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国立大学法人東京魔術大学 ─血継魔術科─  作者: おめがじょん


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58/78

前科58:学祭における酒の失敗もいつか青春という思い出に変わる。









 激痛と共に在原清春は目を覚ました。

 臨死体験というものは非常に後味が悪い。去年出た時は全くの無傷だったのに今年はハズレもいいところだった。全身全くの無傷なのに幻肢痛が走ってどうにもまだ戦っているような状況だが、全身にベッド上から照射された魔術印が浮かぶとそれも少しずつ大人しくなった。医療魔術も段々と魔導力に置き換わっている。鎮痛用の魔術印も災害時の訓練の時が一番使用頻度が高いと医療魔術科のセフレが言っていた事を思いだす。ただ、効果に持続力がないのが欠点なので、未だ清春の手には点滴の管も刺さっている。


「おっ、起きたな。よく頑張った」


 部屋のドアが開くと嘉納がご機嫌な様子で部屋に入って来た。

 だだっぴろい真っ白な空間に二人だけである。魔術科の面々は揉め事を避ける為に別場所に飛ばされているようだ。

 

「来るのが遅くなって済まなかったな。医務室で梢子達が大暴れしてたので、鎮圧しに行ってたんだ」


「今起きたばっかだから別に良いっすよ」


 何をしているんだ、なんて一瞬思ったがそういう連中だったと思い直す。

 しばらく血継魔術科と離れていた分、かなり自分自身が常識的な人間になったのだなと心の中で笑った。


「調子はどうだ?」


「まだ痛ェっすよ。すいませんね。去年と違って、ここまで追い込まれちゃって。嘉納先生もこれから大変でしょ」


 この戦いで血継魔術科の地位が大きく下がったのは清春にだってわかる。

 去年まではただの殺戮ショーに近いものだったのだから当然だ。自分達は何を気にするまでもないが、嘉納は違うだろうというのは想像に容易い。だが、当の本人はあっけらかんとした様子だ。


「お前達のお陰で毎日後始末に事欠かないので慣れたし平気だよ。私から何か言うのであれば、ああいう"強さ"もあるという事だ」


 魔術科の異様なまでの粘り。特に久我桜子と鈴木颯太の戦いっぷりには執念に近いものすら感じた。清春自身も勝った自覚はない。現実の戦いであれば、向こうは気絶でこちらは失血死である。ルールに助けられたようなものだ。

 

「強かった。──ああ。本当に強かった」


 今まで戦ってきた魔術師達とは違う異質な強さ。去年も二人とは戦った筈なのに、まるで別人のようだった。思わずため息をつくと同時に本音が漏れてしまう程であった。もう、油断はしないと心に誓う。

 

「でも良かったな。──最後まで、お前の大事なものは守れたのだろう?」


 ツンと清春の鼻の奥が熱くなった。負けたくない理由があった。何も失ってない奴らに負けたくなかった。でも、違う強さがある事もわかった。結局のところ、いじけて学校に来なくなっても何も進まないという事なのだと理解する。嘉納にどこまで見透かされているかはわからない。清春はその熱さからくる痛みを抑え、気丈に笑った。最後に姿を見た後、もう泣かないと決めたから。


「守れるように、これからはちゃんと学校に来ますよ。うちの人間も、どーせこの後俺の魔術を解析したがるだろうし」


 清春自身も血継魔術が変質した事に気づいた。まだ試してないので全容はわからない。在原家もきっとそれに気づいている筈。今日ぐらいは何もしたくないが、しばらくはモルモット生活かなと諦めたように笑う。


「その心配はない。在原家になら私が話をつけておこう。清春の血継魔術は暴発の危険性があるので、しばらく私の許可なく調べるのは辞めて欲しいと」


「うちの父親達が納得しますかね?」


「納得してもらうさ。在原家グループがなんだ。私は血継魔術科の科長だぞ」


 嘉納はニヤリと笑ってそう言うと、清春の頭をわしわしと撫でた。乱れるので振りほどきたかったが、特に抵抗はしない。最後に気合を入れろとばかり背中を叩かれ、嘉納が言った。


「さぁ、表彰式に行ってこい。皆が、お前を待ってるぞ」


「……どうせ、オレが来るまで廊下で全員正座してろとでも言ったんでしょ?」


「可愛くないなぁ。でも正解だ」


 




