第87話 ティーナ・クリーズの解決篇・完全版
「沙羅は、二人いると思う」
告げた瞬間に、ラケルの表情は疑問に染まった。
気持ちはわかる。
俺もおかしなことを言っていると思う。
だが……起きたことを丁寧に整理していけば、そのくらいしか解釈のしようがないのだ。
「沙羅の転生タイムリープ――過去に生まれた人間に生まれ変わることで、実質的にタイムリープを行う、というその原理に照らし合わせると、説明のつかないことがあるんだ」
「説明のつかないこと……?」
「アゼレアだよ」
星空のような世界が、急激に動いた。
星々の光が、瞬く間にある記憶の像を結ぶ。
それはラケルの記憶における2周目の世界――初めてタイムリープをしたラケルが、前回の周で沙羅だったアゼレアを速攻で無力化しに行ったときのこと。
「1周目では、アゼレアは確かに沙羅だった。だが、その次の周では、とてもそうだったとは思えない……。本当にあいつが心神喪失状態になった俺を手に入れたなら、逃亡を繰り返しながら慎ましやかに暮らす、なんて生ぬるいことは絶対にしないはずだ」
「あの世界では、ルビーが沙羅ちゃんだった。だからアゼレアは沙羅ちゃんじゃなくなったってことでしょ……?」
「そうだ。だが、具体的にどういう手順でそういう状態になったんだ?」
「え……?」
「俺たちは沙羅の転生タイムリープの前例を知っている。あいつにその意図はなかっただろうが、時系列を整理してみれば、現象として同じことが起こっていたとわかる。……アネリとフィルのことだ」
「あ。……アネリさんが死んだのは、ジャックが満1歳のとき。そしてフィルはジャックと同い年だから……」
「アネリが死んだとき、フィルはすでに生まれていた。あいつは過去に生まれた人間に転生したんだ。過去改変こそしなかったが、あいつはそのときすでに、転生タイムリープをしていたんだ。
この例に、アゼレアとルビーの関係を当てはめてみればいい。アゼレアはアネリの立場で、ルビーはフィルの立場だ。アゼレアになっていた沙羅が、ラケル、お前に行動を封じられた結果を見て、ルビーに乗り換えたんだからな。そして、アゼレアの中から沙羅は消えた……。
だとしたら、どうして、アネリの中の沙羅は消えなかったんだ?」
「…………!」
「転生タイムリープをすることで転生前の身体から沙羅の意識が消え去るのなら、俺とアネリが戦うこともなくなり、その記憶も俺の中から消えるはずだ。沙羅を速攻で世界の彼方に放逐し、勝利を得た記憶がラケルの脳から消えてしまったように。
だが、俺は覚えている。アネリと戦い、この手で殺したことを。
つまり、転生タイムリープをしても、転生前の身体には沙羅が入ったままのはずなんだ」
「……なのに、アゼレアからルビーに転生したときだけは、アゼレアの中から沙羅ちゃんが消えた……?」
「ああ。だから、アゼレアからルビーに移った、という認識が根本的に間違っていると考えるしかないんだ」
「……と、いうことは……」
ラケルが愕然と唇を震わせた。
俺は深くうなずいて、彼女の想像を肯定した。
おそらくは、これが沙羅の用意した『タイムリープ封じ』。
掟破りの過去改変防止トリックの正体。
「沙羅は、二人いる」
俺は繰り返した。
「一人は、お前が出会ったアゼレアやルビーなどの『実行犯』。もう一人は――世界がどういう風に推移するかを見守り、その情報を持って任意の『実行犯』に転生する、『基点』とでも言うべき存在」
アゼレアからルビーに転生した、という認識が間違っている以上――
――アゼレアとは別の誰かから転生した、と考える以外にはない。
「転生タイムリープをしているのは『基点』のほうであって、表立って現れる『実行犯』のほうじゃなかったんだ。
