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国立大学法人東京魔術大学 ─血継魔術科─  作者: おめがじょん


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前科44:第4回在原清春を殺すかどうか会議







 深夜になっても流星寮では男達が狭苦しい談話室で騒いでいた。設置されたスライドに表示されているのは、小柄で巨乳の美少女。シャツに短パンというラフな格好な点も絶妙に男心をくすぐっている。男達の目は真剣そのものであった。スライドに映った美少女──在原清春の姿を眺めながら各自真剣にどうすべきかを考えていた。


「寮長も呼んでくるか? 部屋でバイオリン弾きながらイメージビデオ見てたけど」

 

「いや、ロリ巨乳はあの人にとっちゃ邪教みたいなもんだ。めんどくせぇからほっとけ」


「ロリ巨乳のアンバランスな"侘び寂び"を理解できんとは哀れな男よ」


 ──性癖。時に友情を育むきっかけともなるし壊れるきっかけともなる人の業。流星寮の男達も貧乳派巨乳派。ロング派ショート派等様々な性癖を各自持っている。今宵行われようとしている緊急会議は女体化した在原清春の処遇をどうすべきかというのが争点だ。男だった時は満場一致で死刑だったが、体が女になってしまったとすれば話は大分違ってくる。


「それでは、【第4回在原清春を殺すかどうか会議】を始めたいと思います。一同、礼!」


 男達が起立し、互いに頭を下げて一礼すると宇宙一どうでも良い会議が始まった。議長は流星寮内で多種多様な性癖を持つ田所がその役であった。まずは、定義づけからだと咳ばらいをして始めていく。


「まずは在原の状態について定義していきたいと思う。──奴は、男の娘なのか女体化なのか。どっちかで大分意見もかわってくると思うが」


「男の娘と決めつけるのは早計だろう。あれはどちらかといえばふたなりに近いのではないだろうか」


「一緒じゃないのか?」


「全然違う! ふたなりはどちらかといえば女。男の娘はそのまま男だろう。今回の件は乳がついていたので俺はふたなりだと定義したい」


「だが、俺達が確認したのは乳までだ。あいつの改造チンポがなくなっている可能性は否定できない」


「俺はどちらでも構わない。ついていようがついていなかろうが、この在原は正直そそられる。皆もそうじゃないか?」


「流石だ斎藤! 男の娘風俗経験者は言う事が違うぜ!」

 

 「褒めるな褒めるな」とニヒルに笑う斎藤の言葉に全員が同意だと頷いた。「この状態の在原清春は抱ける、ついててもついてなくてもどっちでもいい」という事で議題が一つ終わった。処刑も何も全く関係ない議題だが、男達は気にしない。その場のノリが全てなのである。議題が終了すると今度はドタドタと音を立てて山田が入って来た。続いて後から遅れてもう一人。よれたスーツ姿の頭頂部の少し薄い男だ。


「ザビエル先輩だ……」


「めっちゃレアキャラまで出てきたな」


 ザビエル先輩と呼ばれた男は色物揃いの流星寮の中でもかなりのレアキャラの"八年生"だ。

 流星寮は基本的に住めるのが四年生までであり、それ以降は三階のフリースペースに勝手に住み着くか出ていくかの二択だ。三階のスペースは留年生が寝るだけのスペースが存在しており、寮生達でも現在誰が住んでいるのかは定かではない。ふらりと数日見かけたと思えば、数週間見かけない事もザラなので寮生にはカウントされていないのだ。


「山田君の依頼で在原君が残して行った瓶の成分を調べまシタ。──あれは精力剤ではないデス。ドクター村松が開発した"女の子になっちゃう薬"の試作品デス」


「ざ、ザビエル先輩って魔導力科だったんですか……?」


「古い話デス……」


「アンタまだ現役生じゃん」


 ツッコミは黙殺し何処か遠い目をして窓の外を眺めるザビエル。東魔大には"八年生三羽烏"と呼ばれる謎の生徒が三人居る。どんなアホでも七年生までには卒業していくが、この三人だけは別格であり、大学生の身でありながら会社員としても働いているのだ。年齢不詳。学科不詳。風俗王ザビエルという異名だけが学内にだけ残っている。その由来は風俗の学割が適用されなくなる事を嫌がって留年し続けているというのが寮生の認識であった。