 







 表彰式は"少しの波乱"を残しつつも終え、東京魔術大学の五月祭も終わりを迎えようとしている。結界魔術は解除され、大学外にも自由に出れるようになった。ある者は、外へ飲みに行き、ある者は学内でそれぞれ打上げをしている。明日の午後から通常授業なので各所で撤収準備を行われている中、伊庭八代はアロハシャツに海パンという姿で地面に組み伏せられていた。


「いい? 八代くん。もう二度と、表彰式に酔っぱらって出ないでね? 伊庭家の恥になるから」


「わかりました。明日から心を入れ替えます」


「周りから煽られて裸になるのもダメだよ。八代くんの裸を見たくない人だっているんだから」


「肝に銘じます」


「今年の夏休みは実家に戻れるから、ちゃんと私とも遊んでね」


「予定はあけておくと共に、働いてお金も稼いでおきます」


「お金は私の方が持ってるんだからいらない。それよりも、規則正しい生活してね?」 


「善処します」


「嘘ついたり、裏切ったりしたら殺すから」


「一緒に死にます」


 累により八代の首筋に押し付けられていた魔剣がようやく離れ、組み伏せていた弁慶が八代を解放した。表彰式を終えた八代に待っていたのは冷たい目をした累による説教だった。弁慶までも味方につけられてはどうしようもない。とっとと家に妹を突っ返してアフターパーティーに参加したい八代としては、妹の説教を一刻も早く終わらせる事が最優先課題である。

 全ての要求に肯定的な返事した甲斐もあり、ようやく解放されたのだ。


「それでは累様。お車へどうぞ」


「ありがとうございます。途中、ちょっとお茶してきません? 八代くんの護衛は誰かに頼むとかして」


「大丈夫ですよ。誰もやりたがらない時給750円のクソ仕事なので、多少手を抜いても誰も興味を示さないでしょうし」


「やった! 弁慶さんも偶には息抜きしないとですもんね! じゃあね、八代くん! 変なもの拾って食べちゃダメだよ!」


 最後は二人にゴミのように捨てられた八代はどこか釈然としないまま妹と幼馴染が乗った車を見送った。しかし、これで晴れて自由の身だ。まずは寮に戻ってもう一発乾杯とでも行くかと、足を進めると真央と清春がこちらを見ている事に気づいた。


「おう、お前ら! 今、妹に一発くれてやって自由の身になったから、飲みに行こうぜ!」


「丁度誘いに来たとこだし、あんたがそれならそれで良いんだけどさ……」


「校門近くで妹に土下座スタイルはダチでも見ててキチィわ……」


「うるせー!!!! お前らだって、家族に土下座した事ぐらいあるだろうが!」


「するわけないじゃん」


「ねェよ。バカか」


 驚愕した顔で「え……マジでないの?」とたじろいでしまう八代であった。

 真央と清春はため息をついて「行くぞ」と八代を促す。


「姫先輩のとこにお酒貰いに行こうと思ったら居なかったんだけど、何か知ってる?」


「金足らなくてマロ先輩のお姉さん達に詰められてんじゃね?」


「それがそうでもないのよ。昨日の夜、借金完済したって大喜びした後、テキーラ瓶で一気してさ。しばらくロボットみたいになってたもん」


「流石に姫先輩もテキーラを一気はキツいのか……」


「並みの人間なら死んでっからな」


「しょうがねー。流星寮に行くか。真央がいりゃ死ぬ程酒出てくるだろ」


「あたし、最近トワイスアップで飲むのハマっててさ。あんた達にも良さを教えてあげる」


「確か斎藤が響生を持ってた気がするから、お願いしようぜ!」


 久しぶりに三人揃ったがあんまり変わっていないな、と全員が思いながら流星寮に向けて足を進めた。


 











 人気の無くなった東魔大敷地内の森林部。

 残ったほぼ全校生徒が後夜祭の為に校舎や寮方面に集中してしまった為、静かな夕方が訪れる筈であった。だが、ある一帯だけは激しい戦闘痕が残り、菊姫梢子がボロッボロになって地面に転がっていた。少し先では織田清麻呂がタオルで血を拭い、煙草に火を点けている。


