒です。私が紅ちゃんの子供を産めない体になったらどうするんですか?」


「……悪かったよ。支配の魔剣の魔術の話だが俺は全く知らん。ただオヤジ達は、"世界を支配する魔術"って言っていた。詳しくは知らねぇ。一振りで数十人は殺してたからな。あんな奴じゃなかったんだが」


「その口ぶり。先代の支配の魔剣の使い手の事は知ってるみたいですね」


「ウチの魔剣部隊あるだろ? アレは元々魔術部隊だったんだよ。魔術の素養がある孤児を集めて、鍛え上げて銀泉会の前身組織だった遠野組の組員にしようって目的のな。そこにアイツも居たんだ。伊庭八代の母親の小夜子も一緒だった。詳細は長いから省くが、あいつらの処遇は結構揉めてな。最終的に東京魔術大学、伊庭家、ウチの三勢力に所属する事になったんだ」


「その時何かがあってあの事件が起きたと。そこはあまり興味ないですね」


「そうかよ……。伊庭が悪いっていえばそうなんだが。()()()()()になるなら、最初から鬼神(おにがみ)と凪朝は出逢わなけりゃ────」


 それでも独白が漏れ、するりと名前が出て来た。もう呼ぶ事のない名前が。遠野は当時を懐かしむ。年が近かったから偶につるむ事もあった。バカな事も散々やった。それ以上に何度もキレ散らかしたがもうその二人はこの世にいない。ふと我に返ってそんな事を考えている場合かと思い直す。やる事は沢山ある。人員の確保。相手の情報収集。作戦立案。考えていたら更に煙草が吸いたい、と遠野は出口へと足を進めた。

 

「──帰るわ。アンタは体調を万全にしてくれ」


「ええ。この後紅ちゃんに電話して慰めて貰います。腕と足ぶった斬られてマヂ病んでるって」


「好きにしてくれ」


 そして、ドアを開けて出る前に一言遠野は口にした。


「一つ言っておくが、先代の支配の魔剣は昨日の伊庭の魔剣よりまだ強かったぞ。アンタならそれがどういう事わかるだろ?」


 返事は聞かない。興味もないしきっとわからない。

 ただ端的に事実を述べただけだ。三十年前の支配の魔剣は昨日の八代より更に上だった。遠野が出て行った後、道征は一人思考を巡らし、一つの答えを出した。

 

「そこまで突き抜けてしまったのなら、もう人の心を失ってしまっていたでしょうね……」













 




「……この人ですか」


 清春が呼んだ助っ人の顔を見るなり、美鈴がげんなりとした顔を作った。

 

「おお、西園寺サン。よもやこんな所で逢うとは……。人の縁とは数奇なものデス……」


「文句言うんじゃねェ。この辺の顔だぞこの人は」


「あたしも知ってるー。前に指名しまくってくれたもんね」


「最近顔を出せてなくてスイマセン……」


 流星寮に住み着く八年生、風俗王ザビエルがスーツ姿で現れた。年齢不詳。魔導力科に在籍している事と性風俗店に異様に詳しい以外が謎に包まれた人物である。美鈴も何回か流星寮で見かけた事があるので知っている。風俗嬢の名刺を投げて攻撃するイカれた人間と認識していた。まぁたそも知っているようで美鈴よりよほど親しそうに話していた。


「在原クンから大体の事情は聞きまシタ。──良いでしょウ。私も協力しマス。戸山団地には何人か知り合いの子もいますカラ」


「パパ活っすか」


「ええ。中々ガードの高い子達ですけどネ。ケツモチが強力な分、信頼を得るには随分と時間と金がかかりましタ」


 ザビエルは会社経営をしている噂がある。本人は否定も肯定もしないが。ありとあらゆる性風俗を網羅するには金がかかるのでその噂にも妙に信ぴょう性がある。どうしようもないクズだが紳士ではあるので、こういった時に色々な場所に顔が利く便利な先輩でもある。


