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―――わたしは、真っ暗な世界にいた。
ここは……どこ?
最後の記憶を思い出す。
確か……ジャックにやられた傷を、どうにか塞いで……。
ジャックのところまで辿り着いて……。
それから、アゼレアの姿をした誰かに……。
ああ、そうか。
わたし……死んだんだ。
ということは、ここが死後の世界?
真っ暗なばかりで、何も見えない。
……それもそうだ。
死んだ後には、何もない。
ただ『無』があるだけ。
その『無』が、この暗闇だということだろう……。
これからずっと、この世界にいなければならないのだろうか。
だとしたら、なんて無意味……。
こんな意識、もう必要ないのに。
ジャックを……助けられなかったんだから……。
……どうせ無意味なら。
わたしは暗黒の世界を歩き始めた。
意味があるかどうかわからないことをするのは得意だ。
何を探しているのかもわからないまま、90年も探し物を続けていたんだから。
何も見えない暗闇を、当て所もなく歩くことくらい、造作もないことだった。