「……まだやるか?」


「もう立てねーよ」


 梢子の降参宣言により、清麻呂は安堵の紫煙を吐き出す。

 魔術科には追いつめられ、表彰式では後輩達が恥を晒そうとし、ようやく一息つけると思えば表彰式で妙に大人しかった後輩から襲撃を受けた。人生最悪の厄日だ、と結論付けて力なく地面に座り込む。清麻呂自身もかなり限界が近づいていた。


「いきなり襲ってくる奴があるか! あれだけ戦ってまだ暴れたりないのか!? イカれるにも限度があるだろうが!」


「アタシの出した偽ラブレターでのこのことこんなとこまでやってきた、ムッツリスケベに言われたくねーっすよ」


「ぐぅ……!」


「襲撃した事は謝るっすよ。自分が今、どの程度にいるのか確かめたかっただけっす……」


 ストレスでまた胃が痛くなってきた。表彰式が終わった後、梢子に「女の子からだよ」と渡された手紙を見てここまで来た自分を呪う。清麻呂だって男の子だ。この後、森林部の池の近くで待ってますなんて手紙を貰ったら小躍りしてしまう。そして、天にも昇る気持ちを抑えつけながらやってきてみれば、いきなり梢子が襲ってきて戦闘開始である。自業自得とはいえ、あのときめきを返して欲しかった。


「……ねぇ、マロ先輩。アタシって弱いの?」


「強いぞ。お前が勝てない理由は、俺が強過ぎるだけだ」


「マジでムカつく。イキって颯太にボッコボコにされてたくせに」


 梢子のチクチク言葉が続くが不思議と清麻呂は嫌な気持ちにならなかった。

 確かにイキって負けたといえば負けたが、それ以上の収穫があったと思っている。


「お前だって桜子君に負けてたくせに」


「…………そうなんだよなァ。あいつ、本当に凄いわ。……アタシ……絶対……負けるなんて思って…………ッ」

 

 後半は途切れ途切れで、涙声だった。

 可愛い所もあるじゃないか、と清麻呂が近づいて行こうとすると魔術印から炎が飛んできて清麻呂の前髪が焼けた。前言撤回、こいつは獣か何かだとそれ以上近づくのを辞めてもう一本新しく煙草に火を点ける。


「強くなりたいなら、ちゃんと学校に来い。──真摯に鍛え上げた強さが、どれ程のものかよくわかっただろう?」


「明日から、二限も出るもん……!」


「ギリ及第点だ。それと、泥酔して授業に出るのはやめろ。意味がない」


「授業前は一本までにするもん……!」


「……よし。わかった。頑張れ。偉いぞ」


 多少は改善する気配がありそうだが、それでもまだ標準的な大学生には程遠い。だが、清麻呂の顔には笑みが浮かんでいた。どんな経緯があったとはいえ、これまであまり学校に興味のなかった梢子に火がついたのは、先輩として嬉しかったのである。 


















「許せん……!」



 後夜祭は東魔大のイベントにしてはゆるやかな空気が流れている。

 バカ騒ぎしている人間は少ない。皆誰もが、酒と共に卓を囲んで和やかに各寮近くの池を囲む形で談笑している。その中でも魔術科の面々は大人気であった。桜子や颯太もずっと誰かに囲まれては乾杯をしているし、普段は流星寮所属というだけで評価の高くない山崎ですらも女子に囲まれて夢のような空間を過ごしていた。血継魔術科をあそこまで追いつめたのだ。どこか彼らに対して諦めを持っていた生徒達は正面から戦った魔術科の面々を心の底から祝福していた。


「山崎君。凄かった。私、見てて何度も泣いちゃった!」


「伊庭に勝てなくても立ち向かっていく山崎君カッコ良かったよ!」


「今まで流星寮だからって嫌な態度とっててごめんね!」


 山崎軍司、正に人生の絶頂期であった。桜子一筋と決めた山崎でも流石に顔のニヤけは隠せない。そんなかつての友人を、流星寮の面々は暗く悪意に満ちた笑顔で遠くから見つめていた。顔は笑っているが殺意が顔に溢れている。山崎一人だけ許すまじ。流星寮の面汚しめ。と怨嗟が周囲を満たしていた。


