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転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?  作者: 紙城境介
真実の輪廻期:奪い取られた初恋を

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縁/サミジーナ


 サミジーナという少女に初めて出会ったのは、彼女を人質にしてジャックを誘き出したときのことだ。

 そのときのわたしは、正体を隠すため、そして女人禁制のダイムクルドに潜入するために、男の格好をしていたけれど――彼女と少し話す間に、直感的に思った。


 この子は、わたしに似ている。


 タイムリープを挟んで次の周。

 夜の森で彼女と戦ったときには、まるで鏡を見ているような気分にさせられた。


 わたしは、空っぽのまま生きてきた。

 サミジーナも、空っぽのまま生きてきた。


 ただ一つ、わたしと彼女とで違う点があるとすれば――


 わたしは空っぽのまま成長し。

 サミジーナは、幼いうちに自分を埋めるものを見つけたということだった。


『正しいとか、間違いとか、そんなの何も意味がない!!』


 彼女の悲痛な叫びは、わたしの中の空洞に、くわんくわんと大きく響いた。


『それが「××」なんでしょう……!! 教えられなくたって、嫌でもわかるッ!!』


 そう、彼女にはわかるのだ。

 たった一点。その違いがあるから、彼女にはわかったのだ。


 ……あのとき、わたしはどう答えたのだったか。

 答える資格なんてないはずのわたしは、どう答えたのだったか。

 そうだ、確か……。




 ――だって、そう思うのが一番楽でしょ?




 なんて。

 無様な、答え。


 どうして、そんな風に答えたのか。

 どうして、そんな答えが出てきたのか。


 わからなかった。

 そのときのわたしには、わからなかった。



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