縁/フィリーネ・ポスフォード
フィリーネ・ポスフォードがジャック・リーバーの婚約者になることを予期していたのかといえば、出会ったときからなんとなく、そういう風になるんじゃないだろうかと思ってはいた。
二人が出会ったのと、わたしがジャックに拾われたのとは、なんと同じ日のことだったらしいから、二人の付き合いは決して長いものではなかった――それでもなんとなく、直感があったのだ。
この二人はピッタリだな、と。
だから二人が婚約の報告に来たとき、わたしは驚かなかった。
来るべきときが来たのだと、予定調和の演劇を見るかのように、納得しただけだった。
『うん! じーくんとこんなに仲良くなれたのは、ししょーのおかげだから』
フィルがそう言って笑っていたのが、妙に印象に残っている。
――じゃあフィルは、大きくなったら、ジャックのお嫁さんになるの?
いつか、3人で同じベッドに寝たとき。
何気なく訊いたその一言が、二人が両思いになる切っ掛けとなったのだ。
もちろん当時は、そんなつもりは少しもなかったのだけど。
あのとき、わたしはフィルに、ジャックのどんなところが好きかと訊いた。
フィルはいろんな答えを言ったけれど、最後の最後に、彼女にしてはとても恥ずかしそうに、こう付け加えた。
『あとね、あとね…………わたしにだけは、すっごく優しいところ』
――――ああ、なるほど。
何かが、腑に落ちた。
わたしにだけ。
自分にだけ。
たとえそれが、錯覚だとしても。
……ああ。
わたしは溜め息をつく。
…………ああ…………。