順番を整理してみよう。例えばアゼレアに転生して、お前に世界の彼方まで飛ばされたとする。その結果を見てから、『基点』がルビーに転生対象を変える。すると、『基点』は沙羅の主観時系列では『実行犯』の過去に当たるから――」
「――過去改変が起こる。アゼレアに転生した沙羅ちゃんはなかったことになる!」
「だから、ルビーに転生した『次の周』では、アゼレアの中に沙羅はいないんだ」
ラケルは口に手を当てて、事実を必死に飲み込もうとしていた。
これが、矛盾して見える事実に明快な説明をつけられる、たったひとつの回答。
少なくとも、俺はこれ以外の答えを思いつかない。
「……予知でもなく、体験するでもなく、未来の自分の行く末を傍から見て行動を変えるなんて……。でも、どうして? どうしてこんな方法を採らなければならないの……?」
「それは本人の言う通り、記憶の問題だろう」
「記憶……。タイムリーパー同士の対決になると、生死では決着がつかないから、敗北の記憶が積み重なって心が折れたほうが負けるっていう、あれ?」
「そう。このトリックは【因果の先導】によるタイムリーパーが現れたとき用の備えでもある。だから必然、過去改変合戦で必勝できる準備を整えておく必要がある。
『実行犯』の沙羅が持つのは、飽くまで『基点』の沙羅の記憶だけだ。お前に負けた経験はすべてリセットされ、代わりに『基点』が収集した情報を得る。
経験ではなく、情報。ここが肝要なんだろう。
お前がその身、その魂一つで戦いの経験を無限に積み重ねていくのは、ゲームを何度もプレイして攻略法を見つけ出すようなもんだろう。
一方、沙羅が戦いごとに経験をリセットし、情報だけを得て勝利を目指すのは、他人が作った攻略動画を見てゲームをプレイするようなもんだ。
どっちの負担が大きいかは、言うまでもない」
「そっか……そうか、そうだ……。なんで今まで思いつかなかったの……」
ラケルは悔恨の表情を浮かべて額を押さえた。
仕方がない。異世界転生という現象を知らなかったんだから。
俺と沙羅しか知らない転生という現象を使ったトリックだからこそ、あいつも自分の計画を守る最後の砦として採用したんだろう。
「悔しいことばかりじゃないぞ、ラケル」
「えっ?」
俺がかすかに笑みを滲ませて言うと、ラケルはパッと顔を上げた。
「アゼレアやルビーは、『基点』の沙羅が『実行犯』に選び、転生することで沙羅になる。……ということは、だ」
「――あっ!」
「そうだ――『基点』の転生タイムリープ、つまり死亡さえ阻止してしまえば、アゼレアもルビーも沙羅になることはないんだ……!」
アゼレアやルビーが沙羅になることを防げる。
絶対的に思えた沙羅に、ついに蟻の一穴を穿った――その実感があった。
「じゃあ、問題は――」
「――ああ。誰が『基点』なのか?」
結城沙羅が転生したのは、一体誰なのか。
結局、この問題に立ち向かうことになるわけだ……。
推理小説よろしくの犯人当て。
だが、あの沙羅がパズルの問題みたいに都合よく手掛かりを残してくれているとは思えないし、俺たちにはそれを見つけ出す能力もない。
しかし。
突破口を開いてくれた奴がいた。
沙羅が想定しなかった手段によって新たな情報を引き出し、その情報から組み上げた推理でもって、沙羅に反旗を翻した人間が。
その名は――
「――ティーナ・クリーズ」
ラケルの顔がぴくりと動く。
ラケルの師匠、トゥーラ・クリーズの実の娘――因果解脱者にして夢幻に住まう賢者。
「『基点』の正体について、彼女は何か掴んでいたんじゃないか?」
「ティーナが?」
「お前を因果次元から逃がすとき、ティーナの推理は確かに、沙羅の足を一時止めたんだ……。それこそ、沙羅の正体――『基点』が誰なのか、その手がかりを掴んでいた証拠じゃないか……?」
ティーナはラケルとの夢想現実での旅を経て、その答えを導き出した。
だとしたら、必ずあるはずだ。
あの夢の旅路の中に、『基点』を特定するヒントが!
