■馬燈
―――なんだって?
―――申し訳ないけど、どこの誰ともしれない人に
うっ……?
突然、頭の中に情景が過ぎった。
これは……。
ダイムクルドに入る前、エルヴィスたちに忠告したときの……?
……結局、彼らにも頼ってしまった。
わたしが、もっと強ければ……。
わたしが、ジャックを止められたら……。
後悔は止め処なく溢れてくる。
まさか、死んだ後にまで、後悔に苦しめられることになるとは思わなかった。
どこかで、期待していたのかもしれない。
死ねば楽になれる、って。
…………死ぬ?
ああ、そうか……。
今の記憶は、そういうことか……。
わたしは、すんなりと理解する。
これは、いわゆる走馬燈なのだ。
死の間際に起こる、人生の反芻……。
つまり、ここはまだ死後の世界じゃない。
歩き続けて、走馬燈をこなした先に、本当の死後の世界があるんだろう。
……そこに、フィルはいるだろうか。
トゥーラは?
エルヴィスや、ルビーに、ガウェインも……。
アゼレア……は、どうだろう。
死の間際に見た彼女は、どうしてかわからないけど、アゼレアには見えなかった……。
……わからない。
わからないけれど、歩き続ける。
わたしはずっとそうしてきた。
死んだくらいじゃ、変えられないみたいだった……。