「では千ヶ崎さん。行ってまいります」


「……ほんとにやるの?」


「ええ。ちょっと伊庭と在原を借りていきますね。千ヶ崎さんの酒には、睡眠薬を盛ってませんので安心して下さい」


「あんまりハメを外し過ぎちゃだめだよ?」


 グラスに注いだウイスキーから目を離さず真央が注意するが、男達は暴動寸前の如く沸き上がった。真央が発したハメという単語に興奮したのである。流星寮の面々は褌一枚である。誰が用意したのか寮の横に大きな山車が置いてあり、気絶した八代と清春が上の部分に全裸で縛りつけられていた。山車のてっ辺に斎藤と田所が昇ると、再び歓声が上がった。寮生だけではない。寮外のモテなさそうな男達の姿もある。


「これより流星寮名物、断死裏(だんじり)を行います! 押忍! 今日は流星寮だけじゃなく、在原に好きな女を寝取られた被害者の会の皆さんも来てくれました!」


「うおおおおおおおお!!!!!」


「これより裏切り者、山崎軍司君に本当の友情はなんたるかの指導と、その原因となった雑魚二人の処刑パレードを行いますので夜露死苦!」


「殺せえええええええ!!!!!」


 男達が山車に乗り込み、笛や太鼓を鳴らしながら曳き手達が奇声を上げ、暴徒と化して後夜祭の会場目掛けて突っ込んでいった。一般生徒達もすぐに異変に気づいた。対岸から池のわき道を沿うようにして珍妙な音を鳴らしながら褌姿の男達が山車を引いてくるのだ。天辺に無理矢理取り付けられたような十字架には全裸の男が磔にされているのも最悪であった。


「やべぇ、流星寮がまた何かやろうとしてるぞ!」


「巻き込まれる前に逃げようぜ!」


 生徒達が避難していく中、山崎は顔面を真っ青にして震えていた。


(やべぇ……断死裏(だんじり)だ。あいつら殺す気で来やがった……)


 自身も参加した事があるのでヤバさは知っている。昨年自分が参加した時は、彼女出来たのを黙っていた四年生をあれで執拗に追い回したのだ。無関係は貫けない。皆を連れて逃げるしかない、と周りを振り返ると女子達が期待したような眼差しで山崎を見ていた。


「山崎君ならあいつら止めれるよね?」


「あれだけ凄い戦いしてたもん! 余裕でしょ!」


「あの筋肉ムキムキになる奴やってよ!」


 その日山崎軍司は生まれて初めて母親以外の女性から期待をされてしまった。モテなさ過ぎて渇いた心に、水が注がれていく感覚。そしてダメ押しとばかりに近くのテーブルに座っていた桜子からも声がかかった。


「山崎君。お願いできるかしら?」


「──お任せあれ!」


 止められるわけがない。知るか。敵うわけがない。知るか。全ての理性を愛の力で抑えつけて山崎が山車を迎え撃つ。曳き手達はスピードに乗った山車の前面から移動し、背後に回ると最後の力を振り絞って加速させる。問答無用の殺意マシマシなスピードで山崎を轢き殺さんと迫る。全身に身体強化魔術を張り巡らせ、山崎の体が膨張、巨大化していった。


「死ねやああああああああああ!!!!!!」


「死ねるかあああああああああ!!!!!!」


 男同士の醜いプライド同士にぶつかり合い──勝負を制したのは流星寮だった。

 山崎の体が水切りした岩のように池を跳ねて吹っ飛んでいき、流星寮の面々の山車も勢いをつけて池の中へと着水していく。池の中で泳ぎながら殴り合い、阿鼻叫喚の騒ぎを繰り広げるバカな男達を女子生徒達は白い目でいつまでも見つめていた。












「何だか外が騒がしいね」


 女子寮の一室。美晴の部屋で、美鈴が窓から外を見るとバカな男達が池に沈んでいくのが見えた。視界に入れる価値もない。そう判断すると、カーテンをしめて「何事もなかったですよ」と笑顔で言い放った。美晴もどうせ流星寮の先輩達だろうな、というのはわかっていたので美鈴の反応を見てそれ以上話題を続けるのをやめた。


「凄かったよ。二人の戦い。私見てて泣きそうになっちゃったもん」


 ノエルが照れくさそうに頭をかく。美鈴もどこか満足気な顔だった。

 表彰式を終えて三人で打ち上げをしようと美晴が誘ってくれたのは二人にとっても嬉しい事であった。バカな先輩達のバカ酒に付き合わされそうだった美鈴。魔術科以外と全く馴染めていないノエル。こうして気の知れた友人とのんびり過ごせるのはとても嬉しかった。