◆◆◆―――――――◆◆◆―――――――◆◆◆
俺がラケルの記憶を思い返すと、辺りの光景が急速に遷移した。
巨大な本棚のトンネル。
ティーナ・クリーズが因果図書館と呼んでいた場所。
その中を巨大な竜騎士が突き進み――煌びやかな和服を着た銀髪の少女が、たった一人でその眼前に立ち塞がる。
彼女が叫んだ推理は花の形に咲き誇り、ほんの一時ではあるが、確かに竜騎士の猛進を押し留めたのだ――
その全文は、以下のようなものである。
『―――てめぇの正体は〔※因果未達により検閲※〕だ』
『てめぇのタイムリープ対策とやら、カラクリは読めてんだよ――〔※因果未達により検閲※〕前の身体にてめぇが残っていない。その謎自体がでけぇ証拠。てめぇは〔※因果未達により検閲※〕、その〔※因果未達により検閲※〕によって用意し、姉ちゃんの行動を予知していたんだッ!!』
『根拠は二つだ。ひとつ! ケットシーは雨を嫌うという事実! ふたつ! なのにてめぇは、あのとき傘を持たなかった―――!!』
「このときの推理には、不自然なノイズが混じっていた」
その記憶の光景を、俺とラケルは上空から見下ろしていた。
「これは、ラケルがまだ然るべき情報を――『因果』の『因』を持っていなかったからだろう。特に異世界転生に関する記憶を取り戻していなかったのが大きく影響していると思う。……ってことは、だ。おそらく、ここのノイズはこういう風に埋まるんじゃないか?」
『てめぇのタイムリープ対策とやら、カラクリは読めてんだよ――〔転生タイムリープ〕前の身体にてめぇが残っていない。その謎自体がでけぇ証拠。てめぇは〔情報収集用の身体と実行用の身体〕、その〔両方を転生タイムリープ〕によって用意し、姉ちゃんの行動を予知していたんだッ!!』
「そう……『基点』を使ってあらかじめ展開を把握しておくことは、俺たちにとっちゃ予知に等しい」
「『基点』と『実行犯』。情報収集と直接行動――二人の自分に別の役割を当てることで、【因果の先導】のタイムリープに備える。それが沙羅ちゃんのタイムリープ対策の正体だった」
「このひとつ前の台詞は、今の俺たちにもまだわからない」
『―――てめぇの正体は〔※因果未達により検閲※〕だ』
「たぶん、このノイズを除去するための推理が、次のこれなんだろう」
『根拠は二つだ。ひとつ! ケットシーは雨を嫌うという事実! ふたつ! なのにてめぇは、あのとき傘を持たなかった―――!!』
「ティーナ・クリーズは夢想現実での旅を経てこの推理に至った。……ケットシーが雨嫌いだっていう話、確かどこかでルビーがしてたよな?」
「ええ。たぶん……ここだと思う」
記憶の光景が動いた。
映し出されたのは、夢想現実での旅の一幕――
◆引用開始◆
◆「第65話 因果の魔王期探索紀行:第1回派生ルート」より◆
当初の予定通り、エルヴィスたちはその日のうちに魔王城に突入する。
ちょうどその頃、ダイムクルドで雨が降り始めた。
……そうだ、ちょうどこの頃だった。
わたしがジャックに挑んで負けたのは――
「うっへー! こんなときに雨かよ。おいデカブツ、傘になれ」
「野良猫め。少しくらい我慢しろ」
「ケットシーが雨嫌いなの知ってんだろーが!」
ルビーとガウェインが普段とまるで変わらないやり取りをする。
それにエルヴィスが苦笑して、アゼレアが仲裁して――
泣きたくなるくらい、学院に通っていた頃と変わらない雰囲気で。
屋上庭園で雨に打たれるジャックの前に、辿り着くのだ――
「……ふうん?」
「あ……ど、どうしたの?」
思わず感傷的になっていたわたしの横で、ティーナがちょっと面白そうな顔をしていた。
「いや、別に。それよりも、ラストバトルが始まるぜ」
◆引用終了◆
「何でもなさそうなことにティーナが興味を示したから、逆に印象に残ってた……」
「ケットシーが全般的に雨嫌いだってのは、確かにその通りなんだよな。猫って風呂に入るのを嫌がるだろ? それと似たような感じで。でも、それが何を意味するのか……」
「これが根拠のひとつ。二つ目は――あのとき、沙羅ちゃんが傘を持たなかったこと?」
「あのとき……思い出してみる限り、俺にはひとつしか思い当たらない」
「わたしも」
再び光景が動く。
降りしきる夕立の中、ラケルのもとにルビーに転生した沙羅がやってくる。
◆引用開始◆
◆「第60話 カタストロフ・ポイントⅣ - Part2」より◆
突然の夕立が、世界を叩いていた。
分厚く立ち込めた雨雲から稲光が瞬き、そのたびに、雲に落ちた大蜘蛛の影が照らし出される。
ロウ王城のバルコニーから、わたしはそれを見上げていた。
……ジャックを最優先すると誓った。
ジャックを助けるためなら、世界だって敵に回すと決めた。
そしてジャックは、アゼレアと一緒に幸せになった……。
でも。
こんな結末を、認めるの?
やがて、あの大蜘蛛が地上に降りてくる。
そうなったら、何がどうなるかなんてわからない。
人類は滅ぶかもしれないし……そうじゃないかもしれない。
でも、もし幾許かの人類が生き残ったとして。
ジャックもアゼレアも生き残ったとして。
だからって、わたしは、その結末を認めるの……?
認める……はずだ。
だって、誓ったじゃない。
ジャックさえ幸せになれればいいんだって、そう誓った!
だったら、世界やエルヴィスたちがどうなったって構わないはず……。
……そうでしょう?