「あの薬には村松が開発した魔導力で作られたナノマシンが含まれていマス。飲んだ本人の魔力を吸収して体の構造を変化させる身体強化魔術の亜種のようなものが展開して女の子に変わっちゃうって構成デス。彼が女湯に合法的に入るにはどうしたらいいかを突き詰めて開発されたものなのデス」


「アイツ天才過ぎるだろ……」


「ザビエル先輩! じゃあ在原は一生女の子なんですか!?」


「チクショウ! 俺だって女の子になりたかったのに!」


「いえ……。あくまで試作品ですから、効力は一日が限度でショウ。ただ、在原君の体内には無数のナノマシンが存在していマス。彼の体液を自身の体に取り込む事ができたら君達も女の子になる事が可能デス」


「じゃあフ●ラすればいいんですね!?」


「違いマス。今の在原君の体は女性なのでク●ニです。──しかしまぁ、ナノマシンを大量摂取したいのであればキスの方が効果的デス」


「どうしてですか……?」


「彼は口から飲んだのでショウ? それならばまだ唾液に大量のナノマシンが含まれている可能性がありマス」


 おお、と流星寮の面々が納得したような呻き声を上げた。

 ザビエルの発言で流星寮の面々の心は一つになった。最悪しゃぶる事すら辞さない彼らは据わった目で議長である田所の言葉を待った。そして、田所は一度咳ばらいをして机の上に立って仲間達の姿を見た。どいつもこいつも不細工で救いようがないなと田所は笑うと腹の底から声を張り上げた。


「女性の唇を無理やり奪うなんて言語道断だよな。──でも、相手は在原だ。何をしても許されるよなぁ!?」


「異議なし! 異議なし! 異議なし!」


「この期に及んで男とキスできねぇとか日和った事言う奴いねぇよなぁ!?」


「ベロチュー! ベロチュー! ベロチュー!」


「女の子になって合法的に女湯入るぞオラぁ!!!!!」


「おっぱい! おっぱい! おっぱい!」


 最後にうおおおおおと下劣な奇声を上げながら男達の心が一つに纏まった。














「え、何ソレ? アタシにどうしろってわけ?」


 セフレの反応は予想通りといえば予想通りだった。

 女の体になってしまった清春は流星寮の面々からの追撃から逃げ出し女の元へと身を隠そうとしていた。声も変わった。体も変わった。自慢の改造チンコは姿形すら見えない。

 行為に期待していた女はあっさりと清春を捨てて友達と遊ぶといってどこかへと消えていった。お互い肉体と金にしか興味がなかったので、これも仕方ないと、寝床のある寮に向かって一人歩き出す。正直、魔力も体力も限界に近かった。


「クソが……」


 誰も信じず、浅い関係ばかりを続けてきた結果がこのザマだった。

 真に困った時に助けてくれる人間なんていない。誰も信じないから。誰の為にも必死にならないから。誰も心から愛しはしないから。清春は引き取られた在原家で生きていく内にそんな人間へと変わっていったのだ。いかに己が金を使いたい放題使おうとも、幾千もの問題を起こそうとも、在原家は何も言わず全部後処理を完璧にこなした。清春の血継魔術を解析し、魔導力へと応用させる事に成功した在原家は国内で一番成長している複合企業とも言っても良い。無尽蔵に金があるのだ。


「痛っ……。八代の野郎め……」


 傷口も痛む。本気でやりあったのは久しぶりだが、支配の魔剣は別格だと清春ですら思ってしまう。

 清春も八代も真央も血継魔術を望んだわけではない。そして最悪な事に、八代だけはその魔術があまりに忌み嫌われている。どれ程の迫害をくらってきたかは一年少しの付き合いで嫌という程わかったが、それでもバカで明るい八代に清春は偶にどうしようもない感情が湧いてくるのだ。真央も同じように強力な血継魔術を持っているのに、家族も離散せず楽しそうにしているのが清春は好きじゃなかった。 


