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転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?  作者: 紙城境介
黄金の少年期:貴族決戦編

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Welcome to Nightmare World ‐ Part2a


 アゼレアの火力。

 フィルとエルヴィスの索敵力。

 これだけ揃えば、モンスターを蹴散らして進むのは難しいことではなかった。


 程なく、俺たちはサロンに辿り着く。

 周辺にモンスターは見当たらず、静かなものだった。

 大混乱だったさっきの場所と同じ建物の中とは思えない。


 やっぱり、この事態に気付いていないのか?

 だとしたら、早く知らせて助けを求めなければ……!


 俺たちは焦りのままにサロンの扉を開いた。




◆◆◆―――――――◆◆◆―――――――◆◆◆




 サロンは、静まり返っていた。

 人影ひとつ見受けられない。

 ここには十数人の精霊術師が集まっていたはずだが……。


「誰も、いないわね……」

「あれほどの大騒ぎだったんだ。さすがに気付いたんじゃねーの?」

「入れ違いになったのか……」


 争った形跡もない。

 やはり、ここにはモンスターは来ていないらしい。

 アゼレアたちの言う通り、緊急事態に気付いてみんな出ていった、と考えるのが妥当だろう。


「……仕方ない」


 流れでリーダーめいたものになった俺は、今後の行動を決定する。


「無駄足になったけど、いったん父さんたちのところに戻ろう。それから、必要そうならモンスター退治に協力を―――」



 ―――ガシャンッ!



 何か、重く硬いものが落下した音が、突如として響き渡り、俺たちは肩を跳ねさせた。

 音がした方向を、見る。

 そこには、一個の鎧が転がっていた。

 ついさっきは存在しなかった、鎧が……。


 ―――ガシャンッ!


 続いて、もう一個。

 銀色の鎧が、違う場所に落ちてくる。


 一体、なんだ?

 どうして、鎧が落ちてくる?

 天井から……?


 疑問に衝き動かされ。

 何気なく。

 何の準備もすることなく。


 俺たちは。

 天井を、見た。


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