「また戻るんですか?」
いつの間にか、バルコニーの手すりに少女が腰掛けていた。
頭に生えた猫の耳やお尻から伸びた尻尾の毛並みが、雨に濡れてしなしなになっている。
――ルビー・バーグソン。
少女X!
「はーあ。やれやれ。雨が降るなんて聞いてませんよ。半分猫の身体だからか、いつもより雨が鬱陶しくって……傘は常備しておくものですね、失敗しました」
身構えるわたしの前で、ルビーの姿をした少女Xは顔を振って水気を払った。
口調以外のすべてが、やはりルビーに見える……。
一体どういう絡繰りなの?
どうしてアゼレアからルビーになったの?
少女Xは濡れた髪を鬱陶しそうに掻き上げながら、わたしを見て口角を上げた。
◆引用終了◆
「……そうか……」
記憶を見直すことで、俺にもティーナ・クリーズが言わんとしたことの一端が掴めた気がした。
「沙羅があらかじめ『基点』を使ってロケハンをしていたのなら、このとき、夕立が降ることくらいわかったはずだ……。何せ――」
「――あ! たとえ転生タイムリープで過去を変えたとしても、天気が変わるということはない!」
「天気は飽くまで自然のもの。人間がどう行動を変えたところで変わるもんじゃない。だからこのルビー――『実行犯』の沙羅は、この日に夕立が降ることを知っていなければおかしいんだ」
「それを知らなかったってことは――」
「このとき、『基点』は夕立の到来を知り得ない場所にいた――そう考える他にない」
「夕立の到来を知り得ない場所……?」
「可能性はいくつかある……。まず、単純に全然違う場所にいた。でもこれは『基点』の存在意義からして考えられない……。次の周の『実行犯』により多くの情報を引き継ぐことが、『基点』の役目なんだから」
「じゃあ二つ目は?」
「もうすでに死んでいる」
「え?」
ラケルが難しそうに顔をしかめ、こめかみに指を当てた。
「『基点』が死んでるってことは、もう転生タイムリープが行われてるってことでしょう? それじゃあもう新しい時間軸に因果が移ってるってことに……」
「それは【因果の先導】を使った場合だ。転生タイムリープを使っただけで新しい時間軸になるとすると、無限ループが発生する」
「無限ループ……?」
「アネリが死んだ時点――俺が1歳のときから未来に行けなくなっちまう計算になるだろ。アネリが死に、フィルに生まれ変わり、またアネリが死に、またフィルに生まれ変わり……」
「あっ、そうか。【因果の先導】は因果のコピー&ペーストだから、発動の瞬間に新しい時間軸が始まるけど……」
「転生タイムリープの場合、使うだけでは時間軸が『次』に移ることはない。行動を変え、過去を改変することがトリガーになるんだろう。
『基点』が転生対象をルビーから変えることがなく、行動も以前のものを踏襲したのなら、『基点』の死後も時間は続く。この夕立の日に『基点』がすでに死んでいる可能性は、ないとは言えない」
「なるほど……。それも【因果の先導】と転生タイムリープの違いのひとつ……」
【因果の先導】の発動にも多少のタイムラグがある可能性はあるけどな。
因果次元での時間の流れと物質世界での時間の流れの関係は不明だ。
ラケルが初めて死に、記憶を取り戻し、【因果の先導】を使うまでの間に、物質世界でいくらかの時間が流れていた可能性は否定できないが、まあ【因果の先導】がもう使えない以上は意味のない考察だ。
「それじゃあやっぱり、夕立の日の時点で『基点』はもう死んでいた……?」
「いや……可能性があるとは言ったが、それもちょっと考えづらい。有り得ない、とまでは言わないが……」
俺は眉根を寄せる。
「『基点』の役割は情報収集だ。沙羅がルビーに転生するパターンの世界では、ラケル、お前はあんまりこいつのやることにタッチできてなかったはずだよな?」
「ええ……。情けないけど、わたしが他のことにかまけてるうちに、何もかもが終わっていたような感じだった」
「ってことは、邪神復活による人類滅亡プランがこのくらいの時期までかかるってのは、計画の通りだったはずだ。だったら、計画の期間くらいは、『基点』による情報収集をしておくはず――さっさと死んで『実行犯』に引き継ぐってことはしないはずだ」
「……不慮の事故で死んじゃったとか?」
「それこそ転生タイムリープで回避できるんじゃないか?」
「それもそうか。……でも、それって、裏を返すとこういうことになるんじゃ?」
「ん?」
「――『基点』の沙羅ちゃんが天気も確認できない状況になっているのは、沙羅ちゃんの計画の内……」
「あ」
ビリッと脳裏に電流が走った。
「そうか……! 普通だったら、ミスだったり不慮の事態だったりが起こった可能性も考慮に入れる必要があるが、沙羅に限ってはそうじゃない! 何せ、計画外のことはすべて、なかったことにできるんだから……!」
「むしろ不慮の事態が起こったという可能性は、考えてはいけない……?」
「そうだ……。と、すると……。……もう、ひとつしか考えられないだろ」
結城沙羅の狂気の計画。
自分と俺以外の人類を一掃するプラン。
それには二つのパターンがあった。
一つは俺の『浄化の太陽』を軸とした『方舟計画』に相乗りするパターン。
そして、もう一つ。
その計画のために、情報収集を途中で切り上げてでも絶対に用意しなければならなかったもの、それは――
「――邪神バアル……」
俺は確信をもって呟いた。
これだ。
ついに掴んだ!