「あれ……?」


 苛立ちに顔を歪めながら歩いていると声をかけられた。

 顔を上げると今一番会いたくない相手──千ヶ崎真央と目が合った。酒を飲んだ後なのか、頬が上気している。


「もしかして、清春?」


「人違いです。それじゃあ」


「ふぅん」


 真央がスマホを取り出して電話をかけ始めた。清春がしまった、と思った時にはもう遅い。

 ポケットから着信音が鳴り響き観念したように清春は両手を上げた。もう、どうにでもなれとヤケクソ気味でもあった。


「やっぱ清春じゃん。──何? 女の子になっちゃったの? どうせ流星寮絡みなんでしょ?」


 真央の順応性と理解力は非常に高い。友人の性別が変わったというのに大した驚きは存在していなかった。八代や流星寮の面々とつるみ始めてから、何が起きてもそこまで動じなくなっている事に本人ですら気づいていないのだ。


「ほんっと嫌な女だな! そんな鋭いなら察してそっとしておいてくれよ!」


「逆にアンタ達、あたしが男になったら死ぬ程弄るでしょ? お互い様よ」


 確かに、と納得してしまった。このまま玩具にされるのが嫌で清春は逃げようとしたが、足がもつれて転んでしまう。これ以上ない恥辱と屈辱が清春の心を支配するが、真央は特に笑う事もなく手を差し出してきた。つい反射で手を出してしまい、そのまま真央に引き上げられ肩を貸されて歩き出す。


「体調悪いんでしょ? 寮まで送ってってあげる。──あたしの胸触ったら殺すから」


「今、オレの体女だぜ? 触りたかったら自分の触るわ。真央のよりでかいし」


「うっさい。体調悪い時ぐらい素直になりなさいよね」


「普段からオレは素直だよ」


「そーね。アンタってばあたしの事嫌いなの隠さないもんね。八代の事だってそこまで好きじゃないでしょ」


「それがわかってて、どうしてオレなんかとお前ら一緒にいるんだよ。お前も八代も意味わかんねぇ」


「でも友達ってそんなモンじゃない? あたしだって八代のスケベなとこ嫌いだし、清春の女の子大事にしないとこ嫌いだもん。でも、あんたらと一緒に飲むの楽しいって思うから友達やってるだけよ」


 友達の定義はよくわからなかった。使える女か。使える男か。そんな人生を清春は送ってきた。

 改めて考えてみると、真央も八代も使える男女ではない。日々くだらないバカ騒ぎをする八代に、試験前は顔面蒼白で勉強を教えろとせがむ真央。怠いなこいつらと思った事は数知れず。だが、それでも今日こうしてつるんでいる。何かを言葉にしようとしたが、上手く言葉にできなかった清春はそのまま黙って歩き続ける。そうこうしているうちに第四女子寮は目の前に来ていた。


「これでちゃんと女子寮の一員って感じだね」


「うっせぇ。ほっとけよ」


「明日、流星寮のBBQ大会行くでしょ? あの人達人格はアレだけど優秀だから元に戻せるんじゃない? 迎えに行ってあげるから一緒に行こうよ」


「何かすげぇ嫌な予感するんだよな。身の危険を感じる。……他に手立てもねぇし行くけどさ」


「じゃあ決まりね。準備できたら電話するから。あたしはこれから泊りで一年生の子達と遊ぶからじゃあね」


 そう言うと踵を返して真央は走っていく。それを見て、あのお人好しの事だ。約束の時間は既に過ぎてしまっているのだろうと気づいた。短い付き合いじゃない。それぐらいは清春にもよくわかった。だから──


「ありがとうな、真央」


 本人に聞こえたかどうか定かではないが、在原清春はそうぽつりと呟いた。






 


 










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