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転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?  作者: 紙城境介
因果の魔王期:あの日の扉を開くために

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最終話 因果終焉


 ……え?

 ここって……。


 また、真っ黒な世界。

 走馬燈が、まだあるの?


「……あっ」


 違う。

 周囲を見回して気付く。


 星、だ。


 真っ黒な暗闇の中に、いくつかの星が瞬いている。

 弱々しくて、今にも闇に呑まれてしまいそうだけど……。

 確かに、チカチカと輝き続けている。


 その輝きに、わたしはなぜだか勇気づけられた。

 諦めるな、と。

 星たちが言ってくれているように思えた。


「……よし」


 星の光に導かれるようにして、わたしは暗黒の世界を進む。

 何も見えない中を歩くのに比べれば、どうってことはない。


 やがて、視線の彼方に、何かが見えてきた。

 あれ、って……?

 足が、自然と早くなる。

 速足になり。

 駆け足になり。

 すぐに全力疾走になって、わたしはそれのもとに辿り着いた。


 そこにいたのは、一人の男の子だった。


 首。

 右腕。

 左腕。

 右足。

 左足。


 どこからともなく伸びた鎖で五体を縛られた男の子が、星空の中で宙吊りになっていた。


 その男の子の顔を。

 その男の子の名前を。

 わたしは――知っている。


「…………ジャッ、ク…………?」


 ジャック・リーバー。

 わたしの可愛い弟子。

 わたしが助けてあげられなかった"彼"……。


 計5本の鎖に縛られた両手両足と首が、あまりに痛々しかった。

 そうか……。

 彼はずっと、こんな状態で生きてきたんだ。

 こんな風に、囚われたまま……。

 ……わたしたちと、笑い合っていたんだ……。


「……こんな、鎖っ……!!」


 一刻も早く、解き放ってあげたい。

 わたしはその一心で、ジャックの右足を縛る鎖に手を掛ける。


 引っ張った。

 引き千切ろうとした。

 けれど、ビクともしない。

 なんて硬い……!


「―――ふふ」


 背後から声がした。

 せせら笑うような声だった。


「無駄です、無駄無駄。兄さんはわたしのものなんです。絶対に、手放したりなんかしないんですから」


 勝手に決めるな。

 知ったことじゃない!

 わたしは声を無視して、鎖を壊そうとし続ける。


「あーあ。本当に無駄なのに……。やっても仕方がないことに拘る人って、わたし、嫌いです」


 諦めちゃ、ダメだ。

 さっきの走馬燈と同じ。

 どんなに先が見えないように思えても――

 諦めずに進み続ければ、きっと何かが見つかる。


 待ってて、ジャック。

 わたしが自由にしてあげる。

 自由に、してあげるから―――!!


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