ティーナ・クリーズが導き出した答え。幾重もの壁の向こうにあった、沙羅の尻尾を!
「思い出せ、ラケル――このとき、ルビーに転生した沙羅がずぶ濡れになって姿を現したとき、邪神はどこにいた!?」
「……あ……!」
◆引用開始◆
◆「第60話 カタストロフ・ポイントⅣ - Part2」より◆
突然の夕立が、世界を叩いていた。
分厚く立ち込めた雨雲から稲光が瞬き、そのたびに、雲に落ちた大蜘蛛の影が照らし出される。
◆引用終了◆
「|邪神の影が雲に落ちている《・・・・・・・・・・・・》!」
不気味な大蜘蛛の影を見上げながら、俺は叫んだ。
「つまり――このとき、邪神バアルは雲の上にいる!」
「雲の上じゃあ……雨が降ってることなんて、わからない……!?」
「ああ……ああ……なんてこった……」
身体が震える。
思えば、おかしかったんだ……。邪神バアルは、ラケルや七大巨獣には攻撃を仕掛けたが、同じ場所にいた沙羅には攻撃しなかった……。
それはどうしてだ? 沙羅が邪神バアルを御する何らかの方法を持っていたからか?
違う。
もっとシンプルだったんだ!
証拠はない。
だからこそ、ティーナ・クリーズは敗北した。
しかし……俺には、これこそが真実だという確信があった。
あのとき、ティーナ・クリーズはこう言っていたのだ。
『―――てめぇの正体は〔邪神の宿主〕だ』
「邪神の正体は、序列第1位の精霊バアルだ……。そして、精霊は人に宿るものだ。だからもしかすると、復活までの期間は、誰か人間の中に宿っているんじゃないか……?」
「実際、50年前に邪神戦争があった世界では、サラ・フィアーマにバアルが宿っていた……」
「ああ。同じだったんだ……。あの世界での邪神の宿主が沙羅であったように、この世界での宿主もまた――」
パズルのピースが嵌まっていく。
完成図さえおぼろげだったそれは、ついに一つの絵図を浮かび上がらせる。
『基点』。
絶対的にさえ思えた沙羅の、唯一のウィークポイントを!
「……ここまで、ティーナは辿り着いてたんだ。…………それでも、沙羅ちゃんには届かなかった」
「たぶん……ティーナ・クリーズは、邪神の宿主が沙羅の『基点』であることまでは確信を得た。だが……それが具体的に誰なのかまでは、わからなかったんだ」
だからもし、その正体を掴む手掛かりがあるとしたら、ラケルがティーナと別れた後のことになる。
つまり――
「邪神戦争があった世界。……俺が、サラ・フィアーマと結婚しそうになった世界」
サラ・フィアーマ。
――フィアーマ。
「50年もの時を遡っての過去改変。この極めて強烈な一手を、沙羅は追い詰められるまで使わなかった……。もしかすると、それは――」
「……自分の弱点を……絶対に知られてはいけない情報を……晒してしまう危険があったから……?」
「あの世界で明らかになった情報――そのひとつは、邪神の正体が精霊バアルであること。……そして第四の勇者家、フィアーマの存在」
繰り返し口に出すことで、俺は確信した。
フィアーマ。
そうだ……やっぱり。
「ラケル。……俺さ、このフィアーマって名前に、覚えがあるんだよ」
「本当!?」
「ああ。というか、お前も覚えてるはずだ――そのときは咄嗟に思い出せなかったみたいだけど。お前もあのとき、俺と一緒に学院長の話を聞いてたんだから――」
俺はその記憶を再生した。
それは、もう遥かな過去のこと。
精霊術学院への入学直後、戦闘科Sクラスでの懇親会。
酒に酔った学院長が、俺に絡んでこんな話を始めたのだ――
◆引用開始◆
◆「蠱毒」より◆
「あの落ちこぼれがこんな小賢しそうな子供を産むとはのう! 人間ってのはわからんもんじゃ!