「美鈴は強かった。どろどろした変な液体浴びせられるし、私の嫌がる事全部された」


「言い方に語弊があるような……」


「でも間違ってないんだよね……」


 美晴にまで見捨てられ、下品な魔術を使う事の代償を改めて思い知りショックな表情の美鈴であった。三人でお菓子や買ってきた総菜をつつきながら今回の五月祭を振り返っていると、ノエルが思いだしたように言った。


「あっ! そうだ! 乾杯だ!」


 ごそごそと冷蔵庫からノエルが取り出したのは梢子から貰ったジュースの缶である。そういえばずっと乾杯したがっていたな、と美鈴も思いだした。美晴はとても感激したようで、嬉しそうに震えている。


「嬉しい……!」


 それぞれ缶を開けて紙コップへとジュースを注いだ。二人の期待したような眼差しを受けて、美鈴は紙コップを掲げ、


「それでは、五月祭お疲れさまでした。乾杯!」


「かんぱーい!」


「カンパーイ!」


 紙コップを打ち付けてそれぞれ口に含んだ。ちょっと変わった味がした。とても濃厚でどろりと甘く、飲みやすい。だが、飲み込んだ後に体がかーっと熱くなっていくのを感じた。


「これ……魔術酒!?」


 実家で父や兄が飲んでいたのを貰った事がある。だが、それよりも何倍も美味く飲みやすい。

 こんな美味しい魔術酒飲んだのは初めてで、思わず美晴もぽわーっとした気分になってきた。


「──────────!」


 魔術酒は特に強い魔術師に古より人気の酒だ。自身の魔力と共鳴し、酩酊効果も非常に強くなる。現にノエルも魔力を放出しながら鼻歌を歌い始め、光の球体が部屋の中をぶんぶんと飛び回っている。ノエルでこれなのだから美鈴はどうか──と思ったが、特に表情に変化はなかった。


「にゃ…………」


「美鈴ちゃん大丈夫?」


 美晴が心配そうにのぞき込むと、蠱惑的に唇を少しだけ歪めて笑った。見た事のない笑い方であった。


「にゃーん」


 甘えるような声と共に、美鈴は勢いよく美晴にのしかかった。

 














「──はっ!?」


 翌朝、勢いよく美鈴は跳ね上がるようにベッドから起き上がると目を覚ました。

 もう日が差し込んでいる時間帯で、頭がガンガンと痛い。悪夢だった気がする。猫になって延々ぐるぐると別の猫の周りを回っているような夢だった。最悪の気分で周囲を見渡すと、自分が服を着ていない事に気づいた。


「は……?」


 生まれたままの姿である。全裸であった。

 鍛えているのに全身筋肉痛のように体も重い。動かすだけで痛みを感じる。ぼんやりと覚醒してきて、美晴の部屋だというのはわかった。何をしたのか覚えてない。最後の記憶は乾杯である。あのジュースを飲んでから意識がないのだ。

 

「何が……?」


 美晴とノエルの姿がない。でも温かい。かけ布団を左にもう少しめくると真っ白な肌が見えた。ノエルである。これまた全裸だ。抱き枕を抱くようにして寝ている。嫌な予感がして右もめくった。最悪の想像というのは当たってしまうので、右側の壁に寄り添うように美晴がこれまた全裸で寝ていた。

 

「嘘でしょ……?」


 とんでもない事をしてしまった事だけは美鈴にもわかって、そのまま暫く黙って絶望していた。





 国立大学法人東京魔術大学 ─血継魔術科─ 第二部完









第二部完です。今までお付き合い頂いた読者の皆様ありがとうございました。

面白かったらブクマ評価等お願いします。

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私をフォローせずに東魔大のクソどうでも良い話が読めます。

よければどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今回も面白かった、、、 更新感謝です!
[良い点] 美玲も遂に変態枠かぁ。 血統魔術科の伝統だから仕方ないね
[一言] 美鈴さんも仲間感デテキタネ( ´∀`)さよなら常人ワールド、こんにちは血継魔術科ワールド そして八代は嫉妬で憤死!!
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