走馬燈
――攫われたジャックとフィル
――二人との修行の日々
――二人とあの広場で出会ったときのこと
輝かしい日々が過ぎ去っていく。
台無しにされることがわかりきっている日々が。
そして、次にやってくるのは――
――放浪
――放浪
――放浪
何かの精霊術を求めて彷徨った90年。
わたし自身、覚えてもいないその探し物は、結局見つからなかった。
単純な消去法で言えば、まだ模倣できていない7種類のうちのどれか。
そのうち1種類は、ルーストにしか使えない〈パイモン〉の【争乱の王権】だ。
だから実質、6種類ということになる……。
わたしは、どんな力を探していたんだろう?
それがあれば、ジャックを助けられたんだろうか……。
放浪の90年を越えて、また輝かしい日々がやってくる。
トゥーラと過ごした10年間。
思えば、彼女に痛めつけられてばかりの10年だったようにも思えるけれど、わたしにとっては数少ない、暖かな思い出だった。
……わたしは進む。
この先には、何もない。
トゥーラと出会ったのが、わたしに残された最初の記憶だ。
100年前を境に、わたしは記憶を失ったのだから。
ほら。
最初に気が付いた、うららかな森だ。
トゥーラと出会った大樹を離れて、わたしは逆に森へと入り込んでいく。
歩みを進めるごとに、ガンガンと頭が痛くなっていった。
もう少しの辛抱だ。
ここを越えれば、走馬燈も終わり。
死後の世界というやつが、待っているはずなんだから―――