いやそれ以前に、あの諦めが悪いことだけが取り柄の厄介な小童と家庭を持つことを望んだ女がいたというのが驚きじゃ!」
「噂では、その諦めの悪さをもってして、かのフィアーマ族の姫巫女を娶ったというのだから、これは大したものだろう」
フィアーマ族の姫巫女……?
それって、母さんの話か?
「あの……母さんって、何か特別な人だったんですか?」
「あん? なんじゃ、聞いておらんのか?」
「別に子供に語ることでもないだろう。自分が親になる前、どこの誰だったかなんてことは」
「そういうもんかの?」
学院長は首を傾げる。
そういえば、このダブル歳の差夫婦(外見年齢でも実年齢でも超歳の差)には、子供とかいないのだろうか?
この銀髪少女がお腹を膨らませている絵面は、控えめに言っても犯罪臭しかしないが。
「おぬしの母マデリンはな、山奥に住む凄まじく閉鎖的な部族のお姫様じゃったんじゃ。そこに学院を卒業して暇しとったカラムの奴がふらりと訪れるや、部族の長老たちを全員説き伏せてマデリンを嫁として連れ帰った。儂らはそんな風に聞いとる」
「初耳……」
ラケルが驚いたように呟いた。
俺も初耳だ。
父さんと母さんの馴れ初めがそんな風だったとは……。
「それからは2人でコンビを組みおってな。2人組の精霊術師として勇名を轟かせおった。
まあしばらくしてすぐに引退してしもうたがの。今思えばあれは、マデリンの腹におぬしができたからじゃったんじゃなあ」
「お父上が亡くなられて、家を継がなくてはならなくなった、というのもあるだろうがね」
「ひひひ! あやつが伯爵とは。笑わせおるわ!」
◆引用終了◆
「……フィアーマ族……!」
ラケルが息を呑み、愕然と目を見開いた。
酒の席での、他愛のない世間話。ラケルがすぐに思い出せなかったのも無理はない。
だが、俺は覚えていた。
自分の身内の話だからこそ、はっきりと覚えていたのだ。
「――フィアーマってのは、母さんの旧姓だ……」
◆◆◆―――――――◆◆◆―――――――◆◆◆
「確か、俺とサラの結婚を伝える新聞記事にも書いてあったんだよな――俺たちは母方のいとこ同士に当たるって」
「ええ……。ああ! 自分の記憶力と観察力の低さに腹が立つ……!」
「仕方がない。無限輪廻の中で、幾度となく記憶を傷付けたんだから。……つまり、サラ・フィアーマは俺の母さん――マデリン・リーバーの姉か妹の娘だったわけだ。普通に考えたら姉だな。サラの母親のほうが家督を継いだんだろうから」
「……歴史の表舞台から姿を消した第四の勇者家、フィアーマ……。マデリンさんが……」
「あの世界で、勇者フィアーマは邪神を調伏し、無害化した。……沙羅の目的が邪神の復活である以上、『基点』のことを抜きにしても、話を聞く必要がある」
「山奥に住む凄まじく閉鎖的な部族……って話だけど、ジャック、探したことはないの?」
「当然、ある。リーバー家の家督を継ぐときに、父さんや母さんたちのことを調べようと思ったんだ。精霊術師時代のことも含めてな。そうしたら……」
「そうしたら?」
「……何も、見つからなかった。本当に、奇妙なくらい――誰かが丁寧に隠滅していったみたいに」
「……それって……!」
「フィアーマ族の里があるとされる場所にも調査員を派遣してみたよ。……だが、そこには何もなかった。廃墟さえ残されていなかった――俺はデマを掴まされたんだと思って調査を打ち切ったが……もしかすると、あれも……」
「……自分の弱点に繋がる情報を、沙羅ちゃんが消している……?」
「そう考えるのが、自然だ。沙羅が転生タイムリープを使い、過去に遡って消して回ったんだ……。
7年前、学院長やクライヴさんが殺されたことも、その一環だったのかもしれない。あの二人ほどラエス王国の精霊術師界を見てきた人間はいないからな……。
その二人が死に、書類も隠滅され……こうなると、今からフィアーマ家を探る方法は……。くそっ!」
ここまで辿り着いたのに、まだ先回りされている。
あと少しなんだ。あと少しで、あの悪魔の心臓に刃を突き立てることができる!