「ちなみに在原君。対価ハ?」


「この名刺の番号にオレの名前出してかけて下さい。一般人じゃ遊べない子と逢えますよ」


「君は話が早くて助かりマス。伊庭君も少しは見習って欲しい所デス……」


 清春にもそういう伝手がある。紹介制なので下手な人間を招けば自分にも痛いしっぺ返しが来る。ザビエルならギリギリ妥協できるラインだ。それに、この状況では美晴の身の安全の確保には彼の協力が必要不可欠だった。

 

「しかし、君達は既に龍頭に顔が割れていマス。潜入は厳しい……と言いたい所ですが、一つだけ手がありマス」


「頼むよザビエル先輩。金ならこっち持ちでいいっすから」


「私も出します。どうかお願いします」


 そう言うとザビエルは満足そうに笑い、清春を指さした。


「これは西園寺サンにはできまセン。在原クン。君にしかできない事デス……」


 ザビエルから計画の概要が語られる。最初の一言目から意味が分からなかった。清春の脳内には「は?」という感情しか生まれてこない。美鈴が気の毒そうな顔でそれを見ていた。「嫌だ」とは言えない。美晴が攫われた事には自分に落ち度があるからだ。地球上の全女子の味方を自負する己を否定する事になる。どうするべきなのか。その答えを持たぬままザビエルの話術に流された清春は、何時の間にかTシャツ短パン姿(セフレの私物)でベッドに寝かされていた。


「それでは在原クン。始めマス……」


「ちょっと待っ──!」


 清春の返事を待たずに錠剤と水が口の中に流し込まれザビエルが華麗な手つきで容易したローションを振りまいて行く。体が急激に熱くなった清春は呻いたまま横になっている事しかできない。ローション塗れになった清春に対し、ザビエルは両手に電動マッサージ機を持って清春の全身をほぐし始めた。


「くっ…………ぉっ……………ッッッ!!!!! くぅぅぅぅぅぅぅッ!!!!!!」


「いいですヨ。在原クン。細胞が活性化してきましタ!」


 清春の全身が淡く魔力を帯びて発光し始めた。対する清春は痛みと熱と少しばかりの快感に酩酊状態に近くなっている。下腹部が燃えるように熱い。何かどろりとしたものが出て来そうな感覚すらあった。


「イ………イクッ!! 何かクる………ッ!!!!!!」


「いいですヨ! さぁ、おっきな声で言うのデス! 女の子になっちゃうぅぅぅト! 言エ!!!」 


「あっ………。イく! あぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!! イク!!! イくぅぅぅぅううううっっ!!」 


 清春の全身が光に包まれ、髪が伸びて柔らかく丸みを帯びたフォルムになった。そう──ザビエルの目的は清春の女体化だ。まさか敵勢力も女になって来るとは思わないであろうという盲点をついた作戦でもある。五月祭で不慮の事故により女体化した清春の肉体に特製の薬を投入し、これまたザビエル特製ローションとマッサージにより清春の体に残ったナノマシンを活性化させ肉体を作り変えたのだ。実験は成功したらしく、清春の胸が再び大きく膨らんでいる。暫く荒い呼吸をしていたがナノマシンの活性化がようやく収まり、呼吸が落ち着くと清春は高くなった声で怨嗟の言葉を絞り出した。


「またかよクソが……! レズセックスでもしねェと割にあわねェ! 絶対、美晴ちゃんと一発ヤってやる……ッ!」


 こうして五月祭から僅か数週間の間で、在原清春は再び女体化してしまった。


 











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作者鬱病により鍵アカウントになってますので現在見れません。春には回復してると思いますのでしばしお待ちください。

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― 新着の感想 ―
71.72話一気に読みました。 戦闘、シリアス、女体化色々詰め込まれていて、面白かったです。 清春の絶頂は規制にはアダルトに入らないとwwwφ(..)メモメモ
どう考えてもヤバい戦争の魔剣よりも格上なのは流石の支配の魔剣…。 世界を支配するってなるとマップ兵器ってことですかねえ いつも楽しみです!更新ありがとうございます!
さあ混沌としてきました~
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