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転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?  作者: 紙城境介
因果の魔王期:あの日の扉を開くために

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133/262

■■■


 ―――わたしは(・・・・)、真っ暗な世界にいた。


 ここは……どこ?


 最後の記憶を思い出す。

 確か……ジャックにやられた傷を、どうにか塞いで……。

 ジャックのところまで辿り着いて……。

 それから、アゼレアの姿をした誰かに……。


 ああ、そうか。

 わたし……死んだんだ。


 ということは、ここが死後の世界?

 真っ暗なばかりで、何も見えない。

 ……それもそうだ。

 死んだ後には、何もない。

 ただ『無』があるだけ。

 その『無』が、この暗闇だということだろう……。


 これからずっと、この世界にいなければならないのだろうか。

 だとしたら、なんて無意味……。

 こんな意識、もう必要ないのに。

 ジャックを……助けられなかったんだから……。


 ……どうせ無意味なら。

 わたしは暗黒の世界を歩き始めた。


 意味があるかどうかわからないことをするのは得意だ。

 何を探しているのかもわからないまま、90年も探し物を続けていたんだから。

 何も見えない暗闇を、当て所もなく歩くことくらい、造作もないことだった。


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