何かないのか?
フィアーマ家に接触する方法は――
彼らが持っていた情報を探る方法は――
俺もラケルも、完全に黙り込んでしまった。
精神を共有したこの世界で黙ってしまう、ということは、本当に何の案も出てこないのだ。
手段は存在しないのか……?
ここまで来て『詰み』だって言うのか……!?
無力感に唇を噛んだ、まさにそのときだった。
「――そういうことなら、おっまかせっ!」
俺でもラケルでもない第三の声が、精神の世界に響き渡ったのだ。
「え?」
「だ……だれっ?」
ここは俺とラケルの精神世界。
俺たち以外は存在できないはずなのに……!?
ラケルのそばに、ぽんっ、と軽い音を立てて、そいつは現れた。
薄いピンク色の髪を揺らめかせる幼い少女。
古代ギリシャ人みたいな白い布を巻いた姿は、ステレオタイプな神様を思わせる。
それは俺を転生させた神様少女によく似ていたが、厳密には別人だ。
「あ、アスモデウス……!? いたの!?」
「もちろんいたよ~♪ 妾は亜沙李ちゃんの魂に住んでるんだから!」
アスモデウス/運命の相。
ラケルの魂に宿っている、〈忌まわしき唇のアスモデウス〉の分霊。
「それより、聞いたよ? 聞いてたよ?」
によりとからかうように笑って、《運命》のアスモデウスは俺の眼前に寄ってきた。
「ジャック君……まだ、亜沙李ちゃんを抱く気にはなれないんだって?」
「は?」
「可哀想だな~、亜沙李ちゃん! 何百年もかけてようやく想いが届いたのに、まさかのお預けなんて! 彼女がどんな気持ちであなたの部屋に入ったか、教えてあげよっか? 覚悟した女の子は男の子よりエッチなんだからね?」
「ちょ、ちょっ、何言ってるの……!」
いや、それはまあ、精神を共有した時点でわかってるんだが――思い出すことがはばかられるような状態だったんだが。
俺はばつが悪くなって目を逸らす。
「……本当にすまないと思ってるよ、それは。でも今は、一刻も早く『基点』を特定しなきゃならないんだ……。いつ異常を気取られてタイムリープされるかわからない。俺がこうして亜沙李のことを思い出したことさえ、今この瞬間にもなかったことになるかもしれないんだ」
二度目はない。
あの沙羅が見過ごしている、今この状況が奇跡なんだ。
このチャンスを、絶対に掴まなければならないんだ。
「ふんふん、なるほどなるほど? ……ってことは、だよ?」
アスモデウスはによりと悪戯っぽく笑った。
「沙羅ちゃんの『基点』――これもまた、亜沙李ちゃんの恋の障害と言えるよね?」
「え……?」
「どういうことだ?」
「察しが悪いなぁ。つまり、妾の力の発動条件が整ってるってことだよっ!」
アスモデウスの力――『恋を叶える』精霊術のことか?
「亜沙李ちゃんの恋を叶えるため、妾が選んだアプローチは《運命》――これをかけ合わせれば、【因果の先導】の力を一時的に引き上げることができるはずだよ」
「【因果の先導】の力を……引き上げる!?」
「それはまさか、またタイムリープができるようになるってことか!?」
「ちっちっ」
アスモデウスは細い指を振る。
「そんな程度じゃないよ。因果のコピー&ペーストじゃ、遡れるのはセーブポイントまで。魂が限界に達した亜沙李ちゃんがそれよりも過去に行くためには、身体ごと因果を遡るしかない」
身体ごと……?
それは、つまり――
「精神だけが過去に移動するタイムリープではなく――物質の移動を伴うタイムトラベルってことか?」
「そーゆーコト。これならセーブポイントの制限もない。それに、《運命》の力を使うから、自分たちにとって必要な時間へ確実に跳ぶことができる」
「身体ごと、因果を、時間を遡る――そんなことができるなら、どうして今まで!」
そうだ。そんな真似ができるなら、もっといろんなものを救うことができる。
7年前――いや、アネリからフィルに転生される前まで遡って、本当のフィルを取り戻すことだって――
「そこまで都合のいいものじゃあないの」
アスモデウスは溜め息をついて、小さな肩を竦める。
「言ったでしょ。遡るのは飽くまで『因果』。『時間』じゃない。『過去を変えることはできても、因果を変えることはできない』――これは絶対のルールなの」
「それって……過去に行っても何もできないってこと?」
「本で例えれば、前のページに戻って読み返すって感じかな。筋書きを変えることはできないけど、裏を返せば、筋書きさえ変えなければ大丈夫。当時の人間から話を聞いたり、その程度のことならね」
そうか。なら、母さんが死ぬ前に戻って、フィアーマ族のことを聞くことができれば――
「そーゆーコトだね。……ただ、覚悟は必要だよ? あなたたちの目の前で何が起こっても、その結果を変えることはできない。悪いことが起こるとわかっていても、それを誰にも伝えることができない。因果の部外者であるあなたたちは、目の前で起こるすべてのことを見逃さなければならない」
ずくん、と心臓が鳴った気がした。
瞬きの瞬間、瞼の裏に、真っ暗な部屋の中で見殺しにした、何人もの知人たちの顔が浮かんだ。
「その覚悟があるのなら、妾は力を貸すよ? あなたたちが心置きなくイチャイチャするためにね!」
「――行こう」
瞼の裏に浮かんだ顔をそのままに、俺は決意を持って即答した。
ラケルの顔を見て。
俺のもとに残ってくれた、大切な人の顔を見て。
「俺はもう、何も失いたくない。お前を失いたくない。誰も……失いたくない。だから――」
――父は決めたぞ、ジャック。お前のその力を、俺は全力をかけて磨こう。そして世のため人のために使ってくれ
「――行こう、あの頃へ。あの頃の夢を、現実にするために」
決意を形にした俺に、ラケルは包み込むような微笑を向けた。
「今のジャックの顔、世界の何よりも好き」
ふふふっ、と嬉しそうにアスモデウスが笑う。
そして、また俺の前にやってきたかと思うと、
「それじゃ、約束ね、ジャック君? この問題が片付いたら、亜沙李ちゃんを抱いてあげること!」
俺の顔を指差して、とんでもないことを言った。
俺は口を開け、ラケルはカーッと顔を赤くする。
「は……ええ?」
「あっ、アスモデウスっ!」
「愛があるなら、きちんと行為で示さないとね? 約束だよっ!」
一方的に念を押された直後、すうっと意識が現実に戻り始めた。
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ゆっくりと、唇を離す。
目の前に、ラケルの群青色の瞳があった。
その瞳の中から、俺の意識が徐々に戻ってくる。
心と心が溶け合っていた感覚が、残り香のようにあった。
ついさっきまで、当然のようにわかっていたラケルの思考が、今は空白になっている。
寂しいようなもどかしいようなそんな感覚に、しばらく陶然となった。
……ヤバい。癖になりそうだ。
「……ぁ」
ややあって、ラケルが唇から吐息を零す。
見つめ合っていた瞳をすいと逸らし、頬をほのかに染めて……しかし、身体を離そうとはしないまま、ぽつりと恥ずかしそうに呟く。
「……あ、アスモデウスが言ってたことは……気にしないで、いいから」
「ああ……うん」
ラケルの柔らかさを、今も全身に感じている。
手にはくびれた腰があり、胸板には大きな水風船のようなものがむにりと押し当てられている。
けれど……やはり、込み上げるものはない。
甘い匂いに安心感を覚えるだけで……それ以上の熱のようなものは、どこからも湧いてこなかった。
それに寂しいものを感じながら、俺はラケルの身体を優しく引き剥がした。
「善は急げだ。すぐに出発しよう」
「う、うん、そうね……。沙羅ちゃんに気付かれないうちに」
「どうすればいいんだ?」
「ええっと……アスモデウスが言うには、その……手を繋いでたらいいって」
「手か……」
ラケルが差し出した手を握り返すと、ラケルのほうが握り方を変えて、互いの指の間を埋めるようにした。
恋人繋ぎだ。
わざわざそういう形にしたラケルは、ちらっと上目遣いに俺を見て、
「……ドキドキ、する?」
「まあ、するけど。……どっちかといえば、安心するかな」
「……そっか」
少し残念そうに、ラケルはぼそりと呟いた。
「もうちょっと……頑張らないと」
彼女の気持ちに応えたいと、心の底から思った。
そのためにも、今は――
ラケルは「……ふう」と息を整えると、すっかり落ち着いた顔で俺の顔を見上げた。
「戻ってくるときは、この時間に戻ってくる。だから、向こうで何日過ごしても、こっちでは1秒も経ってない。――準備はいい?」
「ああ」
「カウントする。……5、4、3、2、1――――」
遡るのは、母さんの生前。
〈ビフロンス〉の【死止の蝋燭】によって哲学的ゾンビにされる前。
すなわち、俺たちが――俺とラケルが、そして俺とフィルが出会うよりも以前。
俺たちのすべてが始まり、そして終わった、あの『運命の日』へ。
「――――因果、遡行!